2015/09/29 のログ
ご案内:「歓楽街」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > ―――歓楽街の通りを、ポーチを肩にかけてゆらゆらと歩く。

目当ては、友人から教わったラーメン屋である。



そう、お腹がすいたのだ。



それも、何か見えない目的に囚われた空腹である。
適当に食べてはいけない。 よく知る味で満足してはいけない空腹なのである。

未知の味を求めて、友人から教わった大まかな道筋を辿って繁華街を行く。

谷蜂 檻葉 > 並び、行き交い、追い越し、追い越され。

一瞬見えた人の顔を覚える間も無くまた次の顔が見えるほどに混雑した道を歩く。

声や靴音、機械の音、炎が水分を弾く音。
ノイズばかりのこの世界で、空腹の中では何よりも最後の音が耳につく。


くるる、と。

鳩の鳴き声の様な音が自分にだけ聞こえた。

谷蜂 檻葉 > 暖色に輝く大小のネオンの中で、一際目立つ赤色を左。
その先見える煙草屋を過ぎた交差路を一番大きな右の通路を進んで、
配管が酷く入り組んだアパートのような建物の突き当りを左。


ポーチから取り出したメモ帳を頼りに、目的地のラーメン屋を探して中央道から路地へと進む。


何の肉かは判らないが串焼きの屋台があった。

小洒落た洋食屋らしき看板が見えた。

惣菜パンを売るカウンターだけの店があった。


きゅるるるる。

その度にお腹が鳴くのを無視して、奥へ奥へと進んでいく。

ご案内:「歓楽街」に渡辺慧さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 『らあめん』

その終着点には、
ただ固有の名前もなく何を売っているかだけが小さな木札に掛かれて軒に吊るされていた。

背の高い建物に挟まれて、袋小路の実にわかりづらい場所にラーメンを茹でる白い白煙が昇る。


そして、店の前には幾人の客らしき人影と――――

渡辺慧 > その、誰かが目指す先のラーメン屋の前で。
ぼんやりと木札を眺めていた。

食べようと思ってきたのは間違いない。
間違いないのだが――。

自らの右手を眺め、ふとため息をついた。
どうやって箸を使うか、と。

出直すか、と踵を返しかけた先に。

「―――――――あれ」

奇遇なことに、といえばいいのか。いいんだろう。それが正しい。

「……えと。……こんばんは、先輩」
そう言って少しだけ頭を下げた。

谷蜂 檻葉 > 「あ、うん。 こんばんは、渡辺君。」

思いがけない相手にぼうっと顔を眺めてしまっていたけれど、
挨拶されて我に返ったように口を開いた。


「……帰り? 美味しかった?」


こちらに足を向けたのを見て、食べ終えたのかな。と、小さく首を傾げて感想を尋ねる。

渡辺慧 > 「……いえ。……ちょっと」

右手の包帯の巻かれた手を見つめて苦笑を漏らした。
「……先輩も食べに来たんですか? ひと……りですね。なかなか豪気で」
そう言って少しだけからかいを含んだ言葉で笑う。

少しだけ、その刹那。誰かと同じように、お腹から、ふとした音が鳴って。

谷蜂 檻葉 > 店の前の客の視線を少し受けながら、この場を去ろうとしいた少年の様子を伺っていれば
自分の(おそらく)利き手を見つめて、得も言われぬ顔を見せた。


「……え、もしかしてお箸使えないの?」

気の毒に、という哀れみ半分、何で来たの、という呆れ半分の表情で回答を迫る。


「別に一人で御飯食べるくらい普通でしょ?噂の落第街でもあるまいし……
 ―――心配でもしてくれた?」

からかいには、そんな風に少しだけ楽しげに返した。
それで、そのまま少年がどう返すか待っていれば先程までの自分と同じような音が聞こえて


「お箸使えないようなら、他のお店にでも行く?」


まるで、自分も着いて行くかのような口ぶりで道を譲る。

渡辺慧 > その、得も言われぬ表情に軽く。
「さっき気づいたんですよ」

「……利き手が使えないって不便ですねぇ」
そういって、自分自身を笑いながら。

「…………まぁ」
何を肯定したか。心配していたということ自体は事実だが、それを表に出すのも違うし、かといって否定するのも違う気がした。だからこそ、曖昧に、緩く頷いて。

