2016/06/12 のログ
ご案内:「奇妙な木造家屋」に耳かき屋、楢狗香さんが現れました。
耳かき屋、楢狗香 > ちりん
ちりん    ちりん。

蔭る空。少し蒸し暑い季節に風鈴の音が響く。
赤く濁った■ ■ ■の音色が穏やかな古民家風の館を通り抜けていく。

「――けぷ。
ああ、穏やかでありんすね。」

程近いスラムの喧騒はしらない。
この周囲にだけは関係のないことでした。

ご案内:「奇妙な木造家屋」に鈴音 春さんが現れました。
耳かき屋、楢狗香 > 背の高くない石壁に囲まれた、
庭のある木造の古民家の縁側に異邦の女がひとり座っていた。

「…おや?」

庭の木々がざわり ざわり と風に揺れる。

鈴音 春 > ぺったぺったと雪駄を鳴らしながら異邦人街を歩く影が一つ。
気楽に鼻歌を歌いながら散歩中のようだ。

ちりん
     ちりん   ……
耳に不思議と届く風鈴の音

あちらから音がする……
その音に導かれるままに、あるいは呼ばれるように、歩いていきます

耳かき屋、楢狗香 > 着物の裾を整える。

しずり、と靴を履くように着物を縁側の石台に差し出して。

からん。

下駄の音がする。

ちりん ちりぃん  ちりん ちり

鈴音 春 > 音に誘われ、たどり着くは古民家……

「みみかきや、どす?」

看板を見かけると、そんなことが口から漏れる

不思議な場所にある不思議なお店
興味本位で立ち寄りたくなる……風鈴の音に導かれたのもきっと何かの縁

戸を、トントンとノックする

耳かき屋、楢狗香 > からん。
ころん。

「ああ。屋号はこちらに。
お客さんでありんしょうか。」

そっと横を見れば耳に花を咲かせた異邦の彼女がいる。

入り口に当たる石壁の門に みみかき の看板が静かにたたずんでいた。
目の前で何が トントン と鳴いたのか。正面を向く必要は今の貴方にはないだろう。

着物姿の彼女が静かに手招きしている。縁側のほうへ、いらっしゃい。

鈴音 春 > 「わっ!?」

不意に現れた女性に吃驚、そしてドキリ
なんとも滑らかないい声をしている

きっと見とれてそれ以外の……何をトントンと鳴らしたのかなど、些細なことは忘れ

「えぇ、気にならはったモンで」

手招きされるままに縁側へ、ぺた、ぺた、歩いていきます

耳かき屋、楢狗香 > ちりん   ちりん。

沓脱ぎ石―くつぬぎいし、踏み石とも 階段状のそれに下駄の歯をかけて。
異邦の女は縁側の板場にあがる。

「さ、どうぞ。
おあがりなすって。茶でも用意いたしやしょう。」

そこから繋がる畳の部屋に、座布団を一つ用意すると。
彼女は奥の厨房へといちど下がった。やがて、すぐに。しゅんしゅん、と湯を沸かす音が聞こえてくる。

鈴音 春 > なんと心地の良い風鈴の音色だろうか……
聞いているだけで少し湿気を含んだ風も、カラッとした気持ちの良い風の様に思えて。

沓脱ぎ石へ、同じように雪駄を脱ぎ
畳の部屋に
「お邪魔します」

畳の間へ、座布団に座り込んで
辺りを、少し見渡してみる

耳かき屋、楢狗香 > ―――。踏み石から音など、するはずがなく。

古く、どこか変わった…違い棚のような印象を感じさせる和室だった。
木製の鳥が一匹止まっている鴨居と、何ものせられていない神棚だけがそこにある。

畳の香りはすがすがしい。

やがて、盆を持って彼女が戻ってくる。

湯を注いだ急須から琥珀色のお茶が静かに注がれた。香りからすると中国茶だろうか。

お茶請けは干琥珀――涼やかな寒天で作る琥珀羹を干し、外側をしゃりっとさせたものだ。
干菓子に分類されるが、涼やかな見た目のそれがそっと和紙の上に載せられていた。


「それで…お客さんはおそらく、はじめてでありんすね。
何か説明したほうがいいようなことはありゃあせん?」

茶を差し出し、そっと尋ねる。

鈴音 春 > 古き好き、日本の要素といったところだろうか
生まれ育ったような場所と似ているような気がして心地が良い
畳にごろんと寝転がってしまいたい気持ちにも駆られるが、それはとどまる。

