2016/02/01 のログ
ご案内:「落第街大通り」に東郷月新さんが現れました。
東郷月新 > 蕎麦、蕎麦である。
好物の蕎麦をすする為、大通りの屋台で箸を動かす男。
誰が噂の人斬りだと想像しようか。
何人かは知っているかもしれないが、こんな呑気に蕎麦を手繰っているとは夢にも思うまい。

「ふむ……」

しかし困った。
あらかためぼしいのは斬ってしまった。

東郷月新 > かつて公安から渡されたリストの残りも少ない。
全部ではないのは、保身の為でもあるが、それ以上に残った連中が面倒だからである。
時間操作系能力者など相性最悪である。東郷一人ではまず勝てない。
ロストサインのマスターだなんだと言われているが、東郷には弱点が多い。目処がつくまで面倒な相手との戦いは極力避けたい。

東郷月新 > 東郷について勘違いされている事だが、彼は戦いを好まない。
彼がもっとも重要視する事は「人を斬る事」である。
正々堂々とした戦いもそれはそれで好みだが、別に後ろからいきなり叩き斬る辻斬りが如き所業も辞さない。

要は、気分屋なのだ。
彼は寝たい時に寝て、食べたい時に食べ、斬りたい時に斬る。
ついでに女がいれば、人生申し分ない。

東郷月新 > さて、そんな事で彼は斬る相手に困っていた。
このままだと辻斬りでもしなくてはならない。
だが、公安を相手にする目処が立っていない以上、悪目立ちするのも避けたい所だ。

「当分は様子見ですかなぁ」

やれやれと肩を竦めながら蕎麦湯を頼む。

ご案内:「落第街大通り」にリビドーさんが現れました。
リビドー > 「……偶には蕎麦も良いか。」

 私用を済ませた後に暖簾をくぐり、席に付く年若き風貌の男。
 お品書きを眺めた後、先客らしき和装の男へと声を欠ける。

「隣、失礼するよ。」

 答えを聞く前には少し離した位置に座っており、手荷物を足元に置く。
 そのままかけ蕎麦を一つ頼めば、出来上がりを待つ。

東郷月新 > 「どうぞどうぞ」

それだけ言うと、蕎麦湯を待つ。
ここの店はなかなか美味いのだが、人を待たせるのが難点だ。
もっとも、落第街でこれだけ味の良い食べ物を出すとなれば、混むのも当然なのだが。

リビドー > 「すまないね。」

 くぐってみれば、予想以上に混んでいた。
 駅前にあるような立ち蕎麦処なら既に出てくる様な時間が過ぎれど出て来ない。
 軽く腹を満たすだけのつもりで立ち寄ったつもり故に、屋台であるが故に、そういうものだと思っていた。が、

「……そう言えば。」

 聞いたことがある。落第街に人を待たせるが美味い蕎麦を出す所があると。
 それが屋台である事は予想外であった。尤も、食べずに真偽の程を断定するのは早合点か。

(ここがそうだとするならば。
 もう少し、注文を吟味すべきだったかな。)

東郷月新 > 「……ふむ」

こちらの頼んだ蕎麦湯もなかなか出てこない。
今茹でている、隣の男のそばを茹でた湯を使うのだろう。
ならば、もう少し待とう。蕎麦湯を堪能しなければ片手落ちだ。

「どうぞ」

セルフサービスのほうじ茶を隣の客へと置く。
初めてだと分かりにくいだろうが、ここの店主はそういう説明を一切しない。

リビドー > 「おや、悪いね。」

 声と茶が自分に向けられたものと察すれば、
 人当たりの好さそうな穏和な笑みと声を返し、受け取る。

 店主は無言で蕎麦を茹でている。
 その姿を眺めながら、お茶を啜る。暖かい。

「ふらりと立ち寄った一見さん故に勝手が分からなくてさ。
 丁度身体を暖めるものが欲しかったから、助かったよ。……キミはここの常連さんなのかな?」

東郷月新 > どうも落第街に相応しい人物とは思えない。
となると、学園側の人間か。
ならば、知らないのもむべなるかな。

「ええ、小生は蕎麦が好物でして。
よくここにも来るのですよ」

前の蕎麦屋は自らが叩き斬ってしまった故に、とは言わず。
細い目を向けながらにこにこと話しかける。
さて、人斬りだと気付かれるかどうか。
気付かれても大して気にもしないのだが。

リビドー >  リビドーの身なりは、落第街の者にしては立派過ぎる。
 故に視線を貰う事はある。が、それを気にする素振りは見せていない。
 寧ろ、危うい程には堂々としている。
 そんな調子で度々落第街へ足を運んでいる彼の姿は、もしかすれば見かけた事が有るかもしれない。
 ないかもしれない。

「そうかい。蕎麦が好物なキミがここまで足を運んで啜る蕎麦。
 食べてみるのが待ち遠しくて仕方がないな。待っている時間さえ美味しいと思う位だ。」

 蕎麦を茹でる店主から視線を移し、和装の男を見る。
 そう言えば、何処かで見たような。
 喉まで出掛かってはいる、が、形にならない。
 きっと、漂う蕎麦を茹でる湯と薬味の香りが鼻孔をくすぐっているから思い出せないのだ。
 とりあえず、そう思う事にした。

