2015/08/06 のログ
ご案内:「落第街大通り」に浜崎MBさんが現れました。
浜崎MB > 『ジャック、クイーン、キング…』
「スペードか?」
『チェックだ』
「しねえよ、クソが」

本日5杯目のテキーラが注がれるのを横目で見てから
相手の目を見る

『俺はイカサマはしてねえよ、調べたっていい』
「チッ…」
バタ…と数枚のトランプをテーブルに叩き付ける、負けだ
手にしたショットグラスを一気に煽り、タン!とテーブルに叩き付ける

『マイコー!またべろんべろんじゃねえか、ハハハ!』
「るっせえ!シケてやがるぜ…」

近くにあったダストボックスを蹴りつけながら席を立ち上がる
落第街のどこかにある安酒場でのどうでもいい出来事だ
群れを離れ、千鳥足でフラフラと外へ歩き出す

浜崎MB > 「お…?」
視界が不意にブレる、建物が二つに見えて、また元に戻る
酔ったな…金を賭けるとモメるからテキーラにしようと言い出したのは
どこのどいつだったか…

安酒場のドアを足で蹴り開け、ふらふらと大通りへ出てから振り返る
BAR【ブルーズマン】とペンキで乱雑に書かれたこの建物が、今の拠点だ
今の所は上手くやっている店だ
俺達は寄り合い集団、名乗る時にしまりがつかないから
いつの間にか【ジャッカル】と名乗るようになり
この辺の風俗店のトラブルのケツを持ったりして収入を得ている
いわゆるどこにでもいる落ちこぼれだ

うん、大丈夫、記憶はしゃんとしてやがるし、ポケットにも紙幣が何枚か残ってる
記憶をお浚いしてから、指をさして確認

「サイフ、よし…視界、よし…コロナ…よし…」
チャポ…と右手に手にしたコロナビールを波打たせて音を立てながら歩き出す
意識はハッキリしてる、だから自分は酔ってない、大丈夫だ
浮浪者に体当たりしながら、夜の街に風を当たりに歩いていた

浜崎MB > 「あに見てんだ、テメェ!」
肩がぶつかった通行人の顔を殴る
ミシ…と音がして、通行人はそのままダストボックスに顔を突っ込んだ

殴った拳が痛くて、また少し意識が現実に返ってくる
俺は大丈夫だ、俺は……

「俺は…マイクボマー…俺は…マイクボマーだ…」

言い聞かせるようにブツブツと一人語散る
酔っているだけではない、確認をするように
こうして何かのチャントを唱えるように自分の名前を唱えなければ
時々自分以外の何者かになってしまいそうな気がしていた
いわば本能だ、俺の中に何かが居るという認識への、防衛本能

ふと痛みを感じて顔の左半分を触る
「痛てぇ……」
焼け爛れた顔は、つい最近の喧嘩でできた傷だ
どこかの廃墟で、よくわからない何かと喧嘩をした
男だか女だかすらわからなかった

浜崎MB > 「ヒック…戻んのも面倒くせえな…」
三半規管を震わせながら胡乱な目で前を見る
寝る場所でも探すか、この町でその辺で寝たら
次の日には服も残っていないだろう

「俺…は…マイクボマー…」
そういえば、この先に以前潰した闇金ニュービーどもの散らかした
廃ビルがあったな…などと考えながら、ゆっくりとした足取りだ

今夜はそこに止まろう、明日になったら…
その時は明日考える
「そうだ、俺達には今日しかねえ…」
口元を拭いながら、その足取りでどこかへと向かっていく
野良犬のような日々だ

ご案内:「落第街大通り」から浜崎MBさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に『室長補佐代理』さんが現れました。
『室長補佐代理』 > 下校時間も過ぎ、人通りも増えてきた歓楽街の一角。
通称では落第街といわれるその町の片隅を、その男は歩いていた。
公安委員会の腕章をつけたその男。
仕事柄、当然この界隈において好まれるはずもないその男は、雑踏にも関わらずゆとりのあるスペースを維持しながら悠々と街を往く。
通りすがる者からは時折睨まれ、時折舌打ちをされるが、男は気にした様子もない。
それは正しくいつものことであり、今更いちいち気にする必要もないからだ。

『室長補佐代理』 > このあたりの実質的なスラム街において公安が嫌われているのは今に始まったことではなく、まぁ昔から構造上極当たり前の事である。
体制に仕える者とそうでない者ではこうなるのも仕方がない。
特に、先日のような二級学生の昇格審査を派手にハネた直後とあっては、尚更顔の覚えがいいはずもない。
普段なら愛想笑いくらいはかけてくれる露店の主人ですら、今日ばかりは気まずそうに顔を背けるのみ。
彼らには彼らの近所付き合いがあるので、これまた仕方がない事である。

