2015/07/16 のログ
ルフス・ドラコ > ポケットに仕舞った端末から伸びるイヤホンは、簡単に古今の名曲に素人でさえ邂逅させてくれる。

勝利を祝う歌。誰かの死に見合うだけの勝利の歌。
怒涛のように、若き将軍と、二人の王女の運命を押し流す歌。

ページをめくる腕が、知らぬ間に止まる。
いつか見た光景が網膜を浸していく、止まぬ回想。

ルフス・ドラコ > まぶたを閉じて、背もたれに深く沈み込む。

眼を開いていれば、見えるのかもしれない。この劇場が、今どうなっているのか。
端末を確認すれば、わかるのだろう。この劇場を運営している団体が、どうなっているのか。
イヤホンを外せば、この劇場ではもう音楽など聞こえないことが――

ゆっくりと体を起こした。
ギシリとソファが静かな空間に唯一の音をたてる。

ルフスは再び、閉じかけていた文庫本に視線を落とす。
開演のブザーも聞こえないのに、幕が上がるのを待っている。

ルフス・ドラコ > チラシが届いたことはない。
招待状なんてもってのほか。
キップの買い方さえ知りもしない。

ただただ、無関係で無遠慮で無配慮で無神経な観客が、公演を待っている――

ご案内:「ミラノスカラ劇場跡」からルフス・ドラコさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に『共作者』さんが現れました。
『共作者』 > コツ、コツ、コツ、コツ……白杖が定期的な音を立てる。
其の音の主はしかし、其の音を聞いてはいない。

「ぁあ……あぁ……世はなべて……悲劇で、喜劇で、奇劇……なのねぇ……
 『七色』さん、『美術屋』さん……ぁあ、悩ましくも、悲しくも、美しくも、愚かしくも……あなた達はぁ、道を選び……
 『鮮色屋』さん……ぁなたは……終幕を選んだ、のかしらぁ……
 ちょっと、しまらなかったのは……ふふ、それも……人生の、喜劇のうち……なのかもしれない……わねぇ……あは、ふふ……」

くすくすくすくすくすくす、と笑うように、歌うように
彼女は『読書』する

『共作者』 > 「劇場は、地に墜ちてぇ……団員はぁ……闇に、堕ちて……
 ぁあ、この下らなく、面白く、つまならく……愉快な、コメディは……ぁあ、ぁあ……
 私たち、に……足りなかった、グラン・ギニョルのぉ……幕間、なのかしらぁ……ふふ、ふふ……ふふふ……」

狂気に満ちたグラン・ギニョルにも間に挟まるコメディ無くしては語れない。
これは、神が与えた配剤か。悪魔が下した毒薬か。

「ぁあ……それなら、公安の……そう、あの子……にぃ、感謝、しないと、いけないわぁ……ふふ……」

くすくすくすくすくすくす……
彼女は笑う。

「グラン・ギニョルはぁ……フェニーチェはぁ……まだ、まだ、まだ……魅せられる、演目は……残ってる、わぁ……ふふ、ふふふ……
 劇場の、一つ……二つ……関係ない、というのに……ぁあ、くだらなぃ、面白い、滑稽で、あは、素晴らしい……わぁ」

『共作者』 > 「ん……さぁて……どう、しよう……かしらぁ……」

世が、世間が、世界が、演劇が……
狂気と狂喜に満ちた劇の幕間を求めるというのなら、今、何が出来るのか。
劇は無理だ。大道具一人では何もできない。
『共作者』は狭窄し、共作し、競作するしか芸がないのだから。

「ん……それならぁ……先人の、例にぃ……習って、みようかしらぁ……?
 ぁは、あはは……ふふ、うふふ……」

下らなく、醜悪で、凶悪で……どうしようもなく滑稽な……
そんなアイデアが浮かんでくる。
ああ、ああ……これをしたら人はどう思うだろうか。
眉をしかめ、そっぽを向き、時に笑い、頭を抱えてくれるだろうか。

『共作者』 > 「凧……そう、凧……が、いいわぁ……
 土管は……そう、中身が……大変だものぉ……」

コツ……白杖の動きが止まる。

「ぁあ……世界を、変える……『創世の書』……
 これを、こぉんな、くだらなぁい……いたずらに、使うなんて……
 ぁはは、ふふ……ああ、私も……人も、愚かで、愉快で、尊く……ああ、等しく、価値の無い、ふふふ……」

彼女の手には、二冊の本。
一つは黒く、一つは赤く。

『共作者』 > 「世界は……移ろう……黒は……朱……白は……緑……
 不死鳥は……地から墜ち……天に舞う……
 ぁあ、世に……正義が、蔓延り……悪徳は、天に追わる……
 故に……我ら、天より……汝らを……見上げ……下ろそう……」

物語るように、夢見るように、何事かを唱えていく。
其の顔は、夢見るように、恍惚とするように……

ご案内:「違反部活群/違反組織群」にミウさんが現れました。
ミウ > 突然、ミウが褐色美人から少し離れた場所に転移してくる。
ミウは、地面から足を離し、少しだけ宙に浮いていた。

「何を唱えているのかしら?」
きょとんと首を傾げる。
黒は朱? 白は緑? 不死鳥? 天? 正義? 悪徳?
一体何を表しているのだろうか?
「何かの呪文?
 あるいは詩?」

