2017/04/16 のログ
ご案内:「落第街大通り」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 落第街。それは常世財団が残してしまった
負の産物といえる場所であり
この場では抗争や密売などロクでもない事が
頻繁に発生する。

そんな中、風紀のゴミ処理係ともいえる
白い四足ロボットがこの薄汚れた地の警戒に
あたっていた。彼が立っているのは歓楽街へと
続く道にそびえたつバリケードの前。つまりは
風紀が用意した検問所である。

「ここを通る者は必ず持ち物検査を行う。」

イチゴウは定期的にこのテンプレート的なセリフを
吐くと共に背部の重機関銃とレーザーサイトを
規則正しく一定の間隔で左右に揺らす。

イチゴウ > 「・・・にしても誰も通らんな。」

自分のシフトになった途端
急にバリケードを通る奴らが少なくなる。
まあ各種スキャンで徹底的に検査するから
ここを通る奴らにとって不都合な事も
多いのだろう。
それに自身の変わった見た目のせいか
最近、風紀の警備ロボットとして妙に有名になってしまい
警戒する生徒が増えたのも事実ではある。

それにしても自分がこんな定点警備に当たるとは
自分でも珍しいと感じる。
いつもは治安が格別悪い区域の巡回か
あとはお偉いさんからの”お掃除”の依頼の
どっちかなのだが

「上層部の考える事はわかんないね。」

イチゴウは誰に言う訳でもなく
空を見上げて息を吐くように呟いた。

イチゴウ > 不意に空からポタポタと水滴が落ちてくる。
その落ちてくる水滴の間隔はだんだん速くなり
あっという間にシャワーの如く地面に
降りそそいでくる。

「ん?何だ・・・雨か。」

イチゴウがそう呟いた時には
結構ひどい雨模様になっており
傘がない人たちが駆け足で道を走っていく。
そのうちに検問所一帯は
落第街には珍しい静けさに包まれるが
この白い警備ロボットは相変わらず
重機関銃を背負い雨の中警備を続ける。

ご案内:「落第街大通り」に裏々築々さんが現れました。
裏々築々 > 「ふむふむこんな雨の中感心であるな。お勤めご苦労。」

そんな事を言いながらヒョイとバリケードを通ろうとする制服姿の男。
学生鞄を手に持って、腕には黒地に赤で裏会長と書かれた腕章。

だが、そんな事より目を惹くは男の顔。
まるで、夜の闇をべたりと塗り付けたみたいに黒い影に覆われている。

「それにしても、こんなところでバリケードなぞ張っても意味あるのかね?
 転移魔術に地下の道。こんなもの抜ける手段はいくらでもあるだろうに。
 …まったく、学費の無駄遣いだよ。」

呆れたような口ぶりで四足の機械に話しかける。
どういうわけか奇妙なもので雨が男を避けているようで男は全く濡れていない。

イチゴウ > 「ん?」

いきなりこんな雨の中現れた妙な男、
その男はバリケードを通ろうとしていた。
すかさずイチゴウは素早く男の方を向いて

「おいおい何勝手に通ろうとしてんだ、
通るのは検査してからだ。」

イチゴウは低音の機械音声でそう言いながら
男をよく確認すると何か妙だ。
特に顔か、素顔など特定不能なレベルで黒い。
俗にいう完全黒体という奴だ。解析しようにも
完全な黒は光を吸収するのでスキャンが
意味を成さない。
そして男が不意にかけてきた質問に

「意味があるもなにもこのバリケードは
ボクが張ったもんでもないし
そもそもボクに任されてるのはこのバリケードの警備であり
他に抜け道があってもそれは任務外だ。」

機械らしく淡々とした素振りで答える。
口調や行動は妙に人間らしい所もあるが
こういう所はやはり機械というべきか。

「それよりもキミは何者だ?
雨にも濡れていないし、何よりも
認識災害と異常なミーム汚染が検出されている。」

イチゴウはさっと検査した結果をもとに
男に対して問いかける。

裏々築々 > 立ち止まり、ここの警備の他は任務外だという言葉に対して

「おお、何とも機械のような言い分だな。いや、機械だものな失礼した。
 公務員の鑑だな。君のような風紀委員ばかりならこの街も安泰だろうな。」

皮肉っぽくそんな風に言う。

「雨に濡れていないだあ?…そんな事で人を疑うものではないぞ全く。
 異能を制御できていないだけだよ。恥ずかしながらね。」

そういいながらパカッと躊躇なく鞄を開く。
…見れば中には成人向けのマニアックな雑誌がいくつか。おそらく機械のサーチでもそれらが見えてた事だろう。
そして、僅かに匂う魔術の気配。それも、雑誌ではなく鞄の方から…何か仕掛けがあるらしい。

