2015/10/12 のログ
ダナエ > 「ほう。我々は知らぬところで、
 学園の実験の対象にされている訳か。
 ……面白くないな」

面甲の下で顔を歪める。
“『門』を開いて帰ること”“呪いを解くこと”という
これまでの目標に、“学園運営者をギャフンと言わせる”
ことも新たに加わったような気がする。

ますます顔を歪めて物理学の授業の一端に参加してみたが、
理解はできない。
意味はまあわかるが耳慣れない『空間』という言葉を、
『場所』に置き換えると少しだけ理解できた、気がする。

「私には少しばかり難しい話だな……。
 その人物、趣味は悪いと言うが頭は良いと見える」

殴り合いより殴りたいと聞けば、フッと面甲の下で笑う。

「聞いていない、聞いてはいないが──」

聞く前から知っていた気がする、と小声で。
破壊神ゆえに、殴られる立場になどそうそうなることは
ないだろう、と。


目はしっかりと破壊神に見据えていた──はずだった。

「ッ、瞬間移動!?」

破壊神様のかわしの動作は、運悪く瞬きと重なって
もう瞬間移動としか認識できなかった。
流石に速い。
というか、速さとは別の次元のように感じられる。


──ゴドォン!

着地。
鉄靴がタイルにめり込み、砂埃が舞う。
マントもはためく。

土壁は崩れ、相手を飲み込まんと濁流のように襲いかかる──

不良少女X > そりゃあ、ね。指パッチン一つで炎が出せる人間がいるんだ、じゃあそれが1万人集まったら?
軍隊、政治、もう何でもありだね。
あっはは、そういう事。ひいては犯罪組織なんかも、全部想定内なんだろうね。
ま、面白くない事はさっさと忘れるに限るさ。

(少し、気分を害してしまった気がする。しかし、多分これはどうしようもない事だ。
それに、知らない方が幸せと言う事もある。
監視国家、とも言うべきだが、意外とどの国でも平然と行われているのだから。)

生物を…水素爆発させた時の解説がそれだよ。
頭は良いし、切れ者なのにね。ま、私も趣味悪い仲間なんだけどさ。

(はあやれやれとあからさまに肩を落として首を左右に。
本音は何だか少し嬉しそう。)

…いやま、知ってるよ、うん。

(だから自分で結論を付けたのだけれど。
概ねその通りである。殴られる側に立つことはめったとない。)


じゃないよ。ただの跳躍。

(人にも、獣にもなしえない、異界の跳躍。加速度を一気に振り上げて、
空間を突き抜ける様に移動する。)

…!計画的で、作戦的だねっ!

(最初からそうするつもりだったのか。
重騎士が落下すれば、地面が揺れる。当然のように砂ぼこりが舞う。
重石でも叩き付けたかのような衝撃。
作られた土の壁が崩落する。この角度に、崩落の仕方も計算づめ?
単に登って行くだけの単調作業だと思っていたが、その実、結構頭を使っている様だ。

流れるような土。これを退けるのは、物理的には不可能である。
理由は、体格差。これでも乙女である。数メートルの土の壁は、如何なる力を持っていたとしても、一撃で退ける事は無理だ。大きいから。)

……ん。

(横っ飛びに使ったあの馬鹿力を、縦に使ったらどうなるだろうか。結局やることと言えば、華々しい反撃ではなく、逃げばかりの回避。
しゅたん、と軽快な音とは裏腹に、その地面に、タイルには多大な負担が一気にかかる事になる。局所的にヒビが入るだろうが気にはしない。
流れ出る泥の様に流動する土。されど、土は地を這う物だ。
重力的法則を捻じ曲げているかのような跳躍。無意識的に重力操作魔法等で、
自身の体の軽量化をしているけれど、本人にとってはほぼ当たり前の行動でもある。
ともあれ、跳躍というよりは、最早飛翔とも言うべき形で、土の流れをいなせようか。)

ダナエ > 「犯罪組織さえ……?
 では風紀も、運営の手のひらで踊らされているわけか」

犯罪組織が本当に運営者の管理下にあるならば、
風紀など必要ないのではないか。
それでも風紀委員会が置かれているのは、
実験なのか観察対象なのかはわからないが──
犯罪撲滅という本来の風紀の目的以外の目的を、
運営者に一方的に託されているのでは、と想像する。

