2018/01/22 のログ
■神代理央 > 近付くにつれ、相手が誰かと話をしていたこと。鈍く光る金属の《何か》を大量に受け取っている事を視界に捉える。
どうにも仕事が増えそうな状況に半分ほど残っていた飴玉を噛み砕きながらも、その歩みを止める事はせず―
「……随分と買い込んでいるじゃないか。荷造りの助力が必要か?何なら、帰りの車も手配してやっても良いが」
慌てた様子でギターケースに銃弾を――大きさからして、機関銃弾だろうか。物騒な事だ――押し込める相手に、世間話でもしている様な口調で声をかける。
そんな少年の背後には、出来損ないの金属片に足と砲身を無数に生やした異形が控え、その銃身の幾つかを相手に向けている事だろう。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「えっと、これはですね…訓練で使うために買ったもので……
あの。テロとかに使うとか、そう言うのじゃなくて……
最近訓練の頻度を上げたら弾の消費が激しくて……」
ついに声を掛けられてしまった。どう説明したらいいものか。
状況だけ見ればどう言い訳したって苦しい状況。
かと言って先ほどまでいた商人はもういない。
正直な話をすれば仮に私目掛けて彼が発砲しても、私には傷一つつかないだろう。
でも面倒ごとは避けたいし戦闘も避けたい。
八方ふさがりな状況に慌てふためくその様子はなんとも言えないほど滑稽だろう>
■神代理央 > この街の住民にしては、随分と慌てふためいた様子で釈明を始めた相手に、些か拍子抜けした様な表情を浮かべる。
戦闘になるかはさておき、悪態の一つでも投げかけられるのかと思っていたのだが。
風紀委員の自分に対してこの慌てようということは、一般生徒なのだろうか。
「…取り敢えず、学生証を提示して貰おうか。あと、少し落ち着け。此の街でそんな物騒な物を買い込む度胸があるなら、風紀委員に対して怯える事もなかろう。男らし……」
と、相手の声色と身形にふと言葉を止めて――
「……いや、何でも無い。兎に角、何でも良いから身分証を出すが良い」
近付くまで相手の事を華奢な少年だと思っていた事は、流石に口には出さなかった。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「が、学生証ですか?それなら……どうぞ」
風紀委員というと以前交戦した多脚戦車のような印象を持っていたため、
身構えていたのだが、要求された内容の当たり前さに拍子抜けしてしまった。
別に学生証を見せることに抵抗する理由などないので大人しく差し出す。
学生証には学生番号や顔写真、学年といった一般的な項目に加え、
この島に来る以前に所属していた組織などが備考欄に記載されている。
そこに掛かれていたのは『フィンランド国防軍陸軍軍曹』の文字。
「ここらへんにいるチンピラと、問答無用の風紀委員どちらがタチ悪いかって言われると……
どっこいどっこいですから……
あと今何か言いかけませんでしたか?」
風紀委員への印象はあまりよろしく無いようだ。
当たり前だろう。彼らが所有する多脚戦車が風紀委員との唯一のせってんなのだから>
■神代理央 > あっさりと学生証を提示され、確認した項目も善良な生徒そのもの。
偽造学生証の可能性もあったが、備考欄に記載された一文を見ればその可能性も潰えた。
こうなってしまえば、風紀委員として彼女を咎める事案等無い。厳密には、落第街を訪れる事は校則で禁止されている訳でも無いし、武器の所持も許可を受けていれば問題無いのだから。
「…協力感謝する。君が楽しんだショッピングの売り主について問い質したい事はあるが……まあ、良しとしよう。しかし、嘗て冬戦争を戦い抜いた国の軍人とはな。常世学園は士官学校の代わりもする様になったのか」
此の島には多種多様な経歴と人種が坩堝の様に入り混じっている。
北欧国家の軍人である彼女に物珍しそうな視線を向けながらも、あっさりと追及の手を緩めるだろう。
「風紀委員も随分と嫌われたものだ。それくらい強権的で無ければ、此の島の治安維持が難しいものだと理解して貰いたいものだがな。
……いや、別に何も。気のせいだろう。気にすることはない」
彼女の言葉に小さく苦笑いを浮かべながらも、その言葉を否定する事はしないだろう。
尤も、自分が発しかけた失言については少し気まずそうに言葉を濁しつつ視線を逸らせる事になるのだが。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……まぁ、さっきの人の素性が果たしてどんなものなのかは……
別に士官になるために来たんじゃないですよ。
親の都合です。軍隊ならとっくにやめました。
いつ戻ることになるか分からないから、訓練するために弾薬をかっていただけです」
