2016/07/21 のログ
紫刃来十 > あわてた様子で急遽予定の無かったマッチングを行うとでっち上げる闘技場の司会者らしき人物。
観客席からは二人の名前がそれぞれ呼ばれる…そこで、ふと目の前の女の名前が、聞き覚えのあるものだということを
思い出す。

「あー…思い出したわ、お前あちこちで暴れてるって噂の女だろ。」
そして、それに付随して思い出す、彼女に対しての禁句。

「確か『ステンレス』龍宮とかいう芸人みたいな名前の奴、ダサすぎて聞いたときは吹き出したわ。」

先程のお返しとばかりに、遠慮なくその禁句を口にする。

龍宮 鋼 > (楽しそうに、だがやる気がなさそうに司会の紹介を聞く。
 あくびまでして、言葉通り完全に暇つぶしの態度であったのだが、)

――テメェ、――。

(その言葉を聞いた途端空気が変わる。
 眼が見開かれ、縦に細い瞳孔が更に細く変わる。
 一気に全身へ魔力が漲り、赤い瞳がその影響で輝きだして。)

――――――――!!!

(最早言語ではない――どころか、軋む金属のような音の混じった咆哮を上げ、地面を蹴る。
 蹴った地面を抉り飛ばし、一気に彼との距離を詰め、彼の頭部に拳を叩きむべく、オーバースローで拳をぶん回す。)

紫刃来十 > 観客達の想像以上の速度で振られる拳、これは一撃で勝負が決まったかと殆どの者が予想する。
だが放たれた拳が男に当たる直前、元の軌道を逆再生するように大きく弾かれる。

「何だよ、気に入らないのかそのあだ名。」

脇を締めたコンパクトな掌打を、龍宮の手首に当て吹き飛ばした男が
先程とは逆に嫌味な笑みを浮かべ
龍宮に話しかける。

「じゃあ俺が他にいいの考えてやるよ、メスゴリラ、トカゲ人間、そうだなあ、テフロン加工ってのはどうだ?
ステンレスに対抗して」

ここぞとばかりに挑発を続ける男。

「まあでもシンプルなのが一番だよな…わかりやすく半端者とか、混ざり物あたりでどうよ?」
火に油を注ぐかの如く、更に挑発を続ける。

ただ同時に、先程の一撃で、その威力は十分に理解できたのか
挑発を続けながらも相手の動き、その初動を見逃さないよう警戒を怠らない。

龍宮 鋼 > ――!!!

(彼の言葉は聞こえていない。
 弾かれた拳は一度上の方に跳ね上がるが、そのまま身体ごと畳むようにその腕を振り下ろす。
 大声で叫びながらの真上から全体重をかけて振り下ろすハンマーパンチ。
 当たらなかった時の隙とかカウンターとか、そんなことは一切考えていない。)

紫刃来十 > 「やっぱゴリラだな!」
振り下ろされる拳を、今度は横から拳を叩きつけ勢いを逸らす。
が…

「ってえ…」
先程のテレフォンパンチから格闘技の経験等無い素人なのはわかっていた。
加えて激昂し冷静さを欠いた今ならその動作は、手に取るようにわかる。

だがそれを補って余りある身体能力と、一撃の威力。

先の2回の拳の激突、本来ならあの速度の一撃を無理やり逸らされたら、その負担で
向こうの手首がおかしくなっていてもおかしくはないのだが、相手にはそんな様子は微塵も無く
むしろこちらの手首の方がイカレかねないダメージを受けている。

「ふざけやがって…」
だが、それでも魔術を使わないのは、ただの素人に魔術を使うことなどできないというプライドと
相手への侮りからだった。

龍宮 鋼 > (激昂していなければ、我流ではあるもののそれなりに技術を使いもする。
 だがこの状態になれば、力で全てをなぎ払うような動きになる。
 逸らされようがお構いなしに腕を振り下ろし、拳が地面へと突き刺さった。
 小型の爆弾でも炸裂したのかと言うような音。)

――――――!!

