2015/09/22 のログ
蘆 迅鯨 > 「……オイ待てよ。畝傍だって?あいつ生きてたのか?」

陽子の口から出たその名に、迅鯨は再び耳を疑う。
迅鯨の記憶の中では、とうに死んだはずの人物の名だ。
それがこの場面になって出てきたことに、驚きを隠せないものの。
母国においても彼女が身に纏っていた橙色のボディスーツは、迅鯨の記憶に焼き付いていた。故に。

「じゃあ、やっぱ連中の狙いは……」

迅鯨は母国の保護団体の支援を受け、この常世島へ一般入学している。恐らくは畝傍もであろう。
対して河内丸と、彼女が口にした『筑紫』<ツクシ>なる人物はそうした保護を受けず、
二級学生として落第街での生活を余儀なくされているらしいことを、本人の口から聞いている。
なれば、河内丸らの目的は概ね想像できた。しかし。

「そうだな……」

ユキヱから投げかけられた問いに、迅鯨は腕を組み、しばし思案する。
組まれた腕によって、迅鯨の豊満なバストはより強調された。
――長い沈黙の後、迅鯨は。

「……少なくとも、河内丸の奴は俺ちゃんとケリをつけたかったみてェだけどな。他の奴がどうかはわからねェし、そいつらにはまだ会ってねェけどよ」

ユキヱに、そう告げる。まだ自身の答えを出すのは難しい。

嶋野陽子 > 『あいつ生きてたのか?』という迅鯨さんの
反応で、畝傍さんも《星の子ら(シュテルン・ライヒ)》
の一人であったことに確信を持つ陽子。

「畝傍さんも、同じ女子寮の仲間ですよ。一緒にお買
い物した事もあるし、私の部屋で料理を教えた事もあ
りますよ」と迅鯨さんに説明する陽子。

迅鯨さんの口振りからすると、畝傍さんも狙われてい
るらしい。
「畝傍さんは狙撃の名手だし、ルームメイトのサヤさ
んは剣の達人だから、畝傍さんが遅れをとる事はまず
無いでしょう」と、迅鯨さんを安心させようとする。

平岡ユキヱ > 「決着か…。異能の危険度から考えて、少なくとも風紀に参考情報としては上げさせてもらう事には 
なると思うけど…」
それは河内丸個人についてであって、希望するならば蘆の事や『星の子ら』については伏せておくけど?
と、どこまで風紀内部で公開していいか尋ねる。

そして、ふむ、と蘆の戸惑う様を見て。一つの決心をおいまてなんだあのデッカイモノ…。
「何食べたらそんなに成長す…いや今はそうじゃない。

 蘆、クラスメイトとしてアドバイスするが、そいつとはお前がケリをつけるべきだと私は思う。
 特に相手が望んでいるのならばな…。私はあなたとそいつの間に何があるのか知らないが、
 迷うくらいならば真正面から立ち向かうべきだ」
でなければ。

「…逃げ癖、つくわよ。それはあんたの人生や生き方を台無しにする」
青白く蛍のように光る毛先がゆらめく中、ユキヱなりの意見を述べた。

蘆 迅鯨 > 「へェ。そりゃあいいルームメイトを持ったもんだな」

畝傍の現状を迅鯨へと告げた陽子の言葉には、タハハー、と笑ってみせる。
対して、ユキヱが語りはじめれば、迅鯨の表情は真剣なものとなり。

「そうだな……」

異能が発現しこの学園を訪れる以前、そして『たちばな学級』に配属されはじめた頃、
迅鯨は自らの異能とトラウマのために、人と関わることを極度に恐れていた。
しかし、その内心では孤独を恐れ、他者との関わりを渇望していたのだ。
そして自らの内にあるその感情に対して忠実に動いた結果、迅鯨は友を得ることができていた。だからこそ。