この島に来るときに武装の許可は得てある。
ただし、その武装によって消費する消耗品については、個人が用意するという文言があっただけで、
どこから仕入れるかの定めはなかった。ほとんど屁理屈みたいなものだが。
「強権的でも成果が出ているなら嫌われませんよ。
嫌われるのは成果が態度に見合っていないからです。平和のためというのは甘えです」
バッサリとした主張は今までのオドオドした雰囲気とは違い棘のある言い方。
よほど風紀委員を嫌っているのが、この発言一つでハッキリと伝わっただろう。
無論、その理由を彼は知る由なんて無いのだが>
■神代理央 > 「ほう、退役軍人か。訓練を怠らないというのは良い事だ。その武器が健全な目的で使用されるのなら、風紀委員として言うべきことは無い。…まあ、こんな時間に出歩くなら、場所を選んで欲しいとは思うがね」
素行不良生徒として扱っても良いのだが、やましい買い物を――売り主については兎も角――していた訳でも無さそうだ。
ならば、疑わしきは罰せずの理念を遵守すべきだろう。補導された他の生徒の様に抵抗したり身分証の提示を怠った訳でも無いのだし。
――と、思っていたのだが。
「甘え、か。成る程、言い得て妙だな。だが、我々が権勢を誇示する事によって維持できている平和というものも確かに存在する事は、元軍人の君にも理解出来るだろう?
それに、結局のところ我々とて嫌われたい訳では無いが市井に阿る事もしない。風紀委員会という組織に不満不平があるのなら、学園に保証された権限を持って、お前を危険思想の持ち主として補導する事も可能だということも、理解して欲しいものだな?」
敵意、という程では無いかもしれないが、こうも露骨に嫌われている様を見せられれば嗜虐心を煽られてしまう。
僅かに唇を歪めれば、一歩足を踏み出して彼女との距離を僅かに詰めようとするが―
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうね、一応退役軍人という扱いね。一応徴兵制があるから、本国に戻れば予備兵なんですが」
場所を選べと言われ鵜と、少し困る。どの程度の許容範囲で場所を選べばいいのか。
かんぺきにしろと言われれば学園が認めたショップで買わねばならない。
それができない経済状況だからここで買い物を済ませているわけで。
「そうね。あるていどの誇示によって保たれる平和もある。
けど―――」
彼が一歩近づいた瞬間、ベルトに括りつけてあった警棒を二本抜き取って間合いを詰める。
そして彼の鼻と自身の鼻が触れそうな位置まで近づいて胸元と喉元に警棒を軽く当てる。
人間には到底出せない速度。
獣人であるがゆえに、そして軍人として鍛えているがゆえに実現する速度。
「権力や武力の誇示で維持される平和っていうのは、
片方が圧倒的であるか、完全に均衡がとれているかのどちらか。
私が犯罪者だったとして、この警棒を抜かれた時点で風紀委員の敗北です」
つまり、『この街に蔓延る輩が息をする間も与えるな』という主張を。>
■神代理央 > 「彼の国も大変容後はロシアや北欧・バルト諸国と多々面倒事を抱えていた事だろう。再び兵士として戦場に立つのなら、己の命が尽きぬ程度に励むと良い」
ふむ、と彼女の経歴を聞いた上で言葉を返す。
己の義務を果たす者は基本的に好ましいものだ。流石に犯罪者や敵対する者を擁護することは出来ないが、それでも彼女の様に義務を果たそうとする者は組織に取って有用であることは間違い無いのだし。
――等と思考していれば、自身に押し当てられる警棒の固い感触に僅かに目を細める。
異能か魔術か。はたまたヒトならざる種族によるものか。要因は分からないが、彼女が尋常ならざる速度を持って自身に接近した事は確か。
何時も自分が対峙するのは近接戦にも長けた相手ばかりか、と内心嘆息しつつ、互いの吐息が触れ合う程の距離で彼女の瞳に視線を向ける。
「一つ訂正して貰おう。此の距離で貴様に武器を抜かれたのは私の敗北だが、風紀委員会という組織の敗北では無い。
そして、この街とゴロツキ共が未だに存在するのは必要だからだ。委員会と学園に取って利用価値があるから此の街は存在が許されている。其れを理解出来ぬまま抗う者もいるが―」
言葉を止めて軽く息を吐き出す。視界に映るのは彼女のくすんだ銀髪と、陶器の様に白い肌。それを観察する様な色の瞳で暫し見つめた後――
「そういう輩は全力で叩き潰す。必要な場所ではあるが、間引きも必要だからな」
警棒を押し当てられたまま、同意を求める様に小さく首を傾げて彼女の瞳を見下ろした。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですね。今のところ公にはされていませんが、
