2015/09/17 のログ
ご案内:「落第街大通り」にナナミさんが現れました。
ナナミ > ──日没後の落第街

居候先の家主には『ちょっとその辺散歩してくる』と言って出てきた先。
いつもの“落第街用セット”に着替えた七生は、いつもの様に廃墟から廃墟へ、軽業師の様に跳び移って移動していた。

「こっちの方はひさびさ、かな。」

廃ビルからトタン屋根に着地し、中の住人が反応する前にまた別の建物へ。
もう少し着地の際に音を立てることが無くなれば、誰の迷惑にもならず移動できるのに。
そんな事を考えながら窓から跳び込んだ廃ビルで一休みを。

ナナミ > 「にしても、だ。」

今跳び込んできた窓から、そっと表の様子を眺める。
別段誰かに追われているという訳でもないので、こそこそ隠れる様な必要もないのだが。
だからと言って人目につく様な真似もしたくない。
すると自然と窓枠から半身だけ出して様子を窺うという不格好な体勢になる。

「……相変わらずだなあ、ここは。」

春も、夏も。
彩りというものに欠けるこの街では、季節が存在しないように見える。
モノトーンな世界にモノトーンな人々。まあ仕方のない事なのかもしれないが。

温度の無い街。

それが、ナナミの落第街に対する印象だった。

ナナミ > 眼下では住人同士の小競り合いや喧嘩が行われているが。
それすらもいつも通りの光景として見ている自分に気付く。

意図的にその存在が認められていない街。

常世学園に入学する際に受け取った島内地図にも、この街の詳細は記されていない。
ただ『異邦人街』と『歓楽街』の区境が記されているだけだ。

初夏の頃、初めてこの街を訪れた際にはその事に大いに疑問を持ったものだったが。
今ではすっかりその疑問もどこかへ立ち消えてしまった。“そういうもの”だからだろう。

──少しだけ、自分の要領の良さに苛立った。
 

ナナミ > 「……やだやだ。」

ぽつり。
小さく呟くと窓から跳び出し、また何軒か建物の屋根を足場に移動をしていく。
暗色で固められた服装は夜闇にまぎれ、街の住人達の目を欺いている。

さてどこへ行こうか、と思案する間も無く。
気が付けばひときわ高い廃ビルの屋上へとやってきていた。
建物の密集した路地裏などは見えないが、ここならこの街をぐるっと一望できるため、ナナミの密かなお気に入りでもある。