美味しそうなお茶の香り、
一口いただき口を潤す。

「ん、そうどすなぁ……素敵なねーさんんお名前を伺ってもええどす?」

こんなところでもやっぱり多少はぶれない
笑みを浮かべてそんなことを先ず問うてみて

「ここは、みみかきや、としゃべる所でおすなら耳に何やしはるってゆー考えどすねんやけど」

耳かき、といった概念は初めてなので耳に何かする、といった感覚である

耳かき屋、楢狗香 > 微笑んで茶に口を付ける様子を見守っている。
問いかけられて、気付いたように。

「楢狗香、と申しやす。
ああ…みみかき、というのはそうでありんすね。
お客さんなら耳の周りも含む手入れとマッサージでありんしょうか。」

じっとお客さんの耳に何かを測る様な視線を向ける。
名前の名乗りはひとつづりで、ややイントネーションが不可思議に聞こえる。おそらく人の舌で正確に発音するには、難しい。

「もしやお客さん、異邦のお方で?
そちらのお客さんやと、あまりそう言う文化に馴染みの無いお方も多くありんす。
本当は耳をこう…こういう道具で掻きやせが、もし怖ければもう少しマイルドなものにしやしょうか。」

そっとそばの木箱を手繰り寄せ、中から竹の細いみみかきをとりだした。
匙状のちょうどよい角度に、反対側には梵天。

にこやかに微笑んだまま、くいっと すこし、動かしてみせる。

鈴音 春 > ほく……はむ……
香り高い中国茶と甘く涼やかな見た目の菓子の相性は抜群で、
あっという間に平らげ

「ええ名前どすなぁ……楢狗香はん」

ほんの少し、言葉にしにくい名前だけど……なんとなく、音だけで表現できるなら言ってみるだろうか

そして取り出された耳かき棒に大変興味を持った様子で
近くでまじまじと見つめてみる、
このふわふわとした部分で耳いじって貰ったらどれだけ心地の良いことだろうか
恐怖と興味で言えば、優に興味のほうが上回った

「ほほう、耳んマッサージも……こないな細い棒で……
怖いよりも逆にどないいったモンかを知ってみたいさかい、そん道具でやってみて貰ってええ?」

耳かき屋、楢狗香 > 彼女も自身の茶に口を付ける。
ぷっくりとした唇が素焼きの器に付けられ、押しつぶされてくにゅりと歪んだ。
そのまま押し込むと柔らかそうで、その割れ目の奥に琥珀色の液体が流れていく。

「…それでは。」

いつのまにか茶碗をそばによけ、蓋をかけていて。

正座を整えなおした彼女はその膝の上をぽん、ぽんと手で叩く。
その隣、手の届くところに熱い湯と、いくつかのおしぼりやタオルがすでに用意してあって。

「ここに、横になって軽く頭をのせてくだしゃんせ。
お客さんのみみはすこしたかくありんすから、片側によるとちょうどいいと存じんす。」

絵の中でふわっとした笑みを浮かべたその顔に重なるように、その白い指先が手招きをした。

鈴音 春 > 彼女のその柔らかそうな唇が、愛らしい笑みが
この年頃の男子にはとても妖艶に映るでしょう
思わず生唾を飲み込んで。

いつの間に用意した、なんて……
きっと気が付かないうちに、さっき終わっていたのであろう。

膝の上に頭をのせる、人生二度目の女性の膝枕
言われたとおりにやや端に寄せ、頭を預ける

極上の感触、理想通りで……自然体で頭を預けることができて
うっとりとしていることだろう

耳かき屋、楢狗香 > 柔らかな膝の上にお客さんの頭を乗せる。
軽く手でその位置を誘導するように確かめて、男の子にしては少し長い髪をそっと撫でつけた。

二度、三度と白い繊手を似た色の髪に馴染むようにくぐらせ、
そうしてやっと耳の付け根からその様子を確かめる。

「…ではちょいと、お客さん失礼しやす。
もし痛いことがあれば、手か声で教えてくだしゃんせ。」

普段から手入れはどうなのだろうか。汚れ具合はひどいだろうか。
先ほどの言葉からだとあまり普段気にしてはいないようだったが。

もし中がなにか炎症を起こしていたり、繊細だったりすると竹匙でのみみかきはあまり良くは無い。
耳の先端を親指と人差し指で軽くつまんで、その様子を慎重に覗き込んで、確かめる。