私の国がこうして今も国として存在するのは”我々”がいたからにほかなりません」
我々。人間とは異なる種族、獣人。本来なら排斥されるべき少数派。
安全な立場と引き換えに、軍人としてその身を捧げることを要求された存在。
「いいえ?この場におけるあなたの敗北は、組織全体の敗北を象徴しています。
抑圧のためにあなたが実弾を使えば、
それは力の誇示ではどうにもできないという自白そのもの。
私はこの目で風紀委員が実力を行使する姿を見てきました。
そして、あなた方。ここでは学園ですか。
それが主張するのは平和ではなく飼育箱。
あなた方は平和の象徴ではなく、ただの飼育員。
風紀とはまた大層な看板を下げている」
『『そうやすやすと平和を語るなよ?』』
華奢な身体のどこからそんなおぞましい声が出るのか。
忌々しさを体現したかのような低い声。それは間違いなく白髪の少女から発せられている。
その少女の姿も、大きな形こそ変わらないが、ギョロリと動く眼球と犬歯は、
人間のそれを逸脱している>
■神代理央 > 「我々が居たから、とは大きく出たものだ。…だが、お前の様な年端もいかぬ少女を前線に立たせて彼の国は平和を得たのだろう。別にそれを否定もせぬし、お前の言葉を疑うこともしない。これからも、果たすべき義務を果たす事だ」
少年の実家はそれこそ彼女の国の様な戦禍を被る国に兵士や兵器を売りつけて利益を得る企業。
彼女が自分を投げ打って軍人になったのなら、此方はその戦争に寄って利益を得る側の人間。
だからこそ、彼女の主張も、彼の国がしたことも否定はしなかった。守るべき国家というものは、それだけの価値があるものなのだから。
――尤も、彼女の生い立ちや経歴を知る由も無いのだが。
「飼育員大いに結構。ならば、放つ銃弾は差詰め動物に振るう鞭ということか。
鞭を振るわなければ理解せぬ動物もいる。力とは、使ってこそ誇示されるものだからな」
彼女の言葉に含み笑いを漏らしつつ言葉を返す。
だが、直後放たれた唸るような低い声に少し驚いた様に目を見開いた。
その言葉を咀嚼し、まじまじと彼女の変容を観察した後――
「平和という言葉が薄っぺらく軽いものであることは、お前が一番分かっている事だろうに。悪いが、幾らでも語らせてもらうとも。それが仕事だし、私は平和という言葉に重みも重圧も感じていない。ただそれを維持する機構であれば良いのだからな」
淡々と無感情な口調で告げた後、再び僅かに目を細めれば―
「…それに、そう吠えるものではない。自分の知らぬ平和を謳歌し、力と権勢を振るう私がそんなに憎いか?それならそれで構わないが、その様は狩人に怯える野犬の様だぞ。折角の美人が台無しだ」
武器を押し付けられ、剥き出しの敵意をぶつけられた様すら愉悦であるよ言うように、誂う様な口調と共に彼女の肩に触れようと手を伸ばすが―
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 『『私の国は我々の唯一の居場所だっタ、
戦線に立ッテ死ンだ者も多イガ、其レデ良カッタ。
ソシテ モウ1ツ 教エテヤロウ。私ノ チカラハ コジ ダケデハ ナイゾ』』
本当の平和というものを教えてやろう。
目を見開いた少年の言葉をあざ笑うかのように語るその口調は、
まるで霊に乗り移られたかのような状態だ。
それに臆することなくしゃべる彼もまた相当に図太いわけだが。
『『ニクイ?ジュウアツ?オモミ?
笑ワセルナ今更ソンナ綺麗ゴトデ怒リヲ覚エル器ではナイ』』
『野犬か、お前にハそう見えるか?』
彼がこちらの肩に手を伸ばし、触れた瞬間。
魔術を使えば、彼の心に変化が生まれるだろう。
愉悦に踊る心をゆっくりと、しかし確実に落ち着かせていく魔術。
力の誇示だけではない、もうひとつの平和への方法>
■神代理央 > 「国家への帰属心が高いのは良い事だ。その点に関しては褒めてやろう。
…ほう?では見せて貰おうじゃないか。その力とやらを」
彼女の変容に対して理性を失わず、恐慌せずに話していられるのは、ぶつけられる敵意に対しての闘争心があってこそ。
闘争に至る相手を得る事は、少年に取って歓喜であり、嗜虐心と愉悦を昂ぶらせるものでしかない。
相対する相手の感情が敵意や負の意識であればあるほど、其れと対峙する自身の高慢な本性が湧き上がる。其れだけの事ではあるが、それが己の本性であり本心なのだろうと、思考の片隅で自嘲する。
「見えるとも。牙を剥き、此方を睨みつけるその様は犬以外の何者でもあるまい。行儀よくお手でもすれば、野犬から飼い犬まで昇格してやるがね」
フン、と高慢な笑みで答えるが、その表情は一瞬で怪訝そうな物に変化する。
ゆっくりと彼女の肩から手を離し、彼女に僅かな疑問の色を湛えた瞳を向けた後―
「…精神操作系の能力か。此れが、貴様の言う力とやらか?
