2017/10/03 のログ
ご案内:「異邦人街露店通り」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 学園都市の中で最も自由な区域―とまでは言わないまでも、この街には学生街や歓楽街、落第街にすら無い自由で溢れていた。

それは視界に映る雑多な種族であり、行き交う人々の熱気であり、露店に並んだ商品の山であり、その混沌を許容する街の大らかさであったかもしれない。

良く言えば賑やかで朗らか。悪く言えば喧騒と無秩序。
そんな異邦人街の見回りともなれば―

「…これなら、落第街のゴロツキ共と戦争ごっこでもしていた方がマシだな。キャスティングミスも良いところだ…」

普段は畏怖と憎悪の対象である風紀委員の腕章も、この人混みの中では何の意味も成さない。
小柄な己の身体は、行き交う人々(半分以上は人ですらないが)に押し流されない様に道をかき分けるので精一杯だった。

…既に人混みから弾き出され、通りの隅でゲンナリしているのでかき分けていたのは過去形なのだが。

神代理央 > ふと自分の横で商品を広げる露店に視線を移せば、取り扱っているのは異邦人用の装飾品。

首飾りや腕輪、耳飾りなどが雑多に並べられているが、その造りは確かにこれまで見たこともないものだった。
何かの原石を用いているのか、淡く光る石を埋め込んだ腕輪等、男女問わず人間にも受けそうな一品が並ぶ。値段もお手頃だった。

「…成る程。妙に制服姿の連中を見かけると思ったが…」

大通りに比べると、自分とそう歳が変わらない様に見える学生達――殆どが男子であるが――の姿をよく見かける。
意中の異性へ贈り物でもするのか、それとも逢引の下見にでも訪れたのか。

それなりに青春を謳歌している学生達を微笑ましい思いで見ていたが、自分もその一員である事に思い至って何とも複雑な表情を浮かべる。

そこまで老け込んだつもりはなかったのだが…疲れが溜まっているのだろうか、と溜息を一つ。

ご案内:「異邦人街露店通り」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 「ふぃー、買った買った。
 たまにはパチンコもやってみるもんだ。」

紙袋片手に人混みをするすると泳ぐ様に歩く。
たまには保健室で暇をつぶしてないで外に出るかと向かった先は娯楽街、そこで一山当てたので流れる様にやって来た馴染の異邦人街で買い物。
思った以上に充実してしまったが、たまにはこんな日もあるもんだと歩く道すがらに。

「お、風紀委員か。見回りかい、ごくろーさんだな。」

何やら草臥れた空気を纏った姿を見つけて声を掛ける。
こちとら正真正銘の草臥れたおっさんであるからして。

神代理央 > 溜息ばかりもついていられないが、見回りする程の異常も無い。
後は学生街に戻りながらゆっくり見回って終わろうか、と思った矢先。

此方に投げかけられた声に怪訝そうに視線を向ければ、人混みの中でも一際目立つ赤褐色の長髪が目に入った。

風紀委員ではなくとも、彼の名を知らぬ生徒はそうそういないだろう。多くの生徒から人望厚い彼の名は――

「今日は、暁先生。先生は此方でお買い物ですか?」

作り慣れた《教師向け》の笑みと共に一礼。
彼の言葉通り風紀委員としての巡回中であると頷きつつ、僅かに首を傾げて尋ねる。

暁 名無 > なんか今すっごい人生のハードルを上げられたようなモノローグが聞こえた気がした。
いやきっと気のせいだろう、多分パチンコ屋の騒音が耳の奥に残ってるんだ。多分そう。きっとそう。

「おう、パチンコで大勝ちしてな。
 前々から買っときたいモノがあったのを思い出して来たんだよ。あとタバコ。」

我ながら生徒に対してもうちょっと取り繕えなかったのかと思うほどの正直さだった。
いやまあ、取り繕うから襤褸が出る訳で、最初からボロボロなら何も怖くない。そうだろ。

神代理央 > 「…欲しいものがあるなら、計画的に貯金して購入すべきだと思いますよ?別に酒やギャンブルが悪いとは言いませんが」

学生なら兎も角、教師である彼がパチンコを楽しむのは全く問題無い…のだが、流石に風紀委員としては苦笑いを浮かべるしかない。

「別に行くなとは言いませんから、せめて生徒の前では勝っただの負けただの射幸心を煽るような事は言わないでくださいね?……というか、言ってないですよね?」

生徒からの評価は「親しみやすい」「動植物に関する造詣が非常に深い」「やたら難しそうな本を読んでいる」等々、概ね好印象、高評価なものが多い。

だからこそ、生徒達の模範として行動して欲しいのだが…その点については、データ不足である為ちょっと自信が無くなってきた。

暁 名無 > 「んまあ、お前さんの言う通りなのは俺も重々わかってはいるんだがな……?」

貯金というものは貯まる余裕があるから貯まるもので。
貯まらないというのは、つまりまあ、何だ、貯金に回る余裕さえ無い、ということだ。

「当たり前だ、流石に学校じゃ話に出さねえよ。
 そもそも今日行ったのだって気まぐれで、あんまりああいうとこは行かねえからな。
 ………元手が無くて。」

なーんか言ってて悲しくなってきたぞぅ!
それにどうにも背筋が薄ら寒くなるデータが列挙されてる気がする。気のせいだと信じたいけども。

「んんっ。 まあそれよりもだ、どうだ、警邏の方は。
 特に問題ないか?」

神代理央 > 「…そんなに日頃散財なさっているのですか?金遣いが荒いイメージは無かったのですが…」

研究費用か何かが彼の懐を痛めているのだろうか。
彼の濁した様な物言いに不思議そうな視線を向ける。

「それなら安心しました。暁先生は生徒との交友関係が非常に良好だと伺っております。風紀委員としては、先生が分別ある大人である事をとても喜ばしく思います」

何だか自分の物言いが小言大好きな保護者みたいになってしまった。
些か堅苦しすぎるかとちょっと悩みながらの営業スマイル。
彼が零した元手の無さについては、敢えて触れずに置いた。敢えて。

