2016/12/14 のログ
■獅南蒼二 > 貴方のそんな在り方をとやかく言うつもりなどない。
むしろ,あの街にとって貴方はまさに必要悪というべきだろう。
「奴らにも客を選ぶ権利くらいあるんだろう。」
相変わらずの皮肉。半分ほど残った煙草を,灰皿に置いて,
「理由はどうあれ,そしてこの結果を想像していたのかどうかもさておき。
……それを決断したのは本人だろう。」
白衣の男は少しだけ,残念そうに目を伏せた。
かつてのこの男なら,制御されぬ異能の危険性を説くところだろうが…
「この島の先進的な異能学をもってしても,この事態を防げなかった。
同様の事故を魔術学が引き起こすことは皆無であるという点からしても,異能学者の怠慢と言わざるを得んな。」
…獅南はそう言うにとどめた。
珈琲を静かに啜って,息を吐き……
「…そう思うなら,口説いてくればいいだろう?
彼女が力を使うに至った理由か,裏で糸を引く黒幕あたりを暴くか,でっち上げるかして,ヒーローにでもなればいい。」
■烏丸秀 > 客を選ぶ権利は無い、と聞かされれば。
心底楽しそうにけらけらと笑う。ツボに入ったようだ。
「はは、そりゃそうですね。
客は選ばないと、商売なんてやってられませんもんねぇ」
「いやいや、異能学者さん達は大変ですね、本当。
ボクみたいに無能の人間には、どれ程の苦労か分かりませんけど」
しかし、少し引っかかる。
魔術学が引き起こす事は皆無?
「魔術事故はこの規模にならない、と?」
ふむ、と少し考える。
魔術学ならば召還魔法の暴走――いや、そうか。
魔術ならば等価交換。人の素質以上の力を発揮する事は出来ない?
「あ、ダメです、あの娘、彼氏居るんで。
ボク、この島だと彼氏持ちに手を出すのご法度なんですよ」
■獅南蒼二 > 「真っ先に動くのは,使命感やらなにやらに駆られる一般人だろうな。
二次災害を引き起こさん限り,彼らは優秀な自浄作用だ。」
楽しげに笑う貴方を見て,そうとだけ答えつつ,
貴方の質問には,事も無げに答えた。
「…簡単なことだ,高度な魔術は学ぶことなしには行使できず,
単純な魔術であればどれほどの素質があろうと出力は頭打ちになる。」
「つまり,このような悲劇を作り出せるのは,高度な魔術を学び結果を十分に把握した魔術師のみだ。
それ故に,魔術学に於いて,この規模の“事故”は発生し得ない。」
「……尤もこれを“事件”という名称で扱うのなら,この幾倍も悲惨な結果を,意図的に作り出すことも容易だろうがな。」
異能学はまだ黎明期であるからして,異能者の意志を超えた暴走による“事故”を完全に防ぐには至っていない。
それは無論魔術学も同様なのだが,こういった大規模な事故を引き起こす可能性があるのはどちらか。
「何にせよ…これを彼女一人だけの責任だと言うのなら,異能学者などこの世には何の利益も齎さんな。」
珈琲を飲みながら,ことの成り行きを見守る。
…状況はほぼ管理下に置かれたようであるし,これ以降被害が拡大することは無いだろう。
「ほぉ,それは残念だ。
お前の活躍をここから眺めてやろうと思ったのだが……お前は裏方で,活躍するのはその“彼氏”か?」
■烏丸秀 > 「なるほど、確かに。
魔術は高度な術式ほど、やたら難しくなりますからねぇ」
力は、それを振るう術を知らない者が持つと凶器になる。
魔術は術式の難解さがリミッターになっているが、異能にはそれがない。
「まぁ、彼女の責任ではありますが、それだけではない。
でも、これ以上の暴走は、それこそ異能学への致命的なダメージになりかねない」
だからこそ、異能学者たちは彼女の責任にしたがるだろう。
そして、こう嘯くのだ。『強力な異能を解明し、管理する事こそが重要である』と。
「あ、ボクはこの件にそんなに関わる事、無いと思いますよ。
ボク、『これ』の関わらない事はとんと苦手でして」
手でお金のマークを作ってみせる。
そう、この男の解決方法は、いつでも頭脳か金銭なのだ。
■獅南蒼二 > 「そういうことだ…呼吸するように炎を出されてはな。」
楽しげに笑いつつも,貴方の言葉の裏側の思考までも読み取ったか…
…いや,単にこの男の,異能学への不支持がそうさせただけかもしれない。
「それこそが,現代における異能学の限界だろう。
犠牲や危険を伴いつつも創造と進歩を齎すような代物ではなく,
犠牲や危険を封じ込める方策を生み出すことに終始する。」
「このまま異能学が堕落してくれれば,異能さえも魔術学によって昇華し管理すべき時代が来るかもしれんな。」
楽しげに笑いながらも,貴方の手の形を見て……呆れたように肩をすくめた。
「一貫していて素晴らしい,と言うべきか。人間味に欠けるとでも言うべきか。」
珈琲を飲み干せば,代金を適当に,やや多めにテーブルに置いて立ち上がる。
「あの街を再建するのなら,あまり小綺麗にはしないことだ。
陰には陰の住人がいる……っと,お前には必要のない助言だったかな。」
くくく,とわざとらしく笑い,白衣の男はテラスを後にした。
そしてゆっくりと,まだ炎の燻る街のほうへと,歩いていくだろう。
ご案内:「落第街大通り」から獅南蒼二さんが去りました。
■烏丸秀 > 「――ふむ」
なかなか面白い先生だ。
いやはや、あれで全く、被害者の事など眼中にも無いようだった。
まさに首尾一貫しているというやつだろう。
「まぁ、その通り。あんまり小奇麗にしても、ね」
本当は高い建物のほうが利益も大きいのだが、まぁ仕方ない。
適当なバラック小屋を建て、その後は現地に任せるとしよう。
「にしても……」
異能とは、本当に本来の持ち主の力を超えて『暴走』するものなのだろうか?
ご案内:「落第街大通り」から烏丸秀さんが去りました。