2015/07/13 のログ
ご案内:「落第街大通り」に亡坂さんが現れました。
■亡坂 > 「……夜はしっかり眠らせてもらいたいんだけど。…ねぇ、それ、話が違うよ。」
落第街大通り、中心からやや外れた、建物も少ない海沿いに近い区域。倉庫が乱立する。
ばたばたと生ぬるい潮風が吹いてくる。かすかな苛立ちを押し隠すようにし
無表情な少年が、旧式のPHSを耳に押し当てて会話している。
―ここいらでは不法に発掘された旧世界の道具に、魔術式で一時的に魔力を書き込み
利用しているような使い捨ての品がたくさんある。危険なものでなければ所持自体は違法ではない。
もちろん金銭を払えば、再利用できる… でも、もう魔力が切れそう。
■亡坂 > 「もしもし。……もしもし?
………。」
何らかの"取引"の破棄の予兆を感じ、やや眉根を寄せる。
左肩口の空間が渦を巻き、異界の獣が顔を表す…
『主ソノ者ハ紛イ物恐ラク真ハ既ニ会話デキル状態ニ無イ』
どういうことだ、と獣…イスクに横目を向ける。
この電話の相手は偽者で、本物の相手は既に会話できる状態ではない。
ということらしい。
「………」
ぴ、と音を立てて電話の音を切る。
最近は割に合わない活動が多すぎる。眉根を寄せ、舌打ちする。
■亡坂 > 「表に戻ろう。KOMAに何があったか知らないけど…
オジさんに聞けば何かわかるかもしれない」
KOMAというのは本来話すはずだった相手の名で、たぶん本当の名ではない。
獣のほうも見ず、電話をポケットに突っ込みんで早足で元来た方へ戻る。
直ぐに表通りを示す、塗装がはげて曲がった標識が見えてくるだろう。
そして、景気の悪い顔つきの人が通り角に座り金銭を請い
治安の悪い顔つきの人が鋭い目つきで往来を見張っている。
繁華街ほどでは無いものの、この時間でも明かりのついている店は多い。
もっとも、あえて明かりをつけず、CLOSEの札を出したままの店もある。
『身ヲ弁エロ承知シテイルナ』
「わかってるよ」
■亡坂 > ナキサカの向かう店もそういった場所だった。ずっと修繕していないような古ぼけたコンクリート。
もっとも、ここではそんな見た目の方が都合がいい。ドアを開ければ直ぐに鉄の階段が続く。
時々ジリジリと音を立てる青白い照明を頼りに、地下一階、二階を通り過ぎる。
「帰リタイノカ」
『突然、何。』
『急グ様ニ見エル』
「急いでるよ。僕の命がある内に終わらせなきゃ。でもまだやる事がある」
地下三階。鈍色に光る踊り場の横の、同じ鉄で出来た重たいトビラ。取っ手は無い。
扉に刻まれた何がしかの―渦に似た文様に、肘まである手袋を脱いで広げた左手を押し付ける。
「…」
びりりと掌がやけつくような感覚を覚え、かすかに眉を潜めた。
そのまま扉を押せば、重い音を立ててそれが開く。
十分に開いた後、文様の転写された左手を面倒くさそうに手袋で覆い隠す。
この文様は48時間続き、その人間の指紋が記録される。
セキュリティとはいえ、ナキサカにはその痕跡を残すのがとても嫌なことに思えた。
■亡坂 > 「いらっしゃい」
「………こんばんは」
扉の内側は、狭い感じのするバー。一見、何の変哲も無いのが不気味なくらい。
カウンターでグラスを拭いているのは50代くらいの男性。左の中指が無い。
縦長の構造で、奥は意外と広く、手前にカウンター、中ほどにいくつかのテーブル、奥にビリヤードとダーツの施設とピアノが置いてある。
誰が弾いているのか判らないが静かなピアノの音と、何人かの客の姿が見える。
照明は意図的に暗くしているようで、何をしているかまで良くわからない。
このような場所にあって、もちろん普通のバーという訳ではないだろう。
「KOMAに会えなかったのか?」
「会えなかった。次は誰に会えばいいの。」
「……すまんが、すぐにやってもらえるようなことがない」
「困るよ。8月までに3層目とコネ持たなきゃいけないのに」
「ふーむ」
「"ワタリガラス"は断ったのか?悪い条件じゃないだろ」
「…その話しはしないで。僕は常世で渡りのことを共有するつもりはない」
カウンターに腰掛け、ウォッカを注文してマスターと囁き会話を交わす。
元世界では成人で、わりと飲みなれている。この世界の法律は知ったことではない。
■亡坂 > このあたりに、自分のような子供は… 意外と現れないことも、ないのだ。
彼はそういった事情のある子供に仕事を与えている。
「ナキ、ピーナッツ食べるか。」
偽の名前。安易過ぎたと思いつつ
活動の関係で、この人には正体を隠し通すことはできない。
良さそうな人柄はけして"善"だけから来るわけではないことはよく承知していたし
だからこそ、彼と話すのはいくらか気が楽に思えたし、向こうもそれを判っているようだ。
ただし、彼はイスクを良く思っておらず、自分の前に見せることを嫌がる。
「悪いけど、僕、ピーナッツ好きじゃない。…ようかん、置いてないの。
持ち込み料を取ったりしないんなら、ここで食べてもいいかな。」