「だから言っただろう?
 大体、何かやましい事があるのにこんなところを通るのはただのアホウか
 やましい事がバレても通れる力のある者かだろうな。」

鞄のをバタンと閉めてしまうと制服のポケットの中身も見せる。
ティッシュペーパー、絹のハンカチ、クシャクシャの紙幣。

「もう、行っていいかな?私は少しでも早くこの戦利品を楽しみたいのだが?」

イチゴウ > ーー鞄をスキャン中。
ーースキャン完了。
ーー対象物から魔術式を検知。

「行ってよし。・・・と言いたい所だが
もう一つ確認する事がある。
その鞄から魔術式反応がするんだよね、
どういうことなのか説明してもらおうかな。
あと戦利品というのは何だ?」

イチゴウは鞄に何か仕掛けがあると見ると
謎の男に対していくつか質問をとばす。

「それと・・・さっきの言い分から
このバリケード以外の道を知っているようだが
なら何故わざわざこの検問所を通るんだ?
やましい事が無かったとしても面倒だろう。」

不意に疑問に思った事も追加の質問として
男にぶつける。

裏々築々 > 「なんだ?コレ(戦利品)が気になるのか?
 ただの機械だと思っていたがしっかりと性欲はあるのだな。
 やはり、男はそうでなくてはナァ!」

楽し気にそう言うと。冊子の一つを引っ張り出す。
タイトルは『脱-新しい私Ⅱ-』ラミアの女性と蛇人種の女性が脱皮するところばかりを写した写真集だ。

「古くなった皮を脱ぎ去って新しい姿になった彼女らの姿は実に美しい!
 もっとも、異種族保護派とかいう組織の批判が相次いで発禁になってしまっているのだがな…。」

既に無法の街、落第街でしか取り扱われていないものである。
パラパラとめくりながら「ホォ」とか「フゥ」とかそんな声を上げる。

「ふん、決まっているだろう。別の道を通る方が面倒であるからだ。
 わざわざ写真集の為に遺跡に潜っていてはかなわんだろう?」

その身が潔白であるならばここを通った方が早いだろう。
潔白でないのにわざわざ通るなら別の理由があるのだろうが…。

「…ああ、この鞄か。修理の為に魔術を用いてね。おそらくそれの残存魔力だろう。
 っと、私ばかりに時間を割いていても仕方ないだろう?ほら次のが待っているぞ。」

恐らく鞄を強引に奪って魔術を解除すればなにかは見つかるのだろう。
見つかるだろうが…そんな強引な手段が許されるのだろうか?

イチゴウ > 「・・・。
ただ入手経路を確認したいだけだったんだが。
しかしボクも男だけれど
人間はこんなものを見て満足するのか・・・
まったく人間というものはたまに理解に苦しむ。」

取り出された冊子の表紙を見ると
不思議そうに首を少し傾けてそう呟く。
性欲とは言い換えれば種族保存の欲求。
機械である彼は持ち合わせていない。
そして男がこのルートを選んだ理由を話すと

「なるほどねえ。けどボクはこの通り
結構しつこく検査するからマトモな学生にも
煙たがられてんだ。まあ変なもの通すと
報酬減るからなあ。」

イチゴウは気怠そうに呟くと
再度男の鞄に目を向ける。
百聞は一見に如かず、
実際に自分で確認してみた方が早いかもしれないし
この男は妙に急いでいるようにも見える。