(そこから更に一歩踏み込む。
 光る瞳がぐるりと彼の方へ向く。
 瞳の光が尾を引き、赤い線のように見えるだろう。
 至近距離の更に内側、密着距離とでも言うべきその間合いへ踏み込みつつ、左手を今度は思い切り振り上げる。
 アッパーなどと言うものではなく、ただ下方向から殴りつけようと言うだけの動きだ。)

紫刃来十 > 「やっべ!」

滅茶苦茶な体勢からのためも何も無い、突き出すような一撃。
だが、その一撃の危険性は十分に理解している。
当たれば戦闘不能は免れない。
咄嗟に避けるも、その振りぬかれた腕の衝撃だけで腕の骨が軋み、悲鳴を上げる。

「てっめえ…ふざけやがって…」

全身に電流が奔る、その顔には憤怒の表情。
ただの素人と見下した相手に魔術まで使わされたのは、紫刃にとってそれほどまでに
屈辱的だった。

痛む腕を無理やり上げ、更に来るであろう龍宮からの攻撃に備える。
油断は無い、怒りを抑え
代わりに放たれるのは冷徹な敵意と殺意。

龍宮 鋼 > (空気を切り裂く、と言うよりは空気を叩き付ける轟音が鳴る。
 視線は真っ直ぐに彼を見据えているが、果たして本当に見えているのかどうかは怪しい。
 実際彼が電気を発しても反応を示さず、構わずに尚も殴るつもりだ。
 振り上げが外れ、身体が少し後ろに泳ぐ。)

―――――――ッ!!!

(叫び、構わず更に踏み込む。
 後ろ足で身体を押し出し、腰の回転で加速。
 肩、肘で多段ロケットのように更に加速し、拳を彼の顔面へと放り込む。
 理性をなくしていても、何度も何度も繰り返したこの動きだけは、洗練された技術とむき出しの暴力が合わさった一撃だ。)

紫刃来十 > 振り抜かれた拳が、紫刃の顔面を貫く…だが、その顔には不敵な笑み。

「…悪いな、俺魔術師でもあるんだわ」
全身を雷と化した男が、顔を拳で貫かれたまま笑みを浮かべる。
雷となった男に触れているその腕からは、強烈な電流が龍宮に流れる…だが、それだけでは終わらない。

「さあ、おねんねの時間だぜステンレスよぉ!!」

両の手で頭部を掴み、思い切り電流を流し込む。
常人なら下手をすれば死にかねないほどの強力な電流を、直に頭から全身へ流し込み続ける。
無論殺す気はない、だが殺す勢いでやらなければこの女は絶対に止まらないことを
先程までの戦いで紫刃は理解していた。

余りに強烈な電流が空気中に放電され、、まるで龍宮と紫刃が発光しているようにも見える。
龍の血をひいているとはいえ、半分は人間である龍宮に人体の最重要器官から
全身へ電流を流せば、ただではすまないはずだ。

龍宮 鋼 > (拳が顔面を貫いても尚腕を振り抜こうとする。
 が、直後に全身を電流が襲う。
 更に掴まれた頭から電流を流し込まれた。)

がああああああああああああああああ!!

(吼える。
 今までのような龍の咆哮ではなく、人の叫びだ。
 鋼龍は魔術耐性が低い。
 ましてや大抵の生物の弱点である電気とくれば、効かない筈もない。)

――つ、ぎァ――

(それでも尚、気合と根性で意識だけは手放さない。
 行動不能レベルのダメージとショックで正気に戻り、口の端を無理矢理吊り上げて。)

――まと、も――に、やろう――ぜ――ッ

(激情に任せて拳を振るっても楽しくない。
 次はちゃんと意識のある状態で、まともなケンカをしようと。
 その言葉だけは伝えておきたかった。
 目的を果たし、そのまま意識を手放す。)

紫刃来十 > 「…勘弁してくれ、アレで喋れる余裕がまだあるのかよ…」

呆れた怪力とタフネスに脅威を抱くも、倒れて気を失ったのを確認すれば安堵のため息を漏らす。
勝利とともに観客席からは勝者への歓声ではなく、その容赦のない戦い方と非情な決め手への罵声、怒声
更には敗者への健闘を称える声があちこちから飛んできた。

「賭ける金があるなら、何時でも相手してやるよ」
既に聞こえていないであろう相手へ最後に告げると
耳を塞ぐジェスチャーをして観客の殆どからブーイングを受けながら、男は退場していった。

その後飛び入り参加のためファイトマネーは得られず、それどころか再びの腕の治療で
ただ金を損しただけとなった男は、大きなため息をついたそうだ。

ご案内:「地下闘技場」から龍宮 鋼さんが去りました。
ご案内:「地下闘技場」から紫刃来十さんが去りました。