2015/10/11 のログ
ご案内:「落第街大通り」にバラルさんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」に百瀬千尋さんが現れました。
■百瀬千尋 > 「これ、どこへ行くんですか?」
不安そうな声にならないように。
千尋は先導する少女に声を掛けた。
この辺りは千尋が滅多に行かないところだ。
だんだんと街並みが荒れていく。
日が暮れて、ときおり明かりのない暗がりが二人を包み込んでいる。
■バラル > 「うふふ、とーっても良い所よ。
きっと、気に入ってくれると思うわ。」
からかうような笑みを向ける。
千尋の何処か不安そうにしているした素振りを愉しみにつつ、ゆっくりと先導し進む。
時折暗がりに差し込むも惑う様子も躓く様子も無く、昼間と変わらぬ様な足取りで進む。
……身なりの良い女子と不安そうな素振りの少年のペアは、周囲の注目を多少なりとも蒐めている。
■百瀬千尋 > 「……バラルさん――」
何か自分を試してるんじゃないですか、
と言い終わる前に。
道の向こう側から男達が現れた。
7、8人は居るだろうか。
中には、世紀末も斯くや、というような出で立ちの者も居る。
「おぉい嬢ちゃん? そんなガキ連れてどこ行くんだい?」
「保育園はこんなとこにゃアねえぜ?」
「ここいらは俺たちのシマなんだよォ、勝手に通ってもらっちゃ困るなあ~?」
千尋はすぐにバラルの前に回り込んだ。
無言で男達をにらみつける。
■バラル >
「あら、どうしましょう。うっかり巣窟に踏み込んでしまったわ。」
一瞬だけきょとんと目を丸くする。
とは言え次の瞬間には普段通りの素振りを見せる。
「言われているわよ、お嬢ちゃん。」
惚けた素振りで千尋へと振り向き、何処か艷のある声を響かせる。
くす、と、怯える様子の無いウィンクも一つ。
「どうにもこのお嬢さん達は生意気みてぇだなぁ?」
「お嬢さん、あんまし舐めた態度取られてしまうとジブン達も困るんでして。」
「ひっ、ひひ。身につけてるも全部寄越したらゆるシてくれるかもしれねーぜ。」
千尋の睨むような態度、バラルの飄々とした素振り癪に障ったのだろう。
苛立たしげな視線を、二人へ向けた。
■百瀬千尋 > 「僕は男ですから――と、
本題はそれじゃないか。
ここを通してください。早く」
拳を握り固め、何が起こっても良いように360度に警戒を行う。
男達は――
「うるせえーガキだなァおい!!?」
「ジブンの立場が分かってんのかァ? オォ?」
「痛ェ目見ねぇとわかんねぇのかタコ助ェ?」
棒、刀、ナイフ、スタンガン――持っているものはバラバラだが、曲がりなりにも武装していることは間違いないようだ。
■バラル >
「そうねぇ。男の子だからこれから行く所に誘うもの。」
千尋の両腕に絡みつき、見せ付けるように身体を寄せる。
そうして身を寄せる事が出来たのなら、甘ったるい声を、響かせた。
傍目からみれば、好意を寄せている彼女に見えるような、見せ付けるような――
「ねぇ、どうしましょう。
――千尋独りで何とかなりそうかしら?」
そうして、"出来るか"。
千尋の自身を確かめようと、問うた。
■百瀬千尋 > 「こッンなところでイチャイチャしやがってェ!!?」
「ぶっ殺すぞこのアマァアアアァ!」
メンバーの中でも血気盛んな男が武器を片手に身を躍らせる。
「簡単だよ、バラルさん」
言って、猫のように動いてバラルの腕を振りほどき、
飛び込んできた二人の男の腹に強烈な掌底を叩き込んだ。
リーチは男の方があるが、スピードが違いすぎるのだ。
