2015/06/30 のログ
ご案内:「落第街大通り」に焔誼迦具楽さんが現れました。
焔誼迦具楽 > 「――はあ、本当に……人間の町はいい」

【落第街の大通り。
 この街がまるで似合わない、小柄で華奢な少女が歩く。
 少女が通り過ぎると、火を扱っていた露店から、火が消える。
 店の前を通り過ぎただけで、料理屋の厨房から困惑の声が上がる。
 しかしその程度の出来事、この街では大した騒ぎにもなりはしない】

焔誼迦具楽 > 「食べ物に困らないと言うのは、何よりも素晴らしい事だ」

【満足げに、鼻歌など歌いながら少女は大通りを歩く。
 そこかしこから美味そうな匂いは漂ってくるが、どれもまだ青い。
 まだ食べるには早いが、このままいずれ熟したときには、舌が溶けるほどに美味な果実になるだろう】

焔誼迦具楽 > 「ああ、ほんとうにここはいい島――っ?」

【ぶつかった。
 はねのけられるように、一歩二歩と後ずさる。
 何だと思って見て見れば、そこには大柄な男。
 なるほど、どうやら初めての大通りに気分がよくなりすぎていたみたいだ】

『おい、ガキ。
 なにぶつかってきてんだァ?』

【男の米神がピクリと動く。
 なにやら虫の居所が悪かったらしい。
 いや、少女があまりにこの場所に似つかわしくなかったからだろうか。
 なんにせよ……さて、どうしたものかと考える】

焔誼迦具楽 > 「……ごめんなさぁい。
 ちょっと浮かれてたみたいでぇ……」

【瞳に涙を浮かべてやや前傾姿勢。
 そのまま上目遣いに、赤い瞳で男を見上げる。
 髪を耳に除けるように引っ掛ければ、首をわずかに傾けて、間延びした甘ったるい声を出す。
 少女の身形は、特別整っているわけではない。けれど、その仕草が似合わない程ではなかった。
 男は一瞬、気勢を削がれたように言葉を詰まらせる】

焔誼迦具楽 > 『……アァ、謝ってすむと思ってんのかァ?』

「そんなぁ。私に出来ることなら何でもしますからぁ、許してくれませんかぁ?」

【少女の言葉に、男は露骨に口元を歪ませる。
 そんな男を見上げたまま、少女は演技を続けた。
 そして男が少女に手を伸ばし、肩をつかもうとしたところで。
 男は急に震えだし、顔色が青ざめていく】

ご案内:「落第街大通り」にクラスカさんが現れました。
クラスカ > (巡回のために落第街を訪れていきなり、男が少女を恫喝している場面に遭遇する)
(だからと言っていきなり正義の味方面をして割って入るのはある意味でお約束に反する)
(常世学園で外見の虚弱さや佇まいが強さの指標にならないと、少し慣れた人間なら理解できる法則がある)

(半身を建物の影に潜ませると、そのまま成り行きを見守ることにする)

焔誼迦具楽 >  

『な、なんだ……急に……寒く……】

【震えだした男は程なくして立っていられなくなり、崩れるように膝を着く。
 そんな男に、少女は気遣うような視線を送り】

「大丈夫ですかぁ? 体調には気をつけないとだめですよぉ」

【白々しくそう言って、男の横をすれ違って去っていく。
 ソレと同時に、男の影から黒いモノが這い出して、少女の足と同化するように溶けていく。
 様子を見ている相手には、まだ気づいていない】

クラスカ > (男が崩れ散る様はある意味予測できた結末)
(常世で男性と女性の全面戦争が開戦された場合、女性勝利のオッズが間違いなく高いほど、常世島では特に若い女性は危険な存在とされている)

(が、少女が威圧したわけでもなし、魔術を使う動作も皆無)
(男の方から手を出したにも関わらず、逆に萎びてしまった)

(足元から這い出た黒い塊が理由であると気付いたのは、間もなく)

(「あの子は何をした?」)

(いぶかしみ、引き続き闇と同化し続ける)

焔誼迦具楽 >  

「……まぁっずい」

【見られている事にも気づかず、その味に、少女は顔をしかめた。
 まったく災難だった。いや、ただの不注意と言えばそれまでなのだが。
 今の人間は、まったく少女の好みではない。悪人であることと、壊れている事はちいともイコールでは結ばれないのだ】

「……しかし、早いところ固めなくては。
 アレの真似はつまらんし――」

【性格や口調の事である。
 今はこれまで食してきた人間のものが混在しているような有様だが……人に紛れるならある程度固まっていた方が良い。
 ……ついでに口直しもしておきたいが、と。
 そうしてあたりを見回して、自分を伺っている気配に気づく。
 だが、見られたからと困ることもさほどない】

「…………」

【しかし、誰かを食すわけにはいかないな、と思い。
 大通りのわきへ逸れ、路地裏へと向かって歩き出す。
 口直しはしておきたいが、今は大人しくしておくべきだろう、と】

クラスカ > (魔術が行使される際にはどんな形であれ必ず魔力が発生する)
(多少離れていても、魔術に連なる現象であれば、微量の魔力でも肌で感じることができる)
(そうでないとすれば異能であるか)

(ヒトを越えた異能の外にある、怪異の類)

(背の低い、まだ少女と呼ぶべき華奢な身体は限りなく人間のもの)
(黒いつやのある髪も、同色のセーラー服も、彼女の「らしさ」を高めはしても、違和感にはなりえない)

(やられた男の方はどうだろうか)
(まだ息は残っている。与えられた災いは、命を容易く奪う致命傷とは異なる、何か)

(見送るか、咎めるか。単純な二択だ)
(今派手に動くことが、どんな結果を齎すか考えれば)

(「まあいいか」)

(そのまま身を翻し、焔誼と反対の方向へ歩き出す)

焔誼迦具楽 > 【去っていく気配に、僅かに振り向き赤い瞳を向けた。
 見えたのはおそらく、男の後姿】

「……まあ、いいか」

【今日の外出はここまでだ。
 時間はいくらでもある。ゆっくりと、この島を、人間を楽しめば良い】

「キキ――本当に――」

 ――愉しめそうだ――

【愉快そうな哂い声を上げながら、怪異は路地裏の影に消えて行った】

ご案内:「落第街大通り」から焔誼迦具楽さんが去りました。
クラスカ > (「人を襲う可能性がある獣」を解き放った事実に多少の追い目は感じる)
(アレが常世学園に対する直接的な危険であれば荒事に対して実働する組織が出張って来るはずであるし)
(知能がある以上、不利になりそうな目立った動きは控えると踏んでの決断)
(何かあれば責任追及されるかな、と自重しつつ)

(ただ一点、心に残る引っ掛かり)

(彼女の背を一段低くした容姿の女生徒を学園内で見た気がするのは、気のせいだろうか)

……うーん。

ご案内:「落第街大通り」からクラスカさんが去りました。