2016/06/04 のログ
■ヨキ > 「顔中包帯だらけだったから……よほどの大怪我か、そういう種族なのではないかとな」
言いながら、視線は室内をぐるりと一周した。
間取り、足の踏み場、床の材質、逃げ道、通路、エトセトラ。
部屋をひとつのフィールドとして捉える見方をして、しかもそれを隠しもしない。
「ヒシナカ君。ヒシナカカツロ君か。覚えておく。
このヨキは何ということのない、ただの美術教師だよ」
今の佇まいは、どこからどう見ても美術教師より戦闘術の教官であるのだが。
物好きという言には、そうかな、と至ってあっけらかんとした顔。
「物好きも何も、仕事だからな。
学園と島の平和を守るのが、ヨキの仕事」
再びにやりと笑う。三日月の唇に、ぎざぎざとした歯並び。
「風紀と公安が頑張ってくれているからと言って、教師が慢心する訳にはゆかんよ。
だからヨキは、島内のどこへでも出向く」
言いながら、活路の一歩に間を置かず二歩踏み込む。
「…………。なぜヨキから離れる?
ここは何か、宝の山だったりするのかね?」
問い質しても返る言葉などなさそうな訊き方をして、訝しんだ半眼で活路を見る。
「けもの道だとばかり思って、何度か行き来してしまったな」
■否支中 活路 > 口元にあてた指が頬を撫で、包帯同士がこすれ合う。
「ああ、まあ古傷みたいなもんで。
……美術、すか。まあこの通り、あんまその手のには親しゅうあらへんですけども」
あまりに似合わない名乗りには、なら事実なのだろうと。
学園と島の平和を守ると、正面から言われてしまえば口の端を歪めかえすしかない。
「なるほど。知らへんかったけどそういう人もおらはんのやな……」
と言っている間に二歩来た。
答える言葉に迷う。
こんな場所で初対面の相手に距離を詰めたくない。イエスだ。
自分を越えて背の高い細い男があんまり得意ではないから。まあ、これもイエスだが。
選んだのがどちらか己自身で意識する前に、下がろうとしていた体が前に跳ねた。
遅かった。
踏み入りすぎた侵入者に、襲いかかるものがある。
発生源は床。秘められたる呪の名は“絹にて包み石にて閉じよ(エムライス)”。
効果は一つ。『入った者は動けない』
ヨキの眼前で、包帯男は落とし格子にはまった。
狭くない一室の中央を起点にした呪術は、そうしてなお時速163kmで扉の元まで拡大する。
■ヨキ > 「古傷か。大層な男前であったろうに、勿体ない」
演技めかした調子も、冗談っぽさもなく真顔で残念がる。
両手を広げて肩を竦める様子は見るからに馴れ馴れしいが、
張り詰めた糸が切れればすぐに襲い掛かってきそうでさえある。
「そうさ。ヨキほど常世島に忠実で、真面目な教師は他に居らんぞ。
風紀に公安、そしてこのヨキ。島の平和を守る三本柱と言っても過言ではあるまい」
えらく主語が大きく、自信に満ち溢れていた。
そうして――二歩踏み込んだ、その足で。
「!」
落とし格子の無骨なテクスチャが視界を掠めた瞬間、ヨキの足が跳ねた。
鋭く蹴られた床の欠ける音。
ヨキの姿が一瞬、影のように黒い靄と化した――ように――見えて、金の焔の残像が尾を引く。
活路の《妖精眼》にごく一瞬の、あるいは人でない、何か異質な獣の気配は映ったろうか?