■バラル > 「あら。」
それを合図にひょいっと距離を取り、一瞬の攻防を見遣れば感嘆の息を漏らす。
強烈な掌底を叩きこまれた男は盛大に濁った声と息を吐き出し、呻いて倒れた。
「随分と力を付けているのね。
――もう一人、そっちに行ったわよ。」
少し遅れて、更に一人の男が迫る。
棒を薙刀のように扱い、千尋へ向かい大ぶりな袈裟斬りを放つ。
流石に筋こそあれど、人の域を出ていない。
飛び込むまで間があった事もあり、奇襲と言えど対処する余裕は十分だ。
■百瀬千尋 > 身を大きく屈めて袈裟斬りをかわすと、
その勢いをバネに強烈なアッパーカットを見舞う。
顎を過たず打ち抜いた拳は、一発KOには十二分の威力だったようで、殴られた男は意識を失う。
「まだやるか……ッ!?」
千尋は背後に感じた殺気に身を翻して飛ぶ。
「ぶッ――殺す!」
仲間の男が初めから後ろにいたのだ。
バラルに向けて金属バットを振り下ろしている。
間に合うか? 爆発的な脚力でバラルに並びかけ――
■バラル > 並びかけたと同時。
豪腕を以ってして、金属バットが振り下ろされ、ない。
「あら。」
振り下ろされる前に、振り向かずにしてバッドを掴む。
くるりと向きを変えれば。その男へと寄り添う。
「――♪」
……その身から力を奪い、強固な肉体を非力なそれへと変えてしまう呪い。
それを振りかければ、男の体躯は瞬く間に変貌する。
手足はきめ細やかものに。バッドを奮うにはそぐわない、白魚のような手先。
曲りなりにも筋肉のついた体躯は、細くも適度に脂肪の付いた柔らかい体躯へ。
シャツは丸みをおびた二つのそれで引っ張られ、今にもはち切れそうだ。
下衣の全ては引っ掛かる事が出来ず、ずり落ちた。
「やけに上手く行ったけれど……あら、可愛らしい。」
そして支え切れなかったのだろう。金属バッドが落ちて転がる音が響く。
……一人の男を無力化すれば、改めて千尋に微笑んでみせた。
「こっちは問題ないわ。千尋。
それにしても、ちゃんと鍛錬を続けているようね。
そんな男の子は嫌いじゃないわよ。」
■百瀬千尋 > 「あっ……!? ああぁー!!?」
男だった者は叫び声を上げた。
わけがわからない、という顔をして呆然とし、
「やべえ! ヤベエよ!!」
周りの男達は小鳥が一斉に羽ばたくように逃げ出した。
姿を変えられたやつも、周りに遅れまいと、慣れない身体でそのまま姿を消してしまった。
「――え……? な、なに……今の?
バラルさん……?」
異能も、魔術もこの島では決して珍しいものではない。
だが、詠唱もなしに人一人をあっさりと変えてしまう力など、千尋はまだ見たことがなかった。
■バラル > 「……ふふ、ちょっとした手品よ。
この界隈じゃ、珍しい事でもないでしょう?
あのコには可愛そうな事をしたけれど、脅しには持って来いよ。」
さも何でもないと言わんばかりに、柔らかく微笑んでみせる。
よごれを叩いてから、大きく息を吐く。
「それとも、今のみたいのが好みのタイプだったのかしら?」
ぢっ、と目線を合わせからかう。
そうしてから、甘ったるい声をゆっくりと響かせて――
「少々トラブルがあったけれど、行きましょうか。
ふふ、さっきのコみたいに豊満なコがいっぱい居るわよ。
……キャバクラ、興味ないかしら? 勿論、私が持つわよ。」
"知り合いが運営しているの。"
弾んだ声で一つ付け加え、体を寄せる。
■百瀬千尋 > 「あ、いや、僕は。
あの、その、……えっ?」
キャバクラ、ということばに、
別の意味で目を見開いて。
「えーっ? えっ、あっ……?
