2016/05/14 のログ
ご案内:「落第街大通り」に鞍吹 朔さんが現れました。
■鞍吹 朔 > 「………。」
落第街大通り。そこから入って程無い路地裏の、廃屋。そこには、凄惨な光景が広がっていた。
飛び散る赤色に斑に染められた肌色、それに突き刺さる刃物の黒。
常人ならば悲鳴を上げて逃げ出して然るべき光景のど真ん中に、彼女は立っていた。
その清楚な学生服に、一滴も血の染みを付けること無く立っていた。
■鞍吹 朔 > 『な…何だ……何なんだお前は……!?』
「聞いてどうするのかしら。」
しゃき、と太もものホルスターから投げナイフを抜き出す。
それを見た男は、近くに転がっていた赤黒く染まった銃を手に取って、狙いを定めた。
男は、この界隈で生きて長い。薬を売ったり、女を売ったり、様々なことをして暮らしてきた。
それ故に、銃を持たせれば常人以上に扱える。
扱える、筈だった。
『………あ?』
「…………。」
男が放った銃弾は、虚空を切って廃屋の壁を撃ち貫いた。
それから数瞬遅れて、男の首元から血が吹き出す。
「……これも終わり。」
下手人は…朔はそう言うと、懐から取り出したメモにチェックを入れていく。
■鞍吹 朔 > 「……事後処理は…と言っても、どうせ風紀も入ってこないんだから考えてもしょうがないわね。」
ふぅ、とため息を吐き、ぱたんとメモ帳を閉じる。
そしてナイフを死体から一本ずつ引き抜き、ティッシュで血糊を拭いていく。
まるで、眼鏡の曇りの処理をするかのように手慣れた動きだ。
ご案内:「落第街大通り」に雨宮 雫さんが現れました。
■雨宮 雫 > トントン トン。
トントン トン。
廃屋の板同然のドアを叩く、ノックの音。
トントン トン。
2回、5秒間隔を開けて1回、を3回繰り返す。
その後は唐突にノックが途切れ、ただし、ドアの外には誰か立っている気配が残る。
■鞍吹 朔 > 「……………。」
ちらり、とドアを見る。妙に規則的すぎるノック。
もしや先ほどの銃声が風紀の誰かに嗅ぎ付けられた?いや、それならほぼ問答無用で入ってくるはず。
となると、この規則的なノックは何らかの暗号?だとしても誰が何のために?
「……………。」
ともかく、わざわざこちらから出て行く必要もないだろう。
近くの木箱……薬を詰めてある……の影に隠れ、様子を伺う。
■雨宮 雫 > 応答が無いのを確認したのか。
ちゃり、と地面を踏む音と共に気配が壁沿いに移動する。
丁度さっき、銃弾が突き抜けていった壁辺りで一時停止して10秒ほど経過―――
―――
―――気配がドアの前に戻る。
と、キィイと軋んだ音を立ててドアが開き、中華服を着て真っ白い長髪をポニーテールにして揺らす少年が滑り込んできて、素早くドアを閉めた。
視界に入る光景を見てまずは一言。
「うわぁ―――」
■鞍吹 朔 > 「………。」
この声は、保健室の……?
だとしたら、本当に通りすがりなのだろうか。風紀との癒着があるとは思えない態度であったし。
しかし、恩人だからこそ、こんなことに巻き込む訳にはいかない。
詮索せずに帰ってくれないだろうか。
そんなことを考えながら、息を潜めて反応を伺う。
部屋の中には、むせ返るほどの死の匂いが充満している。
■雨宮 雫 > 「だぁーれか生きてる人は居ませんかー だね、だね?」
その場に立って見回しながら問いかけるが、表情的には全く期待していない。
上を見て、下を見て、左右を見て。
10秒くらい待って、誰の何の反応も無いのに頷いてから1歩目を踏み出す。
一番奥にあった死体へ、最後に死んだであろう、まだ首筋から血を流しているものへ歩み寄ると、その手首に自分の指を当てる。
「脈無し。
ただし、まだ体温の低下はあんまり無し、5分経ってない位かな?
結構新鮮、大変結構かな、かな。
そーいう予定じゃなかったけど…… これ貰っていいのかな、かな?
ボクが最初にドア開けたみたいだし、やった人は転移で逃げたのかな?
