2015/07/01 のログ
ご案内:「破壊された祠」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > ふりしきる雨の中「はぁ……はぁ……。」
漆黒と紅の巫女服に身を包んだ少女が、刀を手に立っている。全身に銃槍や切り傷を負っているが、出血は一切ない。
周囲には、風紀委員の制服を着た人間が数人倒れている。
石畳の上を血が混じった雨が流れている。

石蒜 > 「はぁ……はぁ……」私の中のサヤが、また暴れるようになってきた。トラウマを想起させればしばらくは鎮まるが、またすぐ暴れて、私の邪魔をする。
倒れている風紀委員も、気絶してはいるが全員が五体満足で、十分な治療を受ければすぐに動けるようになるだろう。
もう、致命傷を誰かに与えることすらできなくなっていた。ここぞいうタイミングでサヤが動きを阻害し、不必要な傷も受けている。
痛みは快楽だが、邪魔をされるのは不愉快だった。

石蒜 > 「ねぇ。」姿を隠して様子を伺っている連中に向かって、声をかける。
「私は、もう疲れました。そいつらを病院にでも連れて行って下さい。出血はしていますが、全員まだ生きています。」
そう言って、もう攻撃する意志がないことを示すために、離れる。
恐る恐るといった様子で隠れていた風紀委員が出てきた、負傷者を担いでいった。
しかしもう連絡が行っているだろう、ここに留まるのは危険だ。

石蒜 > だが、何故かここを動きたくなかった。いや、理由はわかっている。私は揺れている、悩んでいるのだ。
「…………。」あの時、風間蒼介の血を媒介に伝えられた情報。
つまり、彼らが自分を、歪み果てた悪しき存在である石蒜を助けたいと思っていることを、私は受け取ってしまった。
そして多分、それは真実なのだ。
「私を受け入れられるのは、ご主人様だけ……。」言い聞かせるように呟く、だがそれも雨音に消え、自分の耳にすら届かなかった。

石蒜 > 冷たい雨の中、石畳の上に寝転ぶ。雨雲に覆われた空に、星は見えなかった。星々の間から見つめる名状しがたい目も、見ることが出来ない。
ご主人様の残り香も、雨の匂いにかき消されている。
「…………。」目を閉じて雨音に耳を澄ます。
体温がどんどん下がっていくのがわかる、自分が雨と一緒になって溶けていくようで、昔から雨にあたるのは好きだった。

石蒜 > 「ともだち……トモダチ、か……。」私は畝傍にとって一番、そう誓わせたのは私だ。軽い気持ちだった、同類に会えて嬉しくなって、愛されることを楽しみたかっただけだった。
それが、こんなに苦しくなるなんて……。

雨に混じって、目尻に熱いものを感じる。
なんだろう、これ。
指で触って、自分が泣いていることに気づいた。
「あれ、なんで……私……。」

石蒜 > わかっている、サヤに嫉妬しているのだ、私は。
私がいくら否定しても、手を跳ね除けても、何度でもサヤを助けるために手を差し伸べてくれる人がいる。
私には居なかった、私にはご主人様だけだ。そのご主人様だって、その方が楽しいと思ったら私を見殺しにするだろう。
でも、彼らは私も救いたいと言ってくれた、私も友達だと……。
なら、もう意地を張らなくていいんだろうか。
そこまで思考が及んだところで……。

石蒜 > 私の中の混沌が囁く。
『また揺れているね、悪い子だ。お仕置きが必要だな。』
ああ、違うんです、違う!やめてください、私はただ!

直後、全身を貫く激痛が走った。
「ぐっ……!!!あ、あああぁぁぁぁ!!!」異能を使っても快感に変換出来ない、純粋な痛みとして喜ぶことも出来ない。
存在をバラバラにされるような、根源を揺さぶられるような痛みに、ただ泣き叫ぶ。

石蒜 > 「やめて、やめてください……!!ご主人様……!気の、迷いで、す……!!私に、は……ご主人様だけ……!!」地面に這いつくばり、赦しを乞う。
「ぎっ……あぐっ……~~~!!!」どれほど時間が経ったのか、たった数秒だったのかもしれないが、数時間にも感じられた。ようやく、痛みが止む。
「はぁ………はぁ…………。う、ぐすっ………。」雨に打たれながら、涙が止まらない。私にはご主人様しかいない、そうじゃなきゃ駄目なんだ。
それ以外を選べば、どんな仕打ちを受けるか、考えるのも恐ろしい。
「アハ、アハハハハ……ハハハハハ。」なんて惨めなんだろう、本当に愚かだったのは私だった。今更気付くなんて、遅すぎた。
笑いも涙も、止まらない。もう自分が何を考えているのかもわからなくなって、ずっと泣き笑いを続けていた。