じっと耳に向けられる視線を感じれば、すこしこそばゆいのかもしれないけれど。

鈴音 春 > 「はいぃ……」

ふにゃーっとした声が返ってくる
こそばゆいのか、心地よすぎるのか……

耳の様子を見る限りでは、手前の方に汚れはあまり見当たらない
きっと髪を洗ううちにとれたりしているのだろう

だが奥のほうだとやはりそれなりの耳垢が溜まっているようで、
びっちりと耳孔に張り付いている。

幸いな事に耳垢の質は乾燥気味で、皮がめくれたようになっているタイプ
固まっている部分は少し小石のようにはなっているけど
奥の方に黴があったり炎症を起こしていたり、などは特になさそうだ

耳かき屋、楢狗香 > 反対側の耳もそっと優しく捻らせてもらって、軽く確かめる。
こちらは同じかどうか、異常はないかだけとりあえず。

「あらあら。お客さんはみみかき向きの耳をお持ちでありんすね。」

乾いていれば匙を使うには向いていて。
すでにふにゃんとなっているお客さんの耳を労わるように、絞ったおしぼりを念入りに冷ましてから耳を包むように押し当てた。

しばらくそのまま手で包み込んで、時を待つ。

ちりん。

少し止んでいて静かだった風の中、
微かに風鈴の音色が聞こえる。

気温はそれほど暑くはなく、部屋のなかは心地よい。


「涼しくなってきたでありんすね。
……では、軽く内側の毛を整えや。」

声をかけてから、
程よく毛穴がふやけたところで汚れをふき取るように、軽くマッサージしながらおしぼりを拭う。

しっとりとした耳介の毛を整えるため、細身の鋏を手にとった。
あまり切り過ぎないよう、そして見た目が良くなるように少しずつ、鋏を入れて。

しょきん。しょきん。…しょきん。

鈴音 春 > 反対側も同じようではあるが、軽く鼓膜の前あたりに耳垢の膜がある

「え、ほんまどすか?
ええ耳を生まれ持ったことに感謝やなぁ……」

そして、耳をホクホクとした、調度良い温度のおしぼりで
更に解されて……少し心地の良くなった気温と合わさって、さらなる安らぎを約束してくれる。

耳の内側から聞こえてくる、しょきんとハサミの刃が交わる音
ぱらぱらと毛の落ちる音ともに耳の内側の毛が整えられ
すぅっと涼しい空気が耳を撫でる……

耳かき屋、楢狗香 > みみかきやの指先が小箱を探る。
出し忘れていた細工の細かい小瓶を取り出し、その中からとろりとした液体を指先に適度な量垂らす。

どこか液体が白くも見えて、そのしずくは粘性をもつ。
艶かしい舌先が薄く開いた口の隙間から覗いて、下唇を右から左へ。

「お客さんは…ええと、猫にちかいでありんしょう?
毛先は長めに、このくらいでよさそにしときやせ。ではさっそく、こちらを使っていくでありんす。」

目を閉じていなければ…、先ほどより少し大きなみみかきのへら状の先端がその前に見せるように上から差し出される。
もし視線を上に向ければ、着物に包まれたふくらみの向こうから覗き込むような楢狗香の顔が見えるだろう。