それともー……まだいるのかな?かな?け、ひ ひひひ。」
■鞍吹 朔 > 「…………。」
妙だ。
全くの無関係であるはずが、落ち着きすぎている。死体は見慣れているのか?
いや、一介の保健委員が死体を見慣れているはずがない。
「(いざとなったら『逃げれる』とはいえ、不味い事になったわね…)」
つまり、そういうことだ。と判断し、ポケットに忍ばせたボールペン型の録音機のスイッチを入れる。
貰う、という単語からしてロクな意味ではないのは確かであろう。
…それを確かめるにはまだ早い。それより、この状況をどう抜けだしたものか。
■雨宮 雫 > 「お返事なし、かな、かな。
じゃあ~、勿体無いんでリサイクルしましょう、そうしましょう~。」
正確に1分測って、返事無しと判断。
よし、と手を叩いてから、袖から細い金属質の糸のようなものを取り出し、頭の……額あたりにまき付けてギュリギュリと擦り始めた。
朔には背を向けていて、雫自身が男を隠しているので何をしているのか見辛いが。
ぶつ と何かを切る音や、硬い何かに食い込むような音が聞こえるだろう。
■鞍吹 朔 > 「…………。」
ああ、なるほど。
こういうことをするタイプは呪術師なんかに多いな、などと思いつつその背中をそっと見つめる。
いまなら投げれば殺れるとは思いつつも、ギリギリまで様子を見て。
「(クズが多いわね、この島は。)」
ポツリと、心のなかで独りごちた。
■雨宮 雫 > 「健康状態悪いなあ、やっぱり。
誰がやったかも分からないし、ちょっとだけにしておこうかな、かな。
余り社会貢献してこなかった人生だし、最後に少し人の役に立ってキミも嬉しいんじゃないかな、かな。
死んだだけじゃあ、生きてた意味がないものね?
大丈夫だよ、ボクがキミに意味を作ってあげるからね?
要らない子なんて居ないからね、まぁ、でもアレだね。
もう少し健康には気をやるべきだったとは思うかな、かな?」
答えの返ってこない相手に。
まるで患者を前にした医者のように、不安がる人間を安心させるように、独り、喋り続ける。
喋りながら手を動かし続ける。
紐の後は木で出来たスプーンのようなもので あぁ、何かを掬うような音や、引っ張って千切る音が何回か聞こえただろう。
時間にして15分か、20分か……雫の喋る声と、手を動かした音だけが部屋に響く。
■鞍吹 朔 > その背中を見つめる。
そして、その行為を見つめ続ける。
二度と口を開かない「人だったもの」に声をかけ、そこから何かを取り出し続ける。
「……何をしているのかしら、生活委員さん。」
すっと立ち上がり、その背中に声をかけた。
ああ、目の前でどんなに恐ろしい行為をしていたとしても……
この少年は、私と同じ底辺なのだと。
結局、周りに転がっている肉片や、私と同じクズなのだと。
……どう取り繕っても、この白黒の世界で生きるしか能のない「墨袋」なのだと。
そう感じた瞬間、その背中に声をかけていた。
■雨宮 雫 > 「―――ん、あぁまだ居たんだね?
