2015/09/18 のログ
ナナミ > このビルが何を目的として建てられ、どうして廃ビルとなったのか。
その理由はナナミには知る由もない。
ただ、この場所に廃ビルがあるという事実。それだけが分かっていれば困るような事もない。

──この街に対してもそうだ。

どうしてこの様な街があるのか、ナナミでは想像もつかない。
しかしこの落第街という街は現実に存在しているし、住人も居る。
その事実だけ分かっていれば、ナナミにとっては然したる問題は存在しない。

場所に因って、環境に因って何かが変わる訳では無い。
どんな場所でも、どんな状況でもナナミは非力な──ただの能力者、だ。

ナナミ > 「………。」

──能力者。

ナナミは自分の掌を見つめて、一つ溜息を吐く。
自分の能力を自分はどこまで把握できているのだろう。
昨日のプールでの四季との会話を思い出しながら、ふとそんな事を思う。

血液を操る能力──言葉にしてしまうとたったそれだけの事だが。
どうにも、出来る事も多ければ、出来ない事も等しく多いように思う。
そしてそのどちらもナナミは全てを把握しきれている訳では無い。

そして。

「……いつからこの能力は俺の身体にあるんだろう。」

入学以前の記憶を失った今、その答えは文字通り闇の中だった。

ナナミ > 自分の過去を探る手がかりとなり得るのだろうか。

「……この、能力が。」

じっと掌を見つめていても、何も起こりはしない。
能力の発動には少なくとも傷を負う必要がある。その為の“スイッチ”は実は常備しているのだが。
最後に使ったのはいつの事だったか──

「ひとまず。
 他に取っ掛かりも無いわけだし、能力について調べてみるかなぁ。」

細い糸の様な手がかりではあったけれど。
それでも何も無いよりはマシだろうか。
……あんまり期待しない方が良いな、そう呟いてナナミは再び落第街の宙に身を躍らせた。

ナナミ > 他の街に反して、夜の落第街は喧騒を増していく。

混沌とした街の、住人達の頭上を。

ナナミは人知れず、異邦人街へと帰って行った。
 

ご案内:「落第街大通り」からナナミさんが去りました。