2016/08/22 のログ
ご案内:「常世神社」に寄月 秋輝さんが現れました。
■寄月 秋輝 >
純魔力で編んだ戦闘用の装束。
一振りの愛刀。
譲り受けた小刀。
青い勾玉の首飾り。
おそらく、それが自分の全てだ。
「……なんでここに来たんだろう……」
本殿を通り過ぎ、その裏のあたり。
それも、こんな格好で。
だんだん自分がわからなくなってくる。
いや、わかっている。
彼女が、この近くに眠っている。
断ち切ろうとも断ち切れない。
定めにとらわれ、前に進めない。
あの日からずっと、停滞していた。
ご案内:「常世神社」に阿曇留以さんが現れました。
■阿曇留以 > 今日も大太刀をもって神社にやってくる。
昨日と違うのは、服装が巫女装束であること。
学校で、少しだけ神社のスペースを借りたい、といったら対価として掃除をするように言われたためだ。
神社の掃除など慣れているため、快諾したわけで。
「スクナヒコナ様、失礼しますね~」
ぱんぱん、と拝殿にお金を入れてお辞儀をしてから、拝殿の階段をちょっとだけ上らせてもらい、大太刀を置く。
■寄月 秋輝 >
ぴく、と反応する。
知っている声が聞こえた。
けれど、ダメな気がした。
違う、知っている。ダメだ。
懐かしい魔力を探し、ざりざりと歩き回る。
近くにあるのはわかっている。
一度でいい、手を合わせたい。
いつになったら、彼女を忘れられるのかと自問しながら。
ざり、ぱき、ざり。
■阿曇留以 > 拝殿にちょこんと置かれる大太刀。
この間のように刀身を少しだけ晒して置いておく。
「うん、それじゃ少しの間療養しててね~。
私はその間に、神社の掃除しちゃいましょっか」
社務所に向かい、箒を取ってくれば本殿の方へ行く。
■寄月 秋輝 >
見つけた。
首飾りをちゃらりと鳴らして外し、数珠のようにして手を合わせる。
(……すまない、夏樹……
今日で……今日こそ……)
手を合わせて、震える。
涙をこぼす。
抑えられない感情と共に魔力が漏れだす。
周囲が金色の光に包まれた。
■阿曇留以 > 魔力、の検知は留以に出来ない。
しかしそれだけ光れば嫌でも察知できるだろう。
小首をかしげながら本殿の裏手、光のするほうへ歩いていき。
「あら、寄月くん?」
光を放っている張本人へと、声をかける。
■寄月 秋輝 >
光に包まれた中央に、秋輝は居るだろう。
しかし集中しているのか、声をかけても反応はない。
すすり泣く音。
震える体。
きっとその背中は、実際よりもずっと小さく見えるだろう。
■阿曇留以 > 「……」
泣いている、のだろうか。
背中からみているために顔は見えない。
が、泣いているかのような雰囲気。
子供のように見える彼にゆっくり近づき
「どうしたの、寄月くん。
だいじょうぶ?」
ぽん、と背中を叩いてみる。
■寄月 秋輝 >
びくりと体を震わせる。
ゆっくり振り向く。
涙の跡の残る顔、まるで子供の用に乱れた感情。
普段の秋輝からは想像もつかないほどに歪んでいるだろう。
「……すみません……
お騒がせ、しましたか……?」
ゆっくり、首飾りを手から外して呟く。
緩慢な動作でそれを再び首に戻す。
■阿曇留以 > 悪いところをみてしまっただろうか、というのが第一の感想だろう。
静かに去るべきだったか。
男の子としてはあまり泣き顔を見られたくないだろう、と思いつつ。
「ううん、別に騒がしくはなかったのだけれど。
ちょっと、光が見えたから気になって。
えっと……なにかあったの?」
首にかけられた勾玉の飾りをみながら、涙で崩れた顔を見る。
■寄月 秋輝 >
「……本当だ……失礼、しました」
魔力の波紋を走らせ、漏れた魔力の光を霧散させる。
きらきらと光の粒が周囲を彩る。
「……ここに、昔の恋人が眠っています。
彼女はもう他界していたことを……最近知ってしまったので……」
膝をついたまま呟く。
その目は現在など見ていない。
■阿曇留以 > 「……恋人さん、が?」
こんなところに。
墓標も何もない場所に眠っているという。
それはまるで、捨てられたかのよう。
「……寄月くん。
お墓、作ってあげたほうがいいんじゃないかしら……。
ここじゃ、あまりにも……」
可哀想だろう。
そう、言いたげに言葉を吐く。
■寄月 秋輝 >
「……僕は、もう……忘れたいんです……
彼女を失ったことを……」
ざり、とその地面を撫でる。
頭の骨だけが、ここにある。
「墓を作ってしまったら……またここに来てしまう……
彼女も、本当なら向こうで眠っていてほしい……
でないと……何のためにオレが世界を守るために戦ったのか……」
相応の想いがある。願いがある。
英雄としてではなく、一人の人間として。
■阿曇留以 > 「……」
大事な人だったのだろう。
恋人が居たことのない留以には分からないにしても、そんなことを思い。
でも、だからこそ。
「覚えててあげて。
どんなに寄月くんが辛くても。
じゃないと、彼女は……この世界で一人になっちゃうから……」
寄月が異邦人だということはしっている。
だから、ここにいるという寄月の恋人もまた、異邦人だろう。
で、あるならば。
この世界に来てしまった彼女は、ここで一人ぼっちになってしまう。
それは、とても辛いことだろう、と思う。
■寄月 秋輝 >
「……それでは……ダメなんですよ」
すっと立ち上がる。
涙の跡を袖で拭って。
「僕はいつまでもとらわれ過ぎた。
彼女は向こうに帰ったと信じて……僕はこちらに骨を埋めたい」
そう呟く。
もう六年も、彼女のことを考えて縛られ続けた。
それではいけないのだ、と思い始めたところでの。
あの、出来事だ。
「……僕は英雄なんて称号は要らなかった。
大切な人を……彼女を守り切れれば、それでよかった。
彼女を捨てて世界を守り、自分の我を通した英雄の名に……オレは価値を感じられない」
目線を地面から引き離すようにして、留以に向ける。
どんな目をしているだろうか。
■阿曇留以 > もちろん、彼がそういう選択をするなら強くはいえない。
英雄という価値も、凡人の留以にはわからない。
だから強くは言えず、ただ、もう一度だけ。
「……ほんとうに、いいの?
