2015/06/25 のログ
ご案内:「宗教施設群」に自販機さんが現れました。
自販機 > (生きているのなら、神様にだって売りつけてみせる)

「ブーン」

(などと自販機が思うわけも無かった。キリストのようでキリストではない別の世界の宗教を祀った施設の中庭にそれはあった。商品の模型があるべき場所になにもない自販機である。「最高だぜ」「俺の尻を舐めろ」などと意味不明な落書きが記されている)

「ブーン」

(施設は無人に近い。低音を唸らせて販売行為を続ける)

ご案内:「宗教施設群」にシン・アルバートさんが現れました。
自販機 > (例によって猫が足元に擦り寄ってきた)

「ブーン」

(失せろ害獣が。自販機はそんなことを――言うわけがないのだ。自動販売機に何を期待しているのか)

シン・アルバート > 「………流石に真夜中にこんな所に人が居るわけも無し…」
「……考え事をし過ぎて異邦人街の方まで来てしまった、だろうか」

そんなことをぼやきつつ、中庭を覗いた。





「………可笑しい。」
「このような施設の中庭に「自動販売機」があるという記憶が己れには無いのだが」
中庭で、光を放つオブジェ。
それは宗教的なものでも何でも無く、自販機だったのだから。
……なんやこれ。

自販機 > (逆に考えるのだ。なぜ宗教施設に自動販売機がないのか。きっとお偉いさんが気を利かせてくれたに違いない。とは思ってくれない男があらわれた。)

「ブーン」

(どうした? 購入しないのか? 自動販売機はひたすら販売と言う行為にふけっている。裏を覗き込めばわかるかもしれないが電源コードが付いていない。ようは自力で動いている)

シン・アルバート > 「……………」
ぐるりと自販機の周囲を見回してみる。

「………異世界の技術なのだろうか」
「…珍妙だな……」
とりあえず、何かあるのだろうか、と、眺める。

……なんとなく、碌な物が置いて無さそうな気配がしているが、
気のせいだと信じる所だろうが、この男には残念ながらそこまで気が回らなかった。

自販機 > (お金を入れる穴が開いている。それはきっと日本円かもしれないし、男の知る通貨かもしれない。あなたは買ってもいいし、買わなくてもいい)

「ブーン」

(特にセリフはないです)

シン・アルバート > 「……?」
少なくとも男の知る通貨が2種類書かれていた気がする。

「何故、日本円と、ドルが併記されているんだ…?」
財布を開く。申し訳程度のドル(アメリカ)と、日本円。
最近は後者でしか生活していない。
というより、日本でドルにも対応してるのか、とか変な感心すらする。

「己れには為替など分からんが、なんとか、……なるのか?」
とりあえず、1000円を入れてみる。
お金はちゃんと後ろ盾があるから苦労し過ぎない程度、にはあるのだが……
問題は、金額が分からないので適当に入れざるを得ないことぐらいか。

自販機 > (実際のところ見るものの目によって通貨の種別が変動したりするらしいが男の知ることではあるまい。
 1000円を差し込まれると自販機ががたがたと動き始めるだろう。5秒後、それが吐き出される。
 ずいぶんと古風な瓶飲料。有名な炭酸飲料に似ている。問題があるとすればピカピカと光り輝く液体で満たされていることだろうか。緑色に神々しく光り輝いている。
 「ウィンターワールド」と言う名前がついている。)

「ブーン」

(見るからにヤバそうな飲料。もし成分表示を見たら腰を抜かすかもしれない。
 放射性物質の名前が入っている)

シン・アルバート > 「……………」
たまたま、原材料の部分と、一番最初に目を合わせてしまった。

…………商品の名前を見る。
「……冷戦……?」


なんとなく、出てきた第一声はそれだった。
その声は非常に震えている。
ゆっくりと、男の体勢がへなへな、と下がっていく。
なお、瓶は割られないように、死守されている。

(何故己れはこんな危険物を手にしてしまったのだろう)
(己れが悪いからなのか)
(己れは存在してはいけなかったのだろうか)
(ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい)

その顔は非常に青ざめ、瓶が割れ物であると気づかなければアカンことをやらかしそうだった。
なお、飲料は無情にも光っている。

自販機 > 「ブーン」

(うっかり飲もうものなら何が起こるかはわからない。もしかすると体が肥大化するかもしれない。妙な能力に目覚めるかもしれない。自販機は低音を発し続けるだろう。飲み物は相変わらず光り続けている)

「ブーン」

(メーカー名は有名な飲料メーカーのものだが、もちろんそんな商品を製造していた記録など無い)

