2017/07/31 のログ
■東瀬 夏希 > 「ちっ!」
やはり、上手い。
身体能力だけでなく、身体操作能力が優れているからこそのこの細やかな動き。
ただ突っ込んでも捌かれるだけか、と思った矢先、首に向かって刀が振るわれる。
「このっ!」
だが、それならば問題なく受けれる。持ち前の怪力を活かして首への攻撃を防御し……
「あ、がっ……ああっ!?」
そこに気を取られたが故に、第二撃をモロに受けてしまう。
奇襲だったこともあり、立っていることが出来ずそこに膝をついてしまう。
■柊 真白 >
見たところ、あなたは普通の人間に見える。
(刀を鞘に納め、突き立てられた剣へと歩み寄る。
その剣を蹴り倒せば、脳を締め付けるような圧迫感が消えた。
そうしてもう一度彼女の方へと歩いていく。)
なのに、あなたは私の放ったナイフを避けなかった。
僅かな傷で動きが鈍る人間なのに。
(見下ろす。
面をしているし、その下の表情はいつものように無表情だ。
彼女が視覚でこちらの感情を読み取ることは不可能。)
――そう言うのは嫌い。
あなたが恨みを晴らしたいと言うのなら、その戦い方はやめるべき。
やめないのなら、きっとあなたはその前に命を落とす。
(それでも、だからこそ。
その声に混ざった怒りの感情が、彼女には伝わるはずだ。)
■東瀬 夏希 > 「ぐっ……」
膝をついたままその言葉を受け取る。
攻めに意識を寄せすぎた捨て身の戦法。相手の命を狩るために、自分の命を駒として使い潰す。
異端審問官として身につけた、弱者が異端と言う化物を狩るための戦い方だ。
だが……それは、戦いの中で来るべき時に平然と命を落とす前提の戦い方。
完全に、真白の言う通り。目標に到達する前に命を落とす戦い方だ。
「そう、だな……思えば、私の戦い方はとても歪だ」
真白の怒気も伝わっているが故に、素直に反省する。
異端審問官流のやり方では、仇を討つことも出来ないし、帰るべき場所に帰れない。
身に沁みついた戦い方を変える必要性を痛感していた。
■柊 真白 >
それは自殺と変わらない。
自分の命を粗末に扱う人は、嫌いだ。
(暗殺なんて仕事をしているが、だからこそ命の大切さと言うものは良く知っている。
彼女の肩に突き刺さったナイフを掴み、引き抜く。
そのナイフから血を拭い、スカートの裾にしまう。
ポケットから丸い容器を取り出して、血塗れになった服の肩の部分を引き裂いて、それの中身を塗りつけた。)
あなたがだれに何をされたのか知らないけど。
自分の命を粗末に扱っていい理由にはならない。
家族だって良い顔はしないはず。
(かなりしみるが、怪我に良く効く薬を塗りこんで、ハンカチを当てる。
自分の服の袖を引き裂き、彼女の腕を縛ってハンカチを固定。)
■東瀬 夏希 > 「自殺、か……」
俯く。生き延びてしまった命。拠り所を得た命。
それを粗末に扱うのは、許されないことだ。
治療も顔をしかめながら耐えるが……最後の言葉にだけ、反応を返す。
「家族、はな。 もういないんだ」
■柊 真白 >
家族が居ないのは私も同じ。
こんな世界、そんなのはいくらでもいる。
あなただけじゃない。
(家族が居ないと言うのは理由にならないと。
彼女の言葉をばっさりと切り捨てる。)
それでも生きてる。
先に死んだ者が自分に残したものを、次の世代に残すために。
(自分の命は自分のものではないと。
師から、親から受け継いだものを絶えさせないために。)
あなたは何を伝えてきた?
異端を狩って、仇を討たず、自分の命を削って。
――あなたは、何を伝えた?
