2015/07/22 のログ
ご案内:「祭羽神社」にリチャード・ピックマンさんが現れました。
■リチャード・ピックマン > 「へぇ、ここが。」噂には聞いていたが、本当にあったのか。
荘厳な筆使いで祭羽神社と書かれた鳥居を前に、女は呟いた。
異様な女であった、身長は2mを超える長身で、頭部には毛髪の代わりにありとあらゆる種類のコードやケーブルがインプラントしてある。
レンズの片方が赤、もう片方が青のゴーグルをはめ、その向こうの視線は伺えない、そして右腕は銀色に光る義腕であった。
■リチャード・ピックマン > 祭羽神(さいばねしん)。科学と魔術、信仰がそれぞれ渾然一体となって発達した世界から、異邦人が持ち込んだ神である。
ご利益として拒絶反応の抑制や、機能不全の予防などがあり、また使い終わったサイバーウェアの供養も行っているとのことだ。
ピックマンは特に神を信じていないが、さりとて真っ向から否定しているわけでもない。
ハッキングが偶発的自体で失敗した時は神々を呪うし、尋常ではない腹痛に悩まされた時は必死に何かに謝る。
つまり一般的な日本人程度に付き合っているというわけだ、だから今日ここに来たのもある種の気まぐれに過ぎない。
■リチャード・ピックマン > ただ何となく、サイバネを使う者として何かしらのご利益があるなら祈ってみよう、程度の気持ちだ。
「鳥居がガンメタリックなのがいいな、風情がある。」軽く指の背で叩く、何なのかは詳しくわからないが、金属製だ。
見れば、内部の建物や装飾はシルエットだけは一般的な日本の神社と似通っているが、ほとんどは金属や強化セラミックなど義肢を構成するのに使われる材質でできている。(人工皮膚で覆われた石灯籠は正直不気味だ)
堂々と参道のど真ん中を通って、まず手水舎に向かう。
■リチャード・ピックマン > 手水舎には普通の湧き水の他に無水エタノールが入った容器もあった。流石サイバネ神社だ、ユーザーへの細やかな心遣いに唸らされる。
ピックマンの右腕は完全防水仕様なので、今回は普通に水で手と口を清めようと柄杓をとって、ぎょっとする。
器部分として使われているのは、水をすくう形になった義手だ。「えー、何これ。なんか他人から水恵んでもらってる感なんだけど。」
サイバネ要素を織り込もうとして無理をしてるように見える、普通の柄杓を使って欲しい。
すくえる水の量も少なくて使いづらい、手間取りながら清める。
■リチャード・ピックマン > 拝殿へ向かいながら他の参拝客を見る。やはりサイバーウェアのユーザーが多い。
だがピックマンのような片腕だけを置換している者より、四本腕であったり、下半身がホバータンクになっているようなヘビーユーザーばかりだ。
「まぁ、がっつり使ってる奴のほうが神に祈ろうってなるのかねぇ。」短パンのポケットに両手を入れて背を丸めて歩く。
賽銭箱もまた、無理にサイバネ要素を入れようとしている、といった代物だった。
賽銭箱から生えたアームが、箱から逸れたり、弾かれた硬貨を掴んで箱の中に落としている。
「なんかすっげぇがめつい神に見えるな……。」誰にも聞こえないよう、小さく呟く、あんまり神社で神を貶すと怖い、だが言わずにはいられなかった。
ご案内:「祭羽神社」に天球儀緋鳥さんが現れました。
■リチャード・ピックマン > とりあえず祈っておこう。願い事は……シェムが喜びそうな面白い腕が見つかりますように、か?