もちろん、見なくても構わない。
影となる位置のその瞳は、オッドアイでどこかおかしくも感じるのだから。


返事を聞く聞かずに関わらず。
そのサイズの大きなみみかきでそっと耳介のもっとも外側をなぞるように触れていく。

すぃ、くっ くっ さりっ…

ときおり優しく、ツボの部分を刺激しながら。
外側から、内側…耳の穴へと、じわじわ焦らすように、音と感触が近づいて。

鈴音 春 > 「えぇ……」

心地よさについつい言葉も少なくなってしまう、
労るような、今までしてこなかった耳かきという行為がよっぽど気持ち良いのでしょう。

薄目を開けると、見える耳かきの先端
少し大きめだけどこのぐらいが獣人にはきっと合う大きさなのだと

そしてちょいと先に見えるは、これまた絶景
無理に着物に押し込めているけどそれでも尚零れそうな柔らかそうな膨らみ
そして見える耳かき屋さんの柔らかそうな顔

きっとぼんやりすぎて、心地よすぎて
些細な違和感は正常に、置き換えられてしまう

耳の表面を侵食していく、音とツボをおした時のぴりりとくる快感に再び瞼を閉じ、
音と感触に全神経を集中させます

耳かき屋、楢狗香 > お客さんの様子にふと言い忘れていた言葉に気付いて。

「ああ、お眠りなすってもかまいやせん。
身をゆだねたほうがよろしゅうと存じんす。程よい時間で起こしやせ。」

そうそっと耳元に囁きかけながら、一度手を止めてふわっと毛並みにそって頭頂部を撫でる。
少しかかる吐息がこそばゆいかもしれない。

手ぐしをかけると再び、大きな耳を軽くつまんで
今度は中くらいの大きさのみみかきを手に取った。

先ほどすくった液体をその匙に絡ませて、
残った指先の雫でさきほどみみかきを這わせた部分に伸ばしてゆく。

穏やかな安心するような、何か白いものを連想させる香りが微かに鼻をくすぐって。
こうして塗ればすっとした感覚が耳に走るだろう。

「では、中のほうにいきやせ。
あまり大きく動かれませんよう…。」

注意するような言葉と共に、耳の穴へと棒が入ってくる気配が分かる。

異物が中へと入ってきているというのにその動きは優しく、
触れるか触れないか、と言う感触で耳穴の壁を軽くなぞって、取り出した汚れをおしぼりで拭って。

そうしてまた。己の中へと入ってくる。ああ、もちろんお客さんのことなのだけど。

鈴音 春 > 「もったへんさかい、でけるやけおきよしいますよぅ……」

せっかくこんな心地が良いんだから、
すぐに寝てしまっては……もったいない

触れれる一挙一動がとてもぞわぞわする、気持ちいい

漂ってくる香りはハルにとってはベビーパウダーを感じさせるような香りに感じるでしょうか
ふわふわと甘く優しい香り

耳の奥に入ってくる、まるで裏側を、内側を撫でられている感じだ
もうちょっと痛むのかななんて、思っていたけどそんなことはなく、
優しく耳孔の汚れを取り除かれる

耳かき屋、楢狗香 > 瞼の重そうなお客さんにくすりと微笑んで、
耳を親指で押さえるようにしながらその後頭部に手のひらを当てるようにする。
そうして、ときおり

ぽん、ぽん

と軽く、ほんの軽く叩くような動きでリズムをとりながら。

みみかきは続く。


「あらあら。無理なさらせんよう…。」

一度大きな汚れを取り除いた場所に、もう一度軽く匙の先端を当てる。

かり、かり、 さり。

力を入れずに、優しく外へと動かして。
すでに大きな汚れは取り除かれていて、今は少しずつ、少しずつ奥へとその動きが攻め入っている。

いまがちょうど、普段届かない一番気持ちのいい場所だろう。
くすぐったいような、むずがゆいような。

痛みなきように本当に触るだけのような動きでそっと刺激しながら、その場所にこびりついた耳垢がないか何度も探っていく。

さり さり さり。

鈴音 春 > ぽん、ぽん、ぽん
ぴり、ぴり、ぴり

後頭部に伝わる振動……

続く耳かき

普段絶対に届くことのない領域を、
その小さな匙で撫でられぞわり、ぞわり
耳がぴくっと動いてしまいそうになるのを我慢する

心地よすぎて
口の端から唾液が少しだけ溢れてしまう

手前から徐々に、生まれたままのように綺麗な耳に

耳かき屋、楢狗香 > さりっ。
いつの間にか最初に見せた、一番細いみみかきに取り替えていたものを穴から引き抜く。

これ以上、匙で奥へはいけないだろう。
耳あかも無理にとる必要はない。
耳介をかるくひっぱり、その奥に落ちてしまっていないかだけ確かめる。
耳の穴の中、奥の奥まで見透かされているような視線がじっと、感じられるだろう。