「異能あるいは異能者を管理するための異能を持つ者が、
 運営側にはいそうだな……」

そうでなくては、これだけの数の異能者を管理し
統制することなどできるだろうか。
忌々しいとは思うが、少なくとも今のところは
運営者に何もできないことも分かるので、口をつぐむ。

水素が何を意味するのかはわからないが、
『生物』『爆発』の二単語だけで話の本質は十分に
伝わってきた気がする。

「……その生物というのが、人間でないことを祈る」

跳躍で難なくかわされた土の波。
延々湧き続ける訳もなく、やがて土は止まる。

ゴゴン、と大剣で己の肩を軽く打つように乗せる。

「どうした破壊神殿、殺さない戦いは苦手か?」

煽りめいた口調ではあるが、純粋な問いかけでもある。

不良少女X > さぁ、どうかな。想定内ってだけで、要は試験運転だから、
色んな障害があるけどそれが乗り越えられるかとか、見てるんじゃないの?
財団も財団で、島が沈んだりすることがあったら元手がパーだからそう言うのがあったら一切合切抹消するんだろうけどね。
…ま、そうなるんじゃないかな、風紀委員も。

(実例として、と言うものであって。実際は想定内の物など何一つないのかもしれない。
だが、こうしているうちにも一瞬を掛けず世界を滅ぼせるだけの超常が幾多も集まっている。
そして、ウィザードの様な悪意を秘めた輩も多い。なのに、何故?…やはり、答えはそれしか思いつかない。
ただ、財団という圧力があってくれるから、こうして普通に暮らせるんだから、良い事なのかもしれないが。)

…そうだね、異能を。能力を操る能力を持ってる奴、そんな所じゃないかな。
ま、これは私の知り合いだけど。こういう奴いると厄介よー?

(但し危機感はまるでなかった。他人事のように言うのは、己と彼女の明確な違いだろう。
何処までお気楽な己と違って、彼女は幾分か理想的で、そう言った気概が強い。
先程から、重装の向こうではあるけれど、不満の念が感じられる。)

…肉の塊だよ。姿形は人間だったけど。

(ひらっと宙を舞って足からすとん、と着地。
見計らったようなタイミング。)

私は殺しの専門じゃあなくて破壊の専門なんだ。
さて、…と。どうしよっか。正直ストレートに殴るも魔法を使うもアリなんだけども…。
盾を構えて?

(ひょいと人差し指を大きく歪な白い盾に向けて、クイクイと仕草。)

じゃあこんなの―――どうかな?

(一歩。一蹴り。

―――"常人にはなしえない動き"というものは、往々にしてあるだろう。
バク転、棒高跳び、ベリーロール。戦場では、もっと多くあるはずだ。銃を構える時、敵から逃げる時、
ありとあらゆる場面で、そういった常人にはなしえない動きと言うのを目にする事は出来る。
"火事場の馬鹿力"なんて言葉も、それに見合うかもしれない。
兎も角、"常人にはなしえない動き"は、ともすれば、こんな混沌とした学園では、幾等でも見ることが出来るだろう。
異能に魔術、その他諸々他世界の技術を用いて、力を得ることは容易いのだから。

"常人にはなしえない動き"。言い換えれば、"人間にも可能な動き"、である。
では、これから行われるものは、果たして、その"常人にはなしえない動き"、つまり、"人間にも可能な動き"か、それとも―――

地面を蹴る。艦砲から撃ち出された様に、当たり前の様に音の速さを越えて、蒼い線が、汚い闘技場を噴進する。
ただの、物理攻撃。
攻撃の際、相手にエネルギーを与える事で初めてダメージを与えることが出来る。
この場合、相手に与えるエネルギーは運動エネルギーだ。その式は、1/2に速さの二乗と重さを掛けたものに等しい。
要は、重ければ重い程に、早ければ早い程に、ダメージは跳ね上がる。
異界の物質で構成された体が硬化して、密度を上げる。見た目の質量の、幾倍もの質量を伴った、
金剛石の如き手刀が、彼女に向けて"撃ち出された"。音は後からやってくるだろう。)