「……………あれ。えっと。……先輩ここに食べに来たんですよね?」
自分が何をしに来たのかはただの馬鹿でしかないが。
まるで、自分がついてくるような口ぶりに、不思議そうに首を傾げた。

谷蜂 檻葉 > 「やっぱり渡辺君、風紀委員って感じしないね。」

笑う彼に合わせるように、クスクスと口元を抑える。
こんだけ抜けてて彼の活動に支障はないのだろうか。

――― 多分、あったうえで彼のことだ。のらりくらりと躱している気もする。


「食べに来たっちゃ食べに来たけど……知り合いに会って、
無碍にするのはなんか、気が乗らないからさ。 ! ……それとも、食べさせてあげよっか?」

確かに、「今日はラーメンの舌だから」と此処まで誘惑に負けずにやってきたのだけれど
このお節介な心は、随分と手のひら返しが得意なようだ。

ついでに、冗談っぽく『甲斐甲斐しくお世話してあげるよ』と嘯いた。

渡辺慧 > 「自分でも、そうは思いますよ」

……これでいいのだろうか、という気持ちもなくはない。
それでもいいのだ、と頑なに、受け入れて同じように、クスリと笑って首肯した。

「え、いや。……本気ですか?」
ぼんやりとしていた目を、少しだけ見開いて。
受け皿が狭くなったような。そして、それを言われて、帰ろうと思っていた気持ちも、どことなく消えてしまう。
それこそ、無碍にされないのを、無碍にする。……稚拙な言葉だ。

「…………えっと。……フォークとかないもんですかね」

谷蜂 檻葉 > 「なにそれ。 それなら、図書委員にでも入ってくれない? 人手はいつだって募集中よ。」

そういって、普段は腕章が付いている部分をポンポンと叩く。
言いながら風紀委員よりももっと似合わないうな、と。
そのまま、また噴き出した。


「? ……あ、え、えっとそんな食べさしたりなんかしないよ?普通に来る間に見たお店で―――」

思った以上に真面目な反応に、少しだけ慌てたように捲し立てて、すぐにどうということはない他意のない返答に急激に落ち着きを取り戻して、ただ顔を少し赤らめた。


「フォーク? うーん、どうなんだろう。」

分からないなら、分からないといえば終わりなのだけれど


「―――すいませーん。」

さらっと、店に半身で入って二言三言。 慧が何かを言う前にさっさと店員に質問して

「あることはあるって。」

にぱーっと。 「コレで食べれるね。」と、笑みを見せた。

渡辺慧 > 「手伝いぐらいなら、いつでもしますよ。……気が向いたら」

わらわれているのを感じながら、憮然と返す。
ならいうな、と小声でツッコんで。

「まぁ。……あそこに俺がいるときにですけどね」

――――。
気のせい、だ。何かを黙殺した。

「いや、まぁ。そりゃそうでしょうけど」
「……すいませんね、上手く冗談を返せなくて」

その言葉に、自らため息をつく。
もっと、ましな言葉は――。

「って」

「……一人で食べるの嫌なら、誰かと一緒に来ればいいじゃないですかー」
気づけばとんとん拍子に進んでいた話に。
ふとした言葉をかけ乍ら。

「ありがとうございます。……御相伴にあずからせてもらいますよ」
フォークでたべる奴が隣でいいなら、と。

その笑顔に、やはり。
何とも言えない顔。――だが、どことなく、薄く笑って。
そう返した。

谷蜂 檻葉 > 「あっはは……!ごめんごめん、そう、ありがとね。
 いや、うん。渡辺君が図書館でじーっと受付やるとかぜんっぜん想像つかないな―って……ふふっ」

相手の顔を見ると、また考えてしまうのでそちらを見ないようにして、息を整える。


「とりあえず、真顔で返さなければいいんじゃないかな……。」

笑いすぎ以外に染まった頬を振って、風で熱を冷ます。


「ん。  いや、一人が嫌っていうんじゃないんだけど、なんか放って置けないっていうか。
 ついついお節介焼いちゃうっていうか……ああ、そうそう。

 ―――弟とかいれば、こんな感じなのかなーってね。 ほら、入ろ?」


そういって、中の券売機に硬貨をカラリと放り込んだ。

一番人気は焦がし豚骨醤油。らしい。

静かに 辛味噌らあめん のボタンを押した。