そう言う趣味の素質があれば、いや。
「では仕上げにはいるでありんす。」


匙でのみみかきはおわったことを宣言する声が聞こえる。
くるりとみみかきの棒を回して、梵天…ふわふわの白い部分に持ち替えた。

耳の周りの毛をそっと親指でなぞる。

そうしてねじるように梵天を差し込んで…引き抜く。
もう一度、差し込んで…引き抜く。

先ほどまでと違い、その感触は柔らかい。

さらにもう一度、合計で三度梵天を差し込んで。
その白く細い人差し指が耳の穴にそっと差し込まれる。

すりすりすり。

耳の穴はふさがって、静かなそのなかで。
彼女の指自身をそっと撫でている、その細やかな振動が鼓膜へと伝わってくる。
さいごのさいごに、ふっ、と息を吹きかけられて。

「これで片耳、終わりでありんす。
さ、反対に寝なおしてくだしゃんせ。」

ぽんと軽く、肩を叩く感触がした。

鈴音 春 > すっかりと耳かきの虜だ……そしてそんな趣味の素質が、芽吹いたかもしれない

梵天といったものも、耳の奥をふわふわのものがくぐる
ティッシュとかとはまた違った、優しい感触

耳かきが耳孔を磨き癒やすものなら、
梵天は耳孔を柔らかく包み癒やすものだな、と

んぅ~なんて言葉にならない声、
猫みたいに喉をゴロゴロ鳴らしてしまう

そして
耳への最後の吹きかけ、びっくりして目を開いちゃう
心地が良くないわけじゃないけど、どきどきがとまらなくなっちゃうような。

「あ……よろしゅおす」
片耳が終わってしまった、永遠とも思えた心地よい時間は後半分しか残っていない

いわれるままに起き上がり、反対側になるように寝直す
寝るときに、ちら、と楢狗香の唇を意識して見てしまった

耳かき屋、楢狗香 > ふと。呆けたような表情から視線に気付いて、その唇が蠱惑に歪められる。
先ほど舌を這わせたその場所がぬらりと艶やかに光を反射していて、何かが今にも垂れそうな雰囲気を放っていた。

「…どうか、しやんせ?
ああ、おなかにいたずらだけは勘弁してくれやし。」

困ったように微笑んで、冗談っぽくそう言う。
横向きに寝ていれば今度の顔は帯側へと向くのだろう。帯の上に膨らみ。下には柔らかな膝。
一種の幸せな閉所ではあるのだろうか。

帯の…なんだろう。これは煉瓦を積み上げたような、妙な模様でできている。
もし、瞬きをすれば、その模様が ぐるり と回ったような気がする。
目の前にこんな、二つの黒い穴は、あっただろうか…。



「もし、終わりでありんす。起きしゃんせ。」

そっと耳元で囁く、声が聞こえる。さらに少し、涼しい。日が沈んで、風が出てきたのだろうか。

ちれん ちれん  ちれん。

鈴音 春 > きっとハルがもっと強引で欲望に忠実で
直情的な性格だったら、この場で唇を奪う、なんてこともしたのかもしれないが
案の定彼はヘタレである、そんなことをする度量は持ち合わせていなかった……


――いつのまに、寝てしまっていたのだろう……
もう片方の耳に取り掛かられて、これまでの心地よさが相まって
きっと眠ってしまったんだろうな、と

不思議な模様、黒い穴
寝ている間の夢物語のように、目を覚ませばすぅと意識のどこかへと追いやられる

「終わってしもたのどすね、おはようさんどす……」

目を擦り起き上がる、
最初の時より何やら音の聞こえが良い、今なら近く1kmすべての音を聞き分けられそう、
そんな気がした。

耳かき屋、楢狗香 > 「はい、おはようでありんすよ。」

にっこりと微笑んで身体を起こすのを手伝うように、手を添えた。
きっと彼の耳は今すっきりしているだろう。少々すっきりしすぎて違和感を感じるかもしれないし。

こ れ で ふ つ う な の か も し れ な い

                                       ざわ。

「あ。お代はどういたしやしょう。
一応お値段は30分をすこしすぎやしたゆえ…1500円としているのでありんすが。」

ひい、ふう。と計算して値段を言うが。
なにがなんでも徴収したいと言う様子は感じられない。

まあ、少々お待ちを と考える時間を与えるように言い残して、奥の調理場へと引っ込んでいった。

鈴音 春 > きっと
”これで普通”なのだと思う

家の何処かから、……普通だよって声が、聞こえたかもしれない
でも ”何の違和感も 抱かない”

「これやけ聞こえんええ耳にそーじしいやもろたにゃさかい、なんぼやて払えますよ。」

なんて、調子のいいことを。
奥へと引っ込んでいく楢狗香さんへと。

耳かき屋、楢狗香 > 調理場でしゅんしゅんとお湯が沸く音が聞こえる。
古い茶碗はいつの間にか下げられていて、楢狗香は再び最初に出したのと同じお茶を盆に載せて戻ってきた。

お茶菓子にはさくっとしたリーフパイが二枚お皿に乗っている。
変わったのはゆっくりできるようにということなのか、それとも少し涼しくなったからか。

「…どうぞ。
せっかくリラックスしたんでありんす、一服してからにしやんせ。
お話もお聞きしたいでありんすから。」

琥珀色の香りの良いお茶を注ぎ、茶菓子と共に差し出し。
彼女自身もリーフパイを口にして、唇に付く小さな砂糖の欠片を舌で舐めとる。


すでに時間がだいぶたっているから、ゆっくりしすぎることはできなさそうだが。
他愛もない話が、しばらく続くのだろう。

穏やかな風のない時間、風鈴の音が また聞こえる。


ちれん。

ご案内:「奇妙な木造家屋」から耳かき屋、楢狗香さんが去りました。
ご案内:「奇妙な木造家屋」から鈴音 春さんが去りました。