2015/08/01 のログ
ご案内:「ゲーセン」に渡辺慧さんが現れました。
渡辺慧 > 騒がしいともいえるその場所。
様々な電子音。
様々な光で照らされ、華やかすぎるそこ。
学生の姿も多く、娯楽施設として、そこは過分なく稼働しているのだろう。

そんな、店内。
その一角。

また、その一角。
その一角だけ、妙な古臭さ。
まるで、時代に押しやられたような、ゲームの群れ。
世代遅れ。そんな言葉が似合う、そのコーナーの一角に。
一角の、一つのゲームの前に座っているのは。

いつものパーカーを着て。
フードを頭にすっぽりと被った少年の姿だ。

渡辺慧 > 楽しげに眼を細め。
スティックを動かし、何かを操作する。
画面に映るものは、4つのブロックで構成された一本の棒。

存外、ゆったりとしたペースで、画面上部からそれは降りてくる。
画面下部には、まるでそれを受け入れるかのように、ぽっかりと。
ブロックでできた山の中に空いた、一つのスペース。

スティックを上へ倒す。
瞬く間に、その棒は、画面下部へ滑り落ち。
そして、それを受け入れた山は、煌びやか――と言っても。あまり目立たないそれ――な光を残し消え去った。

渡辺慧 > また再び。
今度は先ほどと色の違う、奇妙な――ブロックが4つ、というのは変わりはない。――形のそれ。

まるで蛇を思わせるそれを、ボタンを押し回転させる。
左端へそれを寄せると、再びスティックを上へ倒した。

下には、先程の光の後に、何も残らない、更地。
そこに突き刺さるように、天を向く頭のように地面へ降り立った。

機嫌よさげに、鼻を鳴らす。

渡辺慧 > 繰り返し、繰り返し。

7種類の形のそれ。
それをひたすら落とす。
ただ落とす。

慎重に、時には大胆に。
隙はなく、隙間はある。

正方形の塊が消えるたびに、増える速度。
それは、激しさを増していく、滝のようだ。

早くなるたびに、増える鼻歌。
機嫌よさげに、リズムよく。

もはや、画面の中の速度は、始まりとは比較にならない。

渡辺慧 > 「……………………こーれで」

まるで。最期の鍵穴にでも、差し込むかのように。
慎重さのような声とは裏腹に、画面の中の速度は激しくピーキーだ。

だから、実に可笑しそうに、口角を少しだけ上げて。

スティックを、上へ倒した。

――ゲームクリア――

そう表示されるゲーム画面には、もはや。
どこにも正方形の余韻はない。

回転率の為だろうか。
こういうゲームぐらい、好きにやらせてくれればいいものを、と思わなくもないが。
(……何周目だっけ)

そういえば、ここに来てどれぐらいたったか。
クリアするたびにコンティニューし、この画面を見ては。
満足そうにまた、コインを投入する。

――そろそろ、いい時間なのかな。

渡辺慧 > 先程とは違う質の、鼻を鳴らす。

――あと1度ぐらい。
そう呟き、もう一度コインを投入し――。

ふと、見慣れる文字を見かける。

【HELL & HELL】

……。
なにか、モードの一つだろうか。
に、しても。

――随分大仰な。

興味がないわけではない。
いや、むしろ、だ。

――これを選択しない理由が、あるのだろうか?

喉を鳴らし。
軽快な動作でボタンに触れ。

軽快な音声で。
それは始まった。

渡辺慧 > そこからのことを、有体に言ってしまえば。
なにも、起きなかった。

いや。正確に言うとするならば。

なにをするまもなく。
――コインを、入れる前の、コンティニュー画面へ。
気づけば、戻されていた。

「………………………」
呆気にとられる。
何が起きたか、まるで分らない。

まるで、一時的に、時間を切り取られたような。

恐る恐る……もう一度。
もう1コイン、それを入れ。

再び、それを選択した。

渡辺慧 > 始まるそれ。

もっともっと。
事を単純化して言語にするならば。
もっと。ひどく。簡単で、馬鹿な事だった。

ここは常世だ。常世にある、ゲーセンなのだ。
身体能力が高い、異能、魔術。
少なくとも――本土にいる人より、なにかしら。

それを、楽しませる、それ。
――それとは?