ダナエ > 面甲の下の表情は暗い。

「神にでもなったつもりか、それとも研究者気取りか。
 何にせよ、気分のいいものではないな。
 学園のおかげで異邦人はこの世界でも生きていける
 恩もあるのだが……」

ため息。

「やはり貴公もそう思うか?
 しかし、そんな特殊な異能を持つ者が本当に……
 ……ああ、知り合いにいるのか……。

 確かに、厄介なことこの上ないだろうな。
 能力そのものをねじ曲げられてしまうなら、
 対処が浮かばん。正攻法では無理だろうな」

この世に異能を操る異能など本当にあるのだろうか、
と疑問を口にしかけて、あっさり修正。
破壊神様のお知り合いにもいらした模様。

肉の固まり、という言葉には、
面甲の下でピクリと目を細めるようにして苦い顔。
言うべき言葉が何も思い付かず、しばらく沈黙。

「…………姿形だけ、人間だったのならばいいのだが」

形だけでなく心も人間、
つまり悪人ではなく普通の人間だったのでなければいい、と。


盾を構えてと言われれば、
あまり戦闘中に相手から言われる類の言葉でないので
思わず素直に構えてしまう。


破壊神が、地面を蹴った。
その直後に、騎士が見たものは──

蒼い線。
人のかたちさえしていない、ただの軌道。
それを見た瞬間は、騎士には意味が分からなかった。
次の瞬間、それが破壊神の移動した跡なのだと理解し──防御魔法を、と脳で考えた頃には既に衝撃は到達していた。
音を後ろに残して、とても静かに。

「ッッッ────!!」

ようやく耳に、蒼い軌道の発した音が到達した。
ほとんど同時に、盾の発したバガンッという金属音。
衝撃は元々歪んでいた大盾を小気味いいほど真っ二つに
割り、それでも直進を続けて騎士の腹にぶち当たる。

「ぐぶぅっ!」

胴への衝撃に耐えきれず、背後へ吹っ飛ぶ。
土の上へ吹っ飛んだおかげで、
少しだけ背中から着地する衝撃は吸収された。

全身鎧の胴の部分に、白銀色の金属が顔を出している。
衝撃で石灰を剥がれたのだ。
懐かしい──などと思う余裕は、当然微塵もなく。

大剣を杖代わりに、体勢をゆっくりと立て直す。

「…………」

言葉は発さず、目が辺りを、少女を探す。

不良少女X > 神でも研究者でもあるんだろうけど。おかしいとは思わない?
破壊神だって着てる学園。常世島を沈めようとしたり、支配しようとしている奴らだっている。
なんでそんなのを野放しにするか、…取り敢えず、暗い面ばっかり見てても駄目だよ。

(肩に手を置いてポンポンしてあげたいが、今はそんな時ではない。)

でも、そう言う常軌を逸した能力者なんかは大体自分の世界に閉じこもってる。
私も、本来はそうあるべきだったんだろうけど、出て来ちゃった。
ま、そいつも誘ってやったけど、結局出る気はなかったんだって、自分の世界。
能力を操る能力って言うのがこれまた凄く微妙でね。操れるのは異能だけじゃないみたいなのよ。
極端に言えば生きる能力を操れば死なせることも出来るから、普通の生態がどうこうして勝てる相手じゃない。
多分、学園の支配者にもそう言う、智慧を越えた、未知なる化け物がいるんだろうね。
まーまー!こんな話は置いといてエンジョイしようじゃん、私らは私らの生活を。

(今のは、ほんの一例。己さえも知らない化け物は、この学園に眠っていたとてなんらおかしくない。
だが、そんな事を気にしたって無意味だ。いるものだけを見れば良い。
もしかしたら、かもしれない。なんて、隕石が明日振ってくるかも、レベルでどうでも良い話だから。
とても他人事めいて、関係ないと、完全に自己完結させていた。)