『室長補佐代理』 > どうしてそんなわざわざ嫌われている界隈にこの男が赴いているのかといえば、それは仕事だからであり。
なぜ仕事があるのかといえば、先日の審査で派手に申請を却下した結果、諸々の都合で間接的に監視対象が増えたからである。
元来、男が所属する調査部別室の主要な仕事は「指定生徒の監視」であり、その指定生徒が何かと言われれば、まぁ訳ありな生徒全般の事である。
全般全てに関わるわけでは当然ないとはいえ、二級学生に纏わるあれこれともなれば、自然発生的かつ加速度的にそういったものは増えていく。
そうなれば、やはり男の仕事もまた、加速度的に増えていくわけで、その結果がこの落第街周辺での監視任務の増加であった。
一つの面倒はいくらでも波及する。
その枝葉のうちの一つがこれといえば、まぁ、結局はそれだけの話ではある。

『室長補佐代理』 > とはいえ、もう今日は仕事帰りである。
四六時中監視などこの男の風体で出来る筈もないので、異常がなければ極簡単に見て回り、いつも通りの調書を取ったらそれで終わりである。
日頃の男の仕事は、蓋を開けてみればだいたいはこういった地味なものなのだ。
というか大半の公安委員の日常など、実働の一部を除けばこんなものだと思われる。

ご案内:「落第街大通り」にオリハさんが現れました。
オリハ > 夕暮れというには早い時間でも薄暗く、陰気で、常にどこか不穏な空気が漂う”非公認の街”。
室長補佐代理がすれ違う人通りの中で、街路の脇に少し寄ったその時。

ドンッ という音と共に肩口に何かがぶつかった。

視線を向ければ小さな細い路地があり、どうやらそこから勢い良く飛び出したらしい。

「わぶっ…!? あ、ゴメンね!ちょっと今急いで……て………」

その何か、はこちらを見上げ、片手を上げて詫びを入れると直ぐに駆け出そうとして硬直する。

「うぇ……」

青い瞳、金の長髪。背の薄羽根と人間離れした容姿の。

「ウェーイ……?」

顔見知りに非常によく似たソイツは、何かをどうにか誤魔化そうとウィンクと共に意味不明な言葉を発した。

『室長補佐代理』 > 「……!?」

右側面から現れたその人影を、右腕が動かない男では咄嗟に支えることも受け止める事も出来ず、ぶつかった拍子に弾かれるようにバランスを崩し、たたらを踏む。
どうにか踏みとどまり、漸くバランスを整えたその男は……屈めた長身をゆらりと揺らしながら、ザンバラ髪の隙間から漆黒の瞳を覗かせ、じわりと笑う。
 
「っぶねぇな……おい。気をつけろよ、姉ちゃん」
 
男は最大限、丁寧にいったつもりではあるのだが、その容姿と体躯も相まり、その様子はまぁ……見ての有様である。
場の雰囲気もあるせいで普段なら剣呑さがさらに加速するところであるが、そこで男は、ふと、その少女を見て、首を傾げた。
 
「……ん?」
 
どこかで、みたような。
しかし、少なくとも男の記憶の中にはこのような青瞳金髪にくわえ、羽根まで備えた異邦人の知り合いはいない。
書類か何かでみた指定生徒だろうか?
しかし、少なくとも自分の監視対象ではない。
気持ちの悪い既視感を感じながらも、諸々の都合で『記憶』がたまにごっそり消えてしまう男としては、まぁそれも日常茶飯事ではあった。
多少なりそれに不安が無いと言えば嘘にはなるが、まぁ表に出してもしょうがないことである。
 

オリハ > 「ぴぃっ!?」

男の悪魔の如き笑みにゾワリとした感覚を覚えてピースが崩れて涙目で竦む。
いやいやいや大丈夫そうだこの人間は常々こんな感じだった。別にとって喰われはしない。はず。

「あ、わ、はい!ごごご御免なさい!」

そのまま、ジロリとした視線を受けてなんぞ気付かれる前に改めて駆け出そうとした所で別所から声をかけられる。


『あっ! 居やがった! おい!こっちだ!!』

視線を巡らせれば、通りの奥から1人その逆から1人、少女が飛び出してきた細い路地から2人。
計4名のチンピラっぽい男達がドヤドヤとやってくる。


『てめぇ、タクをやっといてそのままトンズラたぁ舐めたマネしやがってよォ…!おい、そこに兄ちゃん。邪魔だからすっこんでな!』

彼らに共通してるのはそれぞれ各部に軽傷を負っており、どうやら少女がやらかして、そのまま逃げてきたというのは簡単に理解できた。

その少女は―――

「あ、あんたらがズルしてたのが悪いんでしょ! このサイッコーに可愛くて美しいオリハちゃんに欲情したからってイカサマまでして最低よ!! バーカバーカ!!」

室長補佐代理を盾に、男どもを煽っていた。

『室長補佐代理』 > 「ああぁああ?」
 
怒濤の如く謝罪を受けた直後、あれよあれよという間に現れた不良に囲まれ男は怪訝な声をあげる。
あっという間に背後に隠れた少女に一瞥だけを返して、向き直れば、既に目前に迫るは4人の凶漢。
オリハという名にまた何か思いつつも、場が場であるので男は一先ず脳裏を過る既視感は無視する。
この状態でどちらに非があるのかは正直判断しかねるが、まぁやるべきことは変わらない。
 