(まっすぐ、面越しに彼女の目を見据えて。)
■東瀬 夏希 > 「……何も、伝えてこなかった」
俯いて言葉を返す。
そう、何も伝えてなど来なかった。
憎悪に任せ異端を狩り、ひたすらに命を奪ってきた。それだけの人生。
だが。
「だが……つい最近、生きることを伝えるべき相手が出来た」
顔をあげ、目を見返して口にする。
ある研究所で救出した魔法生物。
世の中を何も知らず、故に朴訥に世界を見る青年。
彼に、生きるということを、遍く広がるこの世界の事を教えてやる。
それがきっと、夏希が「伝える」ことなのだろう。
■柊 真白 >
じゃあ、あなたは生きるべきだ。
(そんな自殺みたいな真似はやめて。
言葉には出さないが、そう告げる。)
戦うのなら、生きるために戦って。
死ぬために戦うな。
そうしないとあなたの仇に届かないと言うなら。
(立ち上がり、彼女に右手を差し出す。)
――私がそいつを殺してあげる。
(それが、自分の仕事だから。)
■東瀬 夏希 > 「……」
驚いたような顔をして、右手を取る。
仇を、他人に任せる。その発想がそもそもなかった。
それは驚き以上に新鮮で。
「……その発想は、なかったな」
呆けた様に口にした。
■柊 真白 >
柊真白、暗殺者。
(あえてもう一度、自身の名前と職業を。
彼女の手を引いて――力は見た目どおりに非力である――、立ち上がる補助を。)
報酬さえ貰えば、誰だって殺す。
殺せる相手なら、だけど。
(流石に不死の相手は殺せないが、殺せるならば誰だって殺す。
そうやって生きてきたし、そう生きろと教えられた。)
■東瀬 夏希 > 「……アイツは吸血鬼。不死の存在。普通の手段では殺せない」
補助を受けながら立ち上がりつつ口にする。
そう、夏希の仇は吸血鬼。ノスフェラトゥ、ノーライフキング等とも呼ばれる不死者の代表格だ。
普通の手段では、殺せない。
「だが……そうだな。それなら見積もりを聞いてみようか。
『私にお前の戦闘技術を教える』のならば、いくらくらいになる?」
それは、仇は自分で、と言う感傷ではなく。
純粋に、真白の戦闘技術に感心したが故の問い掛けだった。
■柊 真白 >
にんにくの用意なら出来てるけど。
(家に帰れば常備してある。
冗談はさておき、彼女からの言葉。
ぱちくり、と面の奥の瞳を瞬かせて。)
――戦闘技術、と言うことなら教えられない。
基礎を突き詰めただけだし、教えるほどのものでもない。
(自身の技術は特別なものではない。
身体の動かし方を学んで、それを長い時間を掛けて練り上げてきただけのものだ。
時間を売ることなど出来はしない。)
でも、「殺し方」なら教えられる。
あなたがそれを望むのなら、私が伝えられたものを残さずあなたに教えることは出来る。
■東瀬 夏希 > 「成程、奥義は基礎と言うことか」
ふんふん、と感心しつつ頷く。
思えば、インスタントに育て上げるために、異端審問教会の武錬教導はかなり駆け足だったように思う。
それが、真白と夏希の身体操作の差なのかもしれない。
「私は、恐らくその基礎がそこかしこ欠落している。まずは『己の体を操作する』と言う事を今一度学びたい。
そして……殺し方は、少し考えさせてくれ。
仇を討ちたいと同時、新しい家族と平穏に過ごしたいという気持ちもあるんだ。
……殺法を学ぶと、戻れなくなってしまう気がする」
■柊 真白 >
そう。
なら、教えても良い。
報酬もいらない。
(言われてみれば、彼女の戦い方はそういうものだった。
命を軽視する戦い方をしているのではなく、それしか知らないのだろう。
ならば、彼女のためにもそれは誰かが教えるべきだ。)
弟子はあなたで三人目――二人目かもしれないけど。
それと、殺し方を学ぶと言うのは殺されない方法を学ぶと言うことでもある。
大事なのは使い方。
忘れないで。
■東瀬 夏希 > 「いいのか?ならば、是非頼みたいが……」
報酬なし、に少し迷いを浮かべるが、教えてもらえるならばやはり教えてもらいたいところだった。
なんせ、先程の一戦で自分の身体操作のマズさを実感したのだから。
「殺されない方法を学ぶ、か……敵を知り己を知らば百戦危うからず、ということだな。
……その差分の一人はどういうことだ?」
納得し、殺法を学ぶことも受け入れる。ついでに、少し疑問を口にする。
■柊 真白 >
別に構わない。
それが伝えると言うことだから。
(むしろ報酬は伝えることそのもの、と言っても良い。
自分の生きた証を次の世代に伝えられるなら、それはどんな報酬よりも魅力的だ。)
そう言うこと。
一人はもう教えてるけど、もう一人はまだ返事を聞いてない。
――あなた、口は堅い?
