2017/07/27 のログ
ご案内:「落第街大通り」にセシルさんが現れました。
セシル > 夏は陽が長い。
それなりの時間にはなっているが空は茜色のままで、セシルは同僚と一緒に落第街の見回りに当たっていた。

「………。」

歓楽街の見回りとは危険度が違う。自然と、口数は少なく、セシル達が纏う空気は張りつめたものになった。

ご案内:「落第街大通り」にグリゴリーさんが現れました。
グリゴリー > それは落第街では珍しいことではなかったかもしれない。
路地を曲がろうとしたときに,貴女の背後で悲鳴が響き渡った。
ただ,一つだけ珍しいことがあるとすれば,その悲鳴が女性や子どもではなく,
野太い男性の悲鳴だったことだろう。
次の瞬間,通りに面した店のドアを突き破るようにして,男が転がり出てきた。
稲妻をデザインした剃り込みを入れた坊主頭に,革の服。…その瞳は恐怖一色に染まっている。

「……周到な準備と勇気ある行動は賞賛に値する。御苦労なことだったな。」

彼を追うようにしてゆっくりと扉から姿を現したのは,スーツ姿の男。
その風貌は,さほど印象的な部類ではないだろう。
むしろその傍らに寄り添うようにして,唸り声を上げるシェパードの方が印象に残るかもしれない。

所謂,組織または店舗間の抗争というやつだろうか。
貴女は介入しても構わないし,様子を見ても構わない。

セシル > 野太い男の悲鳴。魔術や異能、様々な種族が跋扈しているこの島では、この島の外ほどは珍しくはないかも知れない。
…だが、扉を開けて逃げてきた男の、いかにもアウトローという風体。それでいて、恐怖に染まった瞳。
相対する男の物静かさと比べると、異様であった。

「…もう勝負はついただろう、実力行使はそこまでにしておくことを推奨する」

男同士を仲裁するにあたっては、作った中性的な低音でも、まだ高いかも知れない。
…しかし、場所が場所だ。女だと、分かりやすくシグナリングされないことに意味がある。

セシルは、同僚の一人を坊主頭の男と相対させ…自らは、スーツ姿の男とシェパードのコンビに向き合う。
警棒に手をかけながらの、警告。

グリゴリー > 貴女の声を聞いても,スーツ姿の男は僅かほども表情を変えなかった。
ただ,傍らのシェパードが貴女をにらみ,唸り声を上げる。
今にも飛び掛からんとする愛犬を,男は手を翳すだけで抑えた。

「…引っ込んでいろ,と言いたいところだが,私としてもその方が手間が省けるというものだ。
 その不器用な男に,個人的な恨みがあるわけではないのでね。」

シェパードが静かに座って,貴女をまっすぐに見る。

「聴取と処置は君たちに任せよう…と言いたいところだが,
 武器に手を掛けながら話すというのは,あまりにも礼儀を知らないというものではないかね?」

セシル > 「…個人的な恨みがあるわけではない、ね。随分彼を驚かせたようだが」

視線だけで、軽く坊主頭の男を指す。
そちらは、同僚の一人がなだめながらの聴取を試みているようだった。

「…状況が読めなかったので、警戒態勢を解くわけにはいかなかった。非礼は詫びよう」

そう言って、警棒から手を離す。

「場所が場所だ。貴殿にも、軽く話は伺いたい。
…私は風紀委員会セシル・ラフフェザーだ。名前を伺っても?」

風紀委員であることを示す身分証を提示してから、黒スーツの男にそう尋ねた。

グリゴリー > 「聴取を進めれば分かることだがね,損害に相応しい制裁を与えたに過ぎんよ。
 もっとも,君たちのお陰で制裁を与え損ねた,という有様だが。」

坊主頭の男は,単なる窃盗犯であるにすぎないようだった。
魔術や異能を悪事に応用する,典型的な小物である。

「堅物かと思ったが,案外と話が分かるじゃないか…。
 私はグリゴリー=ヴィクトロヴィチ=ルカシェンコだ。
 君のような身分証は持っていないが,この街では珍しいことではあるまい。」

男は偽名を使おうともしなかった。貴女はその名を,何処かで見た覚えがあるかも知れない。
全てを包み隠さず話すこの男の姿に,貴女は何を感じるだろうか。

セシル > 「損害に相応しい制裁」という言葉に、セシルを通り越して、坊主頭の男の聴取をしていた同僚が微妙な顔をしている。セシルは話を聞いていないが、彼はよほど怯えているらしかった。
その様子を見て、セシルにも微妙な表情が移る。

