2016/02/06 のログ
ご案内:「地下闘技場」に『ラズル・ダズル』さんが現れました。
■『ラズル・ダズル』 > 細身の全身鎧に身を包んだ怪人が、諸手を広げてオーディエンスを煽る。
手拍子、歓声、罵詈雑言。観客席で行われる賭けはワンサイドゲームと化して、ギャンブル性は早々に失われていた。
怪人ラズル・ダズルこと美術教師ヨキは、カラオケや、ゲームセンターで遊ぶのと同じほどの気楽さで闘技場に足を運ぶ。
殺人以外の暴力が容認されているこの闘技場は、衝動の昇華およびガス抜きにはうってつけの場所だった。
毎日が祭りのようなこの空間を、ヨキはひどく愛していた。
そういう訳で、何戦したかよく判らなくなっていた。
充満した歓声と熱気の中で、野太刀の切っ先が挑戦者の喉元に突き付けられて、決着が着く。
五本指のガントレット(小指はダミーだ)でメロイックサインを高々と掲げて、野太刀をぶるんと振る。
次の挑戦者を探して、客席をぐるりと見渡した。
ご案内:「地下闘技場」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 客席の一角がどよめき、そして決して上品とは言えぬ歓声が上がる。
その一団の中心に座っていた白衣の男が静かに立ち上がって、一歩前に出た……
……少なくとも、魔術学の心得の無い者にはそうとしか見えなかっただろう。
実際には眼前の空間に“空間転移”の術式を展開し、
闘技場の中央で腕を高々と上げる“怪人”と、自らとの間にある空間を圧縮していた。
動いたのはたった一歩。
だが、その一歩で、白衣の男は“怪人”の眼前に立つ。
普段と何ら変わらぬ服装のこの男には、見覚えのある観衆も多いだろう。
暢気に煙草を吹かしている様も、普段と何ら変わらず…
「…教え子にどうしてもとせがまれてな、ひとつ、相手になってもらえるか?」
全身鎧に身を包んだ彼の正体を知ってか知らずか、白衣の男は事も無げにそうとだけ、告げた。
■『ラズル・ダズル』 > 役者が見栄を切るように振り向く。
目の前に立った白衣の男を見据え、両手を広げた。
相手を歓迎するようにも、あるいは知らぬ者には、魔術師然とした不健康な様相を嗤ったかのようにも見えたろう。
獅南が呼吸のごとき自然さで見せた転移術に、怪人はそれ以上相手を疑うことをしなかった。
手にしていた野太刀を、コンクリートの割れ目に向けてがしゃりと突き立てる。
空の両手を握って低く身構える様は、熟達した体術の使い手というより、むしろ野生の戦闘本能を思わせた。
獅南の一戦を求める言葉に、怪人が二、三頷く。
左半身を向けて身構えた姿勢のまま、正面へ伸ばした左手の指先が(来い)と手招きする。
■獅南蒼二 > この鎧の人物を表現するには、怪人、と言う言葉が確かに最も適切だろう。
騎士と言うにはあまりに荒削り過ぎる。それこそ、まるで、獣が鎧を纏っているかのように。
「話が早いな、面倒が無くて助かる。
だが、得物も無しで私に向かうのは…あまり得策とは言えんぞ?」
何の予備動作も無かった。言葉を交わしながら、獅南は術式を構成し、展開した。
一切の構えも見せず、ただ、侮るように笑って、煙草の吸殻を弾くように放り投げる。
コンクリートの地面に落ち、火の粉が僅かに散る。
瞬間、白衣の男の背後から8本の光の矢が放射状に放たれる。
それぞれが屈折しながら怪人の立つ1点に収束し、その鎧を貫かんと飛翔した。