2015/08/03 のログ
奇神萱 > 「……思い出した。三枝あかり。一年生だ」

「一年ならそろそろ誰かしら捕まえてる頃じゃないか。周りはどうしてる?」
「ぼやぼやしてるのはお前だけかもしれないぞ。油断禁物だ」
「二人そろって迷子になった。しかも連絡がつかないか。そりゃ厄介―――ブフッ」
「ごっほ!! ごほっ……あー…んんっ。悪い。リスかお前は」

リスはリスでもどんぐりを頬袋にみっしり詰め込んだリスだ。髪型と色のせいだな。

「気に入ってくれたら何よりだ。さっきの爺さまがたも同じような顔をしてたっけな」
「休むためじゃないぞ。感じたことを忘れないためだ」
「爺さまがたの前で弾いたとき、何かを感じた。深いところに横たわってるものだ。忘れる前に確かめたかった」
「三枝あかり。お前、この島に何しに来たんだ?」
「俺はこいつを演りにきた。仲間を見つけて、ずっと続けてきた。シンプルな話だ」

三枝あかり > 「今、思い出してくれたんですか?」
「私は覚えてますよ、奇神先輩」
ジト目で彼女を見る。でも、怒ってはいない。
自分は、平凡な名前だから。

「わかりませんよ、私は夏前に転校してきたばかりですから」
「……ぼんやりと星を眺めているのが、私の生き方です、放っておいてください」
「大丈夫、あの子は要領が良い子だからきっともう家に……って!」
「誰がリスですかっ!」

ツッコミ+ちょっと怒り。でもリスは可愛いからいいのかな。

「へえ、この辺りを回ってヴァイオリンを弾いているんですね」
「この島に………何をしに…」
表情が曇る。彼女は自分がやりたいことを、いや、演りたいことを知っているのだ。
でも私は何も見つけられていない。
「わかりません……ただ、逃げ出したかっただけなんですよ」
「私、三枝の家に養子にもらわれてきた子なので…」
「三枝の家に居場所がないから、ここに転がり込んできた。それだけの」
これからのことなんて、考えている余裕もなかった。

奇神萱 > 「忘れてない。『亜麻色の髪の乙女』だ。そっちで呼んだら失笑もんだろ」

さすがにポエミーすぎる。真顔で言いつつ頬を掻いて。

「お前がリスだと言った。野生の子リスだ」
「鎌倉にリスがいる神社があってな。親に連れられてよく行ったもんさ」
「で、転校生か。どおりで。まだ慣れてないわけだ」
「友達はできたのか?」

おかーさんか俺は。それこそ余計なお世話だ。
聞いてしまったものは仕方ない。

「おかしなことを言う。居場所がないからここに来たのか。目的もなく」

翳った表情をみつめて、古びた街灯の弱弱しい光に目を転じた。

「そういうやつにいい顔をしてくれる人間はいない」
「どいつもこいつも自分のことで精一杯だ」
「お前の舞台はここにはない。期待してる人間もいない」
「探したってみつからないだろうさ」

聴衆なんて一人もいなかったから、ケースは空っぽのままだった。
無銘の楽器から丁寧に皮脂をふき取り、片付けてケースを担ぐ。

「帰るぞ、三枝あかり。寮に部屋がある。お前は?」

三枝あかり > 「あはは……さすがにそう呼ばれたら恥ずかしいですしね」

これにはあかりも思わず苦笑い。

「子リス……『子』がついたら可愛いからいいです。許せます」
「友達は……蒼穹とか、ノヴァとか…」
すぐに言葉に詰まる。これでは友達が少ないと言っているようなものだ。

「……ここにも居場所がないのなら、私は…」
どこに行ったって一人きりなのかも知れない。
空を見上げる。この空には光らない星だってある。

きっと自分がそうなんだ。

「あ、そうだった……私迷子だったんでした」
「か、帰りましょう! 私も女子寮住みなんですよ」
「奇神先輩、申し訳ないですが道案内をお願いします……」
心の底から申し訳なさそうにそう言って。
気がつけば携帯端末のナビも復調していたけど、それを閉じた。

