2015/07/19 のログ
湖城惣一 >  天ぷらはだいぶ減ってきたが、見える汁の量は半分以下に減っていた。
仕方がない。仕方がないのだ。
 鎮圧できる力。それに対しては決して答えない。
自分の強い弱いを明確に認識してはいない。
己が強者であるという認識はなく、
ただ相対した相手と戦うだけが湖城の役目である。
 しかしながら。
 確かにここは島外よりもともすれば安全……かもしれない。
「島外は未だ門の発生が不安定と聞くからな」
 それに比べれば、こちらは即応できるだけマシだろう、と。

ライガ > あ、こりゃ麺のびたな。天ぷらも汁吸うからなあ。
ライガは静かに察した。
自分のどんぶりは、もう麺がほとんど見えない。
割り箸で中を掬ってみて、麺が一本も見当たらないことを確認すると、
どんぶりをゆっくり傾け、ずず、と鶏白湯を飲む。
暑さで塩分が欲しい今、この味付けはありがたい。
見る見るうちにスープが少なくなっていく。

「そうそう、門に対して即応できるのは利点だよねやっぱ。
何かが流れ着いても瞬時に対応できるからさ。
…僕はそういうのなかったお蔭でこっちの世界に飛ばされた直後は結構死にかけたけど」

矛海 遼 > あぁ無情。蕎麦に合掌である。
前回と比べればまだマシではあるのだが。

「実際、外は外で問題がある物だ。物騒な箱庭だが、この島はこれはこれで平穏だ。」

魑魅魍魎が蔓延る様な場だが、それでも比較的まとまっている所だろう。………多分。

「君はそちら側の者だったのか。大変だったな……。
ふむ、確かに見た事の無い術を扱っていたな………興味深い。」

残った汁に数少なくなった麺を入れ、啜りながら言葉を溢す。
異邦人と言うのはあまり会った事が無かったので、新鮮ではある。

湖城惣一 >  いくら天ぷらがつゆを吸おうと仕方がない。
しかたがないのだ。だからこそ、黙々と、文句も言わず天ぷらを食べる。
 ようやく(天ぷらの)終わりが見えてきた。
たっぷりと咀嚼しながら味わっていく。
「害あるものも、害なきものも。
それなりに上手くやっていけるのがここだろうな」
 実際、島外で現れたものたちはともすれば、生きることすら許されないのではないだろうか。
そんな風にも思うものだが、結局そこまで格別の興味はない。
 異邦人、とはこの世界においてはよく居る類。
人の外見をしているだけで、だいぶ"生きやすい"方だとは思う。
 矛海に喋るを任せ、時折コメントを挟んでは天ぷらを咀嚼する。

矛海 遼 > 「生きやすい世の中になった物だな。本当に。
この島に限るが、な。」

湖城の言葉にふと、生まれて間もない頃を。
幼い頃を思い出す。語るという事も何もなく、唯ひたすら生きる為に足掻いていた。
意味を見つけるために、呪われた体を引きずって肉を喰らい、血を啜るあの日々を。
そう考えれば、言われた通り『生きやすい』世界なのだろう。
最もその事に後悔はないが。

―――――――無いのだが、無意識に、眼から垂れた雫が頬を濡らす。

ライガ > スープを飲み終わり、静かにどんぶりを置く。
惣一の言葉にうなずき。

「それはホント、そう思うよ。
この島じゃ、見た目も関係ないもんね。
多種多様なやつらが集まるけど、みんな、数少ない居場所を守ろうってした結果、平穏が保たれてるんじゃないかな」

楽天的な考えでしかないけど、と誰にともなくつぶやき、小さく笑う。

「ん、予海先生、ネギそんなに辛かった?」

あ、麦茶忘れてた。
氷が半分くらい溶けて薄くなったグラスを手に取る。

湖城惣一 > 「む」
 矛海先生が泣いている。
どうしたらいいか、ふと考えて懐から手ぬぐいを差し出した。
「どうぞ」
 自分には彼の葛藤が分からない故、ただ差し出すだけ。
相手がどう思って、何故泣いたのか。
それこそネギが辛かったぐらいしか思いつかない。
「…………」
 数少ない居場所を守ろうとした結果。
確かにそういうことなのだろう。そこに善悪はなく、
様々な人間が関わってきたのがこの常世島――だと思っている。
そこに優劣はない。