いや……い、いきます……!」
ここで断って機嫌を損ねるわけにはいかないし。
(機嫌を損ねたらあのチンピラみたいになりかねない)
何よりも千尋は女が、好きだし。
そして身を寄せられて
「行きます、いきましょう……」
顔をまた赤らめながら。
期待と不安が入り交じりながら。
落第街内の、歓楽場に消えていった……。
ご案内:「落第街大通り」から百瀬千尋さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からバラルさんが去りました。
ご案内:「地下闘技場」にダナエさんが現れました。
ご案内:「地下闘技場」に不良少女Xさんが現れました。
■ダナエ >
──ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス……
ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス
地下闘技場に続く階段から、異質な足音が響いてくる。
やがて現れたのは、異形の重騎士。
面甲を上げ、きょろきょろと辺りを見回す。
「確かに……見覚えは、ある」
好奇心の滲む目と、怪訝そうな表情。
この騎士が闘技場へ足を運ぶのは今日が初めてではない。
三度目だ。
しかし前々回も前回も気絶という完敗で記憶が飛んでいるため、
いまいちこの場所に馴染みがない。
あいにく、まだ身体の空いている闘士はいないようだ。
腕組みをして円形の柱にもたれかけ、
観客からのからかいや暴言に耐えながら待つ。
■不良少女X > (対する己はといえば、二度目である。
一回目の反省も一切なく、安物のサングラスをかけて。
この場においては悪い意味で、矢鱈滅鱈目立つ、そんな真っ青な長い髪の毛を隠すことはない。
風紀委員といっても、ピンからキリまでいるのである。
因みに、己はどちらかといえばその知名度はほぼ底辺に属している。理由は簡単である。サボリだから。以上。
で、有るが故に、風紀委員でありながら、大々的に威風堂々と物怖じもせずこんな所をウロチョロして回る。
別に風紀委員であることがバレても、多分己のこの振る舞いは変わらないのだろうけれど。
語る名前は偽名であるが、誰がどう見ても知ってる人ならバレバレである。
先に入って行った、異形の、重鈍な、土に響き渡り、幾許か震えるかのような音の後に、軽薄軽快にタッタカと踏み入る。
のだが―――?)
う、ううん…?
(さて、やっては来たが、何やら様子がおかしい様な。
戦闘はまだ始まっていないのに、罵声だ暴言だが、ぽつぽつと一点に向かって飛び交っている。
それと、何となく海の匂いがする。しょっぱい。
声が向かう先、匂いの先には―――。)
…ダナエ、さん?
(既視感のある重苦しい、「重騎士」と言うのが最も似合うべきその重厚感の溢れる鎧と、草臥れたマント。
イライラしているようにも見えるし、単に興味なさげにも見える。…実際は、どうなんだろう?
まぁ、それはさておく。)
おーい、やっほー。
(サングラス越しににっこりしながら、観客の罵声暴言をぶった切る様にストレートに、
されどそこまで大きくない、何となく不思議な、超常らしい声をかけてみた。
無駄にクリアーに澄み渡った音を、三半規管へと届けながら、元気よく手まで降っている。
―――いや、知り合いに見つかったら変装してる意味が。)
■ダナエ > 観客の暴言には、
奥歯をギリギリ言わせて必死に耐えているところ。
あと少しで観客席に乗り込む、
というところで掛けられた聞き覚えのある声。
「……『やっほー』?」
振り返る。
サングラスのせいで人物を特定するのに少し間があったが、
声と髪の色ですぐに記憶と繋がる。
「ソラ殿……か。
その黒い眼鏡はどうしたのだ?」
変装とは気づかずに、とりあえず少女へと近づく。
■不良少女X > …ぎゃー、「ソラ殿」じゃないし!不良少女Xだし!
(サングラスの内っかわにある目がぐぬぬと訴えかけるが、あんまり迫力はない。
というか、半ばおっちゃらけてふざけているようにさえ見えるかもしれない。
無駄に偽る己の名を名乗るが、まぁ当然と言えば当然こうなるわけで。
そう、誰が見たってこんなの変装に見えないのである。
変装するならもっとマシな事しろ!って言われそうだし、
そもそも、本人にもあんまり変装する気はないのかも。)
まぁいっか、お久しぶり。…何か変わった?
(どことなーく、前見た時と違和感がある様な気がする。)
ん?このグラサン?
(ニヤリと無駄に不敵に歪めた口角は、きっと見える筈。
多分聞いてほしかったのだろう、嬉々として黒い安物のサングラスをクイッと上げた。)
…ま、あれだ。企業秘密ってやつだよ。
観戦、若しくは賭け事にでも?…ああ、行こうか。
(引き返さずとも、と此方からも近づけば、さっさと観客席の方へと歩き出す。
何やら次から次へと罵声が矢の様に飛んでくるが…。
大体はこの、彼女の磯の匂いの所為ではないのだろうか?
それとも、結構顔が知れているのか。
因みに観客面子は、こっちには興味がないらしい。見た目ただの不良だし、仕方ないと言えばそうなのだが。)
■ダナエ > 頭の回転ものろいので、事態が飲み込めない。
ちょっとだけおろおろ。
「ふ、不良少女えっくす?