今日は先輩と一緒に帰ろう。

奇神萱 > 「はは。それだけいれば上等じゃないか。俺の仲間はずいぶん死んだ」
「最高に最低な仲間だったよ。散り散りになって、もう数えるほどしか残ってない」
「それでだな、またゼロからはじめることにした。今は立て直してる真っ最中だ」

惑う少女に右の手のひらを向ける。
ボウイングの痕がはっきり刻まれた、よれよれの手だ。

「友達を欲しがってるやつがもう一人ここにいる。奇神先輩は友達が少ないのさ」

言って笑った。他人事の様だが、今となっては自分のことだ。
この際だ、潔く認めよう。奇神萱には友達が少ない。テコ入れがいる。

「お前の探しものはおそらく、探してる限りはみつからないものだ」
「逆説的な言い回しだな。変に聞こえるかもしれないが」
「お前の舞台は、どこかの親切な人間が用意してくれるようなものじゃない」

先導役を買って出て、ゆるりと歩き出していく。

「俺は最高の舞台を作ったぞ。どうすれば輝けるのかクソ真面目に考えてきた」
「半端な嘘や誤魔化しは見透かされるからな。仲間の手を借りた。身も蓋もなく言えば利用した」
「俺の仲間もそうしてた。おあいこだ。えげつなく競い合って、ひとつの舞台を作り上げた」
「今はもう夢のあとが残ってるだけ。『脚本家』ならきっとこう言っただろう」

『伴奏者』は大根である。ハムにも及ばぬ。ゆえに演者ではない。
そういう、実にやんごとなき理由あって舞台に上がれなかったのだ。少なくとも演者としては。
その幕が引けた今なら好き勝手にやっても文句は出るまい。

 『我ら影法師たちの演じるところ、よしんばお気に召されぬならば』

          『斯様に考えられたなら、万事が丸く収まりましょう』

 『皆様方は眠っておられ、夢のあいだにまぼろしを見た』

    『この他愛もなき物語は、つかの間の夢であったのだと』

―――ウィリアム・シェイクスピア。『夏の夜の夢』。
たった一人の観客に大げさな手振りで朗々と諳んじてみせた。

三枝あかり > 「………死んだ?」
「……そう、ですか………」
きっと彼女は何も冗談なんて言っていなくて。
本当に彼女からは、奪われたんだ。運命とか、そういうのが仲間を奪っていった。

「……はい! それじゃ私と友達になってください、奇神先輩!」
笑顔で握手を交わした。
その手は、表面は冷たくて。きっと心が温かいのだろう。そう思った。

「さすがに、私が頭があんまり良くなくても」
「ここまで言われたらわかりますよ」
「誰かに用意してもらうんじゃなくて、自分で最高の居場所を作らなきゃいけない」
靡く髪を手で押さえて。
「そうですよね、先輩?」

彼女の諳んじるそれを聴きながら、帰る。
この夏の夜の夢は、きっと幻じゃない。

奇神萱 > 「ああ。まあ、そんなところだ」
「友達な。今度は覚えたぞ、三枝あかり。改めてよろしく」

目に見えて元気になったな。

言いたいことの半分も伝わればいいと思っていたが、この子リスは物分りがいいらしい。
家庭環境によるものか。「いい子」だったのかなと思う。

「メンデルスゾーンの戯曲はなしだ。あれは長いからな」
「また別の日になら演ってもいいが…帰るぞ。今日はもう店じまいだ」

道連れを得て寮に戻るのはこれで二度目だ。
一人目は四十万静歌。子リスで二人目。もっと増えるかどうかは今後の努力次第だな。
毒にも薬にもならそうなことを駄弁りながら帰ろう。子リスを連れて歓楽街を後にした。

ご案内:「歓楽街」から奇神萱さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から三枝あかりさんが去りました。
ご案内:「歓楽街・露天通り」にオリハさんが現れました。
オリハ > 『ご、ごめんなさいっ!! もう勘弁してくらはいっ!!』