「おいおい、邪魔だなんて御挨拶じゃあねぇか。そうつれない事言わず、少し話をきかせてくれよ」
 
そういって、公安委員会の腕章を見せつけながら、じわりと嗤う。
汚泥が滲むような、威圧的かつ……好感など、微塵も感じられない笑み。

オリハ > 『うぉっ…!?』

先頭に立っていた男が公安委員会の腕章だけでない圧迫感に一瞬竦む。が、しかし落第街の住人とはいえ、彼らとしても立つ瀬と面子がある。 どもりそうになる口に力を入れて言い返す。

『そ…ッそこの女が! そこの女が、俺らがトランプ遊び《賭けポーカー》をしてる最中に割り込んできやがってよぉ、「自分も混ぜろ」なんて言い出すから、言葉通りに混ぜてやっただけだ。 その間にちょっとした余興《罰ゲーム》をしてる所で、ソイツがいきなり(罰ゲームに見せかけたセクハラをした)タクをよくわかんねーもん《魔法》でぶっとばして逃げ出したから、その”落とし前”を付けてもらうだけだ…… な? わかったなら退いてくれよ。悪ぃのはソイツなんだからよ…!』

最初は威圧されていたが、しゃべる間に自分たちの僅かな”正当性”に後押しされ語調は強気になり、最後には下卑た視線を隠さずにオリハに向けたまま、公安の男を説得する。


背の少女は強気な、しかしどこか罰の悪そうな表情を見せたまま 室長補佐代理とチンピラたちを交互に見る。

言外に、「引き渡したりなんかしないよね?」と僅かに涙目でこちらを見ている。……気がしたような。

『室長補佐代理』 > 「なぁるほど」
 
まぁ、賭博の件は証拠がない以上グレーだし、申請可否を調べるのも手間なので大目にみよう。
場所も場所であるし、同意の上ならそこまで目くじら立てる事でもない。
こちらに言及されても『聞かなかった』としてあとでしらばっくれれば済む事だ。
 
「つまり、私刑、か……それを公安委員に堂々と言うあたり、いい度胸ではあるなぁ?」
 
そういって、くつくつと嗤う。
伽藍洞の瞳を細め、口角と吊り上げ、ザンバラ髪を揺らして……嗤う。
 
「今ならまだ、『未遂』だな? なら、まぁ、丁度俺も仕事帰りだ。
これから仕事となるとあまりいい気分じゃあない……俺のいいたいことが分かるな?」
 
ただ、嗤う。

オリハ > 『お…っおい、どーすんだよ!』

『い、いやだってお前じゃあアイツにアレ以外言えんのかよ!』

『いや言えねーかも知れねーけどさぁ!なんか、こう…さぁ!』

【公安として動くぞ?】と暗に脅され途端に顔を突き合わせてごにょごにょと相談を始めるチンピラ―ズ。 
少し離れた位置に居た男もどうすべきか戸惑っていたようだが……。


『『『う、うぉおおおお!!公安だろうがなんだろうが4対1に叶うわけねぇだろうがぁ!!!』』』

彼らは結局、”面子”を優先した。
障害である室長補佐代理へと、破れかぶれにメリケンサック、鉄の棒、立ち入り禁止看板と

『うぅおおらぁあぁぁあぁあああぁ!!』 背後からナイフで同時に突っ込んでくる。

『室長補佐代理』 > が、しかし。
彼らが向き直った時。
 
男は既にオリハの手を取って走り出していた。
男たちが啖呵を切る前であったため、ナイフの男とは丁度すれ違う形になる。
すれ違いざまに右腕を強かに切り裂かれ、二の腕から出血するが、眉を顰めるに留める。
 
「公安だ! 道をあけろ!」 

そういって、公安が走れば当然ながら面倒事に極力関わりたくない町の住民は逆らう事なく道をあける。
ほとんど腫物のような扱いを受けながら、二人は落第街の往来を走る。走る。
 
「……んっとに此処の連中は舌戦も遠慮もしらねぇな!」
 
舌打ちを漏らし、息を切らせてただ走る。
連中の観測は正しい。
4対1、しかも女生徒を庇いながらなんて土台無理な話だ。
故に、男は最初から抗戦する気などさらさらなかったのだ。

ご案内:「落第街大通り」にメアさんが現れました。
メア > 往来の真ん中でいきなりの大声、公安、道を開けろ…
その声を聴いて少女がゆっくりと近付いてくる

「ん……?」

よく見れば羽?の様な物が生えた少女と見知った顔の男子生徒が肩から血を流し走っている
一瞬信じられないようなものを見た様な顔をしてさらに騒動の中心に近づいていく

オリハ > 「ぉぉおおう!? がっ!頑張れ公安マ……んぅうぅっ!?」

4人組がいざ殴りかかってくる!
という瞬間、オリハの緊張はピークに達しており。

そしてそのまま室長補佐代理がなんとかするだろうという極々自分勝手かつ楽観的な結論付けをして応援をしようと口を開いた所で、
グン。 と応援相手に引っ張られてバランスを崩しそうになりながら走りだすことになる。