矛海 遼 > 「そう、だな………わさびが遅れて来たと言っておくか。」

無論、嘘である。
痛覚無視【ペインキラー】。生まれ持った呪いの肉体【からだ】である証明の一つである。
それが原因で辛さと言う味は感じられないのだ。
酒に酔っている訳では無いのだが、ふと過去を振り返りこのように涙を流すことが偶にある。
善悪も無く、自身の存在の証明の為に居場所を壊してきた自分が今、このような場で生き続けている事の、その重さが。

静かに手ぬぐいを受け取り雫を拭い去ると普段の無表情な男に戻り、最後の麺を啜り完食。
手を合わせてご馳走様と言葉を落として手ぬぐいを返す。

「ありがとう、礼を言うよ。」

ライガ > 薄まった麦茶──とはいえ冷えているので美味いのだが──をごくりと飲み干すと、ごちそうさまでした、と手を合わせた。

「山葵は辛いからしょうがないよね」

カラン、と空になったグラスを置く。
もちろん全然察してないわけじゃない、何かあったのだろうとは思う、。
ただ口には出さないだけ。出すのは野暮ってやつだ、そう考える。

湖城惣一 >  二人が食べ終わったあと。ようやく湖城は麺に手をつけはじめた。
もにゅもにゅとした弾力のまま、ゆっくりと飲み込んでいく。
 蕎麦はすするものであって、噛みちぎるものではない。
手ぬぐいを返されれば一度だけ頷いて、
「仕方がないな」
 水を飲んだ。

矛海 遼 > 顔は普段通りの、凍ったような無表情男。【アイスマン】その物だ。
但し気を読める者ならば、それが取り繕った物と言うのが解りやすいだろうか。

「あぁ、仕方のないことだ。」

どうにも最近は自身の心が【ツギハギ】で困る。
気を遣わせてしまっただろうな、と心に落ちる。

「次は物騒な所とは無縁の場で会いたいものだな。」

今回のような場でな、と付け足して茶を飲み干す。
もう冷めきっているが、それはそれで良い物だ。

ライガ > 首をこきりと鳴らし、立ち上がる。

「じゃ、僕はそろそろ行こうかな。
……ああ、本当にそう思うよ。ここはいい店だ、覚えとこう」

レジに、麦茶と鳥そばのお金を払いに行き。
蒸し暑い外を思い出して躊躇するが、気合いを入れて出ていった。

湖城惣一 >  特段気を使ったわけではない。
妙な言葉を紡ぐのは男にとって不得手なことで。
ただ黙々と伸びきった蕎麦を食べる。
 汁は既に四分の一以下に目減りしていた。
蕎麦的には大惨事である。
「ああ、次に会うときもよろしく頼む」
 立ち去るライガ、言葉を付け加えた矛海。
彼ら二人にそうやって付け加えて軽く目礼した。

ご案内:「そば処きりん」からライガさんが去りました。
矛海 遼 > 「あぁ、気を付けてな。」

喉を潤し、で行く男の背を見送る。
またどこかで会いたい者だ。教師としても、人としても。

「………」

あぁ、やっぱり今回も駄目だったよ。
伸びきった麺を見て、心の中で呟く。………口に出ていないよな?