何って人生最後のお役立ちとか、そういう感じかな、かな。
出されたご飯は残さず食べなさい、ものは大事にしなさい、って教えられてるから。
勿体無いオバケに会いたくないし……あ、そうか2個くらい謝らないとだね。」
振り向かず、手を止めず。
「あと1分くらいで終わるから、ながら作業でごめんなさい。
キミが欲しいものがあって、ボクが取ってしまってるならごめんなさい。
えぇと、朔ちゃんだったっけ、この声は。
その頭痛はどうかな、かな、お薬は効いてるかな、かな。」
まるで保健室で誰か別人の怪我の手当てでもしています、といった気楽な声だけを返す。
■鞍吹 朔 > 「そう。殊勝な心掛けね。…なんて、人間じゃなくて墨袋相手だけならそれで済むんでしょうけど。
正直、あんまり悪いと思ってないでしょう、貴方。」
はぁ、とため息を吐きながら箱に座り、ナイフを携帯砥石で研ぎ始める。
「別にいいわ、大した話でもないし。
それに、墨袋から手に入る物なんてなにもないから。こいつらは奪うことしか出来ないし。
ええ、その節はありがとう。感謝してる。薬はよく効いてるわ。」
そう言って、しゃりんっとナイフと砥石を大きく鳴らした。
そのまま指に挟み、投げられる体勢で構える。
「でも、それはそれ、これはこれ。
貴方がその墨袋をどうするつもりなのか。何の目的があるのか。それを聞かなきゃ納得出来ないもの。
曰く、『どのみち死なねばならぬなら、私は納得して死にたいのだ』…と。」
■雨宮 雫 > 「うん、思ってないかな、かな。
ボクの受けた道徳教育だと、コレはむしろ褒められるコトだし……あぁ、勿論、学校のテストではちゃんと教科書に則った答えを出すよ。
テストでいい点を取らないと、単位が貰えないからね。」
手を止めると、やっと、振り向く。
さっきからそうだが、何ら警戒している様子は無い。
隠しているとかではなくて、本当に何もしていない。
学校の保健室で相対した時と同じ雰囲気を纏い、同じ顔をしている。
「じゃあ順番に答えるよー、今後のこともあるし。
この死体は採る物採ったから、綺麗に処理するよ。場所柄珍しくもないけど、あるよりは無い方がいいし。
ここに来た目的は、薬が欲しいって呼ばれたからかな。
まぁ、それで本人が薬の材料になっちゃオチにはなっちゃったけど……あ、面白くない?ごめんごめんだね。
こんなんで納得できそう?まだ何か聞きたい?」
どう?っと笑いかけながら首を少し傾ける。
あぁ、それで雫の背後が少し見えるかもしれない。
うな垂れた天辺の開かれた頭と減った中身が。
■鞍吹 朔 > 「そう。じゃあやっぱり貴方は墨袋。人間じゃない。
私と同じ。」
雫から見れば、その雰囲気は変わっているように見える。
眼鏡と眼帯を外し、色がくすんだ瞳をその顔へ向ける。目つきは鋭く、しかしどこか混沌と虚無を湛えている。
殺気も闘気も敵意もなく、ただそこにあるだけの人物。
「…そう。じゃあいいわ、こっちとしても処理しないで放り出すのは気分が悪いし、ちょうどいい。
どんな薬を作るのかは知らないけど、『人間』に手を出さないならいいんじゃないかしら。
ごめんなさいね、手を止めさせてしまって。気にせず続きをどうぞ。」
すっ、とナイフを降ろしてホルスターに仕舞う。
ふぅ、と小さくため息をついて、他のナイフを取り出して研ぎ始めた。
■雨宮 雫 > 「朔ちゃんはアレだね、人間基準なんだね。
それじゃあこーいうコトするの大変じゃないかなぁ?
そんな顔になるんじゃあ、向いてないと思うかな、かな。
ボクは人間じゃぁないからいいけども。」
どう育ったのかも、どう生きざるを得なかったのかも知らないが。
最初は そういう目 の人間ではなかったのだろうと。
自分のしている行為を余り肯定はしていないのだろう、と。
「欲しいものは採ったから、ボクはもういいんだけどもー……まぁ、手は洗うけど。」
血が付かないようにそーっと、片腕の袖の中から透明な液体の入ったペットボトルを取り出し。
キャップを捻って中の液体を両手にかけて擦る……赤黒い色が、綺麗に落ちていく。
まるで水道で手を洗っているかのよう。
そうしながら、ふっと顔を上げて とても嬉しそうに笑いかけた。
「あぁ、そうだ……朔ちゃん、薬が効いて、嬉しいかな、かな。
良かった良かった、だね。」
■鞍吹 朔 > 「私だって人間じゃないわ。…人間と比べるのは恐れ多いから。
人間にすら値しない墨袋でいい。結局はクズでしか無いもの。やってることも、ただのゴミ処理。
人間に害を与える墨袋を殺すだけの機械でいい。それしか出来ないんだもの。」
ふぅ、と再び小さくため息をついて、ぼんやりと空中を見つめる。
何か思うところがあるのか、そうでないのかはわからない。
ただ、どす黒く濁った左目と灰色に陰った右目が、どこか遠くを見つめていた。