(自分に居るのは弟子一号と、弟子二号(予定)だ。
彼女が自分の弟子になるのなら、繰り下げで弟子三号(予定)になる。
そうして唐突に彼女が秘密を守れる人間かどうかを問う。)
■東瀬 夏希 > 「そう、か……ならば、謹んで受け取らせてもらおう」
厳粛に頷く。
連綿と受け継がれていく人の紡ぐ歴史、その一端がここに交わり、そして繋がっていく。
彼女が大事にしているのは、そういうことだろう。ならば、それには真摯に向き合わなくてはならない。
「ああ、成程な。 ……堅い方ではあるが」
なんせ、機密に関わる仕事も何度かこなしている。
うっかり口を滑らせる、なんていうヘマもしない訓練は受けているのだ。
■柊 真白 >
そう。
――こっちへ。
(口が堅いというのなら、それを信用することにした。
通りから外れる路地へ歩いていき、手招き。)
ここで見て知ったことを誰にも言わないように。
――言ったらあなたの口を封じなければならない。
(周囲に誰も居ないことを確認し、そう前置きをして。
面を僅かにずらし、自身の顔をちらりと見せて、戻す。
短い動きではあるが、自身の正体を明かすにはそれだけで十分。)
■東瀬 夏希 > 「あ、ああ……」
素直にてくてくとついていく。そして、物騒な言葉に驚きつつも、仮面の中を目にした。
「く、口封じか……しかし、特に変わったところは無いように見受けられたが?」
一瞬だが目に映ったのは、愛らしい少女の顔だ。それが正体に直結する感じはしなかった。
■柊 真白 >
学生をしてる。
この面は正体を知られないようにするもの。
目の前で外せば、どちらも私として認識出来る。
(面を被っている間は、たとえ名前を名乗ったとしても別人だと認識する。
魔術や異能を含めた全うな方法では、ほぼ看破することは不可能なものだ。
しかし彼女に技術を教えるのなら、正体を明かしておかないと都合が悪い。)
あなたは信用に足る人物だと判断した。
それを裏切れば――わかっているな。
(右手に、抜き身の長刀。
音も無く、予備動作もなく。
手品のように現れたと勘違いするような抜刀。
その刃を彼女の首筋に当てている。)
■東瀬 夏希 > 「成程、認識阻害の面か……」
ふむ、と納得する。確かに、暗殺者としては非常に便利な道具だ。
なんせ、面が割れているかいないかと言うのは、潜入などを行う際の難易度に大きく関わってくる。
それを阻害できるのは大きな利点になってくる。
「……わかった。誓おう」
そして、音もなく首筋に当てられた長刀にドキリとしつつも、頷きを返す。
少なくとも今の自分では、本気でやっても一方的に始末されるだけだ。
あらゆる意味で、ここでの不義理は利口ではない。
■柊 真白 >
こんな島だから、絶対ではないけど。
(パチリ。
残像すら残さず、刀は右手から消え失せ、左手の鞘へと収まっている。)
――これ、私の連絡先。
空いてる時間とか、教えて。
(そうして手帳を取り出し、自身の連絡先を書き記す。
そのページを破って彼女へ差し出した。)
■東瀬 夏希 > 「ああ、分かった。私の連絡先は……」
生憎メモが手持ちに無かったので、口頭で伝える。
念話での連絡が主体だったが、それとは別に念のために連絡手段を持っておいたのが功を奏したと言えるだろう。
■柊 真白 >
(伝えられた連絡先をそのままスマホに打ち込む。
登録が済めばスマホをポケットにしまいこんだ。)
――じゃあ、そう言うことで。
また連絡して。
(そういい残し、通りへと歩いていく。
足音ひとつ立てず、存在感を薄めながら。)
ご案内:「落第街大通り」から柊 真白さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から東瀬 夏希さんが去りました。