「にょあぁわぁああああ!? ナイフかすった! 頭っ! ねぇ、髪切れてない!? っていうか!えっ、ちょ、逃げんの!? そこはババーってあいつら一瞬でぶちのめすシーンじゃないのねぇーぇーーーっ!?」


直ぐに、走るのをやめて低空を滑空するように浮かんで、逆に室長補佐代理の一歩前を先導しながら 「ほらほらアイツら追っかけてくるよ!」と、指をさして文句を言いながらモーセのごとく割れた人の波を進んでいく。



『『『『ちょっ、待ちやがれコラぁああああああ!!』』』』

こちらよりも1テンポ遅れになって大分距離は離したが、
少女の言葉通り、諦めずにチンピラ―ズは追いかけてきている。

『室長補佐代理』 > 「バカいえ、逃げるに決まってんだろ! こっちは二人で相手は四人!
しかも俺は非戦闘員だ! 自慢じゃねぇが喧嘩はよええぞ! 
つか飛べんのかよ! じゃ、さっさと逃げろ!」
 
非常時ゆえ、振り向く知己の顔には当然気付くこともなく、先を進むオリハの後ろを走る。
男は運動神経も別段良いほうではないため、徐々に距離は詰まっているが、それでもすぐに追いつくほどではない。
二の腕からだらだら垂れる血が制服を濡らす。深い傷ではないが、浅い傷でもない。
銀の指輪の嵌められた左手で傷口をおさえながら、走る。走る。

メア > 「……」

あの男がチンピラ達に一方的にやられて逃げている
演技かとも疑うがそんな事をする理由が分からない。そんな思いのままチンピラ達の進んでくる直線上に出る

「…止まって……」

そう呟き、チンピラ達を見つめる

オリハ > 「はぁーーー!? そんな悪魔みたいな顔と雰囲気しといて喧嘩は弱いィ!?
 ほんっっっっとに自慢にならないわよ! 目からビームとか出せるでしょ!?メンチビームとか!!
 あーもー今度からヘタレ補佐って呼ぶわよ!? やーいやーい喧嘩逃げ腰ヘタレ補佐―!」

本当にコイツは一体誰の味方なのか。
いや、多分誰の味方でもなければ誰の敵でもない。

恐るべくはその心臓の毛が除毛クリームでも毛が残る程の唯我独尊精神である。

「逃げようにも今ちょっとおなか空いてて魔力不足なのー!
あ、なんかキャンディでも持ってない? お菓子! 一粒でもいいからー!! ……あっ!?」

ブンブンと手を振って怪我人から菓子を毟り取ろうとしながらふよふよと前を浮くお気楽娘。


その視線の先、メアがチンピラ達の前に立ち止まっていた。



『はぁ!? るっせぇ!! 邪魔だガキンチョ!!』

先頭に立つメリケンチンピラが、足を止めず乱暴に手を振るってメアを横に弾き飛ばそうとする。

メア > 「私は、メア……」

ポケットに手を入れ、振るわれる男の手の甲に突き刺さる形で
ポケットの中の釘転移させる
魔術による転移利用の攻撃…走っている最中の
チンピラには避けられないだろう

「あと、貴方達の……邪魔、者…」

『室長補佐代理』 > 「でるわけねぇだろ! 喧嘩弱いからこそ雰囲気の出し方と吼え方だけは覚えてるってだけなんだよ!
菓子だって持ち合わせなんてあるわけねぇだろ、つかなんで俺の事しって……ん?」
 
オリハの声と視線に導かれるように、背後に振りかえれば、そこにいたのはいつか図書館で出会った少女。
 
「図書館の時の……だったか? チッ、次から次へと……!」
 
流石に放っておくわけにもいかない。
踵を返し、メアの元へと駆け寄ろうとするが……その時、既に。
『それ』は、おきていた。

オリハ > 『ぐぉぉおおおっっッッッでえぇええええええぇ!? ぁああぁっ!?ぁあっっがああぁぁぁあ!?』

突然現れた釘に、半ば以上自分から突き刺す形で手を当ててしまい
釘の突き刺さった手を反対の手で抑えながら絶叫をあげて腕を反射的に引く。

すると、振っていた腕にあわせて上げていた足はバランスを崩し、
避けるつもりもなく走っていたために、正面に居たメアを当然巻き込む形で大きく転倒する。

他の三人もぎゃーぎゃー叫びながらソレに巻き込まれて足を引っ掛けてずっこけた。

メア > 「…やっぱり……」

やっぱり普通のチンピラ、今のも簡単に通ったのを見てさらに首をかしげながら男達に巻き込まれる様に自身も転んでしまう

「っ…いた…」

尻もちを強く打ったのか小さく言葉を漏らす
だが、一先ずこれ以上暴れられても面倒なので

「次…暴れた、ら……眼に、刺す…」

淡々と無表情で告げておく

『室長補佐代理』 > 目前で行われた所業の一部始終をみて、男は目を見開いたが……直後ににやりと笑みを象る。
そして、血の付いた左手を仰ぎながら……口端を吊り上げる。
 