「――シ――ナカ君!」
獣の吼え猛る声が、はじめのわずか一瞬。続けざまにヨキの声。
常人には瞬くばかりの明滅ののち、ヨキが姿を現す。
その左手に、彼の身の丈を超えるほどの野太刀――
呪術に対するのは、この刹那に見せた弾丸のごとき初速だ。
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【呪術《絹にて包み石にて閉じよ》効果範囲からの脱出】
奇数:成功/偶数:失敗 [1d10→3=3]
■ヨキ > 【脱出成功】
床を踏み締め、神速からの着地。
古木の枝とも鋭利な鉱物ともつかない異形の野太刀は、青味を帯びた黒色の艶を帯びていた。
噛み締めた歯は、牙と呼ぶほかにない。
金の双眸を見開いた、獣の形相がそこに在る。
■否支中 活路 > 逃げろ、という言葉は全く間に合わなかったが、開いた口はそのまま留まった。
刹那に見えたのは黒々と燃えたる影。
瞬きを挟めば、いつのまにか野太刀を手にしたヨキが、呪の範囲外だろう部屋の入口に着地するのが見える。
ヨキから見れば、格子の幻像は既になく、部屋の中央付近で立ったまま動きを止めている活路がいる形。
全く不自由というわけではないらしい頭部が僅かに揺らす。
獣の速度に感嘆と驚嘆を抱きつつ、紡いだ言葉は既にヨキへの警戒を止めたものだった。
「違う、なんかおる!」
囚われた身が理解していた。
眼前の美術教師のように、己にも種々の師がおり、装束に仕込んだ多くの呪物が示すように、その中には魔術師達がいた。
だからわかる。違う、と。
廃城のかつての主オーランド・ウィルマースが合衆国の工作員であったことは、彼の死んだ今知る者は少なくなかった。
そも力ある言霊(コトバ)には意味がある。ディナス・エムライス。エムライスの砦。
部屋の呪術は、北大西洋に浮かぶ巨島に存在する、赤と白の双竜相眠る地の名を核として成り立っていた。
「イギリスの……」
「ブリテンと呼びたまえ」
活路の声を遮って、その背から声がした。
部屋の壁からさも当然のように現れたのは、ぴしりとしたスーツに栗毛色の髪を整えた壮年の男。
青い瞳が野太刀を見ている。
■ヨキ > 低く刀を構えた姿勢からは、美術教師の肩書も、あの親しげな様子も消え失せていた。
口端から吐き零した息が、灼けつく陽炎を残して宙に解ける。
生白い頬は焦げることさえなく、ぎらぎらと光る眼が突如として現れた男を睨みつけていた。
「誰だ」
腰を落とし、細いヒールとは思えないほど安定した正眼の構えから、重い声が飛ぶ。
・・・・・
「“ヨキの生徒”に何をする」
それだけだった。魔力も呪術もなく、抗う術さえ持たず、ただ獣であることだけを武器に。
ヨキの声は紛れもない怒りに満ちていた。
■否支中 活路 > 一瞬目を見開いた活路が、呆れをやや含んで頬を歪める。
その後ろでスーツの男が葉巻に火をつけた。
部屋を回るように一歩二歩と歩き顔を出す。
「君のような人物が教師とは……狐狩りはさぞ優秀なのだろうな」
深い眼窩の上で眉がくいと釣り上がると、額に皺がよった。
葉巻を咥え、煙を吐き出す。
「私が誰かということが、君のような異邦人にどれほど通じるのかはわかりかねるな。
それとも島外組かね?
ウオルシンガム、ディオゲネスクラブ、またはそう、オン・ハー・マジェスティーズ?
必要なら『サード』と呼んでくれたまえ。ミスター・ヨキ」
くるくると指を回すと煙が螺旋を描く。
「そして何かしたのはむしろ彼の方と言えるだろう。
オーランド・ウィルマースの残滓に近づいて、私の網にかかったのだからね。
失礼、ミスターはその名をご存知かな」
■ヨキ > 「ヨキはさぞかし根深い秘密の一端に触れたと見える」
笑う唇が震える。それが恐怖から来るものでないことは明らかだ。
「それにしたってよくよく喋る。どこぞの女王の犬か――それともここがお前の来客室 guest-room か?
