2016/08/12 のログ
ご案内:「常世神社」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > ぺこ。ぺこ。ぱしんぱしん。
神社の鳥居の向こう側、賽銭箱に5円を投げ込んで二礼二拍する青年が一人。

「神様仏様、期待してませんけど今年こそ死ねますように…。」

盛大にため息を吐きながら、顔を伏せて礼拝。
その後すぐに顔を上げて、一礼してから近くのベンチに座った。

「………。暑い。」

額からはじっとりと汗が滲み、不健康そうな顔を顰めて更に不健康そうに。
それでもまるでサウナにでも入っているかのように、その場からは動こうとしない。

加賀智 成臣 > しばらくして、太陽の位置が更に昇り、カンカンに日が加賀智の頭を照らす頃。

「……………げほっ。」

口を抑えて咳き込む。またか、と思いつつ手を見れば、べっとりと赤黒い血が付いていた。
胸が痛くなってきたのか、軽く抑えながらベンチに横になる。

ご案内:「常世神社」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > ―――この日、檻葉は蝉の声がミンミンと重なりグワングワンと音の重なりだけを伝えるほどに酷く煩い林道を通りぬけ、翌週に控えた友人のマジックショーの成功祈願に神社にまで足を向けていた。


「っづー……。 ほんっと、音だけで頭痛がするわ。
 『お百度参り』じゃあないけど、こんな苦労をかけるんだからちゃんとご利益―――」


石段も石畳も、燦々と照らす太陽に炊かれてホカホカと放射熱を大気に拭きあげる中、パタパタと首元をはしたなく扇ぎながら本堂に向かう。

その途中。


「あら?こんな所で会うなんて珍しいわね、加賀智君。 ……何しに来たの?」

めとずの間に「っ」が3つ入るほどに珍しさを強調しながら、ベンチで横になる干物
もとい同委員会の後輩に、半目でそう問いかけた。

加賀智 成臣 > 「………………。あ、どうも。」

ごろりと、ベンチの上で寝返りを……打とうとして、そのままベンチから落ちた。
『皿諸共服毒』と書いてある黒いTシャツが境内の砂に塗れて茶色くなってしまった。
こんなシャツ、どこで買ってくるのだろうか?

「大した事ないですよ。ちょっと自殺祈願と……あと、熱中症で死ねないかのテストです。」

焼けるように熱い砂地の上で、脱力したように寝そべり、起き上がろうともしない。
その口の端には、先ほどの吐血の跡が赤黒く残っていた。

「谷蜂さんは何を……あ、嫌なら仰らなくても結構ですけど……
 すいません、プライベートの事を聞くなんて配慮が足りませんよね……」

一人で反省し始めてしまった。

谷蜂 檻葉 > 「うわっ」

ドザッ、と土嚢が落ちたような音に生ごみでも見たように目を背ける。

「自殺祈願…… あぁ熱中症で。 ……って熱中症って頭に悪いらしいから―――って死ぬなら良いの ……いやいや死んじゃダメでしょ。起きなさいって、目の前で本当に死んじゃったら縁起悪いじゃない。 私、今日友達のためにこんなあっつい中来てるのよ。 ご利益飛んじゃったらどうするのよホラ早く起ー・きー・るー!」

ユッサユッサと寝転んだ加賀智を揺さぶる。
寝転んだままであれば、顔に砂がザリザリと削られるだろうがそれはさて置き。


「ほんとこう、加賀智君ってマイペースにネガティブね。
 別に、貴方との仲でどうこう言わないわよ。ほら起きなさいって。」

ユッサユッサ。

加賀智 成臣 > 「あ、すみません…。
 じゃあこう……隅っこの方でひっそり死んでますから…視界に入らないようなところで……」

ぞりぞりと砂で顔面をヤスリがけされながら、イモムシのようにずりずり移動し始めた。
ぶっちゃけキモい。

「……お友達の…?…事故で大怪我して今日が手術とか……
 それとも、借金を返すために命がけのギャンブルに挑戦してるとか…?
 だとしたらすみません……僕みたいなのが神社なんかに居たら不吉ですね……」