シン・アルバート > なにか、魔が差したのか、
そのチェレンコフ光地味て光っている、飲料を開栓する。

勢いで、呑んだ。

もう、目の前にあるものが
「ほら、コレ飲んで腹決めなよ」
と、ばかりに差し出されたように、見えたのだろうか。

自販機 > (「われは死神なり、世界の破壊者なり」と科学者は語った。
 人類が得たプロメテウスの火炎を宿した飲料を飲むことで何が得られるかはわからない。それは一般的に物質を通過する際にDNA配列に傷をつけて、細胞の復元を不能にあるいはエラー情報として出力するという。)

「ブーン」

(販売元は特に反応を示さないだろう。望もうが望むまいが、対象にものを提供するだけのことだった。
 陽気なBGMでも流れたらよかったものを、機能としてもっていない。
 飲んで何が起こるかは関知したことではないのだ)

シン・アルバート > ……彼自身は、何も起きなかった。
なにか起きたのは……彼の「足元」の方だった。

突然足元からなにか黒いものが生えて
彼の頭を強打していった。

「ぶへらっ!?」
強打され、飲みかけの飲料ごと、地面に瓶が落下した。
虚しく液体が輝いている……


……なお、その黒いものは何故か飲み物と同じようにキラキラ輝いていたという……。

自販機 > (―――ズッ)

(瞬間的に自販機が瞬間移動に等しい速度で駆動する。物理法則など知ったことではないといったように。男が黒い何かに飲み込まれようとも知ったことではなかった。数秒と足らず姿は消えて残されたのはガイガーカウンターをキチキチと鳴らすであろう瓶と黒い影か)

ご案内:「宗教施設群」から自販機さんが去りました。
シン・アルバート > 感情的に沈んでいたはずが。
現在は黒い影によって「物理的」に沈んでいる。

至近距離にはガイガーカウンターを鳴らしそうな液体の入った瓶。
特に彼自身に別状は無かったようだが、
足元から生えてきた何かはキラキラと光っている。
まるで主人に対して「立てよ」と、言わんばかりに。

……実際はそんなことは全くないのだが。

シン・アルバート > 一向に立ちもせず、放心している主人を見かねたのか、
影はずるずると彼を引っ張っていった。
キラキラと光ったまま。


……翌日。彼は何故か寮で目を覚ます。

ただ、1つ言えることがあるならば、
彼の1000円を使った買い物は碌な結果を産まなかった、ということである。

―自分が買ってしまった飲料が原因で騒ぎが起きて、彼も出頭する羽目になったからである。
完全に別の話だが。

ご案内:「宗教施設群」からシン・アルバートさんが去りました。
ご案内:「打ち捨てられた祠」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 橙色のボディスーツに身を包んだ少女――畝傍はまたしても、この祠を訪れていた。
今回の目的は、彼女のただ一人の友人との待ち合わせではない。
その友人にして、指名手配犯――石蒜を追っている風紀委員に出会え次第提供するための資料として、この祠の写真を撮っておくことだった。
畝傍は携帯端末を取り出し、まずは祠の柱にある「鳴羅  火 怖」の文字を撮影する。
その後祠の中に立ち入り、翼と燃えるような三眼、三本の脚を持つ禍々しい神像を写真に収めた後、畝傍は一人考える。
「……ボクがいなくなったら、シーシュアンは……」
自らの身を投げ出して『生きている炎』を呼び出すことが、本当に石蒜にとっての幸福なのであろうか?
畝傍の決意は、常世公園で出会ったあの忍者の少年の言葉によって、次第に揺らぎ始めていた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 『生きている炎』を呼び出す呪文はすでに手に入れた。しかし、それはあくまで最後の手段だ。
今はできる限りのことをするしかない。風紀委員からも、かつての石蒜――『サヤ』の情報を聞き出してみる必要がある。
そして、今しがた撮った写真を提供する。それが今の自分にできることだと、畝傍は考えていた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 例えそれが、ただ一人の親友を裏切るに等しい行為だとしても、畝傍にそれをしないという選択肢はなかった。
彼女をこのままにしていては、いずれ取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。
畝傍にとって考えうる最悪の結末だけは、絶対に――避けねばならなかった。
「……ごめんね。シーシュアン」
畝傍は自らの他に誰もいない祠で人知れず涙を零し、拳を握り締め、呟く。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ボクは……」
それ以上、言葉は続かなかった。
涙で視界はぼやけ、ただただ息が詰まりそうになるばかりであった。
畝傍は俯いたまま重い足取りで祠を後にし、『サヤ』を知る風紀委員を探しに向かった――

ご案内:「打ち捨てられた祠」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。