2016/12/11 のログ
ご案内:「歓楽街」にセシルさんが現れました。
セシル > 歓楽街の通りの一角。
風紀委員がとある店の前でスタッフと話しているようだ。

「…それで、この効用を持つ品物であれば取り扱いに届け出が必要だと思うが、その届出証はどこに掲示されている?
店の正面には見えんようだが」

何やら魔術関連の商品を取り扱っている店の、取り扱い物が問題になっているらしい。
太く中性的な声を冷静に正面からぶつけられて、しどろもどろになっている青年が見える。
風紀委員たる中性的な人物と背丈、体格に差はなさそうだが、気迫とでもいうべきものか、で格が違うのはほとんどの者に感じられるところだろう。

セシル > 『す、すみません、上司を呼んできます…!』

青年が風紀委員—セシルに根負けするまでに、さほど時間はかからなかった。
逃げるように店内に駆け込んでいく青年。

「…まったく…付随効能の高い魔術製化粧品は洒落にならんと散々広報されているだろうに…」

その様子を見て、溜息を吐くセシル。

常世祭も、いよいよ今日で終わりだ。
主に授業で単位を取っている学生達の出店は、外からの客が大分帰ってしまっているため、自分達も授業再開に向けた準備をするためなどの理由で閉店・縮小しているものが多い。
しかし、経済系部活動に単位取得を依存している学生や、そもそも「表」に存在を認められていない者達は、そうではない。
寧ろ、祭りが終わる寂しさという心の隙を突いて、際どい商売をしようというものが湧いてしまったりするわけで…この場でのセシルのように、巡回は相変わらず普段より厳重に続けられているのだ。

無事に終わるまでが、常世祭…祭りである。

ご案内:「歓楽街」に八百万 頼さんが現れました。
八百万 頼 >  
風紀委員さんも、大変やねぇ。

(彼女の後ろから声を掛ける。
 いつから居たのかは定かではない。
 少なくとも、店員の青年とのやり取りのさなかには居なかったはずだ。
 それは彼女からも青年の反応でわかる事だろう。)

せやけどあんまり店員さんいじめるんも止めといたげて。
あの反応言う事は、その辺の事あんまりようわかっとらんやろ。

(だと言うのにそのやり取りを見ていたかのような言葉。
 彼女が振り向けば、人の良い猫のようなニコニコ顔が割りとすぐ近くにあるだろう。)

セシル > 突然、「湧いた」ような気配。
頼の方を振り向いたそこには、相変わらず厳格そうな顔と、容易に距離を詰めさせないと言いたげな、青い瞳。

「いじめのようになってしまっているのを全否定するつもりはないが、彼個人を追求したつもりは無い。
…それに、自分達が取り扱っている商品にまつわる、最低限のきまりくらいは把握しておいてもらわねば困るからな。

…さて、「彼」とは話が出来れば良いのだが」

そう言って再びセシルが店の方を向く。
そこには、セシルよりやや背が高くて少し恰幅の良い、20代後半と思しき男性の姿があった。
部下の青年から、よほどセシルのことを恐ろしいと聞かされていたらしい。びくびくしていた表情は、実物のセシルを見てやや緩んだ。

…その様子を見てセシルの眉がわずかに動くのを、頼の目は捉えられただろうか。

八百万 頼 >  
(険しい顔を向けられても、相変わらずニコニコと余裕を崩さぬ猫のような笑顔のまま。
 彼女とは対照的に、警戒心を抱かせない人懐っこい表情。
 もっとも、彼女からすればそれは逆に警戒心を抱かせるに充分だろう。)

バイトの子ぉなんてそんなもんやで。
ましてどないしても浮かれてまうお祭りなら尚更や。

「お話」、出来るとええな。

(店の奥から出てきた店長らしき人物に目を向ける。
 彼の表情が緩んで、彼女の眉が少し動いたのを見て、面白そうに口の端を僅かに吊り上げた。)

セシル > 「…そういう軽い話で済んでくれれば、有難いがな」

頼の言葉には、そうとだけ言い返した。
店長らしきその人物の正面に立って、改めて話を切り出すセシル。

「お呼びだてして申しわけありません。
…ただ、先ほどの彼が呼び込みに使っていた商品は、取り扱いに届出が必要な種類のものに聞こえまして。
店頭にその届出証が見えなかったので、お尋ねしていたところだったのです。
届出証は、どちらに掲示されていますか?」

慇懃に、穏やかに。しかし中性的な太い声を弱めること無く、真顔のまま男性に話しかけるセシル。
その落ち着き払い方と静かな威圧に、男性の表情が再び引き締まる…だけではない。
何か後ろめたいことがあるのか、少し血の気が引いたようにも見える。

八百万 頼 >  
(彼女らが話しているのを聞いている。
 これは確実に届出はしていないだろう。
 縮こまっている店主らしき男性と詰め寄る彼女を尻目に、自身は店頭に並べられている商品を眺めている。
 なるほど、彼女の言うとおり、これは届出の必要な類の商品だ。
 店の壁を眺めても、それらしい届出証は提示されていない。
 完全に言い逃れの出来ない状況である。
 商品を棚に戻し、店主の方をなにやら含みのある表情で見る。)