不良を取り締まる側だろう、何故不良少女などに……」
企業秘密と聞いてようやく何か思い当たり、
ポンと(ゴコッと)ガントレット手を打つ。
辺りをきょろきょろと見回してから、囁き声で、
「わかったぞ、先入捜査だな?
地下闘技場に巣くう悪の調査に来たという訳か」
なんか違う。
「ああ……恐らくこの盾の、せいだな。
恥ずかしながらここで負けた時に、
木刀を持った仮面の剣士に曲げられた、らしいのだ」
雰囲気が変わったと言われれば、暗い目で背中の大盾を見る。
らしい、と不確定なのは記憶がないから。
「私はここに手合わせに来たのだが、相手がいなくてな。
ソ……いや、不良少女えっくす殿は、観戦か?
戦いに来たなら、私で良ければお相手仕るが」
観客からの評判が悪いのは、
騎士の見た目や磯臭さはもちろんのこと、
観客を巻き込む粗雑な戦闘スタイルのせいでもあるらしい。
■不良少女X > いや、あのさぁ、勘違いしてもらっちゃ困るんだけど。
私は、どっちかっていうと不良なのっ。ほら、破壊神してるし。どうせ取り締まりなんて適当よ。
(片手を胸元にぽん、と当てて身を乗り出して抗議。ちょっぴりジトっとした目が黒いグラスの裏から見えるかも。
どうにもアレだが、風紀委員だけど、不良である。ついでに、破壊神だけど、風紀委員である。
ただ、彼女にとっては、風紀委員はおまけ感覚だ。)
うん?潜入捜査?
あっはは、面白い冗談だねっ。んな暇人みたいなことしないって。
(重く鈍い土の様な音が響いた。…手をポンと打つだけでこの音。
流石重騎士。さて、ひそひそ囁いてくれたが、こちらは大々的にそれを冗談とにっこり笑ってしまった。
何だか失礼極まりないが、本人にその自覚がない分尚更タチが悪い。)
ほう…こんな盾折るなんて、中々面白い奴もいるね。
(らしい、と言う点には突っ込まなかった。大体気絶していたかとか、そんな所だろうって、分かっていたから。
歪み凹んだ大きな盾を見遣る。…木刀で?物理的に無理だと思うのだけれど。)
ん、そうだね。なーんかシラけて行儀の悪い声ばっかり聞こえる。
…お?良い?折角だし、適当に遊んでみたかったんだよねー。
って言っても、どうかな。落第街の行儀悪い奴を卑怯な手でぶっ飛ばすのは良いけど。
知り合いはあんまり、かなぁ。んん、フルネーム長いから不良かえっくすで良いよ。
…ま、慣れてるなら手取り足取り教えてよ。私、あんまりここにきて長くないんだ。
(疎らな観客の人波を掻い潜りながら、古ぼけた、とても綺麗とは言い難い地下鉄駅へと到着。
本当にシラけかえっている様な気がする。やはり、戦う者がいないとこうなるのだろうか。)
■ダナエ > 「なんと。
……私が思っていたより、
風紀というのは寛大な組織のようだな。
いや、職務へのいい加減さを差し引いてなお、
ソラ殿の破壊神としての戦力が欲しいという
風紀の苦肉の策……?」
風紀=警察、くらいの固い組織だと思っていたので、
堂々と仕事は適当だと言われ少し驚く。
だが戦力確保と思えば、それもそうかと一人勝手に納得。
「何としても再戦し、雪辱を果たさなければ……!」
歪んだ大盾を見る度にむしゃくしゃする。
一人復讐を誓う。
「私は今日で三度目なのだが、
記憶的には、あいにく初心者だ」
ゆっくりゆっくりと、移動。
熱のない観客席をちらりと眺め、不満顔をする負けず嫌い。
「…………」
おもむろに大剣を引き抜き、
重たいそれをザグッとタイル張りの床に突き刺す。
刺さった切っ先の部分からひびが観客席の方へ
ビシビシと伸びたかと思うと、
観客席がゴウンゴウンと、何度も縦に大きく揺れる。
悲鳴や怒鳴り声。
しばらくして揺れを止めると
観客から罵言とともに缶や瓶が投げつけられるが、当たらないので無視。
「さて、観客も準備が整ったようだぞ。
ソ……少女えっくす殿、我々も始めようではないか」
大剣を構え、ますます不格好になった大盾も身体の前へ。
■不良少女X > 風紀委員ってかこの学園自体が寛大なんだろうね。