後悔しない?」
そう、尋ねる。
■寄月 秋輝 >
「……ここで後悔して、揺らいでしまったら……
オレは彼女を、またここに縛り付けてしまう。
……静かにさせてあげたい……それだけなんだ」
目を伏せて呟く。
それも本心だ。
「……それに、ここで出会った人たちに申し訳が立たない。
だからいい加減に、オレも彼女から離れる」
そう答えた。
縛られた魂は、なんとかして前に進もうとしている。
それが留以に届くだろうか。
■阿曇留以 > 「……そっか」
ならばこれ以上は聞かないでおこう。
それが彼なりのケジメの付け方なのだろう。
彼の目も、さっきより生気がもどっている。
ぽむ、と手を叩き笑顔になる留以。
「なら、笑顔でいましょう~。
辛気臭い顔をしてたら、せっかくの顔が台無しだわ~」
■寄月 秋輝 >
呼吸が鎮まる。
ようやく精神的に落ち着き切ったか。
「……そう、したいのですが……
笑い方が、思い出せません」
あの日から、よくわからなくなってしまった。
そして昨日訪れた、突然のアイリスの帰還。
心のざわつきが抑えられない。
何もかもが手の中からこぼれていく感覚が恐ろしい。
「……また大事なものをとりこぼしている気がしてならないのです。
僕はどれだけの物を失うのでしょう。
……また、守ることも出来ずに、悲しむことしかできないのでしょうか」
笑えない。
静かな目を返すことしかできない。
■阿曇留以 > 「だいじょうぶ」
そっと片手を取り、両手ではさみこむように握る。
「これからはきっと、大事なものを守れるわ。
だって、次は守るって決めたんでしょ?
なら大丈夫よ。
貴方が守りたいって思えば、必ず守れるわ」
優しい声で、諭すように答える。
■寄月 秋輝 >
手が、あたたかい。
人の肌とはこんなにもあたたかかっただろうかとすら感じる。
その手を見つめて。
「そう……決めました。
次は守れると、信じています。
でも」
するりと手を抜けさせる。
文字通り、こぼれ落ちるように。
「……あなたは、僕を変えないでしょう。
あなたの言葉は……僕が今まで聞いてきたものばかりだ。
きっと何も……何も、変わらない」
失望も落胆もない。
ただ事実と、思ったことだけを述べた。
目を伏せ、静かに息をひとつ。
「……すみません、お騒がせいたしました。
もう帰ります」
■阿曇留以 > するりと抜ける手。
それを追いかけようとはしない。いや、出来ない。
その言葉が、留以には強く響く。
自分が、誰かを変えられるとは、思っていないから。
追いかけず、あいも変わらず、笑みを浮かべる。
「……ええ、また今度。
また一緒に、お茶でもしましょうね」
■寄月 秋輝 >
「ええ、また」
自然に、笑みを浮かべた。
まるで条件反射的なもの。
感情が伴っていない、張り付けたような笑み。
あまりに悲しかった。救われようとしない自分が憎かった。
背を向ける瞬間、また泣きそうに歪んで。
空へと、舞い上がっていった。
■阿曇留以 > 空へと飛んでいく寄月を見送る。
その姿が見えなくなるまで、ずっと空を見続ける。
魔から人を守ることは出来ても、人を救うことは出来ない。
去り際に見えた、彼の歪んだ顔が、印象的だった。
「――お掃除、しましょっか」
誰に言うわけでもなく、ただ呟いて。
ご案内:「常世神社」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から阿曇留以さんが去りました。