ご案内:「破壊された祠」から石蒜さんが去りました。
ご案内:「礼拝堂」にウェインライトさんが現れました。
ウェインライト > 無人の礼拝堂。静謐な空気を保ったその場所に足を踏み入れる長躯。

燃え上がるような金の髪/融かし尽くすような赤い瞳/蕩けさすような美貌

絶世とも称され、ともすれば威圧的とされるウェインライトの風貌は、
この空間に居るだけである種背徳的/冒涜的と言えた。

「興味深いな」

立ち入り、首を巡らせ、視線を送る。
随所に見られる礼拝堂の意匠は、ウェインライトの世界において隆盛を誇った宗教施設に酷似している。

異なる世界からやってきたウェインライトを阻む場所ではないが、
多少の居心地の悪さは感じていた。

「ふふ。どこの世界でも神は僕の美しさに嫉妬を覚えるらしい」

己のあまりの美しさに戦慄を覚えながら、
最も優美で最も華麗な吸血鬼は大きく身体を震わせる。

ウェインライト > 踵を鳴らし礼拝堂の奥へと踏み込んでいく。

ステンドグラスから差し込む光は白い肌を鮮やかに染め上げた。
それはウェインライトの異形めいた美しさを浮き彫りにする結果となるだろう。

挑戦的な笑みを浮かべ、まるでこの場の神であるかのように振る舞う。
そして、諸手を広げ歌うように正道を行くのだ。

『この世の国は、我らが主と彼のもの。遍く未来までかの御主は君臨するだろう』

かつてどこかで聞いた歌を口ずさみながらウェインライトは歩んだ。

たどり着いた先で、かつてメシアを磔にした十字架を背に。

『ハレルヤ!』

遍く世界に響き渡るような歌声。清らかに澄んだソプラノで。
艶やかな笑みを浮かべながら歌うその様は、果たしてこの場にふさわしいのか。

静まり返る礼拝堂。つまらなそうに、講壇に腰掛ける。

「ふむ。やはり神の美しさではこの僕には太刀打ちできそうもないね」

いたずらっ子のように唇を舌で濡らすと、足をぷらぷらと揺らした。

ウェインライト > ここはどうやら丹念に整備された場所らしい。
こうして講壇に腰掛けても埃ひとつつきはしない。

美。
この神への信仰はまさしく本物だ。
ウェインライトの美しさには劣るであろうが、
この神もまた美しさを持つのだろう。

「エクセレント……」

その賛美は、ここを清掃する信仰者に向けてのものでもあり、
その信仰を獲得するに至った神への賛美でもあった。

ひとまず講壇から身体をおろして、

「あ」

綺麗に磨かれた床に足を滑らせた。

#死因・磨きぬかれた信仰心

ウェインライト > ステンドグラスによって美しく照らしだされる美貌の死体。
それは退廃的な芸術を思わせる。
一部モザイクかかってるが気にしない。

ウェインライトの持つ"狂い時計"は良い子も安心の全年齢仕様。
美しくないものはひとまず見えない。

モザイクがかった赤色が、光すらも反射するような床に広がっていく――。

ウェインライト > これを眺めるものが居るならば、その意識の間隙を突くように死体が消える。

いつの間にか消えていて/まるで最初からそこになかったかのように。

赤の痕跡すらも消え去り、美しく磨かれた石材だけが残っている。

だが午睡の夢の如きそのまほろばは現実だ。

礼拝堂に響き渡る調和の音。
十字架の横、誂えるように敷設されたパイプオルガンが礼拝堂の空気を震わせる。

オルガンにかけられた楽譜。賛美歌312番を眺めながら、しなやかな指が踊っていた。

ウェインライト > 芸術とは、その者の魂とも言える。
美しき芸術とは表現者の魂の輝きに他ならない。

美を追求する賛美者は楽譜を捲り、それを心に焼き付けながら演奏を続けていく。
神を讃えるための曲。
そこにどんな思いを描いたかを想像しながら己の美を込めるウェインライト。