「……お前な…こんな所に羊羹がある筈がないだろうが。まあ、かまわん」
「どうも」
ウォッカを手にしたまま、涼しい顔でリュックからビニールにつつまれた羊羹を取り出し
包みをむいてかじってから、横の小皿に添える。
「明日は学校に行かなきゃ。」
「お前の学生証は本物なのか?」
「残念ながら本物だよ。」
■亡坂 > 「僕はオジさんが思ってるほどアングラな存在じゃないからね」
何とも言えないぬるい笑顔で一笑された。
だいたいここのセキュリティは何、手が痛い、と文句の一つも毀れたが。
ここでは飲み代は必要ではない。
そのぶん、ある程度身柄を握られることと、確実な仕事の遂行によって
経費から支払われるシステムになっている。若い、貧しいものがここへ現れる理由だ。
「次は何処に顔出すつもりだ?」
「…答える必要があると思えない」
「さぞモテるだろうよ、お前は」
「そうじゃなきゃ困る」
■亡坂 > 羊羹をかじり切り、半分も空けていないグラスを置いてしまうと
猫のようにそろっと席を立ち、薄暗い奥へ向かう。入った扉からは出られないのだ。
裏口に、別の扉がある。
「じゃ。」
そっけなくそれだけ告げて、静かに姿を消した。
ご案内:「落第街大通り」から亡坂さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にソワカさんが現れました。
■ソワカ > (まさかくじにあたるとは思っても見なかった男装姿だった。
入手した札束を数え――酒場に乱入してこう叫ぶのだ。
飲めよ、歌えよ、憂鬱なんて忘れて騒ごうと。ふと気が付いた。スーツは乱れまくり。髪の毛ぐちゃぐちゃ。大通りの隅っこに突っ伏していた。
傍らにワインの酒樽をいとしい人のように抱えて。
ひたすら意識が消し飛ぶまで飲んでいたような気がする。肝心な部分を思い出せない。サイフやら時計やらは無かった。唇を吊り上げる。)
「ふっくくく……思い出せないのが癪だけれど、すべて使えてよかった」
(札束が無くなって清々したと言わんばかりにふんぞり返る。
地面の上で。)
■ソワカ > (ワインの樽の蓋を開ける。傍らに転がっていた汚いゴブレットを取り注ぐ。
一気飲み。
きくぅーと声を上げて笑った。
口元を拭うと立ち上がってあたりを見回す。酒場から離れた場所らしい。しかし、酒樽をどう運んできたのかの記憶が無い。首をかしげていたがやがて自前の杖を拾ってるんるん歌いつつ闊歩する。)
■ソワカ > 「誕生日は~あの世への一里塚~♪」
(縁起の悪い歌を歌いつつ歩いていき、盛大にぶつかった。
余所見をしていたせいだった。
頭を抱えて転げると、気でも失ったように地面に倒れこむ。ぶつかった相手も倒れているかもしれない。とにかく男装姿は言うのだ。ヘロヘロな口調で)
「あっつぅ もう兄さん? お姉さん? 前みーてくださいよーえへへ」
(やだなーもう。
愉快そうに笑いつつぶつかった人を見上げよう)
■ソワカ > 「ぐぅ」
(かくりと頭が傾ぎ、寝息が起こる。
行き倒れに見えなくも無い)
■ソワカ > (ぶつかった人物にどう思われたかは定かではないが、男装は眠りこけていた。上等なスーツも乱れて汚れている。帽子はどこかにいった。杖だけを離さずに持っている。
男装は地面の上で身じろぎをしている。)
「………はぁ~飲めない、飲めません」
(夢の中で飲み会をしているらしい)
■ソワカ > (そして―――あとは、眠りに付くだけだ。
ぶつかった人物に蹴られて悲鳴をあげたのは別のお話)
ご案内:「落第街大通り」からソワカさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に各務 蒼さんが現れました。
■各務 蒼 > 「…………」
息を潜めて、落第街の大通りから歓楽街へ続く通路を伺う。
「最近もまた、面倒事が増えてるみたいだし…。面倒事に面倒事が首突っ込んできても困るし」
と、何かを見張るように身を隠しながら、通路を眺めている。
■各務 蒼 > 「……まぁ、そうそう来るわけないと思うけど」
歓楽街に向く足は、どこが境界と決まっているわけでもないが、なんとなく震えて踏み出せない。
以前は異能を使って行ったが、蒼には落第街以外の場所の方が怖かった。
■各務 蒼 > 恐らく今は、外よりもウチに向くべきなんだろう。
背中に背負っている落第街からピリピリとした空気が伝わってくる。
「……戦うとかそういうのは、ナンセンス。ボクはこそこそ逃げる方が性に合ってる…。でも…」
■各務 蒼 > 振り返る。生まれ育った街がある。
事件ばっかり起きる嫌な街だったけど、蒼は落第街ひいてはスラムが好きだ。
帽子を深くかぶり直し、歓楽街と落第街を繋ぐ通りを引き返す。
■各務 蒼 > 「……帰ろ、バカバカしい」
そのまま、スラムへと戻っていくのだった。
ご案内:「落第街大通り」から各務 蒼さんが去りました。