湖城惣一 > 「…………」
 何も問題はなく。声にもでては居ないようだ。
出ていても、さほど気にしはしないだろうが。
延々と蕎麦をすすり、流石に膨大になった麺を時折噛みちぎり。
 ゆっくりと飲み込んでいく。
ペースは変わらない。その内、一口も飲むことなくつゆすら無くなっていくのだろう。

矛海 遼 > 敢えて言うならば、【観るに堪えない】と言うのが本音である。
汁のおかわりはやっているとは思うのだが……今度夫人に掛け合ってみよう。そうしよう。などと考えてみる。

矛海の食べていた笊蕎麦と鳥蕎麦、麦茶の入っていた湯呑を夫人が回収して行くのを見ると、再び懐に入れていた本を読み始める。
……待っている、と言う事なのだろう。恐らくは。

湖城惣一 >  丸々一時間をかけて、ようやく蕎麦を食べきった。
ふう、と一息ついてお茶を頼んだ。届いたお茶をすすって、ようやくひとごこち。
「つき合わせたようですみません」
 隣で本を読む相手に頭を下げた。

矛海 遼 > 「いや、好きでやっていることだ。涼しいし、な。」

正確には手ぬぐいの恩と蕎麦の心配である。
ある意味で不器用な男はそのように溢す。
何が好きでやっていることなのやら。

「食べ切れたのならば良かった。」

湖城惣一 > 「慣れておりますので」
 実際麺類は毎回こうだ。
空腹時はどうしても天ぷらなども全力で食べられないとまずい。
あっという間にカロリーが尽きて死ぬ。
蕎麦のヘルシーさは、こと湖城にとっては逆効果である。
 二枚目の手ぬぐいで口を拭いつつ、湖城も席を立った。
「そういうわけで俺は行きますが」
 矛海を見下ろして、尋ねるように言った。

矛海 遼 > 再び懐に本をしまうと、湖城を一瞬見上げて立ち上がり、
視線を合わせる。

「私もそろそろお暇しよう。そろそろ家の飼い犬が騒ぎ出す頃合いだ。」

職員寮の私室に飼っている犬、『オメガトムハンクス28号』である。
大型の犬種かつ人懐っこく、元気の有り余る性格だ。放っておいたら苦情が来そうだ。

「では会計を済ませるとしよう……。」

能力によるカロリー消費などと言った事は全く知らないが、確か以前会った時は空腹だったな、と思いつつ言葉を紡いでゆく。

湖城惣一 >  矛海が立ち上がるタイミングで会計を支払い。
「なるほど。飼い犬を一人にさせては寂しがるでしょうね」
 同意しながら、背を向けて。矛海に別れを告げる。
「ではまた会いましょう、先生」
 そういって。彼もまたマイペースに歩みを進めていくだろう。

ご案内:「そば処きりん」から湖城惣一さんが去りました。
矛海 遼 > 「あぁ、ではまた今度。
次に会う時には紹介しよう。」

夜中に散歩を行っていることが多いので、誰かに合わせることが少ない。
誰かに見てもらうというのは内心楽しみだったりする。

「騒ぎの無い場で、な」

男の歩みを見送りつつ自身も会計を済ませ、夫人に一礼を返しながら戸を開けて、暑く。
そして何処か冷たい歓楽街の夜を歩きぬけて行く。

ご案内:「そば処きりん」から矛海 遼さんが去りました。
ご案内:「歓楽街街頭」にビアトリクスさんが現れました。
ビアトリクス > 夕方ぐらいの時刻。
歓楽街の街角で、折りたたみ椅子に座る者がいる。
傍らのスタンドには『似顔絵描きます』と描かれた看板と、
画用紙に描かれたいくつかの似顔絵がサンプルとしてクリップで吊るされている。

芸術の都、パリのモンマルトルに住む無名の画家たちは
街頭で似顔絵を売って日銭を稼いでいるらしい。
それと同じことをこの人物はやろうとしていた。
少し奇異なことがあるとすればメイドの扮装をしていることぐらいだろうか。

「どうしてこんなことに……」

メイドのような何かがひどく不機嫌そうに折り畳み机に肘をついている。
客入りは良くないようだ。

ご案内:「歓楽街街頭」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > 明日から海の家でバイトなので、
しばらく行けなくなる歓楽街を散策する陽子。