己が最も美しいという自覚。
それは決して、他が醜いという認識ではない。

ウェインライトにとって、美を愛でることこそが美しい在り方、美学。

他の神を賛美することはなんら痛苦ではない。
己が最も美しいことは世界の真理だが、この神が美しいこともまた是。
讃えることになんの躊躇があろうか。いや、ない。

――美しい反語。

ご案内:「礼拝堂」にエルピスさんが現れました。
ご案内:「礼拝堂」にアルスマグナさんが現れました。
エルピス >  
見回り中、誰も居ないはずの礼拝堂より美しい音色が聞こえる。
何事かと思い、そっと歩きながら近付いた。そして――


「――ぁ」

音楽を奏でるウェインライトを目指した。
美しさに見惚れているのか、その場から動かない。

アルスマグナ > (その日異邦人街を所要でうろついていたアルスマグナは
 たまたま通りかかったところで礼拝堂から奏でられる旋律を耳にする。

 普段ならそのまま素通りするところだが、あまりにその演奏が美しかったためちょっと好奇心を刺激された。
 はいごめんなすってごめんなすって、そうやって誰にでも無く抜き足差し足忍び足で礼拝堂に入り込むと

 そこにはオルガンを弾く美しき吸血鬼とそれに聞き入る聴衆の姿。
 ああ、ハレルヤ――!)

アルスマグナ > (あまりの美しさにいかな美に疎いアルスマグナとてその光景に目を奪われざるを得なかった。
 それは近くにいる少女も同じ思いだったのだろう。

 今ここで何か物音を立てて演奏を中断させるのは美の神を激怒させるような暴虐極まりない行為。
 そう判断すると、慎重に慎重に音も立てずにとりあえず後ろの長椅子にそっと腰掛ける。

 ああ、美しい……――!何故かは分からないが美の説得力を感じまくるっ!)

ウェインライト > 魔眼、魔声。魅了の力を用いずとも、ただ相手を蕩けさせるほどの美しさがあった。
死に続け、モザイクを晒すウェインライト。
しかしかつて学園の多くの生徒を虜とした吸血鬼に他ならない。

ひとしきりの演奏を終え、満足げに紅潮した唇に指を這わせる。
歓喜に震える肌には、ほのかに汗が浮き出ていた。

聴衆らには気づいている。しかし、誰に見られようと己は変えない。
だからこそ、演奏し抜いた末にゆっくりと、身体ごと振り向いた。

「おや」

赤い瞳が、欠け月のように細められた。
うち一人は見覚えのない男であったが、うち一人はあの時、落第街にいた――。

くすりと笑うと、悠然とした仕草で足を組む。

「やあ、諸君。いい日よりだね」

くすぐるような柔らかな声で二人に声をかけた。

エルピス >  
 演奏を聞き終え、数秒遅れて我に返る。
 目を細め、此方を向いたウェインライトに息を呑む。


「あ、えっと、う、うん。良い日和だね。」

 当然、落第街の騒動で見た顔であることも知っているし、
 嘗てのロストサインのメンバーで有ることも識っている。

 だが、それよりも優雅で自然な、あくまで紳士然とした立ち居振る舞いに魅了される。
 敵意や警戒を抱くよりも、ただ『美しい』と思った事だろう。

 もう一人の聴衆には、未だ気付いていないらしい。

アルスマグナ > おおー!ブラボー!!ブラボー!!
いやぁ、おっさん結構な年数生きてきたけどまっさか
こんな所でこれ程の名演奏聞けると思わなかったわ~!!
いやぁ、すごいなぁ~!

(惜しみのない賛辞の拍手を力強く送りながら、立ち上がってウェインライトの方へと近づく。
 挨拶代わりの握手のつもりかさっと気前よく右手を差し出して、曇り無く笑いかけた。)

俺はアルスマグナ。学園の考古学教師でね。
それで稀代のオルガニスト殿のお名前は?

それからそっちのナイスな女の子もせっかくだからおじさんに、お名前教えてもらえない?