セシル > セシルだけではない。その後ろの軽薄そうな青年すら何やら含みのありそうな視線で見つめてくるのを感じて、男性の身体が小さくなったように萎縮している。
セシルよりやや背が高いくらいで、横幅に至っては言うまでもない程度の差があるのだが…今は、そうは感じられなかった。
味方がいない状況は、男性の心を折ってしまったらしい。男性は、俯いて、しょぼくれきって、ぽつぽつと白状し始めた。

『す、すみません…
普段は置いてないんですけど、せっかくの祭りだし、余っててもったいないから、って安く融通されて…』

「………それで、気持ちが緩んでしまったというわけか」

呆れたように息をつくが、相手が協力的なのでその雰囲気は幾分緩んだ。
…もっとも、恐らくとどめを刺したのが背後の頼の雰囲気だろうことが想像出来るのが、セシルとしては多少面白くない。男性はもちろん、頼に対しても、警戒を切るようなことはしなかった。

八百万 頼 >  
(おとなしく白状した男性。
 表情は変えぬまま、裏につながりのあるような人間ではない事を把握する。
 もし突っぱねるようであれば、ちょいとばかし「悪戯」をして店主に貸しでも作ってやろうと思っていたのだが。)

おっちゃんアカンで。
祭り言うてもルールは守らな。
みんなちゃんとルール守って商売しとるんやから、

(店主を責める様な口調。
 ニコニコ笑ったまま、と言うのが店主にとってはより恐怖を感じるかもしれない。)

どうする、風紀委員のお姉ちゃん。
届出無しに営業しとったら、どのぐらいの罪なるんやったっけ?

セシル > 『…う、うぅ…』

頼にまで責められて、ますます小さくなる男性。
頼に尋ねられたセシルは

「…届出の種類にも複数あるからな、逸脱の程度による。
…違反があの種の商品のみであれば二週間の営業停止、その他の違反に応じてそれ以上、といったところだな」

と、表情を厳しく引き締めたまま答えた。
…それから、改めて正面の男性を見て、

「詳しいお話をお伺いするための人員を要請します。
ご協力、頂けますね?」

と、作った声のまま、淡々と問う。男性は頷いた。
そして、店頭でしょぼくれる。
セシルは、店長から少しだけ離れる際、頼の傍で

「…協力には感謝する」

と、素っ気ない調子で言ってから、頼からも距離を置き、無線で委員会に連絡を取り始めた。

八百万 頼 >  
ま、次から気をつけることやな。

(ぽん、と店主の肩を叩いて。
 かわいそうだがルールはルールだ。
 仕方ないだろう。)

――そんな警戒せんといてーな。
怪しい人間やないよ、ボク。

(彼女が無線での連絡を終えるまで待ってからそう声を掛ける。
 ほら、こーんなに怪しくない、なんて言いながら手を広げるのだが、誰がどう見ても怪しい。)

セシル > 頼がポンと店主の肩を叩いてやった後、ほどなくして応援人員がやってくるだろう。
店の前から人払いがなされようとしている。

「…いや、野次馬にしては随分「見ている」ものだと思ってな。
私のことも、すぐに「気付いた」ようだし」

この島で、セシルの性別に一発で気付く人間はあまり多くないのである。
…それに何より、頼がこの店に向ける目線が野次馬のそれにしては随分分析的であるのを、セシルは感覚で感じ取っていたのだった。

八百万 頼 >  
職業柄そう言うことに詳しゅうてな。
そう言うことに敏感やなかったら、やっていけんわ。
だいたいまず声が女の子やし。

(低い声を出していても、男性の声と女性の声の違いはある。
 彼女には言わないが、風紀委員の主要な人員は大体覚えていたりもするし。)

それも、職業病やな。
こう言う突っ込めそうなとこがあったら、じーっくり見てしまうからな。
目ざとくなけな、やれませんわ。

セシル > 「ははは、私のこの声を「女の子」と呼ばわる人間はそういないぞ?
純粋な男の声とは違っても、「だから女の声だ」と認識するにはなかなか至らんからな」

声は笑ってみせるが、目は笑っていなかった。
性別自体は、隠した方が顕著に都合が良いを覗けば隠さない。わざわざ表立って主張することが少ないだけだ。
結果、この島ではまず誤解されるところから入ることが多いのだが…少なくとも、目の前のこの軽薄そうに「見せていた」青年は、違ったのである。
セシルは、訝るように眉をひそめた。

「…しかし、「職業柄」、「職業病」…か。
そこまで言うのならば、素性くらいは明かしてくれても良さそうなものだが?