つまりだ。
この、モードは。そういうことで。

――ただただ。
普通の、人間には視認するだけで精一杯の、速度でひたすら、ブロックが落ちてくる。

ただ、それだけのモードだった。

「……………バカ?」

渡辺慧 > ――に、したって。
ただ速くするって、それは違うのではないか。
と思わなくもないし、実際これをクリアできる奴は一体どれだけ――。

…………。
自らが、スティックを上に倒した時より速い、それ。

数瞬といっても、大げさではない速度で積みあがり。
瞬く間に、ゲームオーバーとなった、それ。

(オーケー)

今までで、一番に。
サイッコーに、楽しげな顔を浮かばせた、ソレは。

コインを、まるで挑戦状かのように。
滑り入れた。

――今ので、ここに来て、2桁回以上のコイン投入回数である。

先程と、同じように。
“ソレ”を押すと同時に。
“ソレ”を起動させた。

渡辺慧 > 思考の倍化。のみ。
それは、反射神経、動体視力。

それすらも引き上げ、思考だけは。
ただ、思考だけは、その馬鹿げたブロックへ、追いすがる――。

最小限の動作。
それだというのに、スティックを動かしている腕がきつい。
細かい場所へ誘導している余裕など、そんなものはない。

あぁ、だから。

追いすがる。速度へ追いすがる。
このゲームは、ある程度まで行けば。
妥協が大事だ。

隙間を作る妥協。

――だが、それすら許してもらえそうにない。

「シ……………シッ……」
思わず、漏れ出す笑い声。

渡辺慧 > ギリギリ。
ギリギリの綱渡りだ。

山は積み上がり、少しでも緩めば。
それは、死の山へと変わる。

集中力が軋む。隙間なんて、既にいくつも。

そこへ、あの。……正方形を、ただ。
ブロックを組み合わせ拡大したかのような、あれ。

詰みかけた状況へ、訪れると、殺意が湧くあれ。
便宜的に、四角君とよぼう。刺客だけに。

(……………てっめ――!)

余裕はない。余裕はないが……こんなところで、終わりたくは、ない……!

一瞬だけ、出力を高める。
ギリギリのところへ、それを。
例え隙間があっても構わない、ただ次につなげるために。

ご案内:「ゲーセン」に谷蜂 檻葉?さんが現れました。
谷蜂 檻葉? > 加速した思考をゲームに集中させ、人外のために用意された天上の門に挑む少年。

気の抜けた電子音に反して極悪な速度で落下していく
ガシガシと積まれていくブロックに敵意を向け、さらに集中力を高めるその後ろ。


慧が勝負している機械以外にも様々なマシンが爆音を鳴らして集客する中でもその声はよく通った。


「あっれぇー―!? 奇遇じゃーーん? こんな所で……さァーーッ!」


ドーン! と。 
これがコミックなら星が飛び出る勢いで背後から抱きしめるようにして
聞き慣れた声の見知らぬ女が飛びついてきた。

渡辺慧 > 集中力。
それは途切れさせてはいけない。
次につながったそれ。それを、途切れさせないために。
だから。

「いまちょっといそがベツ!?」

背後からのソレは、もちろんの如く想定外。
むしろ、それを想定できる人物が、この場で、こんなことに。
異能まで使って全力でゲームをしていない。

顔面から、ゲームのテーブルへ突っ込み、無情な声を上げる。

――当然。そんな隙には、容赦はない、その画面。
――無情な声に、無情な通知。

【GAME OVER】

谷蜂 檻葉? > 無様に顔をゲーム機に叩きつける声に、抱きしめるように巻いた手をぎゅうぅ…っと締め付ける。

「えー? 『イソガベツ』ってなにそれー!? キャッハハハハ!!」

ゲラゲラと、ゲタゲタと。
品なく笑いながら、GAME OVERと無情にも示された画面に映った慧の顔を見て、また嘲笑う。


「なになにー? まーた慧君ってば一人遊びぃー? 暇なの? ボッチなの? カワイソウな子なの?」

覆うようにしたまま、なじるように問を投げる。

当然の如く、慧からも黒く光る画面に映る誰ぞかの顔はよく見えた。

渡辺慧 > 「フグェェェ……」

締め付けられるそれに、苦しげな。
なんだ。なんだなんだ。
さっきの脳内会話が悪かったのか。本当に刺客でもきたのか。
混乱するが、聞こえる声、自体は――ひどく無邪気だ。
無邪気であり、自分を知っている――?

