2015/06/10 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に狛江 蒼狗さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > 極彩色に賑やかな異邦人街に生徒が一人訪れた。
青年の名は狛江蒼狗。
泣く子も黙る公安委員会、その特別捜査部資料整理課特別雑務班通称“特雑”の班長である。
今日も買い出しという名のメイン特別雑務を申し付けられた。
彼にとっては買い出し等赤子の手をひねるようなものなのだ!
■狛江 蒼狗 > 異邦人街中央大通りは言わずと知れた繁華街であり、学生通りの商店街や繁華街のメインストリートとは趣きを違える。
勿論のこと狛江蒼狗が片手にぶら下げているトートバッグが求めるものも少々趣きを違えるものであった。
「………………」
さてこの狛江蒼狗、この常世島に訪れてから3年、異邦人街と関わったのは片手で数えられる程の事だ。
よって土地勘はない。研究区や学区ならば目を瞑っていても歩ける程なのだが、やはり常世島は広いのである。
■狛江 蒼狗 > 「……………………」
狛江蒼狗は寡黙である。
どれぐらい寡黙であるかというと、2ヶ月誰とも会話をせずにいたために発声方法を忘れてしまい、その後1ヶ月間喋りたくとも喋れない状況に追い込まれた程である。
そんな事があってから毎日のボイストレーニングは欠かさなくなった。
公安委員会資料室であいうえおあおが聞こえたらそれは彼の仕業である。
■狛江 蒼狗 > 閑話休題。
そんな寡黙な彼であるため、通行人の善意に甘える事は難しい。
通行人の善意に甘える事が難しいとどうなるか。
買い物リストに鎮座する謎のアイテムがどこで売っているのか皆目見当がつかない時とても困るのである。
■狛江 蒼狗 > 「………………」
長身白髪の青年は人の波が流れる中で、浮島のようになっている。
仏頂面で人波に煽られる姿は一種不気味であり、程なくして通行人は彼を避けて通るようになった。
不動のままに、大通りの中央で柱のように立ち竦む。
■狛江 蒼狗 > 「………………ふふ……」
笑みは自嘲的だ。普段仏頂面を貫いている彼が笑むのはとても稀少な事である。
大通りの中央から外れて、公共のベンチに座る。脚を組み、トートバックからコピーミス紙を再利用したメモを取り出す。
■狛江 蒼狗 > 「ATフィールド誘導剤」
読み上げた。
頭を抱えた。
眉合いを指で摘み、俯く。
■狛江 蒼狗 > 「ATフィールド誘導剤……??」
手で顔を覆った。
その時である。
親切な有翼の異邦人が、
『……ど、どうかしましたか?』
と、親切心から声をかけた。
狛江蒼狗はこう返す。
「いえ……………………大丈夫です」
有翼の異邦人は『そ、そうですか』と去っていった。
狛江蒼狗はチャンスをドブに捨てるのが上手い男だ。
■狛江 蒼狗 > 狛江蒼狗は再度頭を抱えた。
先程と何一つ状況は変わっていない、それにも関らず先程よりも取り返しがつかない袋小路に叩きこまれた感覚がある。
ただのお使い、されどお使いである。
行けば買えるだろう、と甘い見通しで慣れぬ異邦人街へ訪れた彼がいけない。
■狛江 蒼狗 > 単語の響きから、幻想通り(所謂剣と魔法の世界から訪れた者達が多い通り)ではないことは見当がついていた。
異邦人街には科学が発展している一区画がある。
一節では未来から“門”を潜ってきた者達とも言われているが詳しくは知らない。
【異能】持ちと共に先進的な研究を進める者達が集まり、機械部品や集積機械等を売っている区画がこのあたりだ。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に瀬名 翔一さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > ATフィールドという単語には察しがついている。
きっとバリア的な何かだろう。
誘導剤というのがわからない。
誘導という言葉もわからないし剤も解らない。
「………………………」
狛江蒼狗は途方に暮れた。
こうなれば、一旦公安委員会棟まで帰還し、この買い出しを申し付けてきた給湯室の少女に話をもう一度伺うしかない。
■瀬名 翔一 > そこに通りかかったのがこの男、瀬名 翔一である。
日々の研究のためにあしげくこの界隈に通っており、ちょっと名の知れた存在となっていた。
頭のおかしそうな奴はだいたい友達状態である。
さて今日は亜人の即身仏でも入荷していないかなとふらり立ち寄ったわけではあるが、目前にはどう見てもあやしい大柄の男がいるではないか。
「何をしているんだい、君は。」