              『金"っ、財布の中身全部差し上げますから"!!す"い"ませんでしたぁっ!!』



『お願いします……!許してください!何でも、何でもしますから命だけはぁっ!!!』



歓楽街の一角。
路地の多いその場所で、ある意味の「日常的な」悲鳴があがる。

何人かはその声に気づいて視線を向けるが、触らぬ神に祟りなし。
肩をすくめる、ビクビクと怯える、無表情に足早に去る……。

様々な対応は見られるが一貫して『不干渉』であることを此処の住人たち、観光者達は選択する。

オリハ > ぎゃいぎゃいとした怒声が聞こえて数分。
それがきゃんきゃんとした悲鳴に変わって数分。


路地から横っ飛びにボロ雑巾が数枚飛んでいって、薄汚れたシャッターにぶつかって畳まれる。


「……ったく、めんどーな上にこのオリハちゃんを傷物にしようだなんて不届き千万って奴よね。」


ガシャンという派手な音に振り返った露天売りの者達が見たのは、ボロ雑巾のようになったチンピラ共とそれが飛んできた路地から現れた手持ち無沙汰に財布をお手玉する、およそ人間然としない少女の姿だった。


「取り敢えずこのお財布は『いしゃりょー』って奴で貰っておくからね?―――献上ご苦労様!」


キャピッと、生きてるか死んでるか判らないような有り様の男達にポーズを決める謎の女に、その容姿に目を奪われていた人間達も 『どういった部類』の存在なのかを察して再び視線を元の定位置に戻した。


「……さて、と。 図らずしも無一文からお金持ちになれたことだし、また暫く見て回りましょうか。」


そういって、通りをフラフラと宛もなく歩き始める。
どうやら何か用があってこんな場所に来たわけではなく、ただ興味が惹かれるものに誘蛾灯のように誘われるだけ誘われて動いているらしい。 怪しい売り文句だろうと、なんであろうと。 その全てに近寄っては冷やかしをし、時に他人から巻き上げた金で試し買いをする。

オリハ > 「しかし、この街の"品"は面白いわねー。 これで、誰か面白い"人"まで見つけられれば最高なんだけど。」

両手に露天の串焼き、腕に通すはよく解らないお面と巻き上げた財布を入れた紙袋。
首には安っぽい十字架を模したアクセをかけて、満面の笑みで繁華街を往く。

彼女の言う『面白い』というのは取り敢えず、下卑た目当てで話しかけてくるようなチンピラではないようだが、ともあれ視線を巡らせながら興味をもったものには取り敢えず近づくを繰り返して進んでいく。

やがて彼女の行動パターンが掴めてきた露天商達は丁度いいカモだと声を上げ、
一時は静かになりかけた路地は再びやんややんやとお祭り染みた活気を取り戻している。

ご案内:「歓楽街・露天通り」に浦松時子さんが現れました。
浦松時子 > 歓楽街へと足を運んでみたはいいもののそれなりに美人であるゆえか2,3人ほどの男につきまとまわれている。

ナンパのテンプレのようなセリフを吐いてはいるが全然好みではないので無視していると腹が立ったのか腕を強引に掴まれて。

「…離してくれませんか、はっきり言ってあなたたちに用はないんです」

丁寧に火に油を注いだ。

オリハ > 『あ”ぁ? んっだよォつれねぇなぁ~』

『用なんて作ってくれればいいんだからさァ~~↑↑~~↓↓?』

『っつーかパなくね?これがツンドラってやつ?俺、君みたいな子気に入っちゃうかもなぁ~~??』


ゲラゲラと煩い一行が時子の行く手を阻む中、その横を通りがかったオリハ。


「………面白いの、みっけ!!」


助けるわけでもなく、声をかけるわけでもなく。

オリハが取った行動は近くの露店のおっさんにお札を投げ渡すと置いてあった缶ビールを手にとってクピクピと飲みながら、また別の露天商に缶ビールをお裾分けして座敷の横に座り込んで観戦を始めた。

