2017/08/26 のログ
■神代 理央 > 「興味の無い連中に愛想笑いを浮かべなければならない事もあるだろう?
そうなれば、それは無関心から嫌悪感に至るかもしれない。周りの人間全てに嫌悪感を持つよりは、自分も含めてマネキンだと思っていた方が気が楽だよ。まあ、俺だけかもしれないがね」
マネキンに喋りかけるのでは無く、自分自身すら言葉を発するだけのマネキンであると朗らかに見える程の笑みと共に答える。
そう思わなければ、嫉妬と服従と欲望が滲み出た大人達の相手などしていられなかったから。
他者がそうではないと理解しつつも、自分はそういう生き方しか出来ないと再び肩を竦めて見せた。
「成る程。確かに、そういう点では此の島はお前向きなのかも知れないな。異能や魔術を持つことが当たり前だというのは、此の島以外では見つける事が難しいだろう」
異能を持つ自分を正当に評価して欲しいという彼の言葉には、素直に頷いてみせる。
島外で異能や魔術を持つものがどの様な扱いを受けるのか、僅かながら実際に見聞きしたこともある。異能を持つ自分としても、此の島は生活し易い環境であるのは同意するばかりだ。
「マネキンでいた方が楽な事も多々あるぞ…と言っても、その考え方を否定するつもりもない。人生の先輩に、そんな大それた事を言う勇気も無いしな」
少しばかり茶目っ気を出した様に、僅かに誂いを含んだ口調で彼の事を再び先輩だと言ってみる。
尤も、その口調も態度も年下らしからぬ尊大かつ失礼なものであるのだが。
■筑波 察 > 「君の言うように周りを見てマネキンのように振る舞っていた方が、
ずっと楽だといって、異能を手放したいという人もいたよ。
でもそうやって生きるのって、
僕のように生きるのと同じくらいに疲れる生き方だと思うんだ」
どちらがいいとか、どちらが楽かとか、そういうことではないと主張する。
同じくらいに大変で、同じくらいに楽な部分が在るなら、
そしてそれを選べるというなら、そういう生き方を選んでいるというだけだ。
「この島ならほかの人と同じ扱いを受けても息苦しくないからね。
でも結局話し相手が欲しいのと、
本島にいたときの惰性で、特別でいたいんだ」
特別といっても名前を覚えてもらうだけでよかったりするのだが。
「人生の先輩と言っても、君と大して変わらないさ。
わがままで、生意気で、ちょっとずるい」
人間の人生80年なんてほかの種族からすれば一瞬だろう?
そういっておかしそうに笑う。
異能や魔術というものを完全に理解しようとするには、
短すぎる時間だ>
■神代 理央 > 「…疲れる、か。確かに愛想笑いを浮かべ続けるのは顔の筋肉が凝るが…それで異能を手放したくなるというのは理解が出来ないな。
とはいえ、それを否定するつもりもない。どの様な生き方を選ぼうが、それは選んだ者自身の選択だ。それをとやかく言うつもりも、関与するつもりもない」
眼前の彼とは、真逆の思考。突き詰めれば他者がどの様な生き方をしようがどうでも良いし、他者の生き方を肯定も否定もしない。責任も持たない。
此の島に来るまでに、些細な事でも共感出来る友を持てればまた違った思考に至ったのだろうが―表面的な付き合いのみを繰り返した自分には、他者に深く関わる事は未知であり不知であった。その事が己の信条に影響を与えていることにすら気付かない程。
「特別でいることがそんなに大事なのだろうか?まあ、お前……いや、筑波がそう言うのなら別にそれで良いと思うが。
というか、それなら彼女でも作れば良いだろう。世間一般では、異性のパートナーこそ特別な存在なんじゃないか?」
流石に歳上を「お前」呼ばわりは不味いかと思い直し、思い直した結果が呼び捨てだった。
そのまま、ずけずけと失礼な事を言ったりするが、割と本気でそう考えていたりする。
「夢現のなんとやらと言ったのは織田信長だったか。確かに、そう考えれば俺たちがあれこれ悩むのも、些細なことなのかも知れないな」
おかしそうに笑う彼に釣られる様に、クスリと小さく笑みを浮かべる。
結局、只の人間である自分達の悩みなど、些細な事でしか無いのかもしれないと思いながら。
■筑波 察 > 「僕も、異能を手放したいとは思わないけど、
同じマネキンでも、そう考える人もいるんだろうね。
選べるなら、好きな道を選んでいたい」
選べるといのを自由と呼ぶ人もいるが、
選ぶために思案するのを嫌う人もいる。
何が正解かは、いまだによくわからないままだ。
「同じようなことをほかの人にも言われたけど、
ほかの人の特別でありたいと思うことはあっても、
僕の中に特別が欲しいとは思わないんだ。――少なくとも今は」
そんなことを言えば我儘だとか、都合がいいとか言われるのだろう。
実際にそう言われてきた。
でも今の自分は、特別な人が欲しいとは思わないのだ。
他社に向けて恋愛的な意味で好意を寄せるということが、
どんな意味を持つのか、きっとそういう気持ちを抱けば、
相手は僕を特別に思うだろう。
でも、それ以外の人間に興味がなくなってしまうような、そんな気がする。
こんな考え方も、いろんな人と話すうちに変わってくるのだろうか。
「些細なことだと思う。
でも些細なことでも、悩んで、考えを巡らせないと、
気づいたときには何もしないまま墓に眠ることになりそうでね」>
■神代 理央 > 「そうやって好きな道を選ぶことが出来るのが、思考する事の出来る者の特権だろう。とはいえ、互いに難儀な悩みな気がしないでもないが」
