2018/02/10 のログ
ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 落第街の大通り――昼間でも不穏な意味合いで賑わう事も多いが、夜ともなればそれも増す事だろう。
とはいえ、右腕を三角巾やギプスで固定したコワモテ眼帯姿の少年には馴染みのある光景でしかないが。

「ったく、一定の監視があるってのは本当に面倒臭ぇな…来るだけで一苦労だぜ」

元・二級学生で指折りの凶刃の使い手、ともなればむしろまだマシな処置なのだろうが。
ボヤくように呟きながら、大通りの闇市を歩き回る。目的は薬だ。この右腕をさっさと治したい。
実は肋骨も数本骨折しているのだが、そちらはもう治り掛けている。
ただ、神経や筋肉もダメージを負った右腕はそう単純に回復とは行かないのだ。

…で、結論として闇市で出回る違法薬物の類で回復しようと思った次第で。
当然、偽者やヤバい副作用ありの薬物も多いがその辺りの目利きは意外と確かだ。
何せ、数年前までここやスラムがホームグラウンドだったのだから。

ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > しかし、何だかんだ数ヶ月ぶりに訪れた我が古巣…相変わらずといえば相変わらずで安心する。
顔馴染みも多いのもあり、時々記憶を頼りに利用していた店の幾つかを冷やかしに寄りながら、とある路地裏へ。
そこから適当に見える足取りで幾つかの角を曲がりとあるドアの前へ。

勿論、遠慮なんて言葉は少年には無いのでさっさと扉を開けて中へと入る。
中は薄暗い店舗をかろうじて保っているかのような内装。禿頭の店主が新聞を読み耽っていたが、こちらへとチラリと視線を向けた。

『いらっしゃ……何だお前かキリヒト。<首輪付き>が何の用だ?』

如何にも、面倒なヤツが来やがった、という顔をする店主にニヤリと笑みを浮かべ。

「客に決まってんだろハゲ店主。押し込み強盗でもしに来たように見えるか?」

『オマエはそこらのヤツより数段タチが悪いだろうが。このイカれ斬鬼が』

お褒めの言葉をどーも、とぞんざいに店主の皮肉を交わしながら店内を見渡し。

「で、この右腕に効きそうな薬を至急欲しいんだがよ。なるべく副作用とか少なめで値段も手頃なヤツ」

ご案内:「落第街大通り」にイチゴウさんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
イチゴウ > 「目標は右折、小さめの建造物へ侵入。
-----了解、監視を継続する。」

落第街の影から影へと素早い無機質な音が走ってゆき
それはまさにストリートを歩いていた病み上がりの少年を
追いかけるようにして推移していく。
彼がある店のドアを軽快に開け店内へ入れば
四つの足を持つ不穏な影は店に存在する窓を通して
冷たいカメラレンズで少年の姿を確実に捉え続ける。
距離も数十メートルとそこそこ遠く
こちら側が音を立てているわけでもないが
果たしてあちらはこちらを察知できるだろうか。
もし少年が店外に出たならば一定の距離を空けつつ
追跡を再開するだろう。

ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 『…オマエ、そんな都合が良い薬が…無い訳じゃねぇが、どのみち値段はそれなりだぞ』

「あー、そこは風紀の仕事の片棒担がされて金貰ってるから問題ねぇよ。首輪付きで唯一マシなとこだな」

首輪付き…風紀委員会への強制強力義務。人間というより備品扱いに近い。
元・二級学生で風紀の主力と刃物1本で真っ向から渡り合える規格外な少年の今の立ち位置だ。
ともあれ、懐から諭吉を数枚取り出してヒラヒラ。禿頭の店主は溜息とともに、『ちょっと待ってろ』と席を外す。

「―――さて、やっぱそうだとは思っちゃあいたがよ…嫌になるぜ全く」

チラリ、と一度だけ背後のドアの方を一度だけ見てから溜息。誰かは分からないが見られているのは分かる。
伊達に、物心付いた時からスラムやこの街で生き抜いてきた訳ではない。
ともあれ、今は無視して視線を前に戻した所で店主が戻ってきた。
中身は…こう、緑色の液体っぽいモノが入った小瓶だ。