「ええ。全くもって問題ありません。これくらい平和なら、私の様な新米風紀委員でも問題なく巡回が行えます。何処もそうだったら良いのですが…」

実際、警邏そのものには全く問題が無い。
場所が場所故に喧嘩や小競り合いくらいはあるかと思ったが、今日はハズレを引いたらしい。

自分の異能や委員会での活動実績を彼が知っているかは分からないが、取り敢えずは新入生として謙遜した物言いをしておく。

暁 名無 > 「いやあ、そんなつもり無かったんだけどな?
 一度月の家計簿でもつけてみっかな……」

非常にバツが悪い気がして頭を掻く。
パチンコの話よりよっぽど生徒にしちゃいけない類の話じゃないかコレ……?

「はっは、どっから聞いたのか知らんが、そりゃ少し買い被り過ぎってもんだ。」

本当にどっから出て来た評価なんだろうな。
実際のところセクハラ教師としての悪名の方が広まってる気がするんだがね……まあ、いいか。いいのか?

「まあ、平和な状態が解ってればこそ、異常にも目敏く気付けるってもんだ。
 息抜きのつもりで、でも気は緩めず職務を全うするこった。
 地の利を得るために街の地図を頭の中に叩き込んどくってのも良いな。
 この辺りは地味に建物が建ち替わったりの多い区画でもあるから。」

紙の地図では存在しなかった建物、横道、そんなものが日夜増えたり減ったりする。
街もある意味ではそれ全体が一つの生き物として成立してるようなものだ。特にここ、異邦人街では。

神代理央 > 「収入と支出の管理は生活の質の向上にも繋がります。生徒達の良い手本にもなりますし、是非つけてみるべきかと」

因みに、自分は家計簿どころか出費も収入も把握していない。口座には常に有り余る程金が振り込まれているし。
盛大な「お前が言うな」ではあるのだが、物分りの良い生徒を演じる為にニッコリと笑みを浮かべて見せるだろう。

「先生の講義は評判もいいですし、態々聞きまわらずとも良い噂というものは耳に入るものです。…尤も、悪い噂は良い噂よりも早く出回りますので、其処には十分留意して頂きたいものですが」

一応、セクハラについての噂も風紀委員会には入っていますよとそれとなくアピール。
校内風紀を取り締まる先輩方に、眼前の教師が注意される事は流石に無いとは思うが、伝えるだけならタダだろうし。

「確かに、取り締まる者として地理を把握する事は非常に重要かつ必要な事です。
流石に全てを覚えきる自信はありませんが…大通りとそこから分岐する細かな通り程度は、端末を開かずとも把握出来る様にしたいと思っています」

落第街やスラムでは障害物も建物も気前良く吹き飛ばせば良かったが、此の場所ではそうもいかない。
彼の言う通り、地理を把握しておくことは重要だろう。
演技では無い、真面目な表情を浮かべて彼の言葉に深く頷いた。

暁 名無 > 「は、はーい……」

生徒の一人に毎日の様に昼食の弁当を作って貰っているという現実に勝る生活の質とは何か。
そんな事をぼんやり考えつつ、それでも一応家計簿は付けておこうと決意する俺である。
いや、別に金持ちになりたいとかいうわけではないから、あくまで自分の金遣いを確認するためだけども。

「あー、うん。良かった。ちゃんとそっち方面も広まってんのな。
 ちょっと安心したわ。情報統制でも掛かってんのかと思った。」

俺みたいな一介の教員の情報を統制して何になるっていうのか真剣に考える所だった。
まあ、本格的にヤバい事はとことんバレずにやれる自信はあるし、巷に出回ってる悪い噂くらいなら気にしなくても大丈夫だろう。
生徒の親の耳に入った場合がちょっと怖いけど。

「流石に目を瞑って走り抜けるくらいの事までは要求しねえからさ。
 ま、根を詰めない程度に頑張ったらいいさ。
 それとまあ、ここの風紀や公安は忘れがちだけど、」

んー、と俺は言葉を選んで秋空に目を向ける。
穏やかに雲が流れる様は、島の何処から見上げてもあんまり変わらない。

「風紀委員だろうと公安委員だろうと、
 お前らは警察でも軍隊でもない、あくまで『それっぽい役割が与えられてる』ってだけの『学生』だ。
 それを忘れんなよ。今じゃなきゃやれないような事は、まだまだいっぱいあるんだからな。
 
 ……と、どうにも教師なんかやってると説教臭くなって厭だねえ。
 そんじゃ邪魔しちゃ悪いし、そろそろ俺ぁ帰るかな。」