「……ええ、ありがとう。飲み辛いけど、貴方の薬はよく効くわ。
どうせならもう少し飲みやすくしてくれると助かるんだけど。苦すぎて涙が出そうだもの。」
そう言って、ポケットから水の入った小さなペットボトルと薬を取り出して、その場で飲む。
顔を盛大に顰めた。
「ふぅ。…どうせならこれからも墨袋の後処理に協力してくれるとありがたいんだけど、
貴方はそういう個人的な手出しはしたがらないんじゃないかしら?」
■雨宮 雫 > 「アレだね、朔ちゃんは人生が楽しく無さそうで勿体無い話だね、だね。
そーいう人生なら最初から、ふつーの人生観なんか渡して欲しくないよね、イジメ案件だね。
ボクが担任だったら家庭訪問して親御さんに おい って言うトコロだね。」
洗った手をハンカチで拭いて、綺麗になった指で自分の髪の毛を直す。
「薬は苦くしないと有難味がないから、甘くはしてあげないかな、かな。
美味しい薬なんて食べ過ぎて用法を守らなくなるに決まってるもの。
ん?んー……」
申し出に、自分の顎に手をやって、3秒ほど考えた。
「構わないかな、かな。
殺す前に場所と時間を教えてくれれば、回収に行くよ。
綺麗にきっちり、跡形も無く片付けてあげる。」
■鞍吹 朔 > 「…………。ええ、本当に。
でも、『人生とは、 病人の一人一人が寝台を変えたいという欲望に取り憑かれている一個の病院である』って言葉もあるわ。
望んでもどうにもならないなら、望みを押し殺して生きるしか無いじゃない。」
ナイフの最後の一本を研ぎ終わり、携帯砥石とナイフを収納する。
「甘くしなくても、苦くなくしてくれるだけでいいのだけど。
飲み過ぎるほど美味しくなくてもいいから、飲みにくいくらい苦いのはやめてほしいところ。」
そう言って、木箱からストン、と降りる。
この部屋の惨状に似つかわしくないほど綺麗な制服を、手でパンパンと払う。
「……そう。それはありがたい。
私が足を挫いたりでもしたら、容赦なく切り捨てるつもりかしら?
……なんて、ここで腹の探り合いをしても得るものはないわね。ありがとう、その時はよろしく。
宜しくする機会がないのが、一番なのだけど。」
■雨宮 雫 > 「欲しいものを手に入れる時には、払うものがあればいいかな、かな。
お金、力、体、その他。
世の中に、特に今は どうにもならないこと なんて無いんだよ、朔ちゃん。
まぁでも、人生最大の苦痛とは、“得ようとする想いい”と“失うのが怖いと言う想い”とも言うし、朔ちゃんは望むことが疲れちゃったかな、じゃあちょっと休憩も必要だね、だね。」
朔も帰り支度はできそうかな?
ナイフを片付けたのを見ると、髪の毛を一本抜いて、クルクル巻いて何かのカタチを作って……床の、綺麗な部分に捨てた。
「貴重なご意見として承らせていただきます。
今後のサービス提供の参考にさせていただきますので、今後とも何かございましたらお申し付けください、かな、かな。
え、朔ちゃんが怪我したらそりゃあボクが治してあげるよ。
怪我人、病人を保険課のボクが見捨てるだなんてあり得ないのだね。
後で電話番号教えるから、絶対に呼んで欲しいだね。
飛んで行って助けてあげるのだね、だね。」
なんかクレームがきたので、サポートセンターのテンプレートのようなスラスラと文言を吐き出した。
機械的トークの後、切り捨てる?と言われたら目を見開いて、多分、ここで一番力を入れて反論し始める。
■鞍吹 朔 > 「……どうにもならないことって、意外とあるものよ。
望んでも手に入らないもの。どう頑張っても失えないもの。それに振り回されるのって、結構疲れるわ。
…何してるの、その髪の毛?」
珍しく、捨てた髪の毛に興味を示した。魔術の媒介か何かだろうか?
「……心が篭ってないわね、原稿用紙みたい。
まあ、対応としてはそれでいい気もするけど。」
力の入った反論を受ければ、物珍しそうに目を丸くする。
「…私はそういう意図で言ったわけではないのだけど、意外ね。熱意はある方なのかしら。
じゃあ、その時には頼らせてもらうわ。……そろそろ行かないと、面倒な人たちに目を付けられるかもしれないわね。」
外を見れば、先ほどの銃声を聞きつけた野次馬がチラホラと辺りに見える。
発生源が何処かまでは見付けていないようだが、面倒な自体だ。
■雨宮 雫 > 「よし朔ちゃん、ちょっとこの後、お茶かご飯でも食べにいこうだね。
疲れた人生には食事が必要なのだね。 ん、これは死体を処理する係の目印なのだね。
結構時間経ったからね、後は手早い係がそうだね、15分くらいで綺麗にしてくれるから、ボクらは出ちゃおうだね、だね。」
大丈夫大丈夫、と半分笑ったような顔でドアへと歩き出す。
気付くかどうか分からないが、この床を歩いても雫の靴には全く、血の汚れがついていない。
無論、足跡もない。
「朔ちゃんは大事な患者でもあるからね?