「………彼も我々には協力的なようなので、然るべき再教育…制裁はこちらで引き受けよう。
…ことが穏便に済むならそれに越したことはないし、偏見に囚われていたくもないのでな」

堅物と評されれば、ますます微妙な表情になるも…それは、彼が名乗るまでのことだった。

「…グリゴリー=ヴィクトロヴィチ=ルカシェンコ…。
………!」

驚きに目を見開く。…警棒に伸びようとする手を、何とか抑えた。
後方待機していた同僚に、口の動きで「応援要請を」と指示をする。
それから、改めて「グリゴリー=ヴィクトロヴィチ=ルカシェンコ」と名乗った男の方を見た。

「………念のため、貴殿も委員会にどうこう願えないだろうか。…話を聞きたい」

グリゴリー > 彼には目立った外傷も無く,いくつか残る傷も,扉を突き破ったときのものだろうと思われる。
だからこそ,彼の怯える様子が,より一層異様に映ることだろう。

「そうして頂けるのなら,君を信じて任せることにしよう。
 このような“存在しない街”でさえ治安を守らねばならんとは,君たちも苦労が絶えんな。」

男は貴女の表情が変わったことにも,同僚に指示を出したことにも無関心だった。
だが,その全てを,傍らのシェパードが耳をピンと立て,じっと見つめている。

「稼業こそ他人に誇れるようなものではないが,それには相応の理由が必要だろう?
 それをお聞かせ願えるかな,セシル・ラフフェザー殿。」

セシル > セシルは、坊主頭の男を、待機している同僚の位置まで下がらせるよう、視線とジェスチャーで指示を出す。

「…稼業…つまり、昨年度入島の情報があった【レコンキスタ】一味の主導者であることは否定しないわけだな?

…ここは、異能者など「かつて存在しなかった者達」の駆け込み寺としての機能も持つ島だ。
貴殿のような経歴の持ち主の入島目的について、最低限話は聞かせて頂かねばならんだろう。
…もし私の心配が過剰なのであれば、その時には私が謝罪をし、必要に応じた処分を受けるだけだ」

まだ、警棒に手はかけない。
けれど、暴力が振るわれた形跡もないのに坊主頭の男の怯える様子が、対比してグリゴリーの冷徹な有様が、セシルの脳内で警報を鳴らすのだ。
正直、警棒を抜きたいのをかなり懸命にこらえている。その懸命さが、険しさとして顔に出ていても不自然でないほどには。

グリゴリー > 「君は何か勘違いをしているようだ。
 私は確かに【レコンキスタ】の【サンクトペテルブルク支部】の【支部長】だが…
 …目的は“炎の巨人”事件によって被害を受けた“純血”の人間の救済だ。
 君たちには悪人を追い回す力はあっても,飢えた大衆を食わせる財力は無いだろうからな。」

実際に落第街の一角で炊き出しは行われていたし,それは法に則って申請された慈善事業であった。
さすがに【レコンキスタ】の名は使われていなかったが,代表者名にはルカシェンコの名とサインも残されているだろう。

「調べてもらえれば分かるだろうが,落第街での暴動で,私の部下たちは既に一人も生きてはいない。
 今の稼業はこの通り,単なる用心棒に過ぎないよ。」

セシル > "炎の巨人"事件と聞いて、セシルの表情がますます渋くなる。

「…あの事件を島の外から嗅ぎ付けたというのも驚きだが、わざわざこの島まで出向くならば、救済対象を"純血"に限ることはなかろうに。
異能の発動なしに、そうそう判別など出来んだろう」

グリゴリーに関する情報に、【レコンキスタ】という極右武装組織の概要くらいは付言されている。
彼が”純血”と呼ばわっている存在がどのようなものか、彼らが排斥を望むのがどんな存在かも、セシルは知っていた。
…だが、情報もなしに食って掛かるのは、セシルの…もっといえば、セシルが所属を望む部署にとって、望ましいあり方ではない。

「………情報は委員会を跨いでいたり…あるいは、この街の自治を標榜する者達が握っている場合もあるかもしれん。
出来るだけ調べてみよう…非礼は詫びる」

そう言って、警棒から手を離すが…セシルの目から警戒の色が消えることはない。
「異能者」で「異邦人」であるセシルの身上が、そうさせるのだろう。