正確に言えば、自分は悩んでいない―というより、悩んでいる事に気が付いていない―のだが。
僅かに苦笑いを浮かべつつ、彼の言葉に頷いた。
「…愛したくは無いが愛して欲しいということなのか?いや、そういうニュアンスではないと思うんだが…随分と《特別》ということに拘っているんだな。
だけど、そういう考え方も嫌いじゃない。誰の特別でも無いというのは、それはそれで辛い事だろうしな」
ふと、己自身はどうなのかと頭の片隅で自問する。
彼のように誰かの特別であろうと努力しただろうか。少なくとも、幼い頃から両親、一族の期待に応えようという努力はしてきたつもりだ。
だが、それで一体何を得られたのだろうか――その先を考える事は無意識のうちに止めてしまった。
「何も考えずに墓で眠る事になるのも、ある意味幸せなんじゃないか?悩みもなく、鬱屈することもなく、ある意味充足したまま死ねるのならな。まあ、俺は御免被るが」
何も考えずにいられるという幸せもあるのかもしれない。
でも、それは自分達にとっては幸せではないだろう?と、彼に同意を求める様に首を傾げる。
■筑波 察 > 「思案して、悩むことを苦行としない僕からすれば、
道を選んで後悔しながら進む生き方はぴったりだと、
我ながらそう思うけどね」
だからこそ、マネキンのままではいられないのだ。
「どうしてこんなに特別に拘るのかを聞かれると、答えに少し困るんだけどね。
この島にいて特別に拘るなんて、あまり意味はないのかもしれないし」
特別になるために相手にひどいことを言ったり、
嫌われる選択をしたことのある自身の生き方は、
決して褒められたものではないけれど。
「それは最初から死んでいるのと同じだと思うけどね。
屍が息をしているかの違いと、屍が墓の外にいるかの違いだけだ」
僕もそんな生き方はごめんだ。
そんな人生は、きっと生きた心地なんてしないだろう。
生きている間も、死に際も。>
■神代 理央 > 「同感だな。悩んでその場で足踏みするのも、一歩進んで後悔するのも、進まずに後悔するのも皆悩んだ末の結果だ。その生き方自体は素晴らしい事だと思う」
ふむ、と小さく息を吐き出して彼の言葉に大きく頷いた。
「誰かの特別でありたい、ということが筑波のアイデンティティなんだろう?此方から聞いておいて何だが、別に無理して答えを出さなくても良いじゃないか。或いは、答えを出そうと悩むのもまた一興だ」
散々質問しておきながら、最後はこの言い様である。
とはいえ、そうやって自分の生き方に悩む彼を羨む気持ちがほんの僅かに芽生えているのだが―今はまだ、自覚は無い。
「哲学的ゾンビ、という存在になるのかな。いや、あれはこの場合には不適切な例えか。
どちらにせよ、この若さで死人になるのは御免だからな。常に思考だけはしておくとしよう」
こうして夜の神社で互いの生き方についてあれこれ語り合えるのも、それは互いが思考して生きているから。
夜風に僅かに靡いた髪を整えながら、うっすらと笑みを浮かべて言葉を紡いだ。
■筑波 察 > 「考えて、無駄の多い人生を送ったとしても、
誰かが僕を特別だといってくれれば、
それだけで報われる気がしないでもない。
そういう意味では、そういってくれる人すべてが僕の特別かも」
自分の存在の意味を他者に大きく依存する生き方。
かっこ悪いかもしれないが、そうすることしか今はできないのだ。
「こんな性格なもんだから寝ていても考え事が収まらないよ」
そんなことを言えば彼にはこれが冗談に聞こえるだろう。
今は、それが冗談と取られても問題ではない。
「こんな僕たちを、神様がどんな目で見ているのか、
時折気になるところではあるけどね」
そういって神社の社を見る。
あの中に祀られている神は、どう思ってくれるのだろうか。
「ま、そんなところで僕は帰るよ。
案外こういうのは神のめぐりあわせなのかもしれないねぇ?」
宗教を信仰しているわけではないが、
言葉遊びとして神を引き合いに出すのは結構好きだ。
そうやって手を振ると、神社を後にするのだった>
ご案内:「常世神社」から筑波 察さんが去りました。
■神代 理央 > 「成る程。歪だが博愛主義此処に極まれりと言うやつか。筑波に取っての特別な存在は、一体何人になることやら」
呆れた様に苦笑いを浮かべつつも、その思想に否定的な感情は抱かない。
やっぱり難儀な人付き合いをしているなあとは思うのだが。
「寝ている時くらいは脳を休めるべきだと思うがね。人間の脳なんて、大して頑丈に出来ていないからな?」
彼の思惑通り、その発言を冗談だと受け止めれば小さく笑いながら此方も軽口めいた口調で返す。
寝ながら思考するなんて、面白い冗談を言うものだなと思いながら。
「夜中に喧しい連中だと、怒りを買わなければ良いがな。
―そうだな。随分と話し込んでしまった。機会があればまた会うこともあるだろう。明るい内に会えた時は、もう少し軽い話でもしようじゃないか」
互いに名を名乗り、言葉を交わした関係と言うのは彼にとって特別な存在足り得るのだろうか。
そんなとりとめもない事を考えながら、立ち去る彼を見送った後、此方も神社を後にする。
そう言えば、結局彼は何故ゴーグルをつけていたのだろうか。次会えた時は、そのことも聞いてみようと頭の片隅で思いつつ―
ご案内:「常世神社」から神代 理央さんが去りました。
ご案内:「常世神社」にHMT-15さんが現れました。
ご案内:「常世神社」からHMT-15さんが去りました。