2018/03/04 のログ
イチゴウ > 数分間、しばらくの沈黙の後
まるで機能停止していたと思えるほどに
微動だにしていなかったロボットが稼働している事を
示すかの如く動き出して視線を下げ
もう一度本殿とその周辺を見渡す。

「...?この箱は何だろう。」

不意に視界に入った
神社の前に置かれた大きな長方形の木箱を注視すると
そそそと近寄り前右足で軽く叩いたり
顔を傍に寄せたりして中身を確認しようとしているようだ。
誰しもがわかる事だがこれは賽銭箱である。

「分析によると中に入っているのは硬貨らしい、
落とし物だろうか。」

比較的小さめな賽銭箱というのもあってか
ロボットには大きな財布ないし貯金箱とでも
捉える事が出来てしまったのだろう。
柔軟に考えれば雰囲気的に神社の一部と分かるものだが。

「よっこいしょ。
人間は運搬する時にこの言葉を良く発する。」

やけに満足げな独り言を呟きながら
賽銭箱の端を前両足で掴んで少し上げると
底へ潜り込んでいくようにして胴体を滑らせ
二回りほど大きい木箱をシャーシ全体で
持ち上げる形になる。
何も無ければ恐らくこのまま本部へ帰るという罰当たりな事を
何の疑問も持たずに行ってしまうだろう。

イチゴウ > どう見ても自身の身体と不釣り合いな大きさの箱を背負って
中身の硬貨をジャラジャラと揺らしながら
鳥居を潜って階段へと歩いていく。

階段を降りるときには顔を上に向けて
箱がずり落ちないようにストッパーをかけて
とても慎重にゆっくりな動作で。
傍から見ればスローモーションで動いているような
可笑しな光景が見れたことだろう。
そうして風紀委員会の本部へと帰っていくわけだが
落とし物扱いとして持ち帰ったものを見せて
キツいお叱りを受けた事は言うまでもない。

ご案内:「常世神社」からイチゴウさんが去りました。