(振り向いて軽くエルピスにウィンク。)

ウェインライト > ウェインライトはどのような状況であっても自分を崩さない。
己が美しいことは自覚している。アルスマグナの賛美の声も、当然のように受け止めるだろう。

だが当然のように受け止めることと喜ぶことはまた別次元。

喝采を受ければ、己を抱きしめるかのようにしなを作る。
突如響いた拍手やらに驚いて、ちょっと魂抜けかけたのは秘密である。
これが初めての経験であったなら死んでいた。

美観を崩さぬようせり上がった血を外に出さずに飲み込んだ。

「なに、このウェインライトは美を追求することにかけては一級品さ、ミスターアルスマグナ」

握手には応じる。興奮している故か、やや熱い体温が教師の手にかえるだろう。

「僕は最も優雅にして最も華麗なウェインライトさ。よろしく」

言葉を返してから、ゆっくりとエルピスへも視線を向ける。
その言葉は恐らく見とれる彼、あるいは彼女に向けたものでもあるのだろう。

エルピス > 「――あっ、う、うん。
 ボクはエルピスって言うよ。アルスマグナさん。此処には見回りで来たんだけど――」

 アルスマグナへ声を掛けられた所で、ようやく頭が回り、気付くか。ぺこりと頭を下げて、名乗りを返した。

「……うん、ウェインライトさん。だよね。
 と、とりあえず……演奏も、綺麗だったよ。」

 目の前のロストサイン、但しエルピスにとっては――に対し、どう声を掛けるべきか。
 考えた末、取り敢えずは無難に感想を告げるだろう。

アルスマグナ > (ウェインライトが死亡一歩手前だったことなど露ほどにも気づかず
 握手を交わしその体温が快いものであることを感じてくったくのない笑みを浮かべる。)

OK、ミスタ・ウェインライト。よろしくな。
ふふ、自称するだけはあるほど確かに美人で気品があるな。
俺の嫁と並ぶほどのいい……いい男?女?どっちよ?

(その中性的な容姿からは判別しづらかったらしい。)

おう、エルピスちゃんね。よろしくよろしく。
何、見回り?女の子が一人で?迷子になったりしない?大丈夫?

(エルピスにもちょっと目線を合わせ屈んで同じように右手を差し出す。)

ウェインライト > 「なるほど」

エルピスの姿を見つめながら、指を鳴らす。
ウェインライトの瞳は、あらゆる賛美のために研ぎ澄まされた審美眼。
その姿から感じ取った魂の色は――。

「そちらもよろしく、"ミスター"エルピス」

珍しいケース。男の魂に女の身体。
その心の奥に眠る"男"の色を感じ取り、あえてウェインライトはそう呼称。

「そちらの彼と違って、僕に性というものはないのさ、ミスター。
そこを超越した美しさこそ、僕の在り方でね」

男でもあるし女でもある。
いずれの特徴も持ち合わせているのがウェインライトだ。

魂も/身体も/その在り方も。

いずれも性という概念に縛られはしない。ただ美しさを体現した種族。

「拍手喝采痛み入る。なに、僕の美しさをその調子で讃えてくれたまえ!」

エルピス > 「う、うん。大丈夫。これでも公安委員会だから。えへへ……」

 公安委員の腕章の付いた右手を差し出し、握手する。
 機械化され駆動しているその右手は、ほんのり暖かいかもしれない。

「っ――!?」

 "ミスター"と呼ばれて驚く。
 明らかな動揺を見せた後、落ち着きを取り戻して頷いた。
 魂が男であるからだろう。心なしか嬉しそうだ。

「あ、う、うん。よ、よろしくね。……えっと、
 ウェインライトさんって、嘗て、ロストサインの一員だったんだよね?」

 エルピスにとって彼――ウェインライトは『力が強すぎた存在であった』『ロストサインであった』、
 そして『最初にして最難関とされた者』と聞き及び、印象づけている。
 ――そしてこの眼で見れば今の所、『友の居るロストサインに肩入れ』するだけであり、それ以上のものは見いだせない。
 嘗て力が強すぎる故に被害を出したり、ロストサインとして暴れまわっていたり事は、識っているが。
 狂人――には見えていない。

 故に、戸惑い気味で尋ねた。

アルスマグナ > へぇ、公安委員会の子だったのか。いやぁ女の子の身で平和を守るたぁ感心感心。
ん、ミスター……?ミスター……?
あれ、ちょっと待って。君、もしかして男の子?

