2015/07/06 のログ
ご案内:「歓楽街・路地」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 夜。歓楽街の路地――弾を抜かれ折り畳まれた上下二連式の散弾銃を抱え、橙色の少女はあてもなく彷徨う。その足取りは重い。
畝傍は苦しんでいた。過去の記憶――彼女が異能に目覚めた『あの日』よりも、さらに前。
某国で身体強化実験を受けた畝傍は、狙撃手として多くの命を奪っていた。
無論、それこそが狙撃手の任務であり、そこに余計な感傷の入れ込む余地はない。
当時の畝傍がそれに対して何の感情も疑問も抱かなかったのも事実だ。だが、今は――。
「…………ボクは、ひとごろしだ」
そんな言葉が、小さく漏れる。

畝傍・クリスタ・ステンデル > しばらく歩いていると、近くに誰も座っていない手頃なベンチを見つけ、腰掛ける。
誰に伝えようとするでもなく、畝傍は一人宙を見上げながら、うわごとのように呟き続ける。
「ボクはひとごろしだ。ヒトを撃った。あのときもたくさん撃って、ころした……。いまでも……」
畝傍は悔やんでいた。友達を救いたいと言いながら、一番救いたいと願っていた少女――石蒜に一度でも銃を向けた、その矛盾。
あの時、畝傍がそうせざるを得なかったのは客観的にみれば確かであろう。
しかし――そのような手段をとることでしか彼女に手を差し伸べられなかった自分自身を、嘆いていた。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「そうだよ。ボクはひとごろしだ……ボクは、ひとごろしだ……だから、ボクは、ボクは……」
自らに言い聞かせるように、ただ繰り返す。
血に塗れた足跡。汚れきった手。
これまでの生涯の中で踏み越え、これからも築き上げてゆくのであろう屍の山への想像が、
畝傍の頭の中で絶え間なく渦巻く。そして、俯き。
「……しあわせになっちゃ、いけないんだ。そう……だよね……」
誰に問うているのか、自分でもわからない。ただ、そんな気がしていた。