不届き物を名で呼ぶ必要などない。どうせ紛い物の呼び名に決まっておる」
鼻を鳴らす。
「ヨキもお前も、この島に集う者みな異邦人 guest だ」
男を睨む視線は、微動だにしない。
野太刀の切っ先は、呪術の縄張りに紙一重で触れぬほどの距離が保たれている。
「ウィルマース?生憎と」
その返答で、ヨキが教師として置かれた立場が知れるだろう。
かつて起こった出来事を知りながら、細部まで与り知ることのできない一般教師。
「ここはよほど『何か』があったらしいな?
は、ヒシナカ君は正直者だな。嘘さえ言わずに黙り通すとは」
■否支中 活路 > 「根深い?いや、ありふれた話だよ。全く、ありふれた話だ。
この島でも、外でも、それは変わらない……何、言葉を連ねずしてどうするのだね?
知性あるものとしてはな……それに『はじめに言葉ありき』と言う」
一瞬、煙の向こうでスーツの男の瞳が感情を消した。
刀身に映った瞳は、教師を名乗るヨキを推し量るようで、すぐに消えた。
「オーランド・ウィルマースという魔術師はこの島にいた学生の一人だったし、犯罪者の一人だった。
そして何より、ある国の『我々』だった。
ありふれた話だよ。島の守り人よ。
ここは来るべきモデルだ。ここが世界になる。ここは世界で、世界はここだ。
君がゲストで私がホスト、と、そういう場合もあるだろう?」
我々という言葉がその男の所属を指しているのか、この場に居る全てを指しているのかははっきりしない。
ただピッと葉巻が刀身を指した。
ようやく活路が口を開く。
「あとからこっそりウィルマースの跡を追う奴に網張っとったわけや。
そこにかかった俺がアホいうことか。
どうせここは掘り返し済みなんやろな……公安か鉄道か知らんけどや」
「お互いに求めるものはなかったわけだが。
先生が生徒を連れて帰ってくれるというなら、私も見送ることにやぶさかではない」
行動を封じる魔術とて無制限ではないだろう。
もしもヨキが偶然居合わせ効果範囲外にいなかったなら、このジェントルマンは同じような言葉を吐いたかどうか。
■ヨキ > 「このヨキには、君よりも多くの人間と深く関わった自負がある。
例え地の底海の底に、いかなる宝が埋まって居ようと――
常世島の日常を生きぬ者に、この島のホストは務まらんよ」
男が些細な仕草を見せるたび、魔術の予備動作を警戒して纏う空気が張り詰める。
一連の言葉に、ヨキの瞳はいよいよ燃え立つように輝いた。
続く言葉は恐ろしくゆっくりと、呪詛のように吐き出される。
「島の秩序を破る者はもはや学生などではない――オー・ラン・ド・ウィル・マー・ス。
それは初めから“ヨキの教え子”ではなかったということだ。
そしてその魔術師と同じものを名乗るお前も、
ヨキの敵だ」
空気を切り裂く音を立てて、野太刀の構えを解く。
ヨキが直立した瞬間、得物は音もなくとろけてその右手へと『吸い込まれた』。
野太刀を構えている間は素手であったはずの右手に、いつの間にか指輪が戻っている。
「……彼をこちらへ返すんだな。
そうすればヨキはお前を斬らずに居てくれよう」
空の両手を広げ、緩く掲げてみせる。
■否支中 活路 > ゆるゆると葉巻から紫煙が昇っていくのもそう長い時間ではなかった。
これ以上はもたない。罠を警戒すれども、間違いなく何かを仕掛けてくるだろう。
そう判断したのか、スーツの男がトンと活路の背を叩く。
「なるほど、それが君の猟分ということか。
もちろん帰るといい、ゲストの島のホストよ」
叩かれた活路は前にだけは許可されたように動けた。
振り返りはしない。
気をとられていたとはいえグラムサイトも役に立たず完全な魔術隠蔽をかけてきた相手だ。