瀬名は在学中の生徒名簿には目を通している。
特にこうもインパクトのある人物ならば、そうそう忘れることもない。
■狛江 蒼狗 > 「!?」
虚を突かれた白髪の青年は目を見開いた。蒼白の瞳がどう見ても怪しい白衣男を捉えた。
何をしているかと訊かれれば悩んでいるのだと答えたい。
然しここで答えるべきはそうではないだろう。寡黙で口下手な蒼狗にもそれぐらい解る。
「…………………………」
ただ自分の置かれた状況を上手く口頭で説明する術を彼は持たなかった。
ゆえに、折り目のついたA4のメモ用紙に『ATフィールド誘導剤』と意味不明の単語が記載されたものを目の前でひらひらと振り。
「…………………………わからない」
と、一言添えた。
きっとわからないのは、そんなことを言われた瀬名のほうだ。
■瀬名 翔一 > 「ハハハ! 君はもしかしてアレかなそうきっとバカにされているんだな!」
「まるで初めてのおつかいじゃあないか。いいだろう折角だからかいにはからかいで返してやろう。」
「つまりはトンチにはトンチで殴り返せば良いだけの話だろう?」
"こいつバカだな"と言わんばかりの笑い顔で人差し指を眼前に突き立てながら一方的に言葉を放つ。
「まずはATフィールドつまりそれは心の壁であり人それぞれが持つモノ例えば今の君がそうであるように他者に対しての予防線みたいなもの。」
「つまりそれを誘発するとなるとそうだな幻覚剤なんてのはどうかな!」
「強烈に悪意を掻き立てれば人と人の壁なんてものはみるみるうちにブ厚くできあがるだろう?」
■狛江 蒼狗 > 「……………………」
狛江蒼狗は何か言いたげな顔で、目の前で手を彷徨わせた。
馬鹿にされている事は否定しない、だが買い出しも“特雑”の正式な任務である以上、『ないものを買え』などと言ってあてのない旅へ向かわせる事はできないのだ。
しかしながら狛江蒼狗は再三言うとおり寡黙でありなおかつ口下手である。
そんな心情を上手く吐き出せない。幼いころからそういう気質なのだから仕方がない。
「………………しかし」
「………………給湯室のお茶汲み係が」
だからなんなのだ。そう返しても良い。
幻覚剤なんてものを給湯室のお茶汲み係が欲しがるだろうかと言うのだが、ここで呆れて帰っても彼も誰も文句は言わない。
■瀬名 翔一 > 「ンンン? お茶汲み係? お茶汲み係が幻覚剤なんて欲しがるのかね?」
「君は公安の人間だろう? 気に喰わない来客にでも盛るつもりかい?」
「それは面白い是非! 私にもその場に招待してくれたまえ。まさに茶番というやつだな。」
一人雑踏の中で踊るように歩き回り喋り続ける。
「ところで君は、いつもこんな無理難題を押し付けられているのかい?」
■狛江 蒼狗 > 「違っ………………!」
勝手に盛り上がる瀬名にあたふたとする。
こんなつまらないお使い一つで公安委内に無用ないざこざが起こるというのは冗談でも考えたくない事である。
渋い顔をして、トートバッグから四つ折りの紙を取り出す。
カラフルな印刷は先程のコピー用紙と違いインクを贅沢に使っていることが伺える。
リーフレットを拡げ、この区画で売られている特売商品の羅列をじっと見ながら答える。
「…………………………いや、いつもは、普通の」
初対面か、もしくは殆ど初対面であろう瀬名に普通が解る筈もない。
“普通”をなんらかの隠語ととるかもわからない。
彼の言う普通は、単純な文房具やお茶菓子や茶葉やコーヒーフィルターや豆の買い出しの事であり、また、資料室でアルファベット順に資料を並べてからそれを次にあいうえお順に並べ直すような事である。
普通ではない。
もしかすると瀬名の想像に任せたほうがよいのかもしれない。
■瀬名 翔一 > 「成程成程。チラシも持参していたわけだね。」
「それならば直接商品の方に丸でも打っていればまだわかりやすかったんじゃないかな?」
「やはり知恵を試されているのか、はたまた高度なプレイだね。こうなってくると隠しカメラがまわっているとも限らないぞ!」
対応に四苦八苦する狛江と対象に、自由奔放な瀬名の口ぶり。
それが唐突に黙りこくったと思えばいきなり向き直る。
「……おっと。ふと思ったんだが、電話でも入れて確認すればいいんじゃないか?」
■狛江 蒼狗 > 『隠しカメラがまわっているとも限らない』
ぞっとしない発現である。事ある毎に上層部からの監視の目が光る自分の身としては、本当にそうであってもおかしくないのだから。
蒼狗は瀬名を無視するような、流して相手をしているような、そういう曖昧な態度をとった。
馴れ馴れしい人間は嫌いではない。けれども、こちらも相手をする余裕があまりないのだ。
「!!」
ばっ、と顔を上げた。
(電話……?)