東郷月新 > 「ははは、なかなか面白い事をおっしゃいますなぁ」

さて、外の者も最近は落第街によく姿を現す。
それはそれで思う所もあるが、今の東郷は一介の犯罪者でしかない。
自分の湯飲みにもほうじ茶を注ぎ、ふと思いつく。

「小生は東郷月新。
見るからに学園側の方のようですが?」

話の種に、相手の素性を尋ねてみるのも一興だろう。

リビドー > 「ははっ、相槌でも世辞でも嬉しいよ。
 気の利いた事や面白い事を言おうとして、滑る事の方が多くてね。」

 軽くぼやいてみせてから、東郷の後にほうじ茶を継ぎ足そうと傾ける。
 名乗りと共に素性を明かされれば、その手を止めた。

「東郷月新、聞いた事があるな。
 確か、落第街を住処にする凄腕の剣士だと。ロストサインに所属していたとも聞いている。
 ロストサインは確か、違法部活の一つだったかな。数年前に賑わっていたのは覚えているが……
 ……しかし、ボクの素性を尋ねる為とは言えだ。
 包み隠さず真っ向から名乗るのは、流石と言うべきか、大胆と言うべきか。」

 流石に名前を聞けば気付くし、察する。
 記憶を手繰るように、思い返すようにしてみせながら言葉を継ぐ。
 騙っているだけの可能性もある。
 とは言え、そうであっても本人だと言う事にしておいた方がきっと面白い。
 真正面から来たのだ。個人的に、嘘でも本当でも興味を引く。

「……ああ。そうだな、ボクはリビドーと名乗っている。
 常世学園の一教師の顔と、副業で常世財団英雄開発課副主任の顔を持っているよ。
 とは言え、教師としては哲学とマイナーな魔術を細々と教えている物好きさ。」

 ならば、自身としても真っ向から名乗るとしよう。
 余計な情報を加えている感は否めないが、何も無いよりは良いだろう。
  ……彼の中では、そう理屈が付いている。

東郷月新 > 「昔の栄光も、今となっては、ですなぁ。
今は一介のお尋ね者でして。気楽な浪人者、とでも申しましょうか。
そう大層な者ではないですとも」

軽く笑って相手の言葉を流す。
公安委員あたりが聞いたら目の色を変えて襲ってくるかもしれないが、この御仁はその手合いでもなさそうだ。

「ほほう、財団の。珍しい御仁のようで。
この街ではなかなか見かけないタイプですなぁ」

うんうんと頷きながら、ようやく来た蕎麦湯を啜る。
実際、財団関係者は珍しい。
姿形を隠している者は存在するだろうが、実際会った数は少ない。

リビドー > 「まだまだお尋ね者かい。十分な栄誉じゃないか。
 ボクが学生だったら飛びついていたよ。」

 惜しむ素振りを隠さずにぼやき、合間に茶を啜る。
 さて、そろそろ茹で上がるだろうか。

「ああ。とは言え上の思惑は知った事ではないし、多分外れているよ。
 上から話が来れば相応のアクションは起こすが、まぁ、その程度だ。
 主任と副主任と、後は幾らかのスタッフで人造の英雄を作ろうと遊んでいる課だ。
 ま、当然の事ながら難儀しているがね。給料泥棒の悪いやつさ。」

 蕎麦が来た。
 言葉を止め、味わう事に意識を向ける。
 一口、啜る。

「美味い。……成る程、美味いな。」

 予想以上の味だったのだろう。
 作られていない、驚き混じりの感嘆が浮かぶ。

東郷月新 > 「それはそれは。
ある意味、なかなか楽しめそうではありましたなぁ」

こちらも惜しむ声を出す。
なるほど、ここまで韜晦した人物の若い頃。
少し見てみたくもあった。

「――店主殿、お勘定を」

ちゃりんと小銭を出すと、立ち上がる。

「では、小生はこれにて。
蕎麦湯も堪能する事をオススメしますよ」

笑顔を崩さぬまま、人斬りは屋台に背を向ける

リビドー > 「ああ。教師ともなると、流石に及び腰、いや、慎重になってしまう。
 少なくとも、今日は蕎麦だな。」

 隠しきれぬ興味や好機を滲ませつつ、蕎麦を啜る合間に応える。
 東郷が立てば、視線で追う。

「そうだな。折角だし堪能するとしよう。
 ……また会いたいものだね。東郷月新。」

ご案内:「落第街大通り」から東郷月新さんが去りました。
リビドー >  
「さ、て。」

 会話を終えれば、蕎麦へと向き直る。
 蕎麦湯を注文する旨を伝えた後、改めて箸を手に取る。

「美味しい内に頂こう。」

 ……蕎麦と蕎麦湯を堪能し、満足してから帰路に着いた。

ご案内:「落第街大通り」からリビドーさんが去りました。