2015/09/26 のログ
ご案内:「異邦人街」にダナエさんが現れました。
■ダナエ >
──ゴ……ゴス………… ゴ……ゴス…………
ゴ……ゴス………… ゴ……ゴス…………
昼下がりの異邦人街。
通りから見つけられる限りの鍛冶屋を一軒一軒回り、
曲がった大盾の修理を頼んでは断られる重騎士が一人。
断られる理由は大盾の素材か、金銭的理由。
「ふう……」
先日の手合わせのダメージが残る体で歩き回ったため、
疲労は早い。
いつも以上にのろのろと歩いていた足を止め、一息つく。
■ダナエ > 通りの露天から、焼き芋のいい香りが漂ってくる。
心が妙にざわつくのは【暴食】の煽りだろう。
散財は良くないとは思うものの、
誘惑に勝てずつい店先を覗いてしまう。
「……ふむ。焼いた芋か」
チラリと価格に目をやる。
「焼いただけの芋が、600円だと!?」
動揺し、思わず心の声が出てしまう。
うちのは石焼き釜で焼いた芋だから特別おいしいよ、
と店員のツノのある中年女性が応じる。
気まずい。
「……ひ、一つもらおう」
■ダナエ > 600円という出費は痛い。
だがこの状況で買わずに帰れるほど面の皮は厚くもなく。
6枚の銀貨と引き替えに、
茶色の紙にくるまれて手渡される石焼き芋。
焼けた芋の中から一番小さい芋を選んで渡された
気がするのは、仕方ないことだろう。
甘く濃厚な香りが鼻腔をくすぐる。
まずは一口。
「……あ、つ!」
ガントレットをしたまま芋を持っていたため、
その正確な温度を予想できていなかった。
上唇と舌にダメージ。
店員がこちらを見ずにフフッと小さく笑う。
ご案内:「異邦人街」に否支中 活路さんが現れました。
■否支中 活路 > 唸りのような音と悲鳴のような音。
エンジンとタイヤがそれぞれ上げて、ダナエの背後の方で白い二輪が止まる。
「おう、おばちゃん一個おくれや」
平均的でないイントネーションでそう言うと、呪符と飾り紐だらけの制服を翻した。
あとは手押しで屋台へ近づいてくる。
包帯塗れの顔。
「えらい気合入ったお客さん来とるやんけ」
緑の視線がダナエを一瞥して店主へ。
ここは異邦人街だから、異装が異様というわけではない。
とはいえここの住人とて常世島に住む限りいくらかは染まるものだろう。だからそう評した。
■ダナエ > 「………………」
渋い表情で、焼き芋を右手から左手、
また右手とポンポン渡し移動させて冷ましていると、
耳に刺さる異音が近付いてくる。
振り返れば、恐らく異邦人街でも目立つ方であろう
風体の人物が芋を注文するところ。
思わずじっと見ていると言葉をかけられ、
「………………人のことを言えた柄か?」
耳慣れないイントネーション、理解するのに時間がかかった。
どう見ても異様な見た目はお互い様だろうという、
やや脱力した口調で返す。
■否支中 活路 > 「ん? いやいや、さすがにジブンほどやあらへんやろ」
金銀のコインを一枚ずつ渡して芋を受け取る。
包帯の下の目だけが横にすべって笑みを作った。
あんがとさん、と店主へことわり、ダナエの装いをもう一度見やる。
遠目に見た瞬間は”来たばかり”も考えたが――というか二輪を寄せたのは半分はそれが理由だが――買い物をしているなら少なくともそうではない。
ただ緑色の視線に映るそれが、あまり良いようには見えなかったが。
「まぁ、正気なんやったらええねんけど」
相手の顔というより呪いを視ながら芋の欠片を口に放り込む。
■ダナエ > 「そうか?」
自分的にはどっこいだ、と。
相手の芋に視線。
自分が受け取った最小クラスの芋よりは恐らく大きいだろうそれに、
「ず、随分と私の芋と大きさが……」
違うのではないか、と店員に抗議しかけるが、
作業から顔を上げたおばちゃん店員と目が合う。
小首を傾げて、ん?とこちらに問いかけるその
無邪気な営業スマイルに、黙らざるを得ない。
「正気?
私は至って正気だが……何故そんなことを聞く?」
まさか鎧の呪いを見てそう言われているとは気づかず。
正気でないように見えるのだろうかとやや困惑。
■否支中 活路 > 「……あー…………なんや、食うか?」
ダナエの反応と店員とのやりとりに、右手を差し出す。
おったまには食おかな程度の気持ちがなかったわけではないが、別段腹を満たしたいわけでもない。
死をまとった白っぽい塊が多少気になったので丁度よかっただけのこと。
実際マレビトだろうと風紀や生活委員の管轄であって自分は一切関係ないのだが……
自分が自分に求める理由はそれで十分だと思っている。
「俺もあんまりフレンドリーな風体やないっちゅうことは認めるけどな~。
ドラゴンかって先生やっとる場所や言うて、フル装備で歩き回っとるのはやっぱ目にはつくで。
おらんわけやあらへんけど……風紀ん人らに呼び止められたりせえへんか?