盲点に入っていたそれを指摘されて、口を抑える。
「……………………………うん」
意気消沈して取り出したスマートフォンのロックを解除し、電話のアイコンを押そうとした。
その時である。
「あ」
「あった」
狛江蒼狗は立ち上がり、電話のコール音が響きかけたスマートフォンの電源を落として、早足に歩き始めた。
目的地は近いらしい。
その向かう先には薬局がある。
■瀬名 翔一 > 黙り込んでいたと思えば急に動き出す狛江の姿はまるで変質者のそれである。
そう思いあっけに取られたかと思えば突然笑い出す瀬名もまたかなりの変質者っぷりであった。
「なんだね随分あっさりと見つけたようだな。」
「今度答えを教えてくれたまえ。なにぶん、私は私の買出しがあるからね。」
そう言いながら背を向け、二人は別方向へ歩き出した。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から瀬名 翔一さんが去りました。
■狛江 蒼狗 > 瀬名を捨て置いて薬局へ駆け込む。
「……………………!」
広告を差し出してボトルの書いてある項目を指し示す。
言葉に明るくない人間と認識されたためか、そのジェスチャーはスムーズに伝わった。
「……………………」
薄手のビニール袋に入ったそれを持ち、穏やかな顔して歩く。
「アンチちょっとした汚れフィールド誘導剤、か……」
洗剤のボトルは袋の中でゆるやかに揺れた。
公安委員会の給湯室で、異邦人街でしか売っていないこの洗剤がいま流行りらしい。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から狛江 蒼狗さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にシャーロットさんが現れました。
■シャーロット > 開店の準備を手早く済ませ、普段より店外展示の花の数を減らて作ったスペースに丸テーブル一つと椅子を置く。
テーブルの上にはお湯の入った薬缶にティポットとティカップ。
一歩離れて眺め、顎に手を当て満足気に嘆息。
「いいじゃない。なかなか感じ出てる。」
■シャーロット > 「あとは、っと。何か話題になるようなハーブティでもあればお客さん寄ってくるわよね。
でもハーブティってどういうふうに作るのかしらね。草を煮出せばそれでハーブティって言えるのかしら。
……なにはともあれ実践ね!」
店の奥から干した葉っぱを適当に持ってきて乱暴にティポットへ突っ込んで薬缶のお湯を注ぎ、席につく。
注いだお湯の勢いか、乱暴な扱いに抗議するかのようにティポットが小さく振動する。
■シャーロット > 「お茶ってどのくらい待ったら出るのかもそういえば知らなかったわ。
まあ、五分もほっとけば色々出るわよね。
歌でも歌ってりゃすぐよ。」
頬杖をつき、ティカップを指で弄う。
「胸に、染みる空の輝き…今日も遠く眺め、……フフンフンフフフン……」
■シャーロット > 「……もういいかな。いいわよね。すごく待ったし。
あー、このハーブティが超美味しかったらどうしよう。カフェに転向しちゃう?
何入れたか全然覚えてないけど再現できるかしら。」
ティポットを傾け、カップに中身を注ぐ。
水蒸気と一緒に立ち上るのはとても苦く、嗅いだだけで目も覚めるような臭気
「……ないわー。ないない。これはない。」
ため息を付き、カップの中身をポットに戻し、脱力したように机に突っ伏してむくれる
■シャーロット > 「……まずはカフェとかでハーブティの何たるかを知るところから、ってことかしら。
机は折角用意したし、絵書くのに使えばいいわよね。」
ぐっと伸びをするついでに、何も入っていない鉢植えを掴み机の上に置く。
薬缶とポットとカップは代わりに地面に追い出される。
「君がみ胸に抱かれて聞くは、夢の舟唄、鳥の歌……」
鉢植えに筆で絵を描きつけ、時折、日を見上げては気持ち良さ気に目を細める。
そんなことを繰り返し、最後には描きかけの鉢植えを脇に避け、昼寝を始めるのだった。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からシャーロットさんが去りました。