「よし、精密検査だ。拒否はさせない。」

イチゴウは低めなトーンでそう宣言すると
彼に内蔵されているIFGSを起動する。
この装置は範囲内の異能や魔術を無効化するという
スグレモノだ。

ーーIFGS起動。影響効果±1.25。

本来ならば数秒間しか効果を発揮できないが
低出力ならば暫く持続できるだろう。

裏々築々 > 「機械というのは哀れだな。
 これの美しさも理解できんとは…。」

心底憐れむように言うが、人間の多くも彼の完成を理解できないだろう。
雑誌を鞄の中に仕舞う。

「確かにしつこいな。もう通してくれてもいいのではないか?
 それとも何か私の性癖を丸裸にするまでここを通してくれないのかね?」

…全く、しつこくて仕方がない。
報酬ぐらい多少減ってもいいだろうに。

「…もし何も無かったら謝罪と菓子折りぐらいは貰えるんだろうね?」

鞄にそれが適応されると雨が雑誌に降り注ぐ。

「うおおおお!!!私の戦利品が!!」

そう叫び、カバンを抱き寄せれば。
さきほどまで影も形も無かった注射器が一本ポーンと飛び出して来た。

「…ナア、君の強引な検査によって私はかなりの被害を被った。
 だからこれはまあ、見なかった事にしてくれ給えよ。それではこれにて失敬。」

そんな風に言いながら当たり前のように歓楽街側に抜けようとする。
なお、注射器は拾わず捨てたままである。

イチゴウ > 「哀れねえ・・・
ボクからすれば3つも欲望を持ってる
人間の方が大変そうだがな。」

イチゴウはため息まじりにそう呟く。
そうこうしているとIFGSが適応されたのか
鞄から先ほどまで確認できなかった注射器が
飛び出てきた。これは風紀案件か。

「おい待ちな。こんなもん出しといて
通れるとでも?」

今までとは打って変わって冷たい口調で
そう男に言い放つとバリケードの一歩後ろの
封鎖壁が閉じる。

「もしこの注射器に関して適切かつ正当な理由が
あるのなら封鎖壁を開けて通行を認める。」

イチゴウは注射器を解析しながら
男にそう言葉を投げる。
この封鎖壁自体はそれほど硬い物でもないので
破壊自体は困難ではないだろう。
そうなった場合この警備ロボットは
黙ってはいないだろうが。

裏々築々 > 「…まあまあ。少し、話をするとしよう。」

壁が閉まったのであれば仕方がない。
通る方法を考えよう。

「知らない男にこれを鞄の底に入れてそこを抜けろと言われたのさ。さもなくば殺すと脅されてしまってね。
 私のようなひ弱な男には逆らうことが出来なかったというわけだ。
 ああ、通りがかったばかりに実に可哀想な男だろう?私は。」

芝居がかった動きでそんな事を言う。
ああ、嘘だ。

「これもそれも元を正せば君たち風紀委員の怠慢だと言ってもいいだろう。
 そうだなこれは君たちの怠慢の結果である。」

詭弁だ。
そして、そんな事を言いながら順番を待つもう一人の男に近づいていく。

「そこを開けてくれないかロボット君?
 この通りすがりの可哀想な男に免じてな?頼むよ。」

順番を待つ男の体の体が黒い靄に包まれる。
何が起こっているのか分からない、分からないがこれは人質であるのだろう。

イチゴウ > 男の雰囲気が変わり
そして男は語りだしたが

「おいおい、ボクは演劇を見てるんじゃないんだ、
誰かに頼まれたのならその誰かは誰なのかを言うんだな。」

芝居がかった動きをする男に対して
呆れたようにそう呟いた。
そしてその直後に列に並ぶ男に近づく黒い霧。

「人質のつもりか?しかしここいらの二級学生は
人質とするのにはチョイと不適切だ。何故なら消えても
不利益どころか学園側にとっては
お荷物が減ってむしろメリットだからね。
キミのその行動はただ自分の首を絞めてる
だけに思えるのだが。」

イチゴウがそう言い終えると重機関銃を
男の方へ向けレーザーサイトの照準を固定する。
この状況を人質にされた男はどう思っているのだろうか。

裏々築々 > 「ああ、確か裏の生徒会長だとか名乗る男だった。
 正直に言ったぞ、さて開けて貰っても構わないかね?」

当たり前のように扉は動く気配がない。

「おっと、今の聞いた?
 流石に酷いな二級学生には生きる価値がないと!風紀委員が言ったぞ!
 むしろ、死んでくれとの事だ!!SNSに上げれば炎上間違え無しだな!」

楽し気に、楽し気に言う。

「さあ、通りすがりの君。君の敵は誰だ?私か?本当に私か?違うよな?
 思い出せ。その屈辱を!その悔しさを!今こそ立ち上がる時だ!
 