…何を何処まで人間って言うんだろうね。
あれは、人間じゃなくって肉の塊だった。臓器はない、けど心はある。素材が肉だからたんぱく質さえ有れば無限に再生する。
脳味噌もない癖に、人間の思考をして…あー、やめよっか。こういう話。
何かブラックな話ばっかりだね。ごめん。
今度お詫びに何か奢って楽しい話の一つでも効かせてあげるから。

(彼女に聞かせる話は、どうにも黒ずんでいる。何故こういう話になってしまうのだろうか。
彼女が故郷に対する思い入れが強いから、自分も話そうかと昔の事や、知り合いの事。
…そんな、断片的であいまいな記憶を繋ぎ合わせて語っているからだ。
破壊神が破壊神たる道を歩んだその過去は、とても綺麗なものではない。
また、暗澹たる思考回路が巡らせる勝手な憶測も、彼女の気分を悪くしているのでは。
…なんて、今更ながら思って、素直に一つ謝罪を述べた。)


うん、上出来。

(石塊を砕いた様な感触。それを裏付ける砂埃、割れたところから湧いてきただろう岩礁の白い粉。
突き破った向こう側に触れた、人の胴体らしい、意思のそれとは違う、温もりのある、柔らかいたんぱく質。
手首がおかしい方向にひん曲がった気がする。えい、と、無理矢理ゴキゴキ言わせて押し付けておく。
上手いこと力加減はした、だから、あの一撃で、少なくとも前に大きなダメージはない筈だ。

巻き起こる薄い砂塵。二人の視界を遮るのには不十分すぎる程度。
真っ青な細長い、その砲弾は、軈て元通りの年頃の少女の見た目に戻り、着地する。)

…さて、どうしよっか?

(明らかに安物の、汚れても良さそうな衣服についた砂礫を払う。
いつの間にかポケットに仕舞い込んでいたサングラスを片手に握る。

こちらもきょろきょろと辺りを見まわす。
彼女の幾許か前方に、そんな己の姿が見えるだろう。)

ダナエ > 「管理されていると知っているなら、
 貴公は運営陣を破壊したくはならんのか?」

破壊神が破壊の対象を選ぶ定義が、よく分かっていない。

「神ではないが、生死さえねじ曲げる神のごとき力を持つのか。
 人間にとっては絶望的な話だな。悪夢だ。
 ……一刻も早く私の世界に帰らなくては」

吐き捨てるように。

「臓器はないが、心はある?
 脳みそはないのに思考できる……
 なんだ、一体何の話をしている?
 ろぼっととかいう、話したり考えたりする人形のことか?」

混乱。
人の形と聞いて思い浮かぶのはロボットがせいぜいの
騎士には、少し難しすぎる話かもしれない。

「この間も思ったが……貴公は破壊神であるのに、
 ずいぶんと人に気を遣うのだな。
 謝罪は不要。楽しい話など無理にはいらん。
 貴公が今話したいと思う話をすればいい」

気遣い無用、続けてくれ、と。
ただし理解の具合は保証できない。
「心があるなら、私はそれを人だと思うぞ」
何の話かは分からないながら、思うところを述べる。

「……やれやれ。
 重騎士の誇り、大盾をぶち割っておいて、
 どうしようもこうしようもないだろう。
 次は大剣を折ってみるか!?」

さてどうしよっか、という無邪気な?言葉に、
まず少し呆れ、それから怒り。
少女の姿を砂塵の向こうに見つければ、
全身鎧の隙間という隙間からどっと溢れる暗い水。
匂いでそれが海水と分かるだろう。
水位は上がり、辺り一面水浸しになっていく。
膝から腰ほどまで浸るかもしれない。観客がざわめく。
この海水の属性は水、そして闇。

「はあっ!!」

大剣を暗い水に刺す。
水は騎士を中心に渦を巻き、
渦は少女を巻き込まんと大きく高く速くなっていく──

ご案内:「」にダナエさんが現れました。
ご案内:「地下闘技場」に不良少女Xさんが現れました。
ご案内:「地下闘技場」から不良少女Xさんが去りました。
ご案内:「地下闘技場」に不良少女Xさんが現れました。
ご案内:「地下闘技場」に阿多福ウズメ(自称)さんが現れました。
不良少女X > (三度目の何とやら。
この間とは違う色の眼鏡を掛けて。
別段慣れているわけでもなく。だからといって、これと言った緊張感もない雰囲気。
しれっと、観客の中に紛れ込む幽霊風紀委員。)