「……俺ちゃんは逃げねェ。少なくともあいつとは、俺ちゃんがケリをつけらァ」

ユキヱの瞳を真剣に見つめ、そう告げた後。

「んでも念のためだ、風紀のほうには情報を上げといてくれ。関係ねェ奴が巻き込まれちゃ困る」

河内丸のこと、そしてその異能の危険性に関する情報については、
風紀委員へ参考情報として公開しておいてもらおうと、付け加えておく。

嶋野陽子 > 迅鯨さんがルームメイトに言及したので、
「私は戦闘職じゃないから、戦闘能力はあのお二人よ
りかなり落ちますし、異能も治療系で魔術はからきし
だから、ボディーガードとしてはイマイチなのよね」
と自分の力不足を認める陽子。

「迅鯨さんが自分で決着を付けるのなら、私はどうす
ればいいのかしら?隣で戦って欲しい?それとも立会
人になって欲しいか?迅鯨さんはどうして欲しいの?」
と迅鯨さんの希望を尋ねる陽子。

平岡ユキヱ > 「委細承知! 任せときなさい!
 私も…そいつが他の生徒にまで手を出すようになれば、看過できないかんねー」
その時は…まあ許せ! と蘆にわははと笑う。

「さて…ちと立ち話が過ぎたかな? 私、そろそろ行くわ」
インカム越しに隊長がカンカンだし。と笑いながら涼しい顔をして特攻課からの叱咤を流している。
嶋野に異能の件は頼む、と申し訳なさそうに頼んでから改めて背筋を伸ばし、では失礼、と敬礼をして歓楽街の雑踏に消えていっただろう。

ご案内:「大通り」から平岡ユキヱさんが去りました。
蘆 迅鯨 > 「じゃァな、ユキヱちゃん。連絡よろしくゥ」

去りゆくユキヱに手を振った後、今度は陽子の顔へと視線を向けると、
少しの沈黙ののち、また口を開き。

「そうだな……俺ちゃんがケリをつけに行く時ゃ、ヨーコちゃんは来ねェでくれるか。こりゃ俺ちゃんの問題だからよ」

ともすれば酷薄なようにも聞こえるその言葉を、陽子へ告げる。
保健課という役職の問題もあるのか、あるいはその性格ゆえか、荒事に巻き込まれがちな陽子。
彼女を巻きこまないためには、あらかじめ釘を刺しておく必要があると考えたのだ。

嶋野陽子 > そろそろ行くわと言って離れる
平岡さんには、
「ミウさんと連絡付いたらば、連絡します」と言って
見送る陽子。

自分の問題だから手出し無用と告げる迅鯨さんには、

「判ったわ。私は迅鯨さんが帰ってくる用意して、
部屋で待ってるから。遅れを取らないでね」と返すと、

「そう言えば、迅鯨さんと一緒に寝るようになって、
途中間が空いたりしたけどもうすぐ2ヶ月経ちます。
なので、このケリが付いたら、正式にルームメイトに
なってくれませんか?」と迅鯨さんに尋ねる陽子。

蘆 迅鯨 > 河内丸との決着がついたら、正式なルームメイトとなってもらえるか。
その問いは迅鯨にとっては、ある面では思いもよらぬものでもあり、
またある面においては、想定の範疇にある問いでもあった。
確かに、迅鯨は陽子の精神波バリアがあれば安心して眠ることができる。
だが、恐らく陽子は迅鯨よりも早く、この常世学園を卒業してしまうことだろう。
ならば、いつまでも彼女に依存してはいられない。
迅鯨は陽子の力を借りずとも自らの異能を制御する道を模索し、
『たちばな学級』を、そしていつかは学園自体を卒業して、この混迷たる世界へ順応せねばならないのだ。
――故に。

「……そいつァできねェ相談だな。なァに、ヨーコちゃんのことだ。そのうちお似合いの相手ができるだろうよ」

普段と変わらぬ軽い口調で、そう告げた。

嶋野陽子 > 『そいつァできねぇ相談だな』
という迅鯨さんの答えの意味は、決着が付いたら出て
いくという意味なのか、それとも今まで通りを続ける
という意味なのか、恐らく後者だろうが確認しなけれ
ばいけない。

「それは、決着が付いてもこれまで通りという事なの?
それとも決着が付いたら出て行っちゃうの?」と迅鯨
さんに問い掛ける口調が、いつもの陽子と違うのは、
やはり動揺しているからだろうか。