 さあ…ようこそ、裏生徒会へ! 」

先ほどまで柄のシャツを着ていたその男の服は靄が晴れると同時に揃いの黒い制服に変わる。
顔だけは未だに黒い靄に包まれている。
その男は手の先から光る剣を出しイチゴウの方へと向かっていく。ただ、明らかに正気の動きではない。

「あーあ、ロボット君が酷い事を言うから怒ってしまったようだ…。
 まあ、私はあまりドンパチするのは好かんのでね。帰らせてもらうとするよ。
 また会おう。ロボット君。」

そう言って指を鳴らすと空間が黒く歪む。
その歪みに飛び込むとそれは跡形もなく消えた。

行く手を阻むように残されたのは光る剣を持った男。その動きからは人の感情を感じない。

イチゴウ > 「・・・そうだった。
風紀のモットーには二級学生の保護も含まれていたか・・・
全くこれだから嫌なんだ、風紀の偽善にまみれたやり方は。
必要ないなら必要ないと割り切ってしまえばいいものを
こんなだから対応しきれない事案が出てくるんだ。」

イチゴウは思い出したかのように呟くが
時はすでに遅く人質だった男は
なにか異様なものへと変貌と遂げる
恐らくはあの男の仕業だろう。裏生徒会と言ったか?

そんな事を思っているとそれは光の剣を突き出して
イチゴウの方へと突っ込んでくる。

「仕方がない、この際は”怪異”として
処理してしまうか。」

ーー制圧モード。実弾を装填。

すぐにイチゴウはせまりくる
光の剣を前右足で素早く受け止め
そのまま男ごと空中へとぶん投げる。
そして空中に浮きあがった男に
レーザーサイトで照準をつけると
重機関銃によるバースト射撃を行う。
12.7mmという大口径弾のバーストファイアを
受けた男は空中で血飛沫となり大雨の一部と成り果てる。

「あの男は?・・・くそ。」

イチゴウは辺りを見渡すが
あの男の姿は無い。
さては逃げられたか・・・

裏々築々 > ピローン
間の抜けた音が鳴る。恐らく携帯端末のカメラの音だろう。

「本当に殺すんだな君は、何の罪もない人質の男を。
 …風紀委員向いてないんじゃないか?」

バリケードに黒い穴が開いて上半身だけ出てきた男。
携帯端末を片手に虚空に頬杖をつくようにそんな事を言うと。

「君は良く働いた。これにてお役は御免だ。
 普通の生徒に戻りなさい。」

黒い制服、黒い靄の残骸は消え失せてそこには元の服を着た男の死体が残る。
綺麗な姿の死体だ。

「オット、死体の埋葬は丁重に頼むよ。
 放っておいたら墓に入れられる部分が無くなってしまうからな。
 異能者の死体なんて死体売り達にとっては宝物みたいなものだ。」

最後にそれを言い残して今度こそ男は消える。
撮った写真がどうなったのか、仮にネットに上げたとしても大きく広がらず消えただろう。

ご案内:「落第街大通り」から裏々築々さんが去りました。
イチゴウ > 「・・・むしろこういうのが本職なんだがな。」

イチゴウはあの男に向けて言葉を飛ばすが
恐らく届いてはいないだろう。
そして黒い霧が去り横たわった死体を前にして
再びイチゴウはバリケードの前の定位置につく。
がその直後に

ーーSORTIE ORDER。風紀本部より通達。

「・・・”お掃除”の任務ですか。」

イチゴウはやれやれと言った様子で呟くと
検問所から移動し仕事場へと向かっていった。
死体の方は怪異の被害者という事で
後続の部隊が処理するだろう。

ご案内:「落第街大通り」からイチゴウさんが去りました。