まぁ…あれだよ。私みたいな危険因子ってのは、もうでかい見張りがいるんだとさ。
あー、これ秘密ね。ま、私も社会と言う破壊神に飼われる一人のか弱い乙女って事なんだよ。
(組織について、要らんことを言ったので適当なところで口止めしておく。
あの組織、戦力なんか有り余ってるのだ。そして、何処にだって組織の意向に従わない奴は居る。
それがたまたまこの破壊神だっただけの事。)
…ああ、うん。頑張れー。
(木刀でこのイソイソしく真っ白な盾を歪めることが出来るとは、それは相当だが…。
それって木刀なのか?そもそもその大剣でまともな勝負になるかも怪しい気がする。)
…へー、そう。
んじゃま、初心者同士仲良くしようじゃあないの。
(サングラスの中央のアレを指先でくいくい。
ニヤッと何故か小物臭い悪役の様な笑みを浮かべている。
観客席から飛び交う罵声は聞こえていないらしい。気にせず話を続ける。)
…あらら、もうやるの?
え、えええー…?…うーん。
(ゆっくりとした、重騎士さながらの重たく鈍い動きに従い付いて行った先は…闘技場である。
観客席ではなく、闘技場。引き抜かれる白刃。比喩ではなく、真の意味で白い、磯の匂いがする。長くて強靭だろう逸れ。
沸き立つ観客席に、地震の様な衝撃。まるで震源地の様にキャーキャーワーワーと喚く声が聞こえる。
ついでに、自信で揺れたように空き缶空き瓶、時に中身が入ってる奴まで飛んでくる。
行儀悪いなぁ、と内心で毒づきながらも、成程重いだけではないのだと、察した。
ついでとばかり逸れて飛んできたラムネの瓶を、ちょっと変わったデザインの運動靴を纏う足の烈蹴にて消し飛ばした。
成程、元いた世界では彼女はその重さと、それを使いこなすだけの力によって、重騎士というクラスを務めていたのだな、なんて思う。
ともあれ、轟音と騒音の後にようやっと皆さん黙ってくれたようで。
小うるさくて小汚い、御行儀が悪い人々には目もくれない。上品な奴もいるだろうけれど、
今は、そう言うのを探す時間じゃない。)
…そうみたいだね。
あはは、お手柔らかに。初めてだから優しくしてほしいな。
正々堂々やったほうがいい?それとも、卑怯に徹した方が良いかな。
まぁいっか、ダナエさん、あそぼっ!
(スチャ、と無駄にサングラスを上下してアピールする。彼我の距離は、近すぎず、遠すぎない。
どれくらいか歩けば、すぐに大剣の有効射程距離に入るだろう。
さぁおいでと、慢心と不遜に溢れた手招きをする。
手ぶらで、身構えもしない。顔だけ余裕綽々と言った感じである。
観客席からブーイングが聞こえそうだがまぁそれでも良い。今日は適当に遊びに来たんだから。)
■ダナエ > 見張りという言葉に、ぴくりと片眉を上げる。
「ほう……。
この世界では神さえ管理下に置かれるわけか。
学園という名ではあるが、色々と国以上だな」
ここに来るまでは学園というと、
本当に普通の学校のイメージしかなかったが、
常世学園>国だとしみじみ思う。
ラムネの瓶が蹴り飛ばされるという、
人間にとって当たり前の事象が起こる予測を
無意識にしながら見ていたが、その予測は外れた。
蹴られた瓶はどこにも飛んで行かず、割れることもなく、
ただ消えた。
「……なるほど」
確かに神らしい、と呟く。
「正道邪道何でもどれでも、何度でも。
ソ……えっくす殿の、思うままに。
私もここでは、そうさせてもらう」
あそぼ、との言葉に笑みを浮かべ、面甲を下ろす。
「死なない喧嘩は楽しいものだ」
余裕の手招きに、
もう表情は伺えないが笑いを含んだ声で応える。
「破壊神となれば、相手にとって不足なし。
金羊騎士団、大地のダナエ……参る!」
大盾を身体の横へ移動、
ブオンと鈍い音を立てて大きく振りかぶった大剣は
床のタイルに叩きつけられ、礫が飛び散る。
大剣の下からメコメコと土が盛り上がり、
重騎士を乗せて数mの高さになったかと思えば、
グッと屈んでそこからジャンプ!