『コイツだ。異世界由来の成分が使われた即効性の回復薬…らしい。副作用は個人差はあるがそんな大したモンじゃねぇ。
味や喉越しは…まぁ良薬は何とやらって言うだろ。そこは諦めろ』

「…へいへい、ちゃんと効果あるんだろうな?それ。効果無かったら取り敢えず叩き斬るぞ」

と、物騒な事を平然とのたまいつつ紙幣を店主に押し付けてから小瓶の蓋を開けて。
匂いからしてヤバそうだが仕方ない。そのままグイッと躊躇無く煽る。

「…マズッ!喉越しも何だこれゼリーっぽいな・・・しかも喉に絡みつく感じで最悪じゃねぇか」

と、愚痴を零すが変化は直ぐに訪れた。少年の右腕の内部、ズタズタの筋肉や神経が即座に回復し、骨も再生されていく。
それに気付いたのか、おぉ?という顔で右腕を動かしてみる。痛みも不都合さも無い。

「おーすげぇな!何だイイ薬あんじゃねぇかハゲ!」

と、ご満悦で笑いながら包帯とギプス、三角巾をこの場で外す。
軽く右腕をプラプラと振ってみるが問題ない。元通りの右腕だ。

『そうか、じゃあ用が済んだらさっさと帰れこの厄ネタ男』

と、店主の冷たい視線を受け止めて肩をすくめながら踵を返す。目的は果たしたから確かにもうここに用は無い。

ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
イチゴウ > 「目標は行動継続中、何かを購入した模様。
-----了解、接近する。」

先程から窓越しに見ているだけだった機械が
その店へとザクザク地面を踏みながら近づいていき
入口へとある程度近づけば出てくる少年を確認するべく
左右に点在しているやや背の高い草の茂みに素早くそのシャーシを潜める。
監視フェイズの際に一瞬視線をずらした気がしたが
バレたのだろうか?いや機械でもズームが必要な距離で
異能も無しに人間が察知できる可能性は低いだろう
ロボットは草の間から不気味な視線を送りつつ
そう結論付けていた。

「目標が建造物から退出し次第、追跡を続行する。」

ごく小さな合成音声でどこかへ通信した後に
たてる音を極限まで減らし景色の一部へと溶け込んでゆくだろう。

追影切人 > さて、店を後にすれば軽く右腕を軽く回して調子を再確認する。特に問題は無い。

「…つーか、個人差はありの副作用が気になるが…ま、いっか死にはしねぇだろ」

その辺りは結構ドライなのだ。このまま、適当に落第街をブラついてみてもいいのだが――。

「……おい、そこの草むらに隠れてるヤツ。どうせ俺の監視目的の風紀委員会絡みなんだろうが。
監視するなら堂々としろ、コソコソすんじゃねぇ」

ひたり、と絶対見えていない筈で気配や音でも気付かない筈の彼が潜む一角に隻眼を正確に向けた。
一応、違う場合に備えて左手の親指が腰に差した刀の鯉口を軽く切っており。

彼の通信相手が、監視の際に出した注意項目が一つだけある。
それは、『あの男は馬鹿だが愚鈍ではない。むしろ一部規格外だから油断するな』というもの。
その注意項目がここに来て現実味を帯びるだろうか。異能も魔術も何も無しで正確に彼の潜む場所を察知したのだから。

言ってしまえばただの直感なのだが、そういう所が少年は少々―いやかなりおかしいのだ。

ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
イチゴウ > 「....対象に発見された。次の指示を待つ。」

正直この事実には機械も驚きを隠せなく
今まで追跡任務でこのように直接的な被発見は無かったが
同時にターゲットへの興味も湧いてきた、
種族的には人間でありながらあの探知能力は恐るべきものだろう。

少年がまるでその姿を完全に捉え切ったと言わんばかりの様子で
一見何もない草むらに声をかけると
細かく草を揺らしながらゆっくりとその監視の目が
姿を現すだろう。少年の前に現れたのは
取って付けたような顔、
物々しい前足と胴体を支える後足の四足が
特徴的な多脚戦車。少年の勘通り風紀委員会直属である。

「こんばんは、
ボクは風紀委員会、特別攻撃課所属のHMT-15。
堂々としていたらそれは追跡とは言えない。」

言う通りに堂々と姿を見せた戦車は少年を見上げると
規定通りの挨拶を済ませた後に一言。
同時にまるで分析するが如く電子音を巡らせながら
少年をじっくり見ているだろう。

