2016/09/11 のログ
ご案内:「落第街大通り」に渡辺慧さんが現れました。
■渡辺慧 > 落第街大通り。
それを少しだけ外れ、人通りが目立たなくなるこじんまりした場所。
その一角に、小さく、細々とした煙草屋の店主へ。
以前も、どころか。ここ最近は此処に来る回数が増えた。
考え事をするには一番適している。
もはや店主は呆れた顔をするだけで何も言わない。
罰の悪そうな顔でいつものそれを小銭を支払って買った。
■渡辺慧 > 気づいたら随分時間がたっている。
無為に過ごせるだけありがたいとも言えるが。
苦しいのも苦いのも、全くそんなものまっぴらごめんだった。
封を開け乍ら、その横にある喫煙所へのんびりと歩き出す。
喫煙所とは名ばかりの、大きめの薄汚れた缶がぽつりとおいてあるだけだが。
いつものように手慣れた手つきで一本を取り出す。火をつけた。
煙を口の中で転がす。
■渡辺慧 > この学園に来た目的が分からなくなった。
いや、元より無意識の中でやろうとしていたことが、全くできずにいた。
そしてそれを認識してしまった。つまり、もうほとんど無意味に近い。
わがままだったのだろう。二兎を追うものは一兎を得ず。
ぼんやりと目を細めながら煙を吐き出した。
まだ半分も吸っていないそれを、苛立ち混じりに指でもみ消しドラム缶に投げ入れる。
そうして、少したってもう一本取り出して火をつけた。
情緒不安定なのかもしれない。
■渡辺慧 > 兄のそれを超えるのも、それから逃れて楽になるのも。
矛盾しているし、どちらも達成しがたい。
だから、諦めるのだ。両方とも。
どうせ……学生生活は過程だ。終らない物はない。
いつまでも、自分の感傷に苦しんでいるわけじゃない。
いつかは、そんな自分を鼻で笑う日が来るのだろう。
だから、今は諦める。過程に過ぎないと思えば、もっと楽に過ごせる。
……別に、いいだろう。どれだけ自分本位な考え方だったとしても。
苦しいのは嫌だ。そんなもの、したくもない。
彼女だって、だからあんな忘れ方をしたのだ。自分がそんな立ち回りをしたところで別にいいんだ。
大きく煙を吸い込んで、吐き出す。チリチリと煙草の先が燃えた。
■渡辺慧 > 此処を卒業したら、異能とはまるで無縁の場所へ行く。
ここで働けるつもりも、異能を有効に使えるつもりもない。
それだけ碌な異能ではない。自分の物は。
……。とりあえず、資格の勉強でも始めるかな。
将来なんて目に見えないが、今よりはずっと楽であるはずだ。
目を一度強く閉じて、息を吐く。
もう一度、煙草の火をもみ消しドラム缶へ捨てた。
一言だけ。
「……ごめんなさい」
とだけ呟くと、そしてそのままその場を立ち去った。
ご案内:「落第街大通り」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に黒衣の男さんが現れました。
■黒衣の男 > 落第街の大通り。
決して治安が良いとは言えない場所に黒衣を纏った者が一人。
この場所であれば、その姿はなんら不思議ではない。
姿を晒したくない者達など巨万といる。
そしてこの黒衣を纏う者も、その中の一人。
長身であり、体格からして男性である。
別にそこまでなら平凡といえば平凡だが、どうやらピンヒールを履いてる様子。
元々高い身長がピンヒールのおかげで更に高く見える。
カツカツと音を鳴らしながら歩をゆったりと進めている。
■黒衣の男 > 行く宛がないのか、目的地もないのか。
ただただ、その場を歩いてるようにも見える。
ふと、歩みを止めて、彼は長椅子に腰を下ろす。
ろくに整備がされてない、塗装が剥げてしまっている長椅子に腰を下ろす。
木材で出来ているのか、ギィっと軋む音が聞こえた。
そこまで重かったか?と首を僅かに傾げさせながら背も長椅子に預けた。
■黒衣の男 > 長椅子に座りながら、歩み目的地まで歩を進ませている人々を眺める。
深く被っているフードの奥底から、緋色の瞳は人々を眺め続ける。
常世学園の制服を堂々と着て歩む者。
この大通りの一角で商売をする者。
複数人の者達に囲まれて、裏に連れて行かれる者。
他にも多々に色々な人々が存在する。
「何も変わらない、どこもかしこも、ここも」
小さく呟いた言葉、低くもなく高くもない声でそう呟いた。
■黒衣の男 > 咳を一つ払い黒衣の胸付近に手を差し入れる。
そこから一本の葉巻を取り出した。
葉巻を口元にまで持って行き、それを咥える。
深いフードを被ってるが故に、外からでは葉巻の先端部分程度しか確認できないだろうか。
どうやら予めにヘッド付近をカットされてるモノらしい。
更に胸ポケットからジッポライターを取り出して、火を付ける。
葉巻を手の中でころがすようにしていく、外側だけでなく中心部分にもだ。
ゆっくり火を付けていき、均一に火が付いたのを確認してようやく吸い始める。
丁重にゆっくりとゆったりと、急かさずに吸い続けた。
■黒衣の男 > 市販されてる煙草ではなく葉巻であり、ただの使い捨てライターではなく、ジッポライターと。
少なくともある程度の身なりの良さが見て取れるだろう。
「前はあんなに吸ってたのにな、懐かしい」
そんな言葉を吐きながら、一人でただ静かに吸い続ける。
時間をかけて、ゆっくりと。
彼の周囲には焦げ臭さは漂わず、香水を思わせる匂い。
良い匂いとは言えないが、嫌悪感を抱かせる臭いはないだろう。
■黒衣の男 > 長い時間をかけて吸い終わり、椅子から立ち上がる。
ハイヒールの特徴的な音を鳴らしながらに、また歩を進めていく。
特に目的もない、行き先もない、そんな歩みを。
ご案内:「落第街大通り」から黒衣の男さんが去りました。