蘆 迅鯨 > 「なァに、ケリがついたからって出ていったりはしねェよ。その時まで俺ちゃんが生きてりゃな」

笑みを浮かべながらそう告げるも、その表情はどこか憂いを帯びていた。
殺傷力に特化した異能と魔術を持つ河内丸に対して、
テレパシー能力と護身魔術という迅鯨の能力では、明らかに分が悪い。
さらに河内丸の側には、仲間と思われる『星の子ら』もいるのだ。
先日の交戦では、『人間隕石』が破られた事による河内丸の戦意喪失という形になりどうにか生き延びたものの、
全力で、仲間も引き連れた上で挑んでくるようなことがあれば、迅鯨の命がある保証はない。

「なァ、ヨーコちゃん。俺ちゃんはよ、『卒業』しなきゃなんねェってのはわかってるよな。……『たちばな学級』の生徒が『卒業』するのはよ、ヨーコちゃんみてェなフツーの生徒が卒業すンのたァ訳が違うンだ。フツーの連中より何ヶ月も、下手すりゃ何年も遅れる事だってあるだろうよ」

たちばな学級からの『卒業』。それは概ね、長い道のりとなる。
陽子もそのことは認識しているだろうが、改めてその意味を伝えておく必要があるだろう。

「……俺ちゃんも、いつまでもヨーコちゃんのとこに居る訳にゃいかねェってこった。ヨーコちゃんはきっと俺ちゃんより先に卒業しちまうだろうからな」

嶋野陽子 > 『いつまでもヨーコちゃんのとこに
居る訳にゃいかねェってこった。その前にヨーコちゃ
んは卒業しちまうだろうからな』
と説明してくれた迅鯨さんだが、陽子にはもはや卒業
を待つ人も、卒業後に行く場所も無いことを忘れてい
る。
「もう私の卒業を待つ人も、卒業後に行くところも
残ってないわ。私はいつまでも、卒業した後ずっと
この島にいられるのよ。卒業してからの居場所を自
分で作らなければいけなくなったの。だから、お別
れの時期は凄く先になるかも知れないわね」と返す
陽子。敬一の死により、陽子の卒業後の人生設計は
白紙に戻ったのだった。

もう繁華街でも人影が疎らになりつつある時間だ。

「これから夜のお散歩に行くのでなければ、久し振
りに一緒に帰りませんか?」と提案する陽子。

蘆 迅鯨 > 「……なるほどな」

陽子の恋人は死んだ。故に、それまでの彼女の人生設計は無に帰してしまった。
迅鯨には恋人と呼べる人間は居ない。戦場に居た経験から、人の死に対してどうしても淡白にならざるを得ない部分もある。
しかし、迅鯨にも陽子の悲しみを案ずる事ぐらいはできた。
だからこそ、一緒に帰ろうという彼女の提案に対しては。

「そうだな。帰り道ぐらいは付き合ってやるよ」

笑って、そう告げる。

嶋野陽子 > 『帰り道ぐらいは付き合ってやるよ』
という迅鯨さんの言葉が、彼女なりに気を使ったもの
である事は陽子にも判るし、非常にありがたいものだ。

「ありがとう、迅鯨さん」と言うと、ためらいがちに
手を繋ごうとしつつ、女子寮への帰途につく陽子。
なりはデカくても、天涯孤独となってしまえば、心細
いのが女心だ。

蘆 迅鯨 > やがて、迅鯨と陽子がその場を去った後。
二人が居合わせた場所の近辺に存在する建造物と地面が成す90度の角から、硫黄めいた悪臭と共に青黒い煙がほとばしる。
そして煙は徐々に凝り固まり、人型を成してゆく。
現れ出でたのは、爛々と輝く黄金色の瞳を持つ黒髪の少女。
薄汚れたタンクトップと激しく損傷したジーンズを纏う彼女の四肢からは、
青みがかった脳漿のような液体が滴り落ちている。

「ククク……愚かな……」

哄笑の後、少女は再びその身を青黒の煙と成し、鋭角の中へと消えていった――

ご案内:「大通り」から蘆 迅鯨さんが去りました。
ご案内:「大通り」から嶋野陽子さんが去りました。