(耳ざとくウェインライトの呼びかけを聞いてえっ、と驚いた。
 どう見ても女の子だと思っていたのに、ウェインライトはあっさりと見抜いたようだ。
 美人とは真理であり、美とは正義なのか、超越者なのか……?)

ふぅむ、性別がないねぇ。じゃあさしずめ性別・美人ってところかな。
おっと、確かにあんたの美は認めざるをえないさ。
だがな、俺が嫁にかける愛はあんたの美すら超越する。
悪いがこれ以上褒めちまったら、嫁が嫉妬しちまうから勘弁な!

(冗談のように笑って、惚気けた。
 エルピスが言った「ロストサインの一員」という言葉はしっかりと耳に入るも
 それ自体について自分はあまり詳しい事情を把握していない。
 とりあえずその場を見守ることにして口出しはせず、聞きに徹する。)

ウェインライト > 「性別・美人。なるほど、悪くない表現だね。ミスター」

アルスマグナとエルピスの動揺。
それには余裕のある笑みだけを返す。

真実を追求するつもりもない。ウェインライトは美を愛でる故。

「いや、いいとも。君の美しさはそこにあるのだろうね。
この僕が最も美しいという事実は世界の真理だが、他者の美を否定するつもりはない」

つまり、愛が美よりも重いという美学を否定する舌は持たない。
そこにある美を愛でる。
批評家ではなく賛美者。
それがウェインライトだ。

「そう。僕こそ"ロストサイン"元マスター。
ウェインライト最期にして最強の末裔。
かの眷属において最も優雅で最も華麗な吸血鬼さ」

自信たっぷりに述べた。
まるで歌劇のように朗々と。
自信満々に。
紅い舌が踊る。

二年前に壊滅した違反部活。常世学園を混乱に陥れた組織。
その頂点のひとつ。百の異名を持つ吸血鬼。

それを恥じることはない。それを憂うことはない。それを省みることはない。

ただ、そこに在る。

「君は僕を殺すかい、ミスター」

赤い瞳が、君を見る。

エルピス >  
「『元』だけどね。今はサイボーグ……フルボーグって言うのかな。
 とにかく、そう改造される時に、女性体になったんだ。
 ヘン、だよね。……あっ、アルスマグナおじさんは、ここの学園の教師さん、かな。」
 
 恥ずかしそうに頷いた。
 そうしてから、軽く目を伏せつつ、空気を誤魔化すように聞くだろう。



 そして、『殺すかい』と、問われれば――思案する。
 が、いくら考えても、今の所は訊ねる時に考えた以上は浮かばない。
 彼とボクの背負う肩書故に、大義はある。だが、直接の因縁は無い。
 
 ……彼の事を考えると、不思議と先程の演奏が聞こえたような気がした。単なる、幻聴ではあるものの。

「……分からない。本当は、『捕まえなきゃ』行けないと思うけど……」

アルスマグナ > ほほう、フルボーグ。なかなか男心をくすぐる単語だ。
いやしかし失礼しちゃったね。
おっさん最近の子の事情に疎いから女の子の外側だけみてつい、勘違いしちゃった。めんごめんご。

(頭を掻きながら申し訳無さそうに謝る。
 いやしかし最近の子は性別までも結構変わっちゃうなんて
 男子三日会わざれば刮目して見よとかそーいうやつなのかと内心では感心しきり。)

 ん、おうよ。おじさん一応常世学園の先生。
 考古学他、民俗文化学とか担当してるんだよ。興味あったら講義受けてくれると嬉しいねー。

(そう笑顔で講義へ誘う。
 ウェインライトが他者の美へ寛容であると嬉しそうに微笑し)

おう、他者を否定せずどの美の有り様へも寛大に受け入れる度量があるとはね。
さすが美人は正義ってところだな。
あ、ついでに俺の嫁の写真見る?めっちゃ可愛いよ?

(嬉々として懐に手を伸ばし写真を取り出そうとする。自慢したいらしい。
 が、『殺すかい』という問いに緊張が走る。
 詳しい事情はよくわからないが、この二人はなにか複雑な、敵対関係にあるというのだろうか?

 『捕まえなきゃ』というのも穏便ではない。
 エルピスとウェインライトを交互に見るとこのおっさんは慌てて二人の間に割って入った。手を振り回して制止のポーズを取る。)

ま、待て待て待て!ちょっと待て!
殺すとか捕まえなきゃとかちょっとおじさんとしては聞き捨てならないんだけど……
何、お二人はそういう関係?