力に寄って心を落ち着かせ、争いを無くそうというのか」
終了した試験の模範解答を眺める様な視線で彼女を見下ろしていた少年の紅い瞳は、疑問の色を失って僅かな不機嫌さと諦観を宿していただろう。
「闘争の自由を奪う事と、権力に寄って弾圧することの何が違うのか私には分からんね。私は、闘争にこそ生きる意味と自身の本性を見出している。その自由を奪おうという平和なら、戦禍と硝煙に塗れようとも争い続ける自由を求めるとも」
自身の心を掻き乱された怒りすら、彼女の力に寄って小さなものと化している。その事実が腹立たしいので、結果延々と続く不愉快さに普段通りの仏頂面を浮かべる事になった。
「興が削がれた。別段校則に触れる事はしていない訳だし、お前に与える罰則も無い。他の風紀委員に難癖をつけられる前に、帰宅する事を勧めておこう」
数歩後ろに下がって彼女から距離を取れば、そのまま背を向けつつ言葉を紡ぐ。
敵意も何も無く、ただ単に興味を失ったという様な様子で数歩歩みを進めるが――
「……犬呼ばわりした事は謝罪しよう。また会うことがあれば、詫びの印に菓子くらいは御馳走する。まあ、私の顔を見ながら食べる菓子は、さぞかし不味いやも知れぬがな」
ふと振り返れば、今迄の高慢な笑みとも不機嫌そうな仏頂面とも違う、悪戯を思いついた歳相応の少年の様な表情を彼女に見せる。
そのまま返事を聞くことも無く、金属の異形を引き連れて少年は落第街の雑踏へと消えていった。
率いる金属の異形を避ける人々には目もくれず―
ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 『帰属心?我々にとってすれば自由な場所が手に入ればそれでいい』
だから軍隊をやめてここに来たのだ。ここでの生活は軍隊に居た頃以上の自由がある。
『犬か。確かに今まで何度かイヌ呼ばわりされたこともあったが、
例外なく皆噛み殺すか、逆に懐柔するか。お前は例外になりえる器か?』
安全な場所と引き換えに軍として身を捧げる存在。
その点で言えば我々は野良犬よりも飼い犬の方が的を得ているだろう。
しかし、大抵はその飼い主を懐柔してきた。
犬をしつけていたつもりが、イヌなしには生きることのできない体質になっていた。
人間の生活なら間々ありえることだろう。
『ああ、そうだ。これが私の力だ。
銃を抜くまでもない。力の誇示など要らぬ。
勝負にすらならない。圧倒的な力。
心の底から性善的な者もいるが、
世の中の安定は”他者の抑圧ではなく自己の抑圧”で成り立つ。
血にまみれた平和など混沌と変わらぬ。
我々が望むものとは似つかぬものだ』
気に入らないなら、貴様の語る自由とやらで我々の自由とやらに勝ってみせろ。
そう言って手を離す彼に皮肉な視線を送る。
そして踵を返す彼に、無言で視線を送り続けると、
次第にそのおぞましい雰囲気は薄れ、もとの姿に戻り。
「……はぁー、、、緊張しました。
ついつい……私もだいぶ洗脳されていますねぇ……」
気の抜けた緩いため息とともに肩を落とすと、へたりこむ。
警棒を抜いたのはほとんど反射だ。
ここまでくると獣人としての性なのか、
軍人として染められてしまったのか……
どちらにしても妙なところでスイッチが入ってしまうのは悪い癖だ>
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「さて、さて。言われた通り帰りますか。
これ以上長居してはまた何をしでかしてしまうかわかりませんからねぇ……」
そう言って未だに収まっていないベルト弾倉をギターケースに押し込み、
それを抱えれば表の通りに向けて歩き出す。
その姿を見る人たちにとって、ギターケースにそんな物騒なものがはいっているなんて思いもしないだろう>
ご案内:「落第街大通り」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。