まーだから“気合入っとる”ちゅうたんやが」
緑の瞳は呪的なものを含めてエネルギーの流れを見るが、あまり質は高くない。
それがどういうものかまではわからず、とにかく深海から這い出したような格好と憑物をじろじろと見る。
やりとりしている限り普通そうで警戒をしているわけではない。
■ダナエ > 気を遣わせてしまった。
慌てて自分の小さな芋を見せ、大丈夫だとアピール。
「ああ、いや、それは貴公の正当な所有物。
私には私の芋がある、それは存分に味わってくれ」
【暴食】の影響とはいえ卑しかったなと恥ずかしくなる。
この男、包帯グルグルで他にも色々怪しげなものを
身にまとってはいるようだが、悪人ではないようだと思う。
「ドラゴンが教師をしているのか。
教室の戸口をくぐれるのだろうか……」
ぼんやり想像。
「幸いなことに、今のところないぞ。
呼び止められたところで、鎧を脱ぐ訳にもいかんからな……。
何とかこのまま、
風紀や公安に目をつけられずに過ごしたいものだ。
……そういう貴公こそ、
頻繁に呼び止められているのではないか?」
相手の姿を見ながら、冷めた焼き芋をぱくり。
「……甘い!」
芋とは思えない甘さに驚く。
己の知っている芋よりも、ねっとりとした舌触り。
もくもくと一心不乱に皮ごと食べ進めるその姿に、
素質のある者ならば【暴食】の亡者が歓喜して
のたうつさまを感じ取れるかもしれない。
■否支中 活路 > 「ぉ、ほぅか?」
すっぱり断られて、意外そうに目をぱちぱちとする。
思ったより慎みと自制心のある相手だったらしい。
翻すと卑しい女だと思っていたということになって字面が悪いが。
「いや? 全然そんなことあらへんよ。
にしてもあれやな、聞く限りやっぱ最近“来た”んやろ?
脱げへんて事情があるんやったらまぁ説明しといたら大丈夫やろけど」
相手の質問へは嘘は答えていない。
そも中央部には近づくことが殆ど無く、授業もでず、ここ異邦人街や歓楽街の奥にばかりいるのだ。
頻繁に呼び止められていないのは事実。
後者など呼び止められるというより出頭させられることになりかねない。
人のことを言えたものではないのは相手の言う通りだし、余計なお世話だが
芋にかぶりつく相手の周りで呪いの圧が増していれば気にもなる。
「え……何ジブンほんま大丈夫なんか……?」
■ダナエ > 意外そうにされ、ああ恥ずかしいと目を逸らす。
「この芋は、うまいな」
誤魔化すように、ごにょごにょと。
「ほう、それは意外だな。
私が見かけていないだけで、包帯グルグル巻きの
人物が街にはよくいるのだろうか」
とはいえ自分も職質を未だ受けていないのだから、
そういうこともあるだろう、と納得。
「ああ、恐らく冬か春にこの世界に強制的に来させられて、
この夏に常世島にたどり着いたところだ。
……ひょっとして貴公も異邦人か?
言葉に少し、故郷の訛りがあるようだが」
勘違い。
脱げない事情をいちいち説明するのは気が重い。
そんな機会がないことを祈りつつ。
「わ、私は大丈夫だが……
どこか大丈夫でないように見えるか?」
訳も分からず動揺、思わず己の姿を見下ろす。
視線は手の中の芋に。
「……ああそうか、
ひょっとして皮は剥がして食べる芋なのか?
野蛮だったな」
また勘違い。
照れ臭そうに、ガントレットを外して焼き芋の皮を
ちまちまと剥きはじめる。
■否支中 活路 > 顔に、というか目に出すぎたかとやや反省し、あわせるように自分も芋をかじる。
「ほぅやな。相変わらず美味いでおばちゃん」
当然、と返ってくる声に手を振り
「俺はちゃうで。言葉はこっちの訛りや。
日本……てわかるんかな、つまりこれが日本語やろ。その方言なだけや。
で、いや、ええっとなんつうかなぁ……鎧が、こう、おかしい……っちゅうか」
右手に芋をもったまま、口元を左手で覆うようにした。
はっきりと貴女憑かれてますねと言えば済むのだが、気づいていないなら指摘しないほうが良い方に進むかもしれず、
どうも歯切れが悪い反応になってしまう。
単純に本人への影響が劇的でない呪いなのだろうか。
あるいはこの相手の精神が非常に強いということなのか。
「えっ、ああ……そうやな。別に皮もくってええんちゃうか。
いやアレやな、むしろ女ん人は皮ごとの方がええかもしらんな、こー、ヘルス的なアレで」
さつまいもは皮ごと食べたほうがガスの発生を抑えられる……という説明までするのはどうかと思うのでしない。