2016/10/07 のログ
ご案内:「歓楽街」にルベールさんが現れました。
■ルベール > 今日の目的は、バイト探しだった。
暴れるだけ暴れて、暴れた相手を報告するというバイトもやってはいるが、実際のところ、それだけで学費その他を賄えるほどのそれではない。
そんな中、電気屋のおっさんに仕事はどこで見つかるか尋ねたところ、お嬢さんなら歓楽街で見つかるんじゃないですか、と言われ、こうやってここに来た次第。
人だらけの歓楽街に動きやすいTシャツとジーパン姿で現れ、
まだまだ半袖の元気印の女は、うーし、と腕を回して街に乗り込んだのだが。
■ルベール > 更衣室。
畜生……畜生……とぶつくさ呟く女がいた。金色の髪はその気質を表すかのようにまっすぐに伸びていたのだけれど、珍しくちょっとしょげている。
本来なら力仕事や、荒事が一番得意な女だ。
狼を追い払うとか、山賊をしとめるとか、そういう仕事ならいくらでもこなせる。
しかし、この場所でそのような仕事はさほど多くはない。
あったとしても、パイが少ないのだから取り合いのようなものだ。
紹介状の一つも無い彼女に、そのような仕事は回ってこない。
そうなると、残った仕事は。
仕方ないとはいえ、屈辱を感じながら、んしょ、っとTシャツを脱ぐ。
汗をかくから、服を脱ぎなさい、という指示だ。
■ルベール > そのうえでジーパンも脱げば、下着姿になってしまい。
せまい更衣室でため息をつく。
そこそこ著名な魔法戦士であったし、彼女が通れば人は自ら身を退いて。
食べたいものを食べ、自由に……本当に自由にふるまってきた女だ。
今更、こんな屈辱を味合わなくてはいけないのか、と顔をしかめる。
とはいえ、この身寄りのない世界で生きていくのなら、自分の力で金は稼がないといけないのだ。
しかしつらい。羞恥にぷるぷると震えながら、更衣室で己の下着も落として、着替え始める。
■ルベール > 「……常世島は携帯電波は常に3本。 常に3本キャンペーンでーす。」
携帯電話のキャラクター着ぐるみの中に綺麗に収まった女。直方体の携帯電話の着ぐるみの中で愛想を振りまく。
足も手も出ているし、画面の部分からは顔が出ているのだから、着ぐるみというよりも公開処刑なのだけれど、だからこそ結構振り向いてくれる。
「………屋外で常に2本の場所を見つけてくれた方には、なんと賞金が出まーす」
いえー、と力のない両手を振り上げてのキャンペーン告知嬢。
とはいえ、昨日はおっさんだったらしいため、今日はそこそこ好評だ。
■ルベール > ちゃんと水着着用のキャンペーンガールとか、そういう仕事もあるにはあった。
というかここでは言えないようなお仕事もたくさんあった。
恥ずかしくて選べなかったのが本当のところだ。
夢がたくさん詰め込めるくらいに頭は空っぽではあるが、羞恥心はそれなりにあったし、奥手でもあった。
「………しかし、普通顔隠さないかね、着ぐるみってさ!」
ぶーぶーと文句を垂れる。
先ほどから子供が寄ってきては着ぐるみ部分にパンチをかまして逃げていくから、若干イライラしている様子だ。
「…新規会員様は今ならカッシュバック……きゃ、きゃっしゅばっくがついてきまーす。」
お仕事のトークは忘れない。
■ルベール > 「のがっ!?」
ガキに思い切りローキックかまされた。
流石の紅のルベールもがくん、と体勢が崩れかける。
振り向きたくても着ぐるみ内部では振り向けないから、振り向いたころには子供はダッシュで逃げている。
「………こ、こんにゃろ………」
ぶちーん、とキレた。わなわなと震えながら指を擦ろうとして、はっ、と気が付く。
炎は自分には全く効かない。それは良い。
だがここで出して着ぐるみが燃えたらどうなる?
「……常に3本キャンペーンでーす。」
………………こんなところで全裸になる趣味は無かった。
我慢をしながら、明るい声を張り上げる。
■ルベール > 「ふぐぁっ!?」
またローキックをされた。
がくんと膝をついたところで、ゲラゲラと笑い声が聞こえて。
我慢の限界を迎えた。
「こんの………クソガキがぁぁあっ!!!」
許さん、とばかりに走り出す携帯電話。
アンテナをぶち折ってその手に握り、携帯電話は人込みをかき分けて子供を追う。
怒りの余り炎までちょびっと出始め、着ぐるみをちりちりと焦がして。
途中で全裸になりかけて川へ飛び込んだのは秘密だ。
ご案内:「歓楽街」からルベールさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > 夜。歓楽街の大通り沿いにある、とあるゲームセンター。
島内トップクラスの難度を誇る、異能者向け弾幕シューティングゲーム「紅蜻蛉」の筐体の前で、
真っ白に燃え尽きてしまったかのように座り込んでいるヨキが居た。
ディスプレイに表示されているのは、二面ボス戦中でのゲームオーバー画面だ。
すぐに画面が切り替わり、オープニングムービーに戻る。
「み……見えない……」
あろうことか、ケアレスミスでの被弾だった。
去年に養護教諭蓋盛と会ったときには、まぐれとは言え四面まで到達出来たはずだ。
それが人間の視力となった今では、弾幕のピクセル単位の隙間を視認することが困難になっていた。
とは言え、それでもヨキはヘビーゲーマーと呼んで差し支えない程度の腕前ではあるのだが。
獣の動体視力にどれだけ頼り切っていたかを突き付けられて、こうして脱力しているという訳だった。
■ヨキ > 息をついて、立ち上がる。
ニッチなタイトルだけあって、人待ちが出るほどではない。
後ろへ振り返ると、そこには対戦格闘ゲームが一通り並んでいる。
学生が熾烈な対戦を繰り広げる、自分も飽かずやり込んだ筐体を何気なく遠目から覗き込む。
無言の感嘆と溜め息。
どういう思考でその動作や技を選ぶか、ヨキは一から十まできちんと把握し理解している。
だが獣人であった頃には、画面のごくわずかな明滅さえ判別出来たものだった。
やれやれ、とでも言いたげな顔を作って、フロアを見渡し、手のひらで首筋を擦った。
実のところ、夕飯を済ませたのち結構な時間をこの店で過ごしていたのだが、まだ長居するつもりらしい。
■ヨキ > 格闘ゲームで馴染みの学生と五分の戦いを繰り広げ、再度挑戦した「紅蜻蛉」は辛うじて三面の序盤まで進む。
自販機が並ぶ休憩スペースへやってきた頃には、肩が落ちそうなくらい疲れていた。
「はふーー……」
長椅子から緩く足を投げ出す。
眼鏡が度入りの近眼用に戻るまでに、そう時間は掛からないだろう。
買い求めた茶のペットボトルの蓋を開け、ぐびぐびと一気に飲む。
強い酒でも飲んだような息の吐き出し方をして、首を左右に小さく鳴らした。