発想までネガティブだし不吉。本当にご利益が何処かへ飛んでいきそうな空気だった。

「すいません……よいしょ、げほ、げほ……」

起き上がり際、口を抑えて咳き込む。指の隙間から、赤い液体が少しこぼれた。
顔には、砂のヤスリで付いた細かい傷が見える。

谷蜂 檻葉 > 「……やめてよ、雑木林見た時に中で加賀智君死んでる所とか想像しちゃうじゃない。」

心底嫌そうに、移動し始める加賀智のズボンを掴んで止める。


「確かに前一度大怪我してたけど今回は舞台に出るからその成功願いよ!
 プライベート云々気にする前にそういう発言のほうを注意しなさいっ!…まったくもう。」

『発想がネガい!』と一喝してちょっぷ。当てやすいところに。


「――ちょっと、血出てるじゃない。 何か拭くもの…あ、ハンカチあった。ほら、コレ使って。」

ようやく立ち上がった加賀智に、少しホッとした様子を見せたが直後に吹き出した血に眉根を潜めて懐からオレンジ色のハンカチを取り出して手渡す。不思議と、柑橘系のいい香りがする。

「そろそろ買い換えるつもりだったから、遠慮なく使っていいわよ。」

加賀智 成臣 > 「…ああ、首吊り試した時は林の所有者の方に怒られましたね……」

もう試し済み。抜かりのない男である。

「ぐぶぇ。
 ……すいません。成功するといいですね、舞台。」

頭にチョップを受けて、間抜けな声を出しつつちょっと血を吐いた。
それでも、成功を祈る言葉は少しだけ本心が出ている
…………ような気がしないでもない。

「……良いんですか、僕なんかのために………あ、何かいい匂い。
 ………じゃあすいません、後で弁償しますので……」

ハンカチを恭しく、名刺でも受け取るように手に取った。
そして恐る恐る口周りを拭く。ハンカチには赤黒いシミが広がり、もう使えない。

「……ありがとうございました。」

血を拭き取れたおかげでスプラッタはなんとか免れたようだ。
それでも、顔全体が不健康そうなことに変わりはない。汗もだらだら流れている。

谷蜂 檻葉 > 「そりゃ怒るわ。



 ……ねえ、加賀智君。」

しみじみと語る加賀智に疲れたようにため息を付いて、先程まで加賀智の寝そべっていたベンチに腰掛ける。そうして、それから僅かに逡巡していたようだが改めて視線を向けて


「別に、そうしろとか言うわけでもないんだけど。
 『コールドスリープ』とか、『封印』とか……死ぬわけでもないけど
 ”死んだような状態にする”んじゃ、ダメなの?

 即身成仏じゃないけど、密室に安置されておく、とか……。」

迷惑だ、とは言わなかった。
それを思わせるような表情でもない。

しかし、『独りで居れば良いのではないか?』

そう、問いかけた。

加賀智 成臣 > 「………はい。」

その質問は、当然のことだろう。
まともに考えれば、そうなるのは当然のこと。迷惑を掛けたくないと望むなら尚更だろう。
だが。

「………僕は、嫌です。」

自虐的に、隈を貼り付けた目を薄く歪ませながら笑う。

「それじゃ……死ねない。
 数十、数百、数千年かもしれない。…それだけ時を経て、でも、死ねない。
 永遠に眠るとか、封印とか、ありえないですし……絶対、その、いつかは…目覚めます。
 その…考えたことは、ありますよ。
 誰にも迷惑を掛けたくない、から…誰にも会わずに過ごそう、って。」

そう言って、笑みを消し、顔を伏せる。



「…無理でした。無理に、決まってる…じゃないですか。
 僕は、一人じゃ生きられないんです。…無理です。

 全部、自分のためです。人が、どうだとか、どうでもいい…です。
 僕は死にたい。僕は、人間達の中で、人間として……人間達がいる間に、死にたい。」

口数が比較的少ない加賀智にしては、よく話す。
時折、吃音のように言葉を詰まらせながら、その言葉を紡ぎきった。

そして、最後にぽつりと、こう言った。

「……僕は、仙人じゃないし…超人でも…悪魔でも、神様でもない……
 僕はただのクズです。クズで、ゴミで、役立たずです。
 …人に迷惑をかけないで、生きていく、なんて……出来ない。」