先日公園で出会ったメカフェチの少女が思い浮かんだ。ハッキングが本業だが、それを祈っても管轄外だろう。
ポケットから小銭を一握り取り出して、賽銭箱に放る。いくつか箱に入らない軌道に行ってしまったが、アームが回収してくれた。
2拍2礼で、もっかい2拍だっけか。まぁ適当でいいだろ。隣の六本腕のやつなんかガチガチ鳴らしながら全部の腕合わせてるし。
至極適当な祈りを済ませ、横にどく。
■天球儀緋鳥 > ブロロロ――……
サイバネ技術も珍しくなくなったこの時代。自らの四肢を機械化する人々はまさに科学の恩恵にあずかっていると言える。
だが、いつの時代も信仰とは存在するものであった。いくら科学が発展しようとも、いと高き場所にいる「神」への祈りを捧げるという行為は、消えることがない。
この祭羽神社こそはまさにその表れであろう。義体化した人々が祭羽神へと祈りを捧げていた。
その神社の鳥居の前に、赤いミゼットが停まる。今の時代にオート三輪である。
荷台には異形な機械を積んでいた。
扉の無いミゼットから一人の少女が降り立つ。大きめの帽子をかぶり、軍服めいた服を着ている。
「ほう――“ここ”でも祭羽神を祭っているのだな」
金属でできた鳥居を見上げて少女は呟き、境内へと入っていく。
手水などを済ませて少女は参道を進む。サイバネ技術の恩恵にあずかる者たちとすれ違う。
そして、少女はかなりの高身長の女を発見する。中々異様な見た目――この場所だとさほど異形というわけでもないが――をしている女だった。
「おい、そこの貴様。その様子では義体化しているな? 祭羽神の信仰とは中々殊勝なのだ。いや、それはいい。少し聞きたいことがある」
どう見ても子供のような見た目だが、ひどく傲岸不遜な態度で、頭にコードを埋め込んでいる女に少女は話しかけた。
「この島でサイバネ技術に強い店などはわかるか?」
ご案内:「祭羽神社」からリチャード・ピックマンさんが去りました。
ご案内:「祭羽神社」にリチャード・ピックマンさんが現れました。
■リチャード・ピックマン > 先端科学の社へ響く、レトロなエンジン音に、そちらを振り向く。「ヒュー」今どきオート三輪、随分CD(時代遅れの意)だが、それはそれでクールだ。賞賛の口笛を吹く。
荷台に積んでいるのはよくわからない機械。詳しく調べればわかるかもしれないが、別にそこまでするほど興味は惹かれなかった。
そして中から降りてきた少女、どうみても運転免許を持てる年齢には見えないが、少女型の全身義体に入っているだけかもしれない。この島じゃ外見は何の指標にもならないのだ。
特に関わるつもりはなかったが、向こうから声をかけてきた。まぁこの中じゃ割りと声をかけやすい部類に入るかもしれない。あっちの埋込み型バイザーをした奴はバイザーに『日本語を理解しない』なんて文字を表示しているし。
「あぁん?」貴様、なんて呼ばれたらこちらとしても態度を考えざるを得ない、チンピラめいた声で、眉間にシワを寄せて応じる。
「サイバネに強い店だぁ?教えて俺になんか得があんのか?おい。」
ポケットに手を突っ込みながら歩み寄り、威圧するように見下ろした。
「それにてめぇ、それが人に物を頼む態度かよ。」
■天球儀緋鳥 > 「クックック」
チンピラめいた声で威圧するように見下ろされても、不敵に少女は笑う。
そして、巨大な女を見上げる。二倍とまでは行かなくても、その身長差はかなり大きい。
「得があるに決まっているのだ。我を誰だと思っている? 我こそは――」
バッ、と一歩後ろに下がり懐から天球儀を取り出し、天に掲げる。
「我こそは天球儀緋鳥! この世界、そして天球をも支配する者なのだ!