モンマルトルみたいに、芸術家の卵が似顔絵を描く一角
で、見覚えのある顔に遭遇する・・・が・・・

(日恵野君、なんでメイドコスなの!?)
声をかけて良いか一瞬迷う陽子だが、普通に似顔絵を
頼めば良いと気が付き、ゆっくりとビアトリクスに
近付くと、

「済みません。似顔絵お願いできますか?」
と、声をかける。

ビアトリクス > 元はといえば前やっていたバイトが終わってしまったので、
美術部の先輩部員に新しくバイトを斡旋してもらえないか頼んだのだ。
そうして出されたアイデアがこれだ。
修業しながら小銭が稼げる。それはいい。この衣装はなんだ。
呪詛を胸中で煮詰めていると声を掛けられる。
「…………」

あまり知り合いには見られたくない姿だったらしい。
「……なんでこんなところに」
思わずボヤキが漏れる。
露骨に顔をしかめる。
しかし客は客だ。蔑ろにしてはならない。

「…………、どっちがいい?」
仮にも客を相手にしているとは思えない不機嫌そうな声。
サンプルの吊るされたスタンドを指差す。
色鉛筆によって描かれる、よく特徴をとらえた写実的な似顔絵の無難なコースと、
マーカーによって描かれる、キュビズムを追随したと思われる鋭角的な抽象絵画のコース。
選べ、ということらしい。
料金はどちらも昼食一回分程度。

嶋野陽子 > 『なんでこんなところに』
というぼやきには、
「あら、私だって女の子ですから、歓楽街で美味しい物
を食べたりしますわよ」、と冗談めいて返す陽子。

『どっちがいい?』と聞かれると、
コスチュームについては一切触れずに、サンプルの
絵をしばらく見比べる陽子。
顔だけ見れば、丸顔につぶらな瞳、整った目鼻立ち
の女の子だ。巨大化する前から175cmあって、身体も
鍛えていたので、かわいい系ではなく、元気ハツラツ
系の印象だ。

しばらく見比べた後で、
「キュービズムはまたの機会にして、今日は色鉛筆の
方でお願いします。表情とかどうしますか?」
とたずねる陽子。
純粋に、ビアトリクスが自分をどう表現するか、興味
津々という感じの表情をしている。

ビアトリクス > 「そうか……、まあ、そうだな。そう」
そういう事が聴きたかったわけではない、が、詮無きことだ。
折りたたみ机に置いたスケッチブックを取り、色鉛筆を広げる。
コスチュームに一切ツッコミを入れられないのは優しさだろうか。
どう転んでも苦しい罰ゲームではあるのだが。

「了解した。
 表情は作らなくていい。あんたの楽な顔でいてくれ」

薄橙の色鉛筆を手に取り、くるくると指先で回す。
すぐには描き始めない。
座ったまま、陽子の顔を見上げ、じっくりと観察する。
静物を写実的に描くのは得意中の得意だが、
生物に関しては苦手中の苦手だ。
後者の抽象絵画のコースのほうが、ビアトリクスにとってはラクだった。

特に人間の顔ほど、ビアトリクスにとって不気味なものはない。
ずっと眺めていると、粘土のようにぐねぐねと踊り出してモーフィングしはじめる。
この感覚についてビアトリクスはあまり人に語らない。
言葉にするのが非常に難しく、また言って理解されたこともないからだ。

自分の中でスイッチを切り替える。
最近はようやく客観的情報として人の顔面を捉えることができるようになった。

「その体格じゃなかったらさぞかしモテただろうな」

観察の、率直な感想を告げる。
まだ描き始めない。

嶋野陽子 > 『あんたの楽な顔でいてくれ』
と言われたので、少しだけ顔を傾げて、じっとビアト
リクスの事を見つめると、少し視線を外す。やはり見
つめられては向こうもやりづらかろう。

こうして似顔絵を描いてもらうなんて、実は初体験だ
が、縁有って、画才のある人と知り合ったのだから、
こういう経験も良いだろう。

『その体格じゃなかったらさぞかしモテたろう』
という彼らしい素直じゃない言い回しには、
「でもこれが私が好きになった人の好みなんだもの、
仕方ないでしょ?」とさりげなく爆弾を投下する。