谷蜂 檻葉 > 「……そう。 ごめんね、嫌なこと聞いたかな。」

ゆっくりと、時間をかけて
『一人では生きられない、”生きたくない”』と言い切った加賀智に、フっと笑いかける。

「うん、でも―――中々良い本音聞けたかも。 
なんかいっつもだらーんってした顔してたからどうなのかと思ったけどやっぱり……

 優しいのね。加賀智君って。」


その独白を、どう解釈したのか。
どう、理解したのか。

檻葉は、快活な笑みを浮かべてそう言った。



「ところでそんな加賀智君にお役立ちのチャンスがあるんだけど聞かない?」

加賀智 成臣 > 「……いえ、すみません。クズの分際で何を言ってるんだっていうのは…その、分かってますから。」

再び目を伏せ、申し訳無さそうに視線を逸らす。
それでも、おそらくこの独白は真実で、その気持ちは真剣なのだろう。

「……すいません。その……はい。だらけててすいません。
 ……やさ、しい?いえそんな、僕は自分の事しか考えてなくて、別に全然…」

首を横に振りながら否定否定。ネガティブなのは根っこの部分らしい。


「……お役立ち?……まぁ、僕如きで役に立つなら……何でしょう?」

谷蜂 檻葉 > 「いや、今度ね。 恒例の禁書庫の方までの大掃除やるんだけど――この前言ってた奴ね。

あれで、普段はただ清掃とか手前の方の虫干しで終わりなんだけど、
今年の長期休みの何処かで一部整頓をしようって話になってたのよ。

とは言っても、まぁ禁書として隔離されてる訳だし?
先生達が何人か来るとはいっても実際に禁書に触れるのはかなり危険な作業になるねー


……って事なんだけど。

――――どう?」


ニッコリと、小首をかしげてそう微笑んだ。

加賀智 成臣 > 「……ああ、はい。良いですよ。それだけ貴重な蔵書なら死ねるかもしれませんし……
 図書委員の仕事くらいはしないといけませんしね…。」

あっさり快諾した。
ぼんやりと、可愛い笑顔だなぁなどと思いつつ、自分が死ぬことは一切勘定に入れていない。

「……あ、でもそれ、何冊くらいありますか?
 もし体が燃えるような禁書があったら、着てる服が燃えちゃいますし……
 いちいち着替えるのもアレですけど、全裸で作業するのも何ですし。」

考える焦点がどうにもズレている気がする。

谷蜂 檻葉 > ほぼノータイムで承諾する加賀智に、ガタンと立ち上がる。

「よーし!10フィート棒ゲットー!! ありがと神様ー!」

まだ祈ってもないのに、本堂に向けて両手を広げてブンブンと振る。
……こちらもこちらで、死ぬことをあまり勘定に入れてないらしい。

「ん? ええと……大体、60…の、240、の……ええと、960…まぁ1000。
 の、3ブロックかな…いやでも………4,いや5000。 5000冊ぐらいね!」

パッと、右手を開いてヒラヒラと振ってみせる。

「あ、別に全部加賀智君にって訳じゃないわよ?
 普段整頓作業をしてるチームが分別して安全を確認しながら作業していくんだけど、
 『目録に無かったり』もしくは『蔵書の時点で内容が把握されてなかったり』する本が幾つかあるから、それを指示に従って操作してもらうの。 ……勝手に開いちゃダメよ?事故になるから。

 服……は、多分貸し出してもらえると思うわ。対呪術戦防護服みたいな奴。
 特殊部隊みたいな見た目の、アレ。 あ、ほら!先月加賀智君の掃除当番の時に「休憩室に変なガスマスクの忘れ物ありました」って言ってたじゃない。アレ。」

