2017/07/28 のログ
グリゴリー > 「君がどんな力を持っているのか知らないが,何も持たない私たちにとって,情報は何よりも貴重なものでね。
 それに,結果的には純血の人間以外にも支援を行った。
 …判別できれば私たちの助けたい相手のみを助けただろうが,そんなことは不可能だったのでな。」

【レコンキスタ】の中でも彼の所属する【サンクトペテルブルグ支部】に関する情報は,その成立が新しく規模も小さいために非常に限られたものになるだろう。
他の支部とは一線を画す,独自の活動を行っていること,麻薬の取引によって資金を得ていたことくらいは出てくるかもしれないが。

「君が話の分かる相手で助かる。
 私としても,こうして面と向かって話す君という個人にならともかく,君の所属する組織にはまだ,信用を置けないのでね。」

セシル > 「…私の力など、取るに足らん」

異能を筆頭に、セシルの持つ力は全体として地味だ。
落第街で開示出来ないという事情もあるが、そう言って謙遜する様子に、さほど他意は見えない。

「”救済の選別”は、往々にして”真に救いたい存在”を零すからな…そういうものだろう」

”純血”以外の人間にも支援を行ったことの不本意さを隠さないかのように語るグリゴリーに、軽く呆れつつもなだめるようにそう言う。

「…先ほども言っただろう、偏見は持たぬように努めているだけだ。
この島の、真の平和と融和のためにもな」

無論、現時点で目の前の相手に対して警戒を解いたわけではない。
ただ、権限を発揮するほどの根拠を持たぬまま、どうこうするわけにはいかないと判断する理性を、セシルが備えているだけだ。

彼から聞いた話を持ち帰り精査するのはこれから。専門の部署の手に委ねるのだ。

グリゴリー > 「だが,その“取るに足らん力”を持っているのだろう?」

男は事も無げにそうとだけ言って,笑う。
そこには皮肉めいた色もなく,単純に事実を述べただけであるようだった。

「……なるほど,ならば私は君のその気質に感謝すべきかな。
 しかし,この島の真の平和と融和のため……か。」

その言葉に,男はどこか不快そうに眉をひそめた。

「力を持つ君がこの島の体制を維持しようと努力することと,
 力を持たぬ私たちがかつての体制を維持しようと努力することの間に,どのような違いがあるというのだろうな?」

セシル > 「…まあ、その力すらなければ、こうしてこの制服を着てこの街にはいないな」

力の取るに足らなさ、しかし確かにあること。
それ自体はセシルも受け入れているようで、グリゴリーに笑われても、気分を害する様子は見せなかった。
…そして、グリゴリーが不快そうに眉をひそめるのを見て、こちらも片眉を動かす。

「「他者の存在を極力排除しようとしない」前提さえあれば、大して違いはないだろう。
「かつての体制」の中で「私達」も共存出来るなら、それも一つのあり方だと思うしな」

セシルは、自分が”純血”でないことを隠そうとはしなかった。

グリゴリー > 「だろうな…ある意味で,君たちの特権というわけだ。
 もっともその力の向ける矛先を間違わずにいてくれるのなら,我々としても有難い限りだがね。」

今度の言葉には,僅かに皮肉が混じった。
力が無ければこの制服を着ていない,というその言葉は,“純血”に対する“それ以外の者”の優越を示す言葉だったから。

「…話の分かる相手でつくづく助かる。君はどこの出身だね?」

しかし貴女が“純血”でないことを知っても,男は顔色ひとつ変えなかった。
もっともそれは,男がそれを十分に予想していたからでもあったが。

セシル > 「………私が持つ「力」は、全部が全部先天的なものではないよ」

表情の前面に渋さが出ているのは、「努力」を否定されたかのように感じたからだろう。その不快さを言葉に出さないために、抑えるために、少しの間を置いてから言葉が発された。

「………どこ、と言われても答えが難しいな。
私は他の世界から事故で流れ着いた身で…世界の”名”など、まるで考えたこともなく生きてきたから」

警棒だけでなく、剣まで差している腰。
そのレトロさが、この世界の外の文明を示唆しているだろう。

グリゴリー > 「気を悪くしたのなら謝ろう。
 君が腰に差しているそれは,鍛錬無くして扱えるものではないだろうからな。」

さらりとそう言ってのけて,男は言葉を続ける。

「やはりな,異邦人ということか。
 だとすれば,君がこの島の秩序を守ることは,君自身の居場所を守るも同じだ。それは理解できる。
 そういう意味では,弱者であるのはむしろ君の側であるかもしれないとも,分かっている。」

「だが,考えてもみてほしい。
 君が元居た世界に,何処かから君たちの知らない力を持った者が山のように現れたら。
 君の世界の住人たちは,それを無条件に受け入れることができるだろうか。」

「……さて,あまりお喋りが過ぎても迷惑だろう。
 どのような形での再会になるかは分からんが,機会があるのならまた会おう。」

男は堂々と背を向け,堂々と歩き去ろうとするだろう。

セシル > 「…分かって頂けたのならば、構わん」

さらりと言われれば、こちらもさらりと流す。

「………。」

男の独白を、セシルは苦い顔で聞いた。

「…無条件に、というのは難しいだろう。
私の元いた世界は、ここほど自由や平等が重んじられてはいなかったし、余計に」

自らの故郷の抱える難点を、セシルはあっさり認めてみせる。
表情には、若干の苦さがないわけではないが。

「…そうだな…呼んだ応援には、私から先走りを詫びておく。
………あまり、物騒な形での再会でないことを願うよ」

立ち去ろうとする男を、セシルは止めなかった。
ただ、歩き去って行く方向だけは、記憶する。

グリゴリー > 貴女が故郷について苦い表情で語れば,小さく頷いて,

「君の故郷と同様の考えを持つものがこの世界にも居る。
 そういった者たちにとっての正義とは,君の信ずる正義とは色が違うだろう。
 まぁ,君たちの信ずるものが絶対の正義ではないと,それだけ知っていてくれれば結構だ。」

そうとだけ言って,男は入り組んだ裏路地の方へと消えていくだろう。
男はまったく無警戒に平然と歩いているが,傍らのシェパードが耳を前後左右へ向けて警戒を怠らずに居るのが印象的だったかもしれない。

ご案内:「落第街大通り」からグリゴリーさんが去りました。
セシル > 「………自由や平等を重んじない考え方が支配する社会に、先はないと思うが」

そう呟きながら、男と、彼の飼い犬の後ろ姿を見送る。
間もなく来た応援には事情を説明して先走りを詫び(単独で相手にするよりは良い判断だろうと大目に見られたが)、坊主頭の男の身柄を預けて、セシル達は見回りに戻ったのだった。

…セシルは、彼が自分の「正義」にしたがって何か良からぬことをしているのではないかという、自分の疑念が外れていることを、願った。

ご案内:「落第街大通り」からセシルさんが去りました。