ウェインライト > 「サイボーグ。フルボーグ。機械仕掛けの身体のことだね。
僕の世界には無かったが、これもひとつの到達点であると思うと小気味いい」

こちらの世間の常識というものには疎いウェインライト。
かつて見たこともあったが、こうしてゆっくりと見据える機会は貴重だ。

民俗文化や考古学を教えているという教師の言葉。
興味がないわけではない。

「民俗文化学か。今度、試しは顔を出させてもらおうかな」

彼の分野と美は切っても切れない間柄だ。
こと、己の美を賛美する彼の授業がどういうものかという点でも興味は尽きない。

「正義ではないさ。僕はただ己の美学に徹するだけ――」

彼の言葉に答えながらオルガンに背をもたれる。
片腕を伸ばし、指をまるで誘うように動かした。

「だからこそ衝突することもある、ということさ」

ウェインライトはそのまま笑う。
身体を丸め、足を抱くように。

戦う意志も。逃げる意志もない。
ただ彼らを見据えるだけだ。

「分からないならそれでもいいのだろうさ。
君が捕まえようと、殺しにこようと、僕は僕であることを曲げない。
その間に君なりの結論を出し給えよ、ミスター・エルピス」

エルピス >  
 緊迫した空気が奔る直前辺りだろうか。
 小さく首を振り、答えるだろう。

「う、ううん。気にしないで。分かってって方が無茶だし……
 ……そう考えるとあのウェインライトさん、凄いかも。
 うん。考古学他、民俗文化……講義、調べて顔を出してみるね―――」


 ――そして現在、緊迫した空気が走っている。

「――だ、だいじょうぶ。今日は今の所しないから。
 公安委員会としては、思う所があるけど……それに、」

 制止に入ったアルスマグナへ小さく首を振る。
 彼を危険に晒す訳にもいかない。と言う事も大きいだろう。


「……そうする。取り敢えず、今日は何もしないよ。
 でも、どうしてロストサインに入ったの?」

 一応の結論を出して、小さく頷いた。

アルスマグナ > おうおう、二人共ありがと!
あ、ついでに遺跡とか発掘とか興味ない?俺、常世遺跡探索部の顧問もやってるんで良ければそっちも覗いてね。
遺跡はいいぞー!特に海底遺跡とか夏はすっごい涼しいぞー!

(どこに持っていたか自作の部活チラシを二人に配り始める。
 それとウェインライトがさりげなく嫁自慢回避したことを内心舌打ちした。

 とりあえず二人の言葉を吟味し、今すぐ衝突することはないとわかると複雑そうな顔で腕組みをする。)

いや、正義は無くとも美学があって、それを貫き通したいならそりゃ立派な姿勢だし
公安委員としての役目を果たしたいというのならば真面目でいいことだと思うさ。
そのせいで衝突もやむを得ないのはわかっちゃいるがね。
おじさんとしては若い二人がドンパチやるよりゃ、和やかに交流してくれている方が嬉しいんだよ。

(まぁ、拳で語り合うことも必要な場合だってあるのは当然だが。
 とりあえずエルピスの問いの答えを待つ。)

ウェインライト > 「遺跡か! かつての先人が見出した美にはいささか興味があるね?
定命の者が何を是と賛美したのか、という興味は尽きないよ」

艶やかに笑う。
遺跡にも足を運んだことはあるが、流石に発掘はしたことがない。

緊迫に包まれた空気。
若い、という言葉には肩を揺らすだけ。
永くを生きた吸血鬼は、足を抱いて笑みを深くする。

「僕は"来た"だけさ。門の向こうからね。
けれどこの世界は儚くてね。まさか触れようとするだけで壊れてしまうなんて思いもしなかった」

腕を振るだけで建物が崩壊する。
撫でればどんなものも消し飛んだ。

ああ、なんて儚く脆い世界なんだろう。

「僕はただ僕らしく生きていただけ。けれどそれが危険だったのだろうね。
彼らはこの僕を学園から追放しようとした」

そこに怒りはない。悲しみもない。
ただ儚い世界に嘆息した。

「だが美しき僕は己の美学など曲げる気はない。
腕を動かすな。足を動かすな。ただ息だけをしていろ。
さもなくば無人の荒野から動くなと言われて、誰が肯定すると思う?」