何が来るかわかったものではない。
そうして活路が前に歩を進める後ろで、紫煙が見る間に広がる。
ゆっくりと、スーツの男の姿が下がっていく。
「みな、秩序を守っている。
この島のその形がどうなるのか、そのために」
煙の向こうへと声が消えていく。
■ヨキ > 視界の端で活路がこちらへ向かってくるのを見ながら、
しかしヨキの目は男にのみ注がれていた。
動くものにこそ鋭敏な、犬の視覚を以てしても。
それほどまでに、ヨキから相手へ向ける敵意は大きかった。
「………………。
可能な限り、最大の人間が望む秩序こそが選ばれ――
その次に、選ばれなかった人間のためにこそ秩序は形を変えるべきだ。
つまり……」
活路が一歩ずつ近付いてくる。右足。左足。右足……
そうして彼がヨキの隣まで辿り着いた、その瞬間。
長身から掲げられていた空の左手が、不意にふっと頭上へ伸びた。
廃墟。打ち捨てられたビル。風化した壁。
不釣り合いに艶やかな黒のネイルで飾られた、指先がひたりと触れたもの――
剥き出しになって天井から首を垂れる、“ビルの鉄筋”。
「お前が真に望む形での秩序は、永劫現れぬということだ」
煙の向こうへ男が姿を消しつつあった、その瞬間。
ヨキの異能により、物理法則を超えて質量を増した鉄塊が部屋の天井を突き破る。
それまで男が在った位置、ちょうど頭上に当たるその場所へ。
車が降ってきたと紛うばかりの激しい衝撃と共に、赤錆にまみれた鉄の柱が床を覆う本を蹴散らし、圧し潰す。
■否支中 活路 > 錆びた鉄筋が床まで食い破り、轟音とともに明らかに魔術の予兆を見せていた煙も散った。
活路が、崩壊していく部屋を肩越しに振り返り、緑光をそのまま横目に流す。
赤いものは確かに散っていた。
「死んだ思います?」
口にしながら、まっすぐのびたヨキの目尻の朱を見た。
スーツの男も、この教師も秩序と言った。
突き立ち、音を立てて落ちていく鉄筋のように堅きもの。
この教師も間違いなくそうだ。
今の男も。
そしてあるいは、死んだオーランド・ウィルマースとかいう魔術師もそうだったのか。
望む秩序のために、闇でうごめいていたのか。
「……不出来な生徒で申し訳ありまへんね。助けてもろて」
講義は知らないが、男とのやり取りを聞く限り随分厳しい教師であるらしい。
■ヨキ > 鉄筋に触れているのは、あくまで人差し指一本の先端のみだった。
左手を掲げた姿勢のまま、もうもうと立ち込める埃を真っ直ぐに見ている。
天井と床を割りながらも、穴までは開けずに済ませたらしい。
まるで大黒柱のように部屋の中央に鎮座する鉄塊を前に、
声を掛けられたヨキが目だけで振り向く。「死んだかって?」。
「いいや?」
否定の言葉に迷いはなかった。
「これしきで死ぬような男に、このヨキと対等ぶって欲しくはないな」
小さく笑う。
活路に目を向けたままのヨキの前で、鉄の柱がするするとほどけてゆく。
数えきれない蛇の群れが鉄塊を形づくっていたかのように、
細い鉄筋が次々と天井へ吸い込まれていった。
あとに残るのは、階上の部屋が丸見えになった天井の大穴と、
床を凹ませた大穴――それから無残に潰れ、引き裂かれた大量の本。
「何、今回はたまたまさ。
いつかはヨキの方が助けられることもあろう。
超常の力を持つ者が揃えば、自然とそうなる」
活路の謝罪に、先ほど見せた謹厳さとは程遠い、穏やかな言葉を返す。
部屋にがらんどうの静寂が戻ると、頭上の鉄筋からそっと指を離した。
「もしヨキに少しでも恩を感じてくれているならば、
このあと夕飯にでも付き合わんかね。
異邦人街側へ通りを二本隔てた向こうに、うまい飯屋があってな」
