2017/05/06 のログ
ご案内:「歓楽街」に真架神 鏡弥さんが現れました。
真架神 鏡弥 > ──随分とまあ久方ぶりに帰って来てみたわけだけど。

日も落ちて久しいにも関わらず、賑やかな往来を歩きながら、男とも女ともつかない人影は思う。
この街は、この島は、変化に富みながら、その実全く変わらないと。
藤の花が描かれた高価そうな着物を、外套の様に羽織った姿は現代的な街の中に在って酷く浮きそうなものだったが。
不思議な事に、通りを往く誰もが、その異様さに気付くことは無かった。

すれ違う通行人にぶつからない様にだけ気を付けた、気儘な足取りで通りを進むその人影は。
頭上に瞬くネオンを見つめる様に、眩しげに道行く人々を眺める。

真架神 鏡弥 > この姿に成ってから、もう何年の時が過ぎただろう。
十や二十じゃとても足りない。百や二百でもまだ足りない。
だのに、こうして眺める人々の顔は、何年経とうが変わらない。

「ヒトの笑顔を見るってのは、いつまでたっても気持ちの良いもんだ。」

くつくつと笑いながら、ふと足を止める。
大通りから一つ逸れる路地の先に、何かある。

「──そして、こういうとこも変わらんのな。」

ふぅ、と溜息を漏らすと変わらぬ足どりで路地に入っていった。