つまるところ、世界征服なのだ。それに協力させてやろうというのだから、光栄極まりないはずなのだ!」
ハーッハッハと高らかに笑う。
「まあ待て。決してお前にも損にはならん話なのだ。聞け」
とりあえず暑いからあそこのサイバー茶屋「茶壺」に言って話そうと指を挿す。
「頭にそんなケーブルをたくさん挿しているのだ。それなりの理由があると見た。
我は世界征服のために動いている……そのためにサイバネ技術……というより、電脳領域に関する技術が必要なのだ。
我はこの世界に来て日が浅い。ここの電脳関係には疎くてな。それで貴様に聞いたというわけだ。
……興味はないか? 電脳世界の征服だ。そのために、この島のネットワークの中枢の金庫を破る必要がある」
ニッ、と少女は笑って見せる。
■リチャード・ピックマン > 「アー……。」天球儀を掲げ高笑いをし始めた少女に。面倒な奴に絡まれた、という思いを抱く。
参拝客からのお気の毒様という視線が、見なくともわかるほど突き刺さる。
「わかったわかった、だからもう高笑いはやめてくれ、俺まで同類と思われる。」まぁ暇つぶしとして付き合ってやるか、と示されたサイバー茶屋に共に向かう。
サイバー茶屋だけあって店員の制服がエナメル質でテカテカしている、暑そうだ。とりあえずこの時期のオススメの書いてある経口補水液を注文。
くるくるとコードを指に巻きつけながら話を聞く。
「世界征服ねぇ……。まぁ電脳関連なら俺より上の奴は片手の指で足りるぐらいしか居ねぇだろうよ。」顎を撫でてふんぞり返る。ピックマンのハンドルである"食屍鬼"はハッカーとして有名だ、本土のネットワークなら大体のセキュリティは破ってきた。
「ここの中枢とはデカくでたな、今まで誰もたどり着いたことのない難攻不落の要塞だぜ?それに下手に侵入を試みると廃人にされちまうって噂だ、実際俺の知ってる奴が何人か、電脳に潜ったまま今も帰ってこない。それに俺は権力にも金にも興味はない、好きなことだけやって生きてりゃそれで十分だ、持てる以上を求めたら破滅しちまう。」
■天球儀緋鳥 > 「うむうむ、それでよいのだ」
とりあえず話を聞くつもりになったらしい様子に勢いよく頷く。満足げである。
サイバー茶屋「茶壺」内部は和風のようだったが、どこか間違った日本観で溢れていた。
日本語も奇妙なものである。義体を装備する人々に合わせたのであろうか。
少女は店員を呼びつけ、合成食を注文する。
席に座り、足を組んで巨大な女と相対する。
「フフン、なるほど。氷(アイス)か。それも黒い氷(ブラックアイス)のようだな。
怖気づいているのか? そういう難攻不落の城こそ突破してやりたいものなのだ。
というより、だ。別に我もその中身に大した興味があるわけではない」
天球儀を机に置いて、くるくる回しながら言う。
「我は多くの人間の目を我に集めたいのだ。それこそ、我が世界征服。
我が彼の冬寂(ウィンターミュート)にたどり着いたという事実が大事なのだ。
そうすれば我らはまさに電脳世界を掌握したに等しい――違うか?」
つまるところ、「目立ちたい」ということであった。
店員の持ってきた合成食を食べる。店員はお辞儀をして去って行った。
手裏剣型の皿に合成食は乗せられていた。
「別に我は義体というわけでもないのだがな。多少機械工学に覚えがあるだけなのだ。
サイバネ関係の店を探していたのは、そういう場所には“プロ”が来ると思ったからなのだ。
だが、お前は思ったよりやりそうだな。凝り性(アーティスト)にも見えるのだ。
まあ、そういうわけなのだ。適当に腕の立つ奴とともに、この島の偉大なる金庫を破ろうちおうわけだ。
無論、いきなりそんなことをする無鉄砲では我もない。試しに、この島の別のコンピューターに侵入しようと考えているのだ」
■リチャード・ピックマン > 「おう、知ってんじゃん。そうだ、ガッチガチのブラックICEさ。だからあれは……。」少女の口から出てきた用語に、感心した風に同意するが、続いた言葉に、不機嫌そうに机を叩き始める。
