2016/11/15 のログ
■東雲七生 > 「よ、よし……とりあえず、これで。」
試行錯誤、文字を並べては消し、並べては消すを繰り返してようやく送信。
当たり障りのないやりとりの筈が、だいぶ気力を使ってしまった気がする。
「……ラムネでも飲もうかな。」
ぽつりと、そんな事を呟けば。
今まで意識していなかったのに急に喉が渇いたように思えた。
ベンチから腰を上げて、参道沿いに並ぶ屋台へと向け玉砂利の上を小走りで駆けていく。
■東雲七生 > 再びベンチへと戻ってきた七生の手にはラムネと綿菓子が握られていた。
どちらも縁日の定番と言えるくらいポピュラーな物だが、綿菓子の方は少しだけ趣が違う。
特徴的なのはその色だ。七生が買って来た綿菓子は、見事なコバルトブルーをしていた。
「こっちもラムネ味なんだってなー。どんなんなんだろ。」
ちなみにラムネの方は至って変哲のない瓶ラムネである。
ご案内:「常世神社【常世祭期間中】」にギルバートさんが現れました。
■ギルバート > 「一人でお祭りセットなんて盛り上がらないことしきりでしょ、それ。
俺も今買ってきたけど。ラムネ。」
シュポっと音を立てて開栓。
■東雲七生 > 「んぇ?」
今まさに綿菓子に口を付けたところで声が掛かり、真の抜けた返事と共に綿菓子を頬張る。
もしゃもしゃと独特な食感を口いっぱいに味わいながら暫し瞬きをして。
「あー、ギルバート。
ずいぶん久しぶりに顔見た気がするけど、元気?最近どう?
盛り上がらなくても、別に俺食うの好きだから一向に問題ないんだけどさ。」
一人で食べ歩きを続けていた甲斐があってか精神力はだいぶ鍛えられたんだ、と胸を張る。
今なら一人メリーゴーラウンドくらいは余裕で乗れる。
■ギルバート > 「わりと普通。仕事も順調。忙しすぎて金だけは無限に溜まる勢いだよ。
この歳で一戸建てなんて立てても使い道ないし。夢のマイホームなんてありゃあ嘘だね。
家庭があって子供がいてってなら実感沸くんだろうけど、まだ未成年ですよこっちは。」
はあ、とため息。ベンチの背もたれに直接座りかかる。
「女といるか一人でいるかってのも極端だと思うよオレは。
今日はおひとり様?」
■東雲七生 > 「そっかー……まあ、稼いだお金はある程度発散する時間が欲しいよね。
俺もバイト代こうして使って、そろそろまたバイトしなきゃなーって思ってたとこだけど。」
くすくす笑いながら綿菓子を口へ。
名前の通り綿の様な口触りはすぐに溶けて消える。残ったのは甘ったるいラムネの香り。
「うん、一人一人。
って言っても別に、大体一人だよ。
あんまり人と予定の摺合せするの、得意じゃないから。」
突発的にやりたい事をすぐやってしまう性分。
だからどうしても計画が必要になる「誰かと」は距離が出来てしまうのだろう。
■ギルバート > 「バイトねえ。うーん……東雲さえよけりゃうちで働くって手もあるけど。
流石に同級生を死地に送るというのも気が引けるんだよなあ……。」
からからと瓶を振る。ビー玉の音が涼しげだ。
むしろ季節柄寒いとも言える。
「例えばの話、異世界への扉がそこにあって、中に何があるかは誰もわからないし、それで何人も行方不明が出てる。
そこを調べてこい。金はクソほどやってるから文句はないな?って言われて、はい行きますって行けるか?