ううん、暇。

(今日は、結構会場が白け返っている気がする。
あんまり闘技が行われた様子もないし、これから闘技が始まる様子もなければ、
当然今闘技が行われているわけでもない。たまにこうしたぼやくような声は、他からも聞こえよう。
今日は、観戦というか野次馬の客が多い様だ。自分もその一人の心算だったし。

…さて、どうしようか。試しに、行ってみようか?
チラ、チラ、と落ち着きなく辺りを伺う。)

阿多福ウズメ(自称) > 地下闘技場、観客席。
柱の一つに体重を預けて佇む、不審な人影。

「…」
のっぺりと表情を隠すおかめのお面にレインコート。
怪しさ爆発のその姿を、揶揄するものは一人もいない。
その怪人が、この地下闘技場において何度も大立ち回りをした木剣の剣士である事を知っているからである。

ふいに遠くを見れば、対戦のカードが決まらずに参った様子の胴元たちが見えるのみ。
横で、今日は出ないのかよー、と使いっ走りらしきチンピラがわめいているが、今のところ無視している。

不良少女X > (暇をつぶすチンピラに、誰か上がれよと野次を飛ばすスキンヘッド。
異邦人もちらほら見える。人間らしからぬ色の肌を持つ者もいるが…。

―――不審者いる。
色んな人が居る落第街だとは思ったが。あそこまで露骨に不審な人は初めて見た。
全身を隠す様な身のこなしもそうだが、それ以前にあのようわからんにっこりのっぺり気持ち悪い白い仮面が最高に不審である。
レインコートも、後ろの柱にも目が行かない。視覚的にあれが実に色んな意味で圧倒的に怪しさを放っている。
正直ツノが三本生えている四本腕の異邦人と良い勝負するくらいの見た目だ。
それにしてもあの顔、日本のホラー映画とかに出てきたヤツに似ている。名前は知らないが。)

き、気持ち悪。

(そうして、かの怪人の実力も、恐れもしらない奴は、聞こえて不思議でない声で、
この空間にて初めてそれを揶揄する声を放ったことになる。俗に言う陰口である。
ついでに言った後「んふっ」と噴き出す様な笑い声を馳せてしまった。)

阿多福ウズメ(自称) > 「…」
聞こえた。ぬらりと面を動かし、謎の不良少女Xの方をみて言葉を発した。
ボイスチェンジャーで変質した、男とも女ともつかないノイズ交じりの声で。

「手合わせ希望カ? …戦えるヨウには見えないガ」
阿多福はそれを挑発と受け取ったのか、ゆっくりと背を起こし、柱から離れる。
野次馬たち、騒ぐか。

不良少女X > ん、そだね。
どうせ暇だし。戦えるように見えないなら優しくしてよ?
ええと…掛け金なんぼさ?

(いやまぁ、勝てるだろうとか思ってる。物凄い慢心に満ち溢れた表情を、
無機質にのっぺりした表情から変えないし、声もまた、機械的で無機質な、謎の怪人に飄々と答える。
周りがざわざわすれど何のその。赤い縁のその辺で買ったばっかりな眼鏡をくいくい上げる。
ついでにふんだくってやろうとこれもまた悪質な考えを乗せている。)

阿多福ウズメ(自称) > 「闘技場ニ立テば切る」
超シンプル。ただそれだけなのだが、変質した言葉の奥に、
2流3流では出せぬであろう、堂に入った闘気がじわりとこもっていた。

「…」
レインコートのポケットから茶封筒を差し出すと、胴元の使いに渡す。
厚みからして、結構な額が入っていそうだが。

「フンッ!!」
助走なしで天井すれすれの高さまで跳躍。
闘技場の真ん中へと躍り出ると、紙袋にいれていた木刀を一応のレフェリーから受け取る。
不良少女Xに振り向き、軽く手招き。