ご案内:「落第街大通り」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 「……あぁ?……また珍妙な監視役が来たもんだな」

流石に、相手が人型ではないというかロボットの類とは想定外、もとい考えの外だったらしい。
少年は露骨に怪訝そうな表情を浮かべるが、特に不穏な感じはしないので切った鯉口を戻す。

「しかも、特別攻撃課所属ぅ?…あそことはつくづく因縁あんだな俺は…。」

少年がかつて敗北した者が所属しているのも、恩人と唯一認める人物が所属していたのも特別攻撃課だ。
風紀の最大戦力はあそこ、と言えなくも無いのは”経験上”少年はよく知っている。
何とも言えない吐息を一つ零し、ジロジロと隻眼でロボットを眺める。

「だったらもうちょいバレないようにしろって話だ。…んで?テメーみたいなのが監視役ってのもおかしな話だな」

と、少年は疑問を呈するが、悪名高い<斬鬼>を監視・追跡・ましてや最悪”制圧”するなら相応の人材が必要な訳で。
監視を命じた上層部の判断は間違いではない。ただ、少年の探知能力が少しおかしかっただけだ。
そもそも、彼のような強力な兵器が監視に回されるという事は、少年の”危険性の高さ”も相応と見做されている証左か。

まぁ、準一級というかなり上位の監視対象指定人物なので、むしろ順当かもしれないのだが。

イチゴウ > 「ボクは最適化されたフローチャートの元に行動しており
実行していた追跡手順は被発見の可能性が限りなく抑えられたものだ。
この状況で発見されてしまう方が"おかしな話"と言える。」

バレないようにしろとやれやれといった様子で語る少年を前に
自身ではあれ以上の追跡行動は不可能だと伝えるだろう。
事実、衛星通信と併用したこの追跡プログラムは
最上レベルの異能とか魔術とかでない限り突破は難しいものだ。

「ところでここで一つ確認しておかなければならないのは
準一級監査対象である<斬鬼>が何故ここにいるのかという事だ。
記録によれば負傷したことになっており
病人は病室で寝ているのが正しい姿である筈だ。」

一つ話を区切った後は今度はロボットの方から
まるで無線機を通したような男性音声とも形容できる
合成音声で少年に対して進言するだろう。
また機械はここで気付く、口にした通りこの対象は
ケガをしていた筈だがその傷跡が見当たらない。
重症だった話からこのような一瞬で治るとは
考えにくいようで外部ではなく
身体内部の損傷だろうかとロボットは考えている。

追影切人 > 「…とはいっても、そこに”居る”のは確かだしな」

簡潔にそう答える。端折り過ぎているが、要するに音や気配や熱や痕跡、姿を消そうとそこに確かに居る。
それならまず気付くというのを彼は言いたいようだ。色々とおかしいがそもそも一部規格外のお墨付きである。
彼の興味を引いたとしたら、異能も魔術も無しで素で看破した点が一番大きいかもしれないが。

「あーー…あっちの薬は効果はあるが治りが遅いからな。こっちの方が即効性の薬は手に入りやすい。んで今その薬を買ってさっき使った。
それと、一応言っとくが、そこの店を摘発するなら止めとけ。表側と癒着、つぅかパイプ?コネがあるみたいだしな」

と、親指でクイッ、と自分が出てきた店の扉を軽く示す。そこで薬を買って服用したという事をあっさりバラす。
とはいえ、異世界由来の成分だから違法判定するにも結構グレーな部分が多そうだが。
最悪、まぁ少年も無償で風紀の手伝いを何回かさせられる程度で済むかもしれない。

「で、このとおり右腕は元通りって訳だ。片手でも斬れるがやっぱ両手が使えないとしっくりこねぇしな。
これで、何時でも再戦した時にあの怪異をぶった斬れるって訳だ。次は斬り殺す」

と、右手をヒラヒラと振ってみせる。既にその右腕には包帯もギプスも何も無い。あと、最後の方は独り言に近い。
ちなみに、怪我は複雑骨折、神経と筋肉の著しい損傷。外の世界なら最先端医療でも完治はかなり難しいレベルだ。