「なぁ、兄ちゃんたち。お互い、このへんで『痛み分け』ってことでどうだ?
お互いこれで……『手打ち』だろ? 見ての通りな」

オリハ > 「な~にカッコつけてんのよヘタレ補佐…!」
小声で、背後からぶつくさいいながらオリハもゆるゆると戻ってくる。




脅しつけられたチンピラ達は、憎々しげに立ち上がり、オリハと室長補佐代理
―――そして、結果的に実行犯となったメアを強く睨みつけて

『チィッ……! てめぇら、顔は覚えたぞ……!! 糞が!!!』

そう吐き捨てて、すたこらさっさと尻尾を巻いて逃げ出した。


それを見た住人たちも、やれやれ。とでもいった風に元の調子を戻していく。

『室長補佐代理』 > 「カッコつけんのが仕事みたいなもんなんでな」 
 
嘯きつつ、去っていくチンピラを見送りながら、倒れているメアに左手を差し伸べる。
いつものような滲むような笑みだが、別に悪意があってそういうわけではない。
こういう笑みしか基本的にできないのだ。
当人に自覚はあまりない。
 
「借りを返すどころか、また一つ貸しが出来ちまったな。また、助かったぜ。ありがとよ」

メア > 「それは、いい…けど……」

代理の手を握り立ち上がる
だがやはりまだ違和感が抜けない

「何で、逃げてた…の…?」

そう問いかける、あの程度なら簡単に自力で撃退できたのでは?と

『室長補佐代理』 > 「なんでって……喧嘩苦手だからだよ。だって4対1だぞ? 勝てるわけねーだろ。1人だってこの有様だぞ」
 
そういって、また左手で抑えている右腕の傷口を一瞥して、問いに対して自嘲気味に答える。
相変わらず右腕からは血が滲んでいるが、深手ではないようで、案外平気そうだ。
 
「公安は公安でも、俺は調査部なんでな。荒事は専門外なんだよ」

オリハ > 「あんなにカッコつけておいて……。 ま、ともかく助かったわ!ありがとね★」

ストンと地面に降り立ち、
キャピっとポーズを決めながら誠意があるんだかないんだかわからない形で謝意を示す。

「あ、ヘタレ補佐血ぃ出てるじゃん。大丈夫? 絆創膏ぐらいはあるけど使う?」

そのまま、メアに視線を向けて何か治療道具を持っているか返答を促す。

メア > 「そう…?」

気になるフレーズが耳に入る

「公安…辞めさせられた、んじゃ…?」

そう首を傾げているとオリハと視線が合う

「えと…私は、メア…よろしく……」

『室長補佐代理』 > 「だから、カッコつけんのが俺の仕事なんだよ。あと、さっきからなんで俺の役職しってんだよ」
 
冗談めかしていいつつも、疑問を口にする。
だが、実際それはあながち冗談でもない。
男の仕事は監視ではあるが、監視には二種類ある。
一つは監視されていることを気取らせない監視。
そして、もう一つが監視していると相手に警告する監視だ。
当然ながら男は後者である。だからこそ、こんなところを公安の腕章をつけたままうろつくのだ。
いってみれば、監視カメラのようなものである。それが『在る』だけで示威行為となる。
それが有効な相手に対して切られるカードが第二特別教室であり、故に調査部別室ともいえる。
 
「とりあえず、絆創膏はいい。ああ、公安はやめさせられたんだけど……まぁ、紆余曲折あって、また戻ることになってな。
元鞘って奴だ」

メア > 「そっか…」

また公安に戻った、そう聞いてどこか安心する
言葉は悪いがこの男には首輪が付いていた方が良い気がする、そんな事を思い浮かべる

「公安……最近、は…平和……」

ボソリとそんな事を呟いた

オリハ > 「んもう、小さいことは気にしない気にしない!にゃーっはっはー!!」

雰囲気のまま、パンパンと室長代理補佐の腰元を叩いて誤魔化す。
……最初のことを考えるともしかしたら相手が非戦闘員だと解ってただ舐めてるだけかもしれない。

「あぁ、いやメアちゃんはいいんだけど何か治療道具…… ―――そう?本当に大丈夫?後で貧血でぶっ倒れないでね?」

と、ひと通り落ち着いた所で

「うん、まぁ私は公安とかよく判んないけど。お仕事がんばってね!」

そんじゃ! と、シュパッと踵を返すとその場を後にしようとする。

『室長補佐代理』 > 「いや、小さい事って……まぁ小さい事か。とりあえず、貧血は平気だ。多分な」
 
実際、役職名が知られていたところでそう困る話でもない。
それに、たまたま『忘れている』ところにこの少女がいたのかもしれないと思えば、男としても突っ込み辛いところであった。
声は聞き覚えが非常にある気がするので、多分知り合いだとおもうのだが……しかし、どこでこの声をきいたのだろう?
少なくとも落第街でないことは確かだが……まぁ、思い出せないものは思い出せない。
誤魔化すように微笑んで、頭を振り、メアに向き直る。
 