そりゃあしっかり対応させてもらうのだね、だからボクを頼っていいのだね。
それじゃ早く出よう、出ようだね。」
■鞍吹 朔 > 「……私、そこら辺のジャンクフードでいいのだけど…無下にするのも何だし、喜んで。
そう、そういうことなら別にいいわ。それと、お礼。」
そう言うと、朔の姿が掻き消えた。
いや、姿だけではない、気配も、殺気も、闘気も、足音も、呼吸も、熱も。
朔に関するあらゆる物が、その場から掻き消えた。
「…サービス。私の異能、人に教えると効果が弱っちゃうから。
敵意を持ってない、ってアピールとして。詳細までは教えないわよ?推理してちょうだい。」
その声は、雫の背後から聞こえてきた。
朔が消えてからおおよそ3秒後。まるで買い物にでも行くかのような足取りで裏口へ歩いて行く。
「そういえば、その靴はどうなってるのかしら?
随分便利な靴底のようだけど。」
■雨宮 雫 > 「ジャンクフードは美味しいけれど、朔ちゃんにはもうちょっと美味しいものを食べさせますだ ね?」
唐突に消えた姿に足を止めて部屋を見回す。
気配も無い、音も無い、ニオイも無い、気も感じない。
何も無い――――これは、面白い。
とても大変凄く面白い。
より、朔ちゃんを大事にしようと、決めた。
「分かった、すっごいサービスしてもらったから、お返しにボクも何か教えてあげないと。
ぁ、この靴欲しいなら同じようにしてあげてもいいけど……」
何がいいかな、何がいいかな、と、ヒャッハー言い出しそうな上機嫌で裏口へ、朔を追いかけて向かう。
「ボクは仙人だから、色々できるから朔ちゃんにも提供しようだね。
まぁでも先にご飯にしよう、ご飯にしよう、だね、だね!」
■鞍吹 朔 > 「あら嬉しい。それじゃ、期待しておこうかしら。」
振り返って、上機嫌そうな雫の顔を見て、薄く笑う。
「そうしてもらえるととても嬉しいわ。このローファー、あんまり汚したくないから。
できれば踏み込みと動きやすさ、それと履きやすさ脱ぎやすさを考えてスニーカータイプがあると嬉しいのだけど、出来るかしら?」
まるで服屋で店員に服のサイズを聞く女性のように気軽に、『処分』を楽にするための手段を聞く。
仙人だと聞けば、軽く驚きはするものの動揺はしない。
「それじゃ、行きましょうか。誰かと一緒に食事なんて何年ぶりかしらね?
エスコートは期待してないけど、行きましょうか。」
ぱたん、と扉を閉じる。
部屋には、死の匂いだけが残された。
■雨宮 雫 > 「まぁ、欲しい靴を貸してくれればできるけど……じゃ、ご飯食べたら靴を買いに行こうかな、かな。
そりゃあボクにエスコートとかは無理かな、かな。
そーいうのはちょっとー……けひひ。」
そうやって2人ともが部屋から出て行って。
■雨宮 雫 >
■雨宮 雫 > 誰も居なくなった後。
床の穴から、壁の隙間から、天井から。
真っ黒い甲虫が一匹、二匹、三匹…………ゾロゾロボロボロと部屋の中へと湧き出してきた。
一体どれだけ居るのか、黒い水のように雪崩れ込んでくる甲虫は先を争うように、部屋中にばら撒かれた ご飯 に群がっていく。
齧り、啜り、齧り、啜り。
齧り、啜り、齧り、啜り。
齧り、啜り、齧り、啜り。
齧り、啜り、齧り、啜り。
誰かが気付いてドアを開けた時。
そこには死体も血の一滴も存在せず。目印に置かれた髪の毛すらも綺麗に平らげられた、ただの部屋になっていた。
ご案内:「落第街大通り」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から雨宮 雫さんが去りました。