少し、顔を起き上がらせながら。
「……マー、ボッチには近いかも、ねっ」

そうして、そのそれに写る姿を見た。

知っている顔。……本当に、知っている顔?
それならば……説明がつかなすぎる。
彼女は、知っているその彼女は、こんなことをしただろうか。

「…………ヤァ」
「ちょ、っと。見ない間に、イメチェンでもしたのかい」

それに写る彼女を、横目で。後ろにいる彼女を横目で。
疑惑と、混乱に彩られた、その声音。

「オリハ」

谷蜂 檻葉? > 「フフフっ♪ ほんっっっと面白いリアクションしてくれるよね!慧君はさ!」

絞め殺される鶏のような悲鳴をあげる様子に、クスクス笑いながら解放し、
クルンと回って決めポーズ。

「いぇーい☆ マジカル美少女♡オリハちゃんだぞ?」

奇人変人に胡乱げな表情を見せてきた彼女は、かつてないテンションでそう宣言した。

「そ、イメチェン。 どう? 惚れる? クる? キちゃう?  ……あっ、なんか疑ってるー?」

ポーズを解いて、グググと顔が触れるような距離まで再び寄ってくる。

その満面の笑み、それから覗き込むような表情の中に見える瞳も、髪色も違うが
顔立ちに声……ついでに体型までは確かに『谷蜂 檻葉』。

決定的な違いは、その酔っ払ったようなテンションだろうけれど。

渡辺慧 > クルリ。
開放されると、自らの体を椅子の上で回し、体ごと彼女へ向ける。

大丈夫か、大丈夫じゃないかで言えば確実に。
“大丈夫じゃない”

誰かが彼女を騙る――それをする理由はまるで分からないが。
だが、それではない。だからこそ、分からないのだ。

これは、ほぼ確実に、彼女であり。
その言動は、確実に、彼女ではなかった。

近づかれる、その顔に、少々の――いや、それは。ちょっとした……――照れ。だが、彼女が、そう違うならば。
自分は、いつも通りだ――。

その近い顔に、口角を少し上げ、いつものように笑う。
目元は……やはり。疑いの色をたたえることを止めるのは、無理だったが。
――オデコでもぶつけてやろうか、とでも思っていたのは、内緒にしておこう。

「あァ。キちゃうね。だけれど、少しばかり」
「無理しちゃぁいないかい?」

疑惑は口に出さない。
出さないが。

「なぁ」
「オリハ?」

その名前を呼ぶ、発音には、クッキリと。

谷蜂 檻葉? > 疑惑の視線を受けたまま、それでも慧の表情に浮かぶ 『照れる』という感情に、ニンマリと笑みを浮かべる。 その顔の距離は変わらずに、少しでも彼から何かを引き出せないかと宝物が入った井戸の底を見るように視線が顔を撫で回す。

「無理? ううん、無理なんて全然してないわ! だってこんなに楽しいんだもの!」

トン、とそこでようやく顔1つ分の距離から顔3つ分の距離にまで離れる。

しかし距離に対して彼女のテンションは花火のように
―――それも市販じゃなくて業務用の勢いで打ち上がっていく。

「でも、クるのね? キちゃった!? マ~~~ジ~~~~で~~~~~っ!?」

きゃーっ。 と顔を両手で抑えてくねくねと身悶える檻葉そっくりの少女。
まるで、出来の悪い夢を見ているかのような違和感を感じるが、確かに彼女は君の目の前に居る。


「それはどこ? 髪色? 身体? そ・れ・と・もォ……元から、なのカナ?」


疑問に含まれた意味は彼女には届かず
無邪気に、されど妖艶にしなを作って再び問いが返ってくる。

渡辺慧 > 離れていく顔に。
少しだけ息をつく。だから、ようやく。

しかし乍ら、自らの、暗に含まれた、それは届いていない、と。

だから、もう一度、息をついた。
もう一度笑うと。

喉の奥を鳴らして笑いながら「あらま、セクシー」
なんて、軽口を飛ばす。

「そォだね」
「その髪と、身体」
「実に、何があってそうなった気になるところだけれども」

疑惑ではなく。疑問という形で。
それを抑える。……彼女は、多分。
今、ひどく。

「だけど――そうだな。元から」
「そう言ったら、きみは元にもどったりするのかな」

……表情の動きを、ただ、笑う、ということで制限させる。
だから、笑う。

谷蜂 檻葉? > 「ふぅーん……」


『元からと言ったら、戻るのか?』 その疑問を投げた瞬間、彼女から一気に”色”が抜け落ちる。

先ほどまで、軽口にでさえ咲きまわっていた笑みが消え、品を定めるような、獲物を見るような目にとって代わる。

声もどこか冷たい印象で、最初の時以上にこの喧騒の中でも慧の耳に届いた。


「そう……へぇー……」

審議するように、顎元に手を当てて慧の隣のアーケードの椅子を引っ張り寄せてどっかりと腰を落とす。

「ま、”戻っても”いいけどォ……それはー、ツマンナイ。かな?
慧君はぁ、面白い事大好きだもんね? ツマンナイのは、い・や・だ・よ・ね?」


暗に、要求するならタダでは飲まないぞ。

と、 檻葉とは思えぬ意地の悪い瞳で/檻葉のような優しげな笑みで、慧を見据える。