「来るナラバ、来い」
おお、観客たちがどよめきだした。いよいよ始まるかと。

不良少女X > 聞けよおい。優しくしてっつってんじゃん。

(とんだカタモノが中に入っているのだろうなぁ、と思った。
多分こいつは、金の為に来てるんじゃなくて、闘争の為に来ているんだろう。
はぁ、と露骨に息を吐く。…そういえば、そういうのが集まる場所だったな、と、今更思い返した。

羽振りの良さそうな、膨らんだ茶色の紙。
成程、これは悪くない。中身が千円札だけであったとしても、中々良い額だ。)

じゃあ行こうか。

(こっちはと言うと、別にお金を出す素振りはない。
気絶することもないし、負ける事もないだろうと言う慢心。
手招きに応じて、闘技場へ。隅っこの方で、半笑い。)

最初に言っておくけど…。
お兄さん、…お兄さん、でいいの?私結構卑怯な事しちゃうよ?

(その実、頭の中で考えている事は、物凄く卑怯な戦法だった。
今回の相手は別に知った奴でもないし、嫌われようが構わない。
程々死なない程度に叩き潰してやろうと悪辣さを孕んだ笑みを浮かべる。)

阿多福ウズメ(自称) > 「…そう言われテ棄権すると思うカ?
 卑怯でモなんデも自由に使エばいい。ますます優しくできそうもナクナッたがな」

言いながら、ゆらりと正眼に構える。
ぞわり、と地を這うようにおたくから殺気が放たれた。

 ―試合開始の合図がなる
 
「ただノ阿多福なり。参ル…」

不良少女X > あっはは、そう。…そんな木刀で何が出来るの?
辺鄙なお兄さん。

(挑発に挑発を重ねる。
仮面を付けてはいれど、恐らく互い真正面向き合って、の状態か。

過る気配は、何処となく、既視感があるようなない様な、悍ましくて大きい殺気。
対する己は、緊張感は全くなかった。変わらない半笑い、エンターテイメント気分。)

不良少女X。長いからXとでも呼んで頂戴。
早いうちに棄権した方が良いんじゃないかな。

一瞬で終わる、耐えない方が身の為よ。

(合図。
試合が始まる。滞っていた観客のざわめきが発散して五月蠅い。
始まったばかりなのにブーイングも飛び交っている。流石行儀が悪い連中だ。)

さ、何分持つかな?5分気絶せずに持ったら勝ちにしてあげても良いよ。
破壊魔法・第十三術式「ゲルセミウムエレガンス」

(舐めきった言葉。鼻を鳴らしてにやける。
右掌を虚空に差し向ける。独りでに、何もない空間に幾重にも黄色い花の様な緩やかなカーブを描く五芒星が書かれていく。
軈て、それらの頂点を最後に円形で結べば魔法陣らしいものが浮かび上がる。
状態異常系の、所謂卑怯な戦法だ。近寄ってくれた方が有難いし、相手の武器上近寄らざるを得ないだろうと考えて。
そうでなくとも、十二分に射程距離ではあるけれど。)

阿多福ウズメ(自称) > 「5分か…では有り難ク。私は3分デ良いぞ」
剣先を相手に向け、挑発を返す。
「…」
さあ、おふざけ終わり。

逆胴を狙うように、木刀をユラりと動かし…ぼそり、と呟く。
「『   』…奇襲機動…!」

刹那、阿多福ウズメがはじけ飛ぶような速度で一気に近い間合いまで突撃する。
粉塵をあげながらジェット機のような速さで潜り込むと、コマのように逆転回して背で一瞬木刀を隠し、
刀の軌道を表胴に捻じ曲げて襲い掛かった!

「イヤーッッッッ!!!」
裂帛の気合いと同時に横に一閃、開幕から爆音とともに木刀がふるわれる。

不良少女X > はいき―――。

(悠長に喋ってる余裕はなさそうだと悟った。)

うわ、っと。

(成程中々早い。音速越えなど間間あることだが。中身は一体何でできているのやら。
噴進砲以上艦砲未満。その速さを作り出しているのはなんだろう。
こうやって冷静にその動きを見遣っているのは、あくまで人外の視力と思考中枢を働かせているから。
普通なら考える前に殴打されていよう。