至って軽い調子で尋ねる。
いかが?と、小首を傾げながら、出口へ向けて踵を返す。
■否支中 活路 > ヨキの否定に頷いた。
死体を確かめにいくこともない。
此処に何かあるかという期待は床と同じぐらい見事に粉砕されている。
「ありがたい偶々で」
軽い調子で応えつつ。
あるいは切られる方がよほどありそうだとは言葉にせず肩を伸ばした。
一息吐く。
体の調子は悪くない。しかも短時間で随分と消耗している気がする。
「ええですね。メシ、いきますか」
部屋の外では、廃ビルに差し込む光が真っ赤に燃えていた――
ご案内:「歓楽街」から否支中 活路さんが去りました。
■ヨキ > 言葉にならなかった活路の台詞には思い至ることもなく、能天気に笑った。
「ヨキは嘘を吐かん。
今だって、随分と『正直者』だったろう?」
“活路を返せば斬りはしない”。
刃物を使わなかったというだけの話だ。
誘いに乗ってくれた彼を先導して、荒れ果てた部屋を後にする。
「よし、いい返事だ。
それではヨキがこれから、限りなく無数の人間にとって幸福な『秩序』を味わわせてやるとしよう。
そこでは誰の好き嫌いも取り零されることがない。つまり、何を選んでも美味い」
嘯く声と共に、やがて足音が遠ざかってゆく。
ご案内:「歓楽街」からヨキさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」にセシルさんが現れました。
■セシル > 夕刻。
昼間に風紀委員の訓練をこなした後(室内の訓練でセシルは心底安堵した)、歓楽街に私用で足を運んだのだ。
魔術具などのような「便利だが必需品ではない」ものは、恐らく商店街にはないだろうと。
いつもは道の通り方にしか気をつけていない歓楽街の地図を、店の並びまで注視しながら歓楽街を、いつもよりゆっくりとした足取りで歩く。
一応非番ではあるが、風紀委員の制服を義務で着用している。それなりに目立つかもしれない。
■セシル > 今歩いている通りの中に魔術関連の品を扱っているらしい店を見つけて、入っていく。
「すみません、個人の周りの気温を調節出来るような魔術具を探しているのですが…」
そう言って店に入っていくが、
『すみませんねぇ、うちは魔法薬関係の専門店なんですよ』
と、店主の申しわけなさそうな声。
■セシル > 「そうですか…いえ、こちらこそ失礼致しました。
魔術はあまり詳しくないもので、それらしい店を手当たり次第、という有様なものですから」
彫刻めいて整った彫りの深い顔立ちを憂いで曇らせながらも、最低限の礼儀は保って頭を下げる。
『いいえ、お気になさらず。
△×通りの「ヒイラギ亭」さんが身につける魔術具を専門に取り扱っていらっしゃいますから、そちらに伺ってみてはいかがですか?』
客が空振りだったことに気を悪くする風もなく、情報を提供してくれる店主。
その情報に、セシルの顔の憂いが晴れる。
「そうなんですね…ありがとうございます」
深々と頭を下げるセシルに対し、店主は
『いえいえ、いいんですよ。
でも、魔法薬も便利ですからねぇ。もしお薬でお悩みがありましたら、是非お立ち寄り下さい。
傷薬から日焼け止め、他にも色々便利なものを揃えておりますから』
最後にPRは忘れない店主だったが、冷やかしになってしまった客に丁寧に案内をしてくれた後なので、セシルも嫌な気はしなかった。
「ええ、その際には是非。
…それでは、失礼しました」
改めてかっちりとした礼をすると、店を出て行くセシル。
日焼け止めを薦められて素直に受け止めていったセシルに対し、店主は
『どっちかと思ったけど、やっぱり女の子なんだろうねぇ』
と思ったとか何とか。