「おい、誰が怖気づいたって?ええ?俺がいつ怖気づいたよ、俺ぁな、今準備中だ。ここの中枢は鍵が山盛りの貞操帯履いた抜群の女だ、口説いて股開かせるにゃ手順が要るんだよ。」猥雑な比喩で、自分のそれに挑む者の一人であると告げる。
ギークによくあることだが、過剰なまでのプライドが、容易く隠すべき身分を口走らせる。自分が非合法のハッカーであることを。
「なるほど、お前さんの目的はリスペクトってわけだ、そいつぁ俺も常々欲しいと思ってたもんでな。鍵開けといえばどいつもこいつも"銀の鍵"って奴の名を挙げやがる。冗談じゃねぇ、俺こそが、"食屍鬼"(グール)こそが《電子魔術師》(テクノマンサー)の後継者だってことを知らしめてぇんだ。」ハッカー界隈での伝説の存在、とそれの弟子であるという現役のハッカーの名を出す。
ピックマンがハッカーをやっているのも、緋鳥と同じ目的だ、注目され、賞賛されたい。
「あぁん、義体じゃねぇのか。生身(ウェット)か?この島は生身だってのに年とらねぇ奴が居るからややこしくてしょうがねぇ。」ぼやきながら、合成色と同時にテーブルに置かれた経口補水液を飲む、消毒液臭い点滴のパックから伸びるストローで飲む形だ。味ではなく雰囲気を楽しむ店なのだろう、本当にただの経口補水液だった。
「確かにそういう店にはプロも来る、重要なのは”も”ってとこだ、サイバーデッキのスペック上げてハッカーを気取りたいだけのワナビーの方が多いだろうな。そこへ行くと、俺に声をかけたお前さんは幸運だな。俺は確かに業師(アーティスト)さ。凡百のファイアーウォールなら二秒で開けちまうぜ?」誇らしげに、コードの束を弄くる、そこには実績に裏付けられた確かな自信がかいま見えることだろう。
■天球儀緋鳥 > 「クク……やはりハッカーなのだな。そうだ、我はその“鍵開け”をしようとしている」
相手の言葉から、非合法のハッカーであることを察する。自分から言ってくれたようなものだ。
「我もその準備をしている。さっきも言った通り、ここの電脳については我はよく知らぬのだ。
故に、技術の提供者が必要なのだ。我の世界征服のためのな!」
リスペクトといわれれば、まあそういうことだと少し頬を膨らませて横を向きつつ言う。
「言ってしまえばな、そういうことだ。我の姿を全世界に記憶させる。
それこそが、我が世界征服なのである!
ほう……“銀の鍵”に《電子魔術師》か……なるほど、そう言った凄腕のクラッカーがいるわけなのだな。
この島にも、我より目立っている者たちが多くいる。ロストサインだかフェニーチェだがフルーチェだが知らぬがな。
我はそんな者たちを越えて、全ての瞳を我が元に集めることを目的としている。
貴様と目的は似ていることになるのだ。まあ、我は電脳世界だけではなく、全てを支配するのだがな!」
再びあの高笑いを繰り返す。店の人間の瞳がこちらへと向いた。
「我の体についてはヒミツだ。さして重要なことではないのだ。
我はここで言えば異邦人になる。この世界の人間には少々説明が困難なのだ。
貴様より我は遥かに年上だと思うぞ!」
ぐっ、と小さな胸を張って威張るように。
「なるほど、我が鑑識眼に狂いはなかったということだ。
ならば凝り性(アーティスト)の貴様の力を借りたい。目的としては一致しているはずだ。
貴様の腕前を試すのにも丁度良いだろう。いきなり中枢に入り込むわけにもいかぬから、まずは別の金庫をこじ開けることになるだろうがな」
その自身のほどを見て頷く。
腕は確かのように思える。別に確認などしていないが。
「ならば問おう。貴様の名は? 我は先程名乗った通りだ。
ハッカーならば、本名ではないかもしれんが――何でも良い」
■リチャード・ピックマン > 「だからその高笑いはやめてくれ、お願いだから。」突き刺さる視線に、うんざりしたように額に手をやる。もうしばらくここには来れなさそうだ、割りと気に入ったのに。
そして名を問われれば、ゴーグルを持ち上げ、サイバネ置換された目で、相手を見る。
「俺はリチャード、リチャード・ピックマン。身分は正規の島民だ。ハッカーとしちゃ"食屍鬼"(グール)を名乗ってる、ヤバい話の時はそっちで呼んでくれ、今んとこリチャードとしての経歴はクリーンなんだ。」その経歴も死人のものを乗っ取って改ざんしたものなのだが、そこまでは説明しない。必要もないだろう。