………「職業柄」知っていそうだが、先に名乗っておく。セシル・ラフフェザーだ」

そう言って、自分の学生証を出してみせる。セシルの視線は、先ほどの店主に向けていたものより、よほど鋭いものと感じられるだろう。

八百万 頼 >  
女の子の声ぐらい聞けばわかりますわぁ。

(常世のプレイボーイを自称している自身である。
 そこを聞き違えたら、女の子好きの名が廃ると言うものだ。
 少なくとも、それは本心で間違いない。
 それは表に出さぬように、軽薄さを何重にも纏わせているのだが。)

あら、女の子に先に名乗らせてしもた。
ご丁寧にどうも、情報屋やらせてもろとる八百万 頼言います。

(右手の手のひらを上に向けて差し出せば、どこから取り出したのか学生証が。
 勿論偽造されたものだが、実際に学生番号で検索すれば、その通りの名前が出てくるだろう。
 最低限の情報だけが登録された名前が。)

セシル > 「「境界」にいる男女の声を、よほど聞き分けてきたと見えるな?」

呆れきってもはや感心に転じているような調子で言う。それでも地声を出さない辺り芸は細かいが。

「情報屋のヤオヨロズ ライ…か」

高度に偽造された学生証を、流石にそうとは見破れずに確認する。
漢字は「漢字」としては認識出来ず、音だけを聞いて名前を認識する格好だが。

「………しかし、情報屋ならばここに留まらせておくわけにはいかんな。
風紀委員会(われわれ)は違反に応じた責任を負ってもらうことが目的であって、この店を潰したいわけではないのだから。

…というわけで、「ご協力頂けないだろうか?」」

冷静な表情と、やたら慇懃に畏まった「協力要請」。
頼をこの場から遠ざけたいのがありありと伺えるだろう。「協力要請」に対して渋ったら、次にどんな対処が待っているかも。

八百万 頼 >  
知っての通り、常世にはいろんな女の子が居るよってな。

(に、と笑う。
 勿論、声だけではなくあらかじめ知っていたと言うこともあるのだけれど、それはあえて言葉にはせず。)

ご協力出来る事やったら、いくらでもしましょ。
ご協力出来ひんことやったら、お互いに出来るとこまで譲り合いましょ。
ま、ボクかて別にこの店潰そ思とるわけやないし、職業柄風紀委員とは良いお付き合い出来ればええなと思ってますさかいに。


(特に風紀委員と衝突する理由もないけれど、ゴリ押しで押し通せると思うなと言外に。
 しかしこの場は従うことにしよう。
 振り返り、)

――ああ、そういえば昨日、落第街の方で人身売買の違反組織が一つ潰されてましたなぁ。
誰がやったんやろうなぁ、あれ。
小規模とは言え、ああいうの一つ潰す言うんは、怖い奴らやなぁ。

(首だけ向けて、狐のような笑顔。)

セシル > 「男だって多様だろう。貴殿も含めてな」

女好きを匂わせる様子に、軽く鼻を鳴らしつつも肩をすくめてみせる。
呆れがほとんどだが、そこには幾分の不快感の表明が混ざっているかもしれない。

「私としても、むやみに貴殿と争いたくはない。先ほども言ったが、協力には感謝しているしな。
…だが、私にも立場上譲れぬ点はある。そこだけは、理解して頂きたい」

「情報」が強力な武器たりうること、全く考えの及ばないセシルではない。
…セシルは、目の前の男の取り扱いに困惑していたのだ。つけこまれないよう、冷静と慇懃、威圧の皮を、丁寧に自分の表面に被せながらも。

「………詳しいことは、申し上げかねる」

狐のような笑顔を向けられて、ますます険しくなるセシルの顔と声の調子。
風紀委員が騒ぎを聞きつけた時には全て終わっており…敵対組織との抗争か、それともある種の「自警団」の仕業か。
…どちらにしろ、風紀委員会としては厄介な事態には違いないのだ。

八百万 頼 >  
(男も女も、人間には色々居る。
 だからこそ面白いのだ、人というヤツは。
 彼女の答えに満足したように、にんまりと笑って。)

ま、何か欲しい情報ありましたら、どうぞごひいきに。
セシルちゃんにはお安うしときまっせ。

(ひら、と手を振って歩き出す。)

――鋼ちゃんに、よろしゅう言うといてな?

(去り際に、そんな言葉を残して。
 その後かその前か。
 何かに気をとられて視線を外した隙に、その姿は綺麗さっぱり消えうせているだろう。)

ご案内:「歓楽街」から八百万 頼さんが去りました。
セシル > 「………考えておく」

やたら、重々しく、区切り気味に発声された返答。
苦みばしった表情から、実質的な答えは丸分かりだろう。特に、頼のような人間にとっては。
しかし、最後に残された言葉には、驚愕に目を見開いて。

「………ハガネ?貴殿は、彼女の…?」

動揺の隙に、頼は既に姿を消している。

「………。」

疲れたような、大きな溜息を吐く。
それでも、気分を切り替えるように頭を振ると、応援人員のリーダー格に自分のやることなどを確認して、そして巡回に戻ることになった。

常世祭は、もうすぐ終わるがまだ終わってはいない。
終わった開放感に身を委ねるのは、本当に終わってからで良い。

セシルは、歓楽街の大通りを歩いていった。

ご案内:「歓楽街」からセシルさんが去りました。