朗々と事実を語るだけだ。

「それができないとなれば、彼らは僕を殺そうとした。
そこで、僕の美を認めたのがグランドマスターだというわけだ」

ただ一つの居場所。
彼の美を最初に認めた理解者。
大恩あるグランドマスター。

「だから僕は、君たちと積極的に争うつもりはないよ。
美しき僕はただ美学を追求し生きるだけ。
そちらのミスターも言っていることだしね」

エルピス >  
「遺跡……」
 
 ほわん、とチラシを受け取って考えてみる。
 多少の事では動じない機械の身体は遺跡探索には向いているのかもしれない。

「えっと、公安委員会のお仕事があるから直ぐにはYESって言えないけれど、
 今日はあるからちょっと考えてみるね。この身体なら色々出来る事もあると思うし……」

 内心ではわくわくがわいわいしている。
 でも、試験とか公安のお仕事は意外と多い。どうしようと悩んでいる。

 一通り、ウェインライトの話を聞く。
 語られた事実に、顔を伏せた。

「……そっか。うぅ、ん。
 自分を曲げないって、凄いね。羨ましいな……」
  
 迫害された事には学園側として、負い目を感じる。

 とは言え、彼が好き勝手やった故に追放された、と言う可能性もある。
 これだけで判断するには何とも言い難いが、出来事と彼の思想は真実だろう。

「やっぱりボクも、積極的にたたかう理由はないかも。
 でも、結論を出すのはもうちょっと先にするし、衝突する事もあると思う。
 だから、その時は容赦しないけど……個人としては、宜しくね、ウェインライトさん。」

 言葉と共に表情を緩ませ、右手を差し出すか。 

アルスマグナ > (二人共乗り気そうな感触に改めて顔をほころばせる。
 遺跡探索部の未来は明るそうだ!)

うんうん、楽しいぞー!先人たちの生き抜いた証が残ってるぞー!
エルピスちゃんも、委員会の仕事とかあるから忙しいだろうけど玉の息抜きとかで顔出してくれていいからね。もうぜひぜひ!

返事は後日でもいいぜ。
だいたい平日は休み時間に職員室とかいるし、チラシにメアドあるからそこに連絡でもいいしな。

(ウェインライトの言い分を聞いてぽつりと一言。)

なぁるほど、あんたも”門”から来た客人ってことか。
そりゃまぁ……色々とこの世界に馴染むのも、大変だよな。

(ひとりごとのように呟いてから、コホンと咳払いをし
 片手をひらひらと気が抜けたように閃かせ、ウェインライトに語りかける。)

ん、俺はそのロストなんちゃらとかグランドなんちゃらとか
あんまり良く知らないけど、あんたがあんたとして美学を貫きたいっていうのはよぉく分かった。
そしてそれに対して学園が何をしたかも、あんた側からの言い分として聞かせてもらった。

あんたがこの世界で過ごすのにこの世界は未熟で脆弱だった。
それは不幸な事故だと思う。
あんただって壊したいとは、思ってなかっただろうしな。

ただまぁ、美学を曲げろとかそういうのは言えないけどよ
その儚い世界にもあんたが目を留める美ってやつが色々と転がっているはずなんだよ。
それは本当にもろくて、瞬間瞬間で失われるのかもしれない。
あんたの美しさに耐え切れずに潰れちまう、そんなものかもしれない。

だからまぁ、俺としちゃああんたの美学の中にそんな些細な美も慈しんでくれるようなものを、含んでほしいとは思っているよ。
考古学っていうのはな、先人たちの知識とか知恵とか暮らしとか美とかを学ぶことでこれから先俺達がどう生きるか、っていうのを考えることでもある。
異なるものを理解することで進むこともあるんだ。

あんたもこれから自身の美学とともにもっと多くの美を理解し共存してほしいね。
……なんて、おっさんから言うまでもなくウェインライトくんは理解してるか。
悪いね、柄にもなく説教臭いこと言っちまった!