命綱もないし、片道切符かもしれない。でもオレは行けとしか言わない。
行けるか? 普通に考えて。」
■東雲七生 > 「ん?なんだよ死地って。あんまり物騒な事してんなよなー?」
人並み以上に働くので時々暇を言い渡されるほど。
ビー玉が鳴る音に気を取られて居たら、なんだかすごく物騒な内容が聞こえて来て。
思わず目を瞠って、言葉を探すのに時間を要した。
「……うわ、えー……何それ。
いや、そういう仕事なんだからやらなきゃならない時はあるんだろうけど、嫌でしょそんなの。
……あー、でも行く事よりも帰って来れなかった時の事を考えるともっと嫌だな。
嫌っつーか、怖いっつーか……。」
■ギルバート > 「それが普通の感性。だいたい平和に生きれるんならそれがいいんだよ。
危険度に比例して給与ってのは増えるもんだけど、人間そんなにいらないでしょ、お金とか。
こういうのは"こんな仕事しなきゃどうにも生きてけない奴"か
或いは"こんな仕事に生きがいを見出している奴"ぐらいだ。
東雲の発想が普通。でもそれだけじゃこの島は成り立たないから委員会であったり会社であったり部活がある。
まあ……危ない仕事ばっかりってわけじゃないけどさ。うちも。
この間なんて、異能の暴走で爆発的に増殖したキノコの除去してきたからな。
町丸々1区画分そこかしこからキノコ生えてるんだぜ?
幸い無害な種類だったらしいけどさ。」
■東雲七生 > 「キノコ?
……ええと、うん、まあ。
確かに綺麗事とか明るい事だけで世の中回ってるわけじゃないってのは、分かるけど。」
落第街の事もある。
居候先が近い分、その状況は否応にも解るというもの。
「……けどまあ、出来れば自分の卒業までに見無くなる顔は1年ごとで先輩たちに限って欲しいよねぇ。
辞めろ、だなんて言えないけど出来れば一緒に卒業してくれよなー。」
少しだけ困った様に眉根を寄せながら、笑みを浮かべる。
幼い顔に相応の、口角を持ち上げて歯を剥きだしにする笑みだ。
■ギルバート > 「はー、いい笑顔だことで。しかし卒業かあ……。
いつまでも居座ろうとすれば居座れるから、なんかあんまり意識してなかったな。
仲良い先輩も特にいないしさ。委員会にいた時はお世話になった人たちもいっぱいいたけど……卒業なんかしそうにないし。
東雲はそういう人たちっているわけ?」
■東雲七生 > 「あはは……確かに居ようと思えば居られるけど、それが二桁年とかになれば良い顔もされなくなる訳じゃん?
だったらやっぱり、卒業くらい考えとかないと。
卒業した上で居座る方法も、割といっぱいある気はするよ?」
んんー、と少しだけ首を傾げて考える素振を見せる。
具体的な案を出そうとしたのだろう。しかし、ギルバートからの問いに意識を取られてしまう。
「え?仲良い先輩とか?
うーん、そこそこ、かな。でも同級生の方が多い気もするし、最近は後輩もわんさか増えたし……。」
■ギルバート > 「後輩ねえ……思えばオレも世話してる奴一人いるな。
去年の今頃じゃ想像できなかったけど、慣れるから不思議だよ。
で、半年もすれば三年生だろ? 本当に365日を経て一年が経過したのか疑いたくなる。
そういうものって言われたら、そういうものなんだろうけど。」
ふああと欠伸。首を鳴らす。
眠たげな眼が、いっそう強調されている。
「じゃ、仕事に戻るよオレは。
風邪ひく前に帰れよ。」
ご案内:「常世神社【常世祭期間中】」からギルバートさんが去りました。
■東雲七生 > 「一人かあ……俺も一人くらいで済ませたかったなあ。
やたらと俺より年上で背も高くてそれでも後輩、なんてのがわんさか居るから……
1年が短いのは確かになー。1日が24時間あるのかもあやしいくらいだわ。」
けらけら笑いながら相槌を挟む。
眠そうな相手と対照的に、紅い瞳がルビーの様に輝いた。
「おうっ、がんばーれよー。
風邪なら大丈夫、鍛えてっからね!」
ちゃんと帰ったら手洗いうがいもする良い子の見本。
綿菓子を食べ終え、割り箸をゴミ箱に放り込むと、ギルバートを見送って自分自身も祭りの喧騒へと姿を消すのだった。
ご案内:「常世神社【常世祭期間中】」から東雲七生さんが去りました。