2018/12/03 のログ
神代理央 > 「それは光栄だ。良い被験者、良い顧客でいられる事は異本主義社会の一員として喜ばしく思っているよ。そのデータが、社会の為に還元される事を心から願うばかりだね」

クツリ、とほんの僅かに唇を歪めて肩を竦める。

「良くある話ではあるが、我が身に降りかかるとなるとゾッとしない話だ」

サングラスを上げた彼に、やれやれと言わんばかりに小さく溜息を吐き出して―

「ほう?その考えは無かったな。だが、成る程。可能性としては十二分に有り得る。となれば、やはり発動に至らぬのは私の精神的な要因か」

とはいえ、推論を組み立てるにはパーツが足りない。
父親の事を付け加えた彼に、何処まで知っているのかと言わんばかりに瞳を細めてみせるだろう。

「……中々に酷い二択だな。寿命を対価とすれば、正気のまま何かを得られるのかね?」

ルギウス > 「ええ、ですから貴方にはとても期待していますよ。
 とても面白い舞台を見せていただけそうで」

ふむ と少し考える素振りをして。

「具体的な結果がわからずとも、名付けられているのですから親類辺りが知っていると類推するのが当然でしょう?
 もっともらしく言うのが私みたいな輩の常套手段でして」

実に楽しそうに笑った後で。

「発動できないのは条件が整っていないか、まだ邪魔な安全弁があるかのどちらかでしょう。
 ……ここから先は、私的な解釈ですがねぇ。
 異能は精神性がとても大事だと、思うのです。
 追い詰められてから開花ないし変質する異能も報告されていますからねぇ」

一つ、死にかけてみますか? と気軽に提案しつつ薬を取り出した。
わかりやすく注射器である。

「正気のまま、どんな痛みも無視できますよ。
 即死でなければ動けるでしょう」

神代理央 > 「どうかな。私はアクターとしては三流でね。貴様の望むようには、踊ってやれぬかも知れんぞ?」

緩く首を傾けながら、口元には薄い笑み。

「成る程。精神科医殿は実に良い話術をお持ちだ。司祭か占い師にでもなってみたらどうかね?」

と、軽口を叩いた後、その表情は再び思案気なものへと変わり―

「精神性、か。確かに、その解釈には同意出来る部分もある。そもそも、異能という未知の力に対して、能力者の精神性が介在しないとする方がおかしな話だろう」

そして、取り出された注射器に視線を移し、その瞳を細める。
やがてその視線は、サングラス越しの彼の瞳へと向けられる。

「成る程。それで頭痛を麻痺させ、半ば強引に異能の限界を発揮させようと言うわけか。良いぞ。試供品としてなら、有り難く貰ってやろう」

良い被検体であるのだから、それくらいはサービスしたまえよ。と、緩やかに笑みを浮かべるだろう。

ルギウス > 「おや、心外ですねぇ……本業は司祭でしてね。
 副業で教師や占い師など幅広くやっていますよ。
 さて、筋書きのある舞台も好きですが、私は特に即興劇が大好きでしてねぇ。
 予想のできる即興劇ほどガッカリな事はありません。
 是非とも、私の思い描いている筋書きを超えるものを見せていただきたいものです」

ニタリと笑みの質が変わる。

「魔術は、別人が同じ工程を踏めば際限できます。異能はそもそも工程が分からない。
 だとすれば、使用者の環境にも鍵が眠っていると私は思うのですがねぇ。
 似たようなことであれば、真似ができるのですが」

いやはや困ったものですと続けて。

「構いませんよ、これは完全に私の私物ですから差し上げます。
 こちらは過剰に摂取すると痛みどころか、五感を失いますので気をつけてくださいねぇ」

気軽にコインを渡すように注射器を渡す。

神代理央 > 「…貴様に祈りを捧げられる神が哀れでならないよ。
ご期待に沿える様に努力はしよう。三流役者が舞台の上で足掻く様を、特等席から眺めておくのだな」

彼が浮かべる笑みに応える様に、昏い喜色を含ませた笑みで言葉を返す。

「顕現する力も、発動する条件も、その要因も全て不明とあってはな。とはいえ、異能の研究そのものは魔術に比べてまだ日も浅い。我々が死した後、解明されるだろうさ」

研究者肌に見える彼とは違い、自分は己が行使する力が強大であればそれで良い。
異能の真理や真相というものに、興味はあっても関心は無いと言わんばかりに肩を竦めてみせた。

「味覚くらいは残る様に、適量を摂取させて貰おう。甘味を味わうことだけが、数少ない人生の楽しみでね」

気軽に手渡された注射器を、此方もまるで友人と物の受け渡しを行うような無警戒さで受け取り、懐へとしまい込むだろう。

ルギウス > 「ええ、特等席から眺めるのがここ数百年の趣味になってしまいましたよ。
 神からの祝福のおかげで、死を体感しても終わらない身でして。
 ですので、私が死ぬまでとなるとどれだけ先になるのやら」

珍しく苦笑気味に返事をしただろう。

「それでしたら、こちらをサービスしておきましょう。
 自作したものですがプロ以上の味は保障しますよ」

そう言って手渡されたのは、どう見てもケーキの箱。
箱にはザッハトルテと書いてある。重量からどうやっても1ホールが確定である。

神代理央 > 「…随分と長生きしている様だな。不老不死は神に近い特権と見るが、どうかね。貴様から見て数瞬の命を生きる者に比べ、解脱の域には達したかね?」

そんな表情も浮かべるのか、と言いたげな視線を向けた後、小さく首を傾げた。

「…ほう。気が利いているな。良い、実に良い。カスタマーサービスの行き届いた者は好ましく思うよ。有り難く受け取っておこう」

恐らく、彼との会話の中で一番の喜色を滲ませた声色だろう。
先程の注射器よりも丁寧にケーキを受け取ると、その重量に寧ろ頬を緩ませて大事そうに抱えるのだろう。

ルギウス > 「ええ、こう見えてかなりの長命でしてね。
 ただ性根がどうにも俗物らしく、解脱には遠いようです。
 ……むしろ解脱できる方は、頭のどこかがおかしいと思いますよ」

はっきりと答える。

「さて、用件はこんなところでしょうかね。
 貴方もあまり席を外しすぎると大変でしょう?」

いつもの雰囲気をまとい、のんびりと大通りを歩き始める。
染み一つ無い白い司祭服が奇妙なほどに雑多な通りに馴染んでいる。

「では、またいずれ。
 貴方の舞台……その行く末に幸がありますように」

男は雑踏に紛れていった。

ご案内:「落第街大通り」からルギウスさんが去りました。
神代理央 > 「成る程。貴様とは仲良く出来そうだ。ビジネス以外でも、良い関係を築ける事を願うよ」

それは、己にとって好ましい答えであった。
特等席で見下ろすと公言しながら、解脱には至らぬと自らの俗信を憚らない。
その手の相手の方が、此方も話がしやすいというもの。此の世は神では無く、人間が支配しているのだから。

「ああ、またいずれ。次は良いデータを提供出来る様に努力しよう」

短く言葉を返すと、彼とは反対方向に歩き出す。
戻った己が抱えるケーキに怪訝そうな目を向けられながらも、結果を報告する部下の話を聞きながら自動車に乗り込み落第街から立ち去った。

ご案内:「落第街大通り」から神代理央さんが去りました。