「確かに目的は一致している、俺は電脳で、お前さんは全世界が相手だがな。」欲張りなことだ、とつぶやきながら経口補水液のストローに口をつける。
■天球儀緋鳥 > 「なるほど、リチャードか。“食屍鬼”とはまたたいそうな名前なのだ。“幻夢郷”の人食い鬼か。
わかった、ではそう呼ぼう。リチャード・ピックマン、あるいは“食屍鬼”。
もう一度言っておくのだ。我は天球儀緋鳥。一年だ。一応は学生ということになる。
我の事は好きに呼べ。だが緋鳥ちゃんと呼ぶことだけは許さん」
味気ない合成食を食べ終わり、手裏剣型の皿を掴んでそれをカウンターの方に投げる。
シュパッ。二本の指で、中の板前がそれを軽々と受け止めた――ニンジャだ。
この店ではクローンニンジャが板前をしているのであった。
「我の目的は瞳を我に集めることだけだ。殺人などは犯すつもりはない。それは覚えておいくのだ。
我が世界征服はそのような陳腐な恐怖・暴力によってなされるものではないのだ。
そう、我が目的は世界――やがてはこの天球までをも支配するのだ!!」
そして、懐からスッと紙幣を取り出し、机に置く。二人分だ。
「我は世界征服の準備で忙しい。電脳世界ばかりに集中しているわけにもいかぬのだ。
我が征服するのは電脳世界以外にも、速度、アイドル、料理――様々にある。
それらを全て征服してこそ、世界征服になるのだ。
お前の力は期待しているのだ、“食屍鬼”」
一枚の紙を渡す。電脳領域のある場所のアドレスだ。
「いつでもいるわけではないが、我がいるのは基本的にここだ。天球儀の領域だ。
何かあればここに連絡するのだ。さて、まずは義賊にでもなってやろうかと思う。
この電脳領域にあるドリームランドを攻めてやるのもいいな。
いずれ、互いの腕を確かめ合う場も必要だろう」
立ち上がると、リチャードにそう言って踵を返す。
後ろを向いたまま言葉を続けて。
「ではまた、なのだ。我が世界征服の一助となれることを光栄に思うが良い!
ハーッハッハッハ!!」
店員の板前ニンジャにニッと笑みを浮かべた後、サイバー茶屋「茶壺」から緋鳥は去って行った。
■リチャード・ピックマン > 「ああ、死体漁りでちょいと名を馳せたのさ。」"食屍鬼"の名は、かつて大手銀行の防壁を破る際に、事故死した行員の死体から得た情報を使ったことに由来する。あまり名誉のある名とは言えないが、宝箱を開けるためならなんでもする自分を良く言い表してるとピックマンは感じていた。
ぎゅっと点滴パックを握って、残りの経口補水液を飲み干す。
マイコのような店員、いやマイコを模したアンドロイド店員が、静かにパックを下げた。
「殺しは俺も願い下げだ、リアルで死体食ってるわけでもねぇしな。」精神を没入している相手に攻撃を仕掛ければ、ニューロン網を焼ききって殺すこともできるが、それは美しくない。誰も傷つけずに鮮やかに情報を盗み出すのが理想だ。
「志が高いねお前さんは。」世界征服、魔術や異能で溢れかえり、混迷を極めた時代に、そんな夢物語を豪語出来る相手に、感心とも呆れとも思える視線を送る。
相手が自分の分も払うと、それをチラリと見て、特に反応しなかった。金を払わないで済むならそれでいい、大した値段でもないし。
「じゃあ俺の連絡先も送るよ、2秒もかからん。」コツコツ、とこめかみを叩くと、相手の持っている携帯端末か、それに類する機器に、いつの間にかメールが送られているだろう。名前を聞いて、データベースに侵入してアドレスを手に入れたのだ。どうよ、とでも言うようにニヤリと笑った。
「あー、だからその笑いやめてくれって……。」従ってくれはしないだろうが、うんざりするのでやめてほしい、また店中から見られる。
じゃあな、と力なく手をひらひらとさせて見送った。
緋鳥が立ち去った後に「なんか強いアルコールない?」疲れきった顔で、店員にそう尋ねるピックマンであった。
ご案内:「祭羽神社」から天球儀緋鳥さんが去りました。
ご案内:「祭羽神社」からリチャード・ピックマンさんが去りました。