ともあれ凌がねば。全くここの連中は油断ならない。というか油断しすぎていたか。
だが、言ってしまった手前無様を晒すのも気分が悪い。
所詮木刀は木刀。如何に早かろうと、軌道が読めれば掴めない事はない。
横薙ぎ、大して、素手無防備な身を晒しながら、
人になしえない、物理法則を冒涜する様な加速運動を持って、
文字通りの超常的存在として、ただの蒼い少女の身とは思えぬ重さを伴う両手で木刀押しやろう。
…加速で負けている分、パワー負けする可能性も否めないが、兎も角最悪吹っ飛ばされようが小数点以下でも稼げればいい。

接近に託けて間近で魔法陣をぶっぱなす。

魔法陣が発動して、術式が紐解かれ、魔力を撒き散らす。真っ黄色な発光。
直接作用も間接作用もある呪縛、呪詛、咒い。
見る者が見れば、制作者は相当病んでると思われかねない病的で複雑で重苦しい術式。

その効果は、苦悩の毒。決して対象を殺害することがないようにと、調節された悪魔的な拷問の魔術。
この場で使うのには、最も的確で、かつ、最も鬱陶しいだろうと判断した一つの術。
呼吸中枢の麻痺による呼吸困難。喉が焼けるように痛くなり、激しい嘔吐感。
捩れる様な腹痛。瞳孔が散大、全身が痙攣し、精神的に錯乱、昏迷。
この世の大凡の毒素に、身体的な苦悩を体全部で味わせる、非常にイヤらしい魔法だ。)

阿多福ウズメ(自称) > 「ムッ…!!」
手ごたえ…が、おかしい。やってないと判断すると、垂直…どこではなく、鋭角にトップスピードのまま急後退&旋回、
壁や天井さえもつっ走りながら。追いかけてくる魔術の閃光と対峙する。

「…ごほっ…。…ッ。毒カ!」
服のソデに魔術が追いついたか、急激な吐き気をはじめとした異常な感覚が体中に廻って来る。
と、同時、強烈な魔法に反応し、ウズメの中の変換炉が活動を始める。
レインコートの裾から、ちらと青い炎が漏れた。木刀を構えなおし。

「『   』…燕返し・乱れうち」
ギュラ、と木刀が振るわれると、魔法を叩き切り、再び前にでる。
魔法が効いているはずなのだが、さっきよりも速い。

「その力…この世界ノ人とハ思エぬ。異邦人かッ!!?」
袈裟に木刀を叩き付けるように、遠い間合いから切りかかった。

不良少女X > (結果的に、可変的な体重をのっけて、その膂力で押し切れば、一歩半押される程度で済んだ。
手をフルフルと振って置く。曲がってはいないだろうか。

歩いているところがおかしい。最早何でもありか。)

―――あれ?

(普通の人間なら昏倒して錯乱して正気でなくなってはいお終いなんだが。
あろうことか、魔法を切られた。しかもピンピンしている。
確かに効いたはずだし、あれは呪縛や咒いに対する対策を多面的に攻略していくはずなのだが。
それとも、効きが浅かったか。)

はいはい、異邦人です異邦人です。そう言うキミは何者だい?ああ、お多福とかつまんない答え言ったら怒るよ。
あー、何か腹立つわ。…すっげー腹立つわ。
破壊魔法・第六十一術式「時空歪壊―ワームホール―」

(まともに取り合う気などない。卑怯戦術に徹して小遣い稼ぎしに来たんだから。
相手が人間とは思えない程度の速さで、尚且つそこそこ手練れであることは分かった。
こういうのと正面からやるのは馬鹿らしい。だから逃げる。
オールドタイプな旧世代式の、されど破壊の属性を纏った禁忌的な転移術。
普通の使い方としては、時空への出口《あっち》と入口《こっち》を繋げる魔法だ。

黒々とした悍ましやかな時空の亀裂が己の身を背中から呑み込み、寸での所で、けれど木刀は呑み込まずして、逃げた。
ほっといたら毒が回って潰れてくれるだろうし、じり貧は向こうだ。)

…キミさ、あれでしょ。
遊びでやってないよね?多分。

(反対側の隅っこに、同じ様な黒い亀裂が走って、その中から踏み出した。
些かばかり不満気である。ふぅ、と一息。)