浦松時子 > 「…もういい」

指先からキラキラした糸を出してナンパ男の周囲を囲んでいき。
「鋼糸虫『天獄』」

煩いのでついでに口も塞いでぐるぐる巻きにしてから街路樹に吊し上げる。
粘着性と耐久性を最大まで強化した糸で普通の人間の力ではまず解けない。

「まったく、私に声をかけるなんて150年ぐらい早い」

オリハ > 『『『むぐごおごおおぉおおぉおおッッ!?』』』

じたじたと足を振り回しながら、ミイラのように梱包されて吊るされる男達。
流石に、いずれ彼らは巡回している某によって降ろされるだろうが、暫くはそのままだろう。


それを横目に見ながら、パチパチパチ。 と、座敷でありがたそうにビールを飲んでいた男にギョッとした目で見られながら、オリハが拍手を送る。


「すっごーい! こーいう時は空手か合気道がセオリーだって思ってたけど、もっと面白いものが見れたわ!   ね、今アナタ何したの?」

麦酒の半分程度では顔に変化も出ず、口元に軽く泡ヒゲをつけただけのまま楽しげに時子へ声をかける。

浦松時子 > 突然声をかけてきた少女の方を見る。
制服姿で明らかにビールを飲んでいるが背中の羽を見れば妖精か何かで見かけどおりの年齢ではないのだろうと納得する。

「ん~なにかと言われましても、ちょっと指先から糸を出しただけですよ」

見ての通りのことを言ってから座敷の方へ。
「あ~おじさん私に麦茶をお願いします」

「私、浦松時子って言います…一応この国ではお酒は二十歳になってから、ですよ」

オリハ > 「ちょっとで指先から糸は出ないわよ? 種は?仕掛けは?異能持ちか、化生の類か。アナタは一体何をしたのかしら?」

ケタケタと笑いながら残りの麦酒も飲み干す。
暑い夏に熱されたコンクリも大分冷めてはいるが、まだなお仄かな熱を持ち冷たい飲み物が進む。

自然に敷物の上に上がり込んで注文する少女に、渋い顔をする飲み物売の露天商へオリハが肩を竦めて口の形だけで『先払いでしょ?』と問いかければ苦笑気味に麦茶の入ったペットボトルが投げ渡された。 座敷を用意していた男は、我関せずと言う風にビールを飲んで肩をすくめる。

「ふーん、時子ちゃんっていうんだ。 私は―――」

【お酒は二十歳になってから】 ―――当然、自身の年齢はそれをしっかりと超えているが”檻葉”はそうではない。 「あちゃー」という表情で片手で泡ヒゲを拭いながら

「……タニア、よ。 二十歳は超えてるから問題はないわね?」

浦松時子 > 「まあ、一応異能の類ですね…私は体の中に何種類か虫を飼っていまして」

ペットボトルを開けて麦茶を一口。

「ふう、二十歳を超えてるなら問題ありませんね」
成人している学生なんてこの学園では珍しくない、自分だって300歳だ。

「タニアさんですね、妖精さんか何かですか?」
背中の羽を見ながら麦茶の蓋を閉めて。
「いやー妖精さんってお酒好きなんですね、私も二十歳は越えているんですけどお酒はあまり好きじゃないので」

オリハ > 「へぇ、虫を飼ってるの! イマドキの子で虫が大丈夫な女の子ってなんか珍しいけど、
 ふふっ なんだか嬉しいかな!  ねぇ、他にも何かできないの?」

ニコニコと笑みを強くして手を打ち合わせる。
どういった意図かは判らないが、彼女も【虫】を好むようで、まるで『宴会芸でも見せてみろ』とでも言う様に、時子にねだる。

「そ、そうよ。何も問題はないの!」

笑顔が少し強張ったものの、相手がそれ以上踏み込んでこないのを良いことにホッと胸を撫で下ろす。
視線に少し首をかしげるが、直ぐに納得したように頷いて


「そう、ね。そうとも言われるけれど。 ―――今の私は紛うことなき人間よ?」

ねっ? と、両頬に人差し指を当てて 『確かに、此処に居る』 と示してみせる。

【其処に在りて彼方に在るもの】である自然霊の一種である妖精という観点からすれば、たしかに今の彼女は少なくとも妖精という枠組みからは外れていた。

浦松時子 > 「他に、ですか?」

少し考えてみる。
再生虫、痛いからいや。
甲殻虫、見た目じゃわからん。
加速虫、アレを使ったら丸一日ほぼただの人。

「じゃあ、宴会芸程度の代物でしたら」
瓶ビールを1本勝手に取って
「あ、お金は払いますからね~」
指から糸を出して瓶の口を一瞬で切り裂く。
「はい、これはおごりますよ」
と言うと同時に瓶の口が水平に切れて地面に落ちる。