大剣を振りかぶって破壊神の脳天へ襲いかかる。
動きの読みやすい攻撃ゆえに当たるとは思っていないので、
かわされた後に乗っていた土壁を崩し、土石流のように
相手へぶつけようとする予定の攻撃の方がメイン。
■不良少女X > 学園なんていうけどさ、箱庭《モデルケース》なんだよ。暇と金と権力を持て余したどっかの馬鹿が作った、ね。
だから、管理は国より厳しい。どっかの牢屋みたいなくらいかもしれないよ。
不本意ながら、こっちに私みたいなのが来ることも大方連中の末端まで予測済みなんだから、笑えないよね。
…ま、これ以上は学園のダークサイドさ、そういうのは知らんふりして生きるのが楽しくて幸せだよ。
(といっても、顔は笑ってる。
箱庭を作る者がいる、どうせろくでもない奴なんだろうとは思うけど。憶測の範囲。
超常現象が当然のように飛び交う中で、島や学園、引いては地球に世界を、1秒かけず跡形もなく消し去ることが出来る者を、数え上げたとしたら何人いるか?
きっと、両手の指では足りないくらいには居るだろう。
では、何故未だ消し飛んでいないかと言えば、その答えがそれだ。始末か抑圧、若しくは変な事を起こさない様に知らないうちに監視されている。
憶測だが大体当たっていよう。)
物体は同一空間内に存在することが出来ない。
異なる物体と物体が同一空間に存在しようとしたとき、互いのエネルギーをぶつけ合う事によって、
押し合い圧し合いする。
それによって、物体は吹き飛んだり、また、壊れたりする。
でも、その破片さえもゆうに追い越す程早かったら?莫大なエネルギーを持っていたら?
その答えが、これだよ。…消える。
良い例として挙げられるのが爆弾の爆風かな。
いや、正確には、霧になる…んだけどまぁ、見えないよね、普通。
…まぁ、受け売りだよ。趣味悪い奴の。
(つまりただの馬鹿力で、消し飛ばした。
楽しそうに物理学について語る。)
だねー、死なない喧嘩。
つっても、私は殴り合いより殴りが好きなタチだけど。え?聞いてない?あっはは。
(独り芝居の様に、実に不良っぽい話を一つ。破壊神が好むのは、闘争ではなく破壊だ。
サングラスを額にかけて、目を二度こする。)
じゃあ不良少女えっくす、いっくよー!
(大きな剣が風を切る。…地面が揺れる事は大体想定内だが、何故に?)
…う、わー、成程なぁ。
(攻撃機動は単調そのものだった。
土が盛り上がってくるのは魔法か超常か、兎に角何かだ。
高高度からの、更なる跳躍に依る一撃。重さという点において、文字通りの重い一撃。
真っ直ぐ降りてくる、狙いは…頭から真っ二つ?!いや、あれ普通の人間喰らったら死ぬと思うんだけどいいのだろうか。
攻撃方法こそ単調だが威力は舐められたものではないだろう。)
んじゃまぁ。
(構えはない。体勢もない。その理由は、呼び動作が必要がないからだ。
体内に巡る、そのエネルギーを爆発させてやるだけで良い。
ゆるゆるで、慢心的で、隙だらけの棒立ちで。)
―――ゆっくりしていきましょう、か。
(地面を蹴る。コンクリが剥げる。石の煙が僅かに立つ。作用反作用、エネルギー保存に力積、運動方程式。
そんな物理学を否定するかのような動き。その足は、到底年頃の少女の膂力ではなかった。現実離れしたすばしっこさ。
彼女の思惑通り、横っ飛び―――既にそう言える代物かどうかさえ分からない動作―――にて、その斬撃を避けた。
流石に、というか最初の一撃から、下手な手を打つ気にもなれない。今日は叩き潰しに来たのではなく、遊びに来たのだから。
互い、長く楽しく遊びたい物。故、大振りは、避けるという選択。彼女の予定には、気付いてはいないらしい。当然と言えば当然だろうけれど。)