さっさとくたばってよ、ほっんともう…私は遊びに来たんだから。
…「ゲルセミウムエレガンス」

(同じ攻撃を使うのはフラグと言うが。
もう一度同じ要領で黄色の花形を描く魔法陣を作り出す。
そもそも、何故にやられたのだろうか。魔法陣はただの飾りだ。
やらなくていい。因みに掌を向けるのも飾り。魔法っぽいからと言う理由でやっているだけ。

魔法そのものを斬り裂く、超常対策の力でも持っているのか。嫌な相手と当たったものだ。
それにしたって、破壊魔法は超常対策への対策も済ませているのだが…ともすれば、相手方もこうした戦闘事に従事しているのだろう。
どうにも手慣れている。もう真っ向から殴りかかって戦った方が良いのでは、とさえ思えてきた。)

阿多福ウズメ(自称) > 「ただの人間ナリ」
何者かと問われれば、そう返す。壁を走っているが。

攻撃を振るうも手ごたえなし。急減速、停止して相手のほうを向く。
「ゴホッ…ッ…ハッ…。やれやれ…『自称』ではなかったのカ」
ぼそっと、何故か、いや何故か少女Xを知っているかのような、言葉が漏れる。

「…」
ダメージチェック、各部健在。されど正体不明の毒による浸食止まらず。
「時間をかければカケるホド、不利というワケだ」
おかめの面の奥で、にやりと笑ったか。別に仔細なし。胸据わって進むなり。

木刀を体側に寄せ、顔のあたりまで振り上げる。蜻蛉の構えだ。
「遊ビではないナ…少なくトも」
レインコートのフードの奥に隠した髪の光が強くなってきているのか、
お面の奥や服の端々から隠し切れなくなってきた光が焔の漏れ始めている。

と、同時に、木刀に込められていく殺気と、青い炎。

「次ハ逃げられる前ニ…斬ル…ッ!!」
踏み込む。伸びるように加速。衝撃波を発生させ、真正面から相手へと突撃。
この試合で一番早く、一番強烈な魔術をも切り伏せる三度目の攻撃。
雲耀の太刀と言われるものだが、ここにきてウズメは本当に稲妻と同じくらいの速さで太刀を振り下ろす。

「ヤアアアアッッッッ!!!」

不良少女X > ああ、そう。?

(なんか違和感があったけれど、それを気にするまではいかない。
そこまで余裕がないのかもしれない。)

当たり前でしょうが、毒は体に回った方が痛い。
っつーか痛がれ。痛がって地面這い蹲れ。のたうち回れ、苦しめ。

んな余裕がない考えしてるからおかしい事になるのよ。

(そろそろ来るかな、と思ったところで魔法陣をまたぶっ放した。
迎え入れる様に、黄色の淡い魔術光が漏れ出る。
常人であれば、体の機能をすぐさま失うだろう全身への苦悶を強いる猛毒の咒いの式が飛び回り、
霧のように広がって迎撃態勢を作る。
…が、果たしてどうなることやら。

因みに、ちょっとした能力というか、自分自身は自分の魔術の影響を受けないのか、こちらは平然としている。)

―――あー、真面目にやんなきゃよかったかな。まぁいっか、貰っといてあげるよ。
もうちょっと卑怯な手を使った方が良かったのかも、ね?

(右肩から、水面を叩いた様な血肉の飛沫が舞うだろう。
されど、切断には至らない。この世ならざる、たんぱく質に似た何かと、水分に似た何か、鉄分に似た何か、
それから、カルシウムに似た何か。到底人智では知れない、金剛石等比にならない密度と硬度を持つ、
そんな体内組織が捲れて抉り出された。最も、骨と思しきものは、それでも断たれない。)

うーん、どうしようかな。
まじで五分って言っちゃったしなぁ。ま、キミも3分とか言ってたけど。

時間的に後3分くらいだけど、どう?耐えれそうかい?
こっからもっと、卑怯なことしたいと思うけど。

(体を抉られたら確かなダメージはあるけれど、戦闘的な痛覚は無いに等しい。
故に平気そうに飄々とした涼しい顔で、まだふざけた口を叩いた。)