「ちょっと前のごたごた内乱続きが可笑しかっただけで、普通はこんなもんさ。
相変わらず仕事は多いけどな。
あ、おい、そっちの金髪ねーちゃん何さらっと行こうとしてんだよ、しっかり俺に傷おわせてんだから調書をだな……」
 
と、一応いってはおく。
実際にそのまま去られたら仕方がないので諦める。

メア > 「んぅ…?」

去っていく少女を見つめながら首をかしげる
何か急いでいるのかな…そんな事を考えて小さく手を振る

「普通……うん、普通…一番…」

調書と口に出す代理とオリハを交互に見て

「…転び、ました…って、書けば…いい……」

オリハ > 「あはは……またねぇーーーー!!!!」

面倒な手続きをさせられる、と解った瞬間 猛ダッシュで落第街を駆け抜けていった。



遠くで、何かがひっくり返る音と怒声とそれを煽り返す罵声が聞こえてきたが徐々に遠くなっていく……。

ご案内:「落第街大通り」からオリハさんが去りました。
『室長補佐代理』 > 「あ」
 
去っていく背中を見送り、深く溜息をつく。
 
「はぁ……こりゃ、本当に転びましたとかくしかなさそうだな」
 
まぁ普通に考えても本来なら公安が介入するわけもない小競り合いだ。
あらゆる意味で証拠もないことだし、今回は内々に済ませて処理すればよかろう。
というか、そうする他ないだろう。
 
「まぁいいか。さて、借り二つになっちまったけど。俺が返せるアテはありそうか?」

メア > 「がん、ばれ……」

このあと面倒な処理をしなければいけないのだろうと代理の今後に不安を覚えながら声をかける

「アテ……じゃぁ、甘い…もの……食べたい…」

『室長補佐代理』 > 「甘いものか。じゃあ激励もして頂いたことだし、そのへんでなんか食うか。うまい店しってるか?」

ぼちぼち、血も止まってきた傷口から手を離して、ポケットから取り出したハンカチで軽く手を拭いながら、そう尋ねる。
男は落第街にはそう詳しい訳では無い。
最近仕事柄顔を出すようにはなっているが、それだって現地の人間などに比べればまだまだ『客』だ。 

メア > 「んー……」

この辺りで甘い物…と考える
折角なのだから普段あまり食べる機会がない物が良い…

「スーパー…パンケーキ……」

甘さ、ボリューム、値段がスーパーなパンケーキの店を思い出す
生徒達が話していたのを偶然聞いただけだが、その店の場所は知っている

『室長補佐代理』 > 「スーパー? まぁそれでいいならそれでいくか。案内してくれ」
 
特売店か何かのフードコートなのだろうか。
全く知らない男はそんな想像をしつつ、メアについていく。
傷口は血で汚れているが、なにせ場所が場所だ。
誰もきにしていない。

メア > 「ん、分かった……」

そう言って代理を案内するように落第街を進む
暫くするとやたら豪華な店が見えてくる
スーパーパンケーキというそのまんまの看板

「あれ……」

初めての客にもわかりやすいパンケーキの店を指差す

『室長補佐代理』 > 「スーパーっつーか……ハイパーでゴージャスでデラックスって感じだな……」
 
豪奢な看板の立ったそこは、落第街には似つかわしくない様相のきらびやかな店だった。
いや、邪悪な森の奥にある、魔女が棲むお菓子の家なのかもしれない。
そう思えば、逆にこのロケーションにある意味ぴったりといえるだろう。
とんでもない皮肉ではあるが。
 
「まぁ、とりあえず入るか」
 
そのままメアの後をついていく。
当然ながら、こういう場は男は苦手である。

メア > 「デラックス……」

実際に店を見て目が輝いているようにも見える
いかに淡々と相手に釘を刺すような少女でも子供は子供
甘い物は好きだし好きな物の前ではテンションは上がる

「うん、行こ……」

店に入れば客の比率としてはやはり女性の方が多い
だが今は女の子とその保護者にも見えるのかあまり浮いてしまう事もない
席に案内されメアはどこか楽しそうにメニューを眺めている

『室長補佐代理』 > 「……おう」
 
あまり浮いてないとはいえ、男からすれば気が気ではない。
落ち着かげにメニューを眺める。どれもこれも値段もそうだが見るからに甘さとボリュームがエクセレントだ。
値段はまぁいい。だが、ボリュームはこの男にとっては問題である。
甘いものがそう苦手というわけではないが、別に得意でもないのだ。
それをここでドカっと出されると当然ながら胃がストライキを起こすことは自明の理。
テンションがあがるメアを後目に難しい顔をしながら、早々に敗北を認め、ドリンクをオーダーすることにする。
空気が読めない事は重々承知の上だが、知ったことではない。
食えないものは食えないのだ。
 