加賀智 成臣 > 「………。」

大喜びしている檻葉を横目に、ぼんやりと雲を眺める。
あの雲、本から触手が生えてるみたいに見えるなぁ。そう思った。

「あ、はい。不確定な蔵書の危険物処理ってことですね。
 服まで貸し出してくれるなんて、親切ですね…。分かりました、はい。」

すごい量の禁書にも尻込みすること無く、淡々と続ける。

「…ああ、アレ。そのためだったんですね、あのガスマスク。
 近くで毒物の散布実験でもやったのかと思ってちょっと期待したんですけど。」

変な期待を持っていたらしい。

谷蜂 檻葉 > 「親切っていうか……いや、まぁこんな話したのは加賀智君が図書委員だからだからね?
 部署が違うって言っても図書委員としてのお仕事だからね?」

自覚ある? と、困ったように笑う。

「歩合制って話だから、給料について私は聞いてないけど凄い金額出るらしいから、期待しててね!
 ……死にたいからって絶対に勝手なことしちゃダメだからね。絶対よ?」

嫌な期待を口に出す加賀智に、そう念押しする。

加賀智 成臣 > 「いえ、もしかして全裸で危険物処理されるのかと思いまして。そうなったら少し恥ずかしいなぁ、とは。
 僕なんかに防護服を貸してもらえるとは思ってなかったので……」

図書委員としての自覚はあるが、それ以上にネガティブが勝っているようだ。
どんな死に方が出来るのだろう、と少し考えた。

「……僕としては願ったり叶ったりですけどね。死因も試せて、お給料も出て。また新しい服買わなきゃ。
 ……ああ、それと…その時はなにか奢りますね。

 あ、はい。その点は大丈夫です。
 ちょっと残念ですけど、核爆発でも起きて島が吹き飛んで、だと洒落になりませんし。」

一応弁えてはいるようだ。それにしても発想が物騒である。
ぱしぱしと、砂まみれの服を払う。

谷蜂 檻葉 > 「なんで全裸前提なのよ……。というか、羞恥心はあるのね加賀智君。

―――禁書の中には”感染・媒介型”って分類分けされる呪術の可能性が高いから、誰かを護るっていうのも立派な被害の防止よ。 近代時事でやらなかった?『猟犬事件』。 映画にもなってたんだけど、一昨年だったっけなぁ、海底遺跡の調査が進んでブームになったからって 『ティンダロス』ってタイトルで出てたの。

 そういえば、小説の主人公のマーカスは冴えない男って描写だったのに映画だと普通にイケメン起用だったのよねー。ヒロインのインドア系女子って感じはあの女優でぴったりだったんだけど……あ、中盤のモルガン刑事!一番はまり役だったと思うんだけど―――っていうか加賀智君ティンダロス見た? 図書館にも原作あるけど。


 ……あ、いやうん話が逸れたわ。
 ともかく! 『死んじゃダメ』だからね、加賀智君。 当日も言われるだろうけど、担当の人の話をよく聞いて、最善を尽くすのよ。 私も入口の方の虫干しやるから行くけど。 見に行くからね。」

加賀智 成臣 > 「まあ、人並みに。」

人並みな人は全裸で作業することをあっさり受け入れたりはしない。
それはともかく、すごい勢いで語り出した檻葉を見て、一言。

「……読んでないです。」


「あ、はい。……分かりました。死なないに越したことは……まあ、ないですし。
 でももし死んだらごめんなさい。その時は多分、不慮の事故ってことで……」

前提がどんどんネガティブになっていく。

「……それじゃ、僕はこのへんで。そろそろ薬を飲まないと、夜に発作が出てしまうので。
 禁書整理の日、楽しみにしてますね。」

そう言って、去っていった……

石段で転げ落ち、下の方の段に赤い染みが出来てしまった。
放置して帰った数日後、近隣住民が発見してすわ殺人かと騒ぎになったのはまた別の話。

ご案内:「常世神社」から加賀智 成臣さんが去りました。
谷蜂 檻葉 > 「ん、じゃあメールするから宜しくねー。」

そうして、手を振って見送る。



「いやー、意外な所で意外な人材発掘があったわねー。

 ……でも、なにか忘れて ……あっ!参拝!」

無事、五円玉が賽銭箱に奉納されました。


帰りは空を飛んでいった為、赤い染みにも気づかず。
不幸にもこの日二人しか神社へ行かなかったために容疑者になったりと一悶着あったのも、また別のお話。

ご案内:「常世神社」から谷蜂 檻葉さんが去りました。