(照れくさそうに頭を掻いて、今の聞かなかったことにしてねとウィンクを投げる。)

アルスマグナ > (エルピス自身が握手を差し出したことで、
 今この二人に和解の兆しが見えたことを目を細めて見つめる。
 まぁ学生はこうでなくっちゃな、いいもん見たぜなどと思いながら鼻をこすり)

……そいじゃおっさんはそろそろ失礼しますね。
若人同士の、……あ、ウェインライトくんは吸血鬼だから違う?ま、いっか。
若人同士の交流を見れてちょっと元気になっちゃったぜ。
それじゃあまぁまた学校で会いましょ。ごきげんよ~

(片手をズボンのポケットにつっこみ片手をひらひらと二人に振ってそのまま振り向かず礼拝堂の出口へと向かう。)

ウェインライト > 「ミスター・アルスマグナ。君は良い教師だね」

饒舌に語る言葉。そこには確かに美が見えた。

やはりあの時から学園は変わった。そう思える。

「勿論、儚いものが美しくないなんてことが、あるわけがない。
理解したいとも思うよ」

過去を振りかえることのない吸血鬼。
だが、彼があの時あの場所に居たら、どうなっていただろうか。
他愛もない空想をしながら、己の唇に触れた。

悩める公安委員会の彼もまた。
差し出される手をもう一度手に取る。

「もちろん。僕はただ一度を除いて、君たちを敵だと思ったことはない。
君がこの僕と友誼を結びたいというのなら、そこに否はない」

「僕の美は不滅だ。だからこそ遠慮せず。思うままにかかってきたまえ」

片目を閉じる。残った赤がエルピスを見据えた。

握り返すと、思わず口から笑いが漏れた。

「ふふ。アデュー、ミスターアルスマグナ。
次の機会があればまた、この僕の美を讃えに……」

「ではないか。次こそ君の伴侶の写真でも見せてもらうことにしよう」

エルピス > 「う、うんっ。
 次に会えた時か、メールで連絡するねっ!」

 にへら、と微笑んでみせてからウルスマグナを見送った。
 仮に縁が合わず所属しなかったとしても、時折遺跡探索に興じる彼(彼女)の姿は見えるかもしれない。


「うんっ。――戦う理由が出来た時は、遠慮はしないから。
 ウェインライトさんやアルスマグナ先生みたいに、ちゃんとした凄い思想はないけれど、
 それでも精一杯頑張る事ぐらいは、出来るから。」

 小さく頷きながら、手を上下に動かす。
 少しすれば、満足そうに手を話す。

「……あっ、もうこんな時間。ボクもそろそろ行かなきゃ。
 また平和に会えたら、演奏か何か聞かせて欲しいかも。じゃあねっ!」

 やや急ぎ気味なのだろう。
 弾んだ声で身振りでウェインライトに別れのアイサツをした後、
 全身の飛行ユニットを吹かせて、低空を飛び去った。
 一迅の風が吹き抜ければ、彼(彼女)の姿は見えなくなるだろうか。

 

アルスマグナ > (いや、あんたこそ良い学生だよ。学びたい、理解したいと思うからこそ勉学は成り立つし、自身の成長はそこにある。

 なぁんて、素直に言ったら照れくさいのでおっさんはただひらひらしていた手をサムズアップにして答えるのみ。
 男は背中で語るんだよ、言わせるな恥ずかしい。

 飛び去るエルピスにもよく見えるように手を掲げ、
 アルスマグナはクールに去るぜ。)

ご案内:「礼拝堂」からアルスマグナさんが去りました。
ご案内:「礼拝堂」からエルピスさんが去りました。
ウェインライト > 「いいとも。誰しも輝きはあるものだし、僕はそれを否定しない。
だからこそ、君が良しとしたならばその時は全力で来たまえ」

かつての戦いのように。
ウェインライトを一度"殺した"戦い。
あの死線では全てのものが輝いて見えた。

あの魂の輝きは、ウェインライトが最も尊いと感じるもの。
己の美の次に美しいものだと確信したもの。

もしも彼が確信したならばその輝きを見ることができるだろうか。

去りゆく二人を見つめながら、ウェインライトは身体の力を抜いた。

――一陣の風が吹き抜けるのと同時に。

「あ」

バランスの悪い姿勢/もたれた背/背後のパイプオルガン

思わず身体で打鍵する。
大音量で吐き出される不協和音。精巧に計算されつくした反響。
全方位から襲う音の塊に。

ウェインライトはショック死した。

#死因・講壇に腰を下ろした神罰

ご案内:「礼拝堂」からウェインライトさんが去りました。