2017/05/07 のログ
■真架神 鏡弥 > 路地を進んだ先には、二人の男と一人の少女。
男は相当酒が入っているらしく、少女に性質の悪い絡み方をしている最中だった。
──やれやれまったく。
本当に、いつの時代も人間って奴は変わらない。
乱れた服を正す余裕も無いほどに怯えた少女を一瞥し、それから一歩、また一歩と男たちへと近付いた。
「春の陽気に当てられたか知らないけれど、そういうのは感心しないな。」
突如現れた存在に、あからさまな威嚇を放つ男たち。
お楽しみを邪魔されたのだから、無理もない。だが、同情の余地は全く無い。
さて、どう懲らしめてやろうか、と口元に笑みを浮かべるのを見て男たちは更に激昂した。
■真架神 鏡弥 > 「──やれやれ。」
口汚く罵る男の前に。
突然、全く同じ顔が現れる。
「そんな風に怒鳴り散らしていたんじゃあ近所迷惑というものさ。」
呆気に取られる男たちに、一歩、また一歩と歩み寄って。
「ところで、同じ顔の人間に会うと長生きできないという話は知ってるかな?」
ニヤリ、と対面する男と全く同じ顔が笑みを浮かべた。
初めは呆気に取られていた男たちも、突然の変化、そして台詞の異様さに次第に顔を青白くさせる。
ニタニタと笑みを浮かべたまま此方を見ている同じ顔の男から逃げるように、男たちは路地の奥へと逃げて行った。
■真架神 鏡弥 > 「大丈夫かい?立てる?」
男たちの気配が表通りを歩く人々の中に消えたのを確認してから、その場にへたり込んだ少女へと声を掛ける。
既にその顔は先程まで居た男たちのどちらでもない。男か女か分からない、中性的な、絵に描いたように整った顔立ち。
にっこりと優しげに微笑んでから、そっと少女へと手を差し伸べた。
「これに懲りたらもう少し夜道の一人歩きは気を付ける事だね。
今回は不良たちで済んだけどさ。」
手を取って立ち上がらせ、そのまま表通りへの道を指し示す。
先程の男たちが去っていったのは別の道を促し、少女がその場を立ち去ったのを見送る。
送っていった方が良かっただろうか、と思い至ったのはすっかり少女の姿も見えなくなった後のことだった。
■真架神 鏡弥 > 「まあ、いいか。
案外平気そうだったしね。ここのヒトは本当に強い。
いや、強いと言うか……頑健だ。」
心も体も。触れただけで割れそうな自分とは大違い。
そんな風に嘯きながら、通りへ戻る道を歩き始める。
「それにしても、本当に遭遇したのがただのヒトで良かったね。
月の明るい夜には、ヒトじゃ無いものだって浮かれてしまうのだから。」
一度足を止め、少女が男たちに絡まれていた場所を振り返る。
既に誰も居ないその場所を見つめた後、男とも女ともつかない青年は、ふわりとその姿を消したのだった。
後には空の月を映した手鏡だけがその場所に残されていて──
ご案内:「歓楽街」から真架神 鏡弥さんが去りました。