2018/08/28 のログ
神代理央 > 「…慰謝料というのは、金額では無く年数か。成る程、支払いは行えそうにも無いが、考慮しておこう」

さて、情報を引き出すもの潮時だろう。というよりも、怒りが理性を上回っている相手から情報を引き出すのも面白くない。
暗に相手の言葉から情報を集めていますよ、と告げて一度相手の理性を呼び戻そうと試みるだろう。

「寧ろ、上で無くては私も困るところだ。本当に見た目通りの年齢ならば、風紀では無く生活委員会の管轄になるやも知れんからな。
……まあ、少し落ち着け。邪魔立てされた事への苛立ちは分かるが、今夜は私以外にも風紀委員が多く街を巡回している。貴様とて、表の顔があるから仮面を被っているのだろう?私は認識阻害を破る能力は今の所持ち合わせておらんが、他の風紀委員はそうではない。感情で動いては、成すべき事も成せ無くなるぞ」

別に、態々相手に忠告じみた事を言う必要は無い。寧ろ、探知や認識阻害の突破に優れた委員を応援に呼んでも良いくらいだ。
しかし、何となくではあるのだが、同じ匂いを相手からは感じるのだ。何が、と明確な言葉には出来ないが、父からの命を受けて島に訪れた己と、本質的に似通った部分がある…様な気がする。
気がするだけなので、それ以上忠告する事は無いのだが。相手も冷静さを取り戻せば本来の知性で以て行動出来るだろう。

閃白兎 > 「そうですか。まぁ、自分から払えるものではないですね。考えておいて下さい」

情報を引き出されている、といった自覚は彼女には無かったりする。夜に現れる寿命を奪っていく黒い影は落第街等ではちょっとした恐怖の対象であり、今更寿命貰いますと言ったところで対して困るとは思っていない。

「風紀でもなければ勝算は皆無でしょうけどね。
…風紀といえど看破能力を持つものは僅か、だったと記憶しておりますが…まぁ私の知る限りでしかないですし。確かにここで感情的になるのは危険ですね」

神代の言葉に理性と合理的な考えが戻ってくる。
よっぽどの猛者でも無い限り数人の風紀程度蹴散らせるが、異名持ちや赤服ともなれば苦戦は必至とも言える。だがこいつに対する仕返しも何も無しというのは少々癪に触る。

「そうですね。では、一つだけ仕返しさせてもらいましょう。<時間停止>」

時が止まる。この間は自身とその身に付けた物以外に干渉することは出来ないという制約こそあれど、全てが止まった中を優雅に歩き神代の首筋に素手で触れてー

「<時間解放>」

時が再び動き出す。神代の首筋に当てられた手からは神代の生命ー寿命ーが毎秒半年の勢いで奪われ始める。

神代理央 > 元々、己には何種類かの異能や魔術が宿っている…らしいのだが、それを利用する機会は殆ど無かった。
というよりも、今迄は異形を召喚する異能と、肉体を強化する魔術。そして、異能と魔術を組み合わせた魔力の砲撃で全て賄えていたという方が正しいだろう。

かつて、己に肉体強化の魔術を授けた男曰く
『魔力の流れが上手くいっていないだけ』
との事であったが、それを実感した記憶は無い。
だが、首筋に触れた相手の手から、明確に己への害が成されようとした時、滞る、というよりも半ば休眠状態にあった魔術が目覚める事になる。

それは、欧州にて脈々と魔術の研鑽に励んだ母方の一族が繋ぐ魔術。一族の者が宿した魔術を混ぜ合わせ、増幅させ、次の世代へと引継ぎ続けたモノの一つ。
それは即ち、収奪と還元を理とした【高貴なる者の義務】を具現化したもの。弱者に施す事も、弱者から奪うことも、全ては支配者の思うがまま―

「…満足したかね。ならば、これ以上つまみ食い等せずに立ち去る事だ。血気盛んな委員やこの街の住民が、理性を以て貴様と対峙するとは限らんからな」

確かに相手は己の寿命を奪っただろう。それは揺るがない。
そして、それは迅速に補填された。奪われるべき寿命は、魔力に変換されて相手に【施される】施される魔力は、己のものでは無く、周囲の大気を。電力を。生命エネルギーを。あらゆるエネルギーが魔力に変換されて己のものとなり、そこから相手に流れ込む。
そして、次に訪れるのは収奪。貴族が徴税する様に。民から蓄えを奪う様に。魔力に変換された寿命は彼女に与えられた後、そのまま再び己の魔力となる。

それは、己にとっても無意識の魔術。だが、一度発動した魔術は明確な式となって己の体に刻まれた。
その様を醒めた瞳で見届けた後、制服を翻してその場から立ち去るだろう。
新たに得た魔術の感触を確かめながら―

ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。
閃白兎 > 「……………………………………」

しばらく、何が起きたか全く理解出来なかった。
生命、寿命を奪う時の感覚というのはもっと快感、というか生を感じるハズだ。
しかし得たのは生命ではなくあくまでも類似した疑似生命とも言えるだろう魔力。
ここまでならまだどうとでも反応のしようというものがあるがー
得た寿命はなかったこととなった辺りで混乱した。
如何なる者もこの異能から逃れられた事はなかった。如何なる者からも生命を奪えたハズだ。
それを覆した相手の未知の異能だか魔術だか。

それなりに長い時間そこでつったっていたようだ。
ハッと意識が復帰した頃には彼の姿はどこにもなく。情けでもかけられたか、と考えると「敗北」の二文字が脳裏に浮かんだ。

「…悔しいけど私の負け……」

歯を軋ませて壁を力任せに叩けば壁に小さいヒビが入った。
大嫌いな敗北に情けなさと怒りを感じつつ、おとなしく彼の忠告に従うように落第街後にした。

ご案内:「落第街大通り」から閃白兎さんが去りました。