「今は…ですか」
妖精は霊の一種だと聞いたことがある。
ならば今こうやって人の世を闊歩している姿は妖精ではないということか。
「じゃあ、人になってまでこちらに何か御用で?観光か何かですか?」

オリハ > 「わお! 『手刀』みたいね! もっと切れ味は良さそうだけど!!」

キャー!凄ーい! とオリハの拍手に合わせて、瓶ビールから溢れかけた黄金がグイと伸び上がり、人形の上半身のような形を取ると、拍手するように二つに伸びた手のようなソレを打ち合わせる。

それを見て、またオリハは楽しげに笑みを浮かべて拍手を強めた。

「あっははは! そうね、もっと色々出来そうで、楽しそうだわ!」

まるで、人形と話すかのようにしてそう笑うと時子からそのまま瓶ビールを受け取り、同時に水人形も不格好になった瓶に顔を引っ込めた。



「んー? 用事でも何でもない……あぁ、一応『旅行』なのかな?」

瓶ビールをグイと煽り、「段々苦くなってきた!」と顔を渋くしながら座敷店主の男にパスして、首を傾げる。 観光という言葉に頷かなかった事から、光景とは別の何かを求めて来ているらしい。

浦松時子 > 「こっちは切る用の糸ですので…この程度なら見せても構わないかと」

敵意はないだろうがあまり手の内は見せたくない、長生きしているが故の無意識の警戒心。

「用事でもなんでもない、とはまたよく分からないですね~旅行でしたらどこまで行かれるおつもりで?」
妖精に理屈を求めるのも酷と言うものか、と思いつつもビールを苦いと言っているのを見て首を傾げる。

「あの、ビールなんですからそりゃ苦いですよ…」

オリハ > 「えぇ~? まだあるのに見せてくれないの~?」

ケチ―!と口を尖らせて文句を言う。
しかし、見も知らぬ相手にそこまでねだるのも無粋か、と残念そうな表情に変わる。


「それじゃあ、私はすっごーーーーいの見せてあげるね!!」


そう言って彼女が立ち上がりクルリと両手を広げて踊るように廻ると、あちらこちらから 『ポン!』という音の後に蛇口を回しっきりにしたかのような水音が聞こえ出し 路地に影が落ちる。

ふと視線を上げれば、【透明な巨人】が路地の上から二人を見下ろしていた。

その光景に露天に居た者達は腰を抜かし、人によっては勢い良く店を畳むと風呂敷を畳んで持ち運べるようにすると一目散に逃げ出す。 先の活気とはまた別の意味でお祭りの如き騒ぎになる。


巨人が、ゆっくりとその手を伸ばす。

その手が地に届き、オリハの手が届くところまで降りてくると、隣で腰を抜かしていた男の持っていたビール瓶から流体がスルリと抜けだして金の瞳を巨体にはめ込む。

透明な巨体に黄金の瞳。 まるで、怪獣映画のような光景の中でお伽話《FairyTail》らしく上品にその掌に腰を下ろすと見下ろすように回答を寄越す。


「どこまで行こうかしらねぇ。 ―――取り敢えず、私の思うがままに辿り着いた所が到着地点よ!」


そのまま、水の巨人に持ち上げられて遠くなる声が時子の小さな疑問に答えた。


「……最初は、爽やかで美味しかったのっ!」 

オリハ > 「今日は十分楽しんだし、また何処か出会いましょうね、時子!!」


ばいばーい。 と手を振って水の巨人と共にキラキラとした粒子状に解けて消える。

あとに残ったのは、腰を抜かした人間達と、何が起きたのか解らずひたすら震えるミノムシ達。


そして、座敷にぽつんと残された時子であった……。

ご案内:「歓楽街・露天通り」からオリハさんが去りました。
浦松時子 > 「これはこれは…随分派手好きの妖精さんですね」

妖精とはこうも明るくテンションの高い生き物なのかと思いつつ麦茶を飲みほし。

「いやいや、年を取るとああいう若さがなくなってきますわ」

店主に飲んだ分の金を払うとそのまま去って行った。

ご案内:「歓楽街・露天通り」から浦松時子さんが去りました。