「メア、きまったか? 俺は決まったぞ」

メア > 「うん、決まった……」

メアが頼むのはチャレンジメニューと呼ばれる部類
特大パンケーキが二枚重なりその上にこれでもかと生クリームとフルーツが盛られた
まさにスーパーパンケーキ

「補佐は…それだけ…?」

オリハがヘタレ補佐と呼んでいたのを思い出しそう呼ぶ
流石にヘタレは抜いた様だ

『室長補佐代理』 > 「俺はまぁ、こんだけだよ。つか、メアがむしろ逆に……そんなに? 大丈夫か? くえんのか?」
 
いやまぁ残されても払うが。借りは借りだし。
それだって、食物を無駄にすることは当然色々よくないので一応心配はする。
 
「まぁ、いいなら呼ぶけどよ。直前にかえてもいいからな」
 
そういって、店員を呼び、自分はコーヒーを頼む。
そして、店員がメアの方に向き直ってオーダーを聞く。
かえるなら最後のチャンスだぞ、メア、本当に頼むのか?
そう、内心で呟きつつ動向を見守る。

メア > 「頑張る……」

食べれるかは分からない、だがあんな物を見ては食べるしかない
少女の中で静かに闘争心が燃える

「変えない…絶対、食べる……」

そう呟きオーダーを済ませる
店員も心配した様な表情を浮かべている

「だい……あー、やっぱり変更で♪
こっちのジャムの奴にして、クリームたっぷりで♪」

突然人が変わったように流暢に話し始める
代わりに頼んだそれは普通のサイズのパンケーキに生クリームと苺にジャムのオーソドックスな物

『室長補佐代理』 > 「あ?」
 
唐突に雰囲気ごとオーダーも変わり、男も怪訝そうに目を細める。
まぁ変えるのは構わないが、どういう心境の変化だろうか。
先ほどまでは闘志に燃える瞳でそのチャレンジメニューを見つめていたというのに、今はまるで別物だ。
疑問を抱きつつも、とりあえずオーダー確認に頷いて、店員を見送る。
 
「やっぱり、しんどかったか。チャレンジサイズは?」
 
一応そう聞いてみる。

メア > 「当然無理無理、大人でも吐きそうになるメニューを僕みたいな
子供が食べたら胃がはち切れちゃうよ♪」

そう言って他のメニューも少し眺めてから閉じる
そして補佐の方を向き

「えーっと、まぁ僕の事はグリムって呼んで♪
メアとはまぁ…親友かな。よろしくねヘタレ補佐♪」

ふふ、と小さく笑う
ヘタレ補佐という単語が気に入ったのか楽しそうにクスクスと

『室長補佐代理』 > 突如、雰囲気も口調も変わった少女をみて、目を細める。
これだけ様子も異なり、名乗りまで変わったとなれば、まぁ、そういうことだろう。

「へぇ……多重人格……いや、今は解離性同一性障害っつーんだっけか?」
 
呟くようにいって、笑みに合わせて同じようにじわりと嗤う。
汚泥が滲むような笑み。
幼少期特有のそういう『お遊び』の可能性もあるが、いずれにせよ付き合っておくのが無難だ。
何より、ここは常世島。
あらゆる異形の集う島。
本当に『そう』だったとしても、何の不思議もない。
 
「わざわざメアを引っ込めて、そんなにパンケーキが食いたかったのか?」

メア > 「まぁそんなのだねー♪」

細かく言えば違うがニュアンスでは合っている
それを覚えてからは概ね多重人格で通している

「ハハ、僕も甘い物は嫌いじゃないけど…
メアがあのままお馬鹿チャレンジしてたら面倒でしょ♪体にも悪いし♪」

あのまま頼んでいれば…メアは無理をしてでもパンケーキを
食べきり胃痙攣やリバースなど様々な自業自得の
不運にみまわれただろう
どれを防止するため…と笑顔で説明する

『室長補佐代理』 > 「そういう事ならありがたい話だな。確かに目の前で無理に食って寝込まれたんじゃあ俺としても困る」
 
借りを返すための奢りでそんな有様になられてはこちらとしても申し訳ない気分になる。
それを抑止するためにこの『グリム』になってくれたというのなら、真偽のほどはともかくとして本当にありがたい話だ。
お値段的にもこっちのほうが良心的である。
 
「だけど数切れは出来ればメアに食わしてやってくれよ。俺はメアに借りがあるんだからな。
多重人格ってもんがどういうもんなのかわからないから、そういう物言いになるけどよ」

メア > 「メアなら今は拗ねちゃってるよ、勝手に注文変えたって怒ってる♪
ハハ、怒る姿も結構可愛いんだよ♪」

口では憎まれ口をたたくがパンケーキが来れば手を付けずに代わる気だ

「あ、ところでさぁ?補佐はフニーチェって知ってる?
最近そんな名前の面白い奴等が居るみたいでね…僕も興味津々なんだ♪」

パンケーキが来るまでの暇つぶし、そんなニュアンスで尋ねる

『室長補佐代理』 > 「なんだ、メアも眠ったりしてるわけじゃねぇのか。なら、安心だな」
 
よかったな、と、今届くのかどうかも分からない声をかけつつ、そう、尋ねられれば。
じわりと……目を細める。
 
「へぇ、また妙なのに興味関心をもってるんだな。生憎とその劇場だったらもう店仕舞いだぜ」

メア > 「場合によっていろいろだよ♪」

眠っている時もあればそうでない時も、と言った所で
店じまいと聞いて残念そうな顔をする

「えー…なんだ、折角面白そうなのが居ると思ったのになぁ」

はぁ、とため息をついて頬杖をつく
まるでおもちゃを無くした子供のよう

『室長補佐代理』 > 「気にするこたぁねぇよ。探せば似ようなのなんて山ほどいるだろうさ」

実際、フェニーチェは動機はともかくとして、やっていることはその辺の犯罪組織と大差はなかった。
良くも悪くも普通の違法部活である。
故に、似たようなものはいくらでも落第街に転がっているし、個人の武でいえばロストサイン幹部共や落第街の強者共と大差ない。
なくなったところで、大きく何が変わるわけでもない。
 
「落第街にゃ、他にも山ほどそういう違法部活はあるからな。それこそ、数えきれないほどな」

メア > 「面白い奴は中々居ないんだよ…そこらの有象無象じゃなくて、例えばあんたみたいに面白い奴とかさ♪」

ニタリと笑い補佐を見つめる

「さっきのチンピラみたいな奴はいくらでもいる、でもあんなのじゃせいぜい暇つぶしだけ。僕はもっと面白い物が見たいんだ♪」

『室長補佐代理』 > 「過大評価痛み入るぜ。でも、俺なんてそれこそ、何処にでも転がっている普通の公安委員でしかねぇよ」
 
自嘲気味にいって、左肩だけを竦める。
男は割と、自分ではなんの謙遜もなくそういっている。
異能も欠陥品で魔術も落ちこぼれ。
やっている仕事も特例の際はともかくとして、普段は基本に地味なものばかりだ。
それこそ、そのへんの公安委員と大差などない。
いくらでも替えが効く人材だ。
 
「まぁ、褒めてくれるのは嬉しいけど……面白いもんを見せたり紹介したりってのは、上手く出来る気がしねぇな」

メア > 「そうだなぁ…じゃぁさぁ、その右手について教えてよ♪」

過大評価と言った補佐の右手を指さす

「その右手について聞くだけでも、僕はかなり面白いと思うんだよね♪
それに…過大評価かどうかは僕が決めるさ♪」

パンケーキはまだ来ない、どうやら生地が少し足りなかったみたいだ

『室長補佐代理』 > 「こいつか?」
 
そう、一瞥した先にあるのは先ほど負傷した右腕。
血は止まっているが、それでも服に滲んだ血は消えるはずもない。
いま改めてみると結構派手に血がついているが、来店しても見咎められることすらないあたり、この店もやはり落第街の一部であると思える。
そんな厄体も無い事を思い浮かべつつ、問われれば、答える。
隠すようなことでもない。
 
「こいつは悪魔にもってかれただけさ。落ちこぼれだったもんでね。魔術の才能ってもんが俺にはないそうだ」
 
どこにでもありふれた話だろう、と付け加えて、また笑う。
実際、男はそうとしか思っていない。
これはどこにでもある、当たり前の結末でしかないと、男は普通に思っている。
これは、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

メア > 「何それ、めちゃくちゃ面白いじゃん♪」

悪魔に腕を持っていかれた、そんな話は聞いたことはあっても実際に見た事なんてない
面白そうに補佐の右腕を見つめる

「魔術の才能がないなんて言いながら悪魔と契約するなんて…それも肉体を差し出したんだからそれなりの力をもらったんじゃないの?」

『室長補佐代理』 > 「相応の特別な力とやらが与えられたんだったら、俺としても面白い話ですんだんだけどな」

自嘲気味にまた薄く笑って、肩を竦める。
漸く運ばれてきたコーヒーに手を付けて、真っ黒なカップの中身を覗いてから、うなだれ気味に語った。

「ところが、当然そうじゃない。
普通だったら五体満足でいられるところを右腕丸ごと一本持ってかれて、与えられた力は普通の契約と同程度。
下手すりゃもっと扱える範囲は狭い。それが、俺の魔術の全てさ。
才能がない奴が無茶するとこうなりますよっていう例が俺ってこった」
 
その上、使えば使うほど悪魔に脳の一部……『記憶』を徐々に持って行かれる。
お陰様で昔の事は大分物忘れが激しくなってきた。
こればかりは、何せ『覚えてない』事も多いので、迂闊に口にできないが。

メア > 「才能無しねぇ…ハハ、酷い事言うね補佐♪」

そう笑った時にようやくパンケーキが運ばれてきた
見ただけでも甘い物好き以外は胃もたれをしそうな程の生クリーム

「いいねぇ、クリームたっぷりってホントにしてくれたんだ♪」

注文をとった店員に感謝しつつパンケーキを眺める

『室長補佐代理』 > 「師匠に散々詰られたからな。俺ほど才能のない弟子はいなかったそうだ。俺もまぁそう思うよ」
 
パンケーキを無邪気に喜ぶ少女を見ながら、そう、薄く微笑む。
非才。実際、それは恐らく事実だろう。
自分でも、そのあたりの自覚はある。
だからといって、それが辞める理由にならなければ、使わない理由にもならないだけのことだ。
非才には非才なりのやり方がある。
それを、常に模索すればいいだけだ。