『共作者』 > 「ぁあ……天空を、舞う……其は何ぞ。汝よ、在れ……」

其の一言が紡がれれば……現れたのは色とりどりの巨大な凧の群れ。
其の図柄は様々で……

不気味な化け物、凄惨な殺人の光景、火あぶりに苦悶する人間、ギロチンで切断される首、
奇妙な人間を前に慌てる人間、病に変色した人間を追い立てる人間、武装した人間、ザンバラ髪の無闇にハンサムな男……

『共作者』 > 「ぁはは……ふふ……近くで『読んで』、なぃからぁ……
 こっちは、すこぉし……アレンジに、なっちゃった、けれどぉ……
 わかる、かしらねぇ……ふふ。わからなければ、それは、それで、いいのだけれどぉ……」

ザンバラ髪の男の凧を目の前にして、くすりくすり、と笑う。

「……ん……」

来訪者が『読めた』。どうやら此方を伺っているだけのようだけれど……
どうにも、『読みづらい』相手のようでわかりづらい。

ミウ > 巨大な凧の群れが現れた時、ミウは自分と近しい力を感じた。
「これは、あの書物によるものね……」

そして、上がっている凧がとても不気味だった事に、
「物騒なデザインね。
 ユニークと言えばユニークだけど、少々不謹慎な気もするわ」
ホラーが好きな方なのだろうか?
浮遊しながら、少女に近づいていく。

『共作者』 > 「ぁら……どうやら……お客様……かしらぁ……」

本日は閉店なり。
そう思っていたけれど、どうやらそうもいかないらしい。
だからといって、特段拒否する理由もない……いや、あるとすれば……
あれは……人ではない、ことか。

ミウ > 「お客というより、ただの通りすがりね。
 何かを見せてくれるのかしら?」
そう言って優雅に笑ってみせる。

当然ながら、相手が聞こえているという前提で話している。
だが、白杖を持っている事と目を見れば、目が悪いという情報は入ってくる。
こちらの事はおそらく、見えていないのだろう。

『共作者』 > 「あらぁ……今日はぁ……店じまい……よぉ……
 ふふ……次の、開店も……いつか、わからないけれどぉ……」

残念ね……と、とろりと蕩けるようなけだるい声で答える。

「通りすがり……ねぇ……ふふ……そう……
 この街はぁ……あまり、通りすがっちゃ……いけないわよぉ……ふふ……」

くすくす、と笑う。

ミウ > 「この時間だものね……店じまいもするわ。
 次の開店予定が分からないとは、随分とアバウトなのね」
だるい声にも、優雅に返す。

「確かに、『普通』ならこの辺を通りすがるのは危ないかもしれないわね。
 あいにく、わたしはその『普通』であるつもりはないわ。
 わたしはミウ、神よ。
 あなたは?」
くすくす笑う少女に自己紹介をし、相手にも自己紹介を求める。

『共作者』 > 「そう、ねぇ……みぃんな……勝手で……みぃんな、自由でぇ……
 やめたり、やめなかったり……始めたり、始めなかったり……するから……仕方、ないわぁ……?
 でも、それが……『人間』、というものよぉ……カミサマ……?
 こういうの……わかる、かしらぁ……」

何がおかしいのか、けだるい様子のまま、くすくすと笑う。
神、神だって。ああ、本当になんでもありだ、この島は。
彼女が伊達や酔狂、冗談や戯言で言っているのではないことは『読めば』わかる。

「そして、勿論……私も……人間、よぉ……ふふ……
 聞きたいのが、そういうこと……でなければぁ……そう、私は、スシーラ……よぉ」

ミウ > 「要するに、みんな気紛れなのね。
 お客がどうこうというより、純粋に自分たちで楽しんでいるのかしら?
 確かに、人間は気紛れな部分があるかもしれないわ」
神も十分気紛れである。
ちなみに、彼女の言うみんなが一体何をやっているのか、ミウは知らない。
楽しく何かをするというのは、他人に迷惑をかけないなら全然ありだと思う。

「スシーラちゃんね。
 よろしくね」
そう言って、上品に笑ってみせる。

『共作者』 > 「えぇ、その通りぃ……ふふ……
 しめて、しまらない……そぉんな……今、なのよぉ……
 ふふ、おわかり、いただけて、幸いねぇ……」

さて、しかし……神、神と来た。神がなし得る配役はなんだろうか。
悪魔であれば、たしかそんな演目もあったはずなのだが……

「えぇ、よろしく……ミウ……さん……?
 ふふ……それに、してもぉ……カミサマは、なんで、こんなところにぃ……?
 通りすがり……とは、聞いたけれどぉ」

ミウ > 「それも、この学園で暮らす上での、ひとつの青春なのかしらね。
 それで、その皆でどんな事をやっているの?」
笑顔で、小首を傾げる。
それは純粋なる興味だった。
みんな気紛れで出来る事とは……はたして?

「通りすがり以外の事をしいて言えば……そうね。
 わたしも、あなた達人間のように少し気紛れなのかもしれないわね」
軽く苦笑してみせる。

『共作者』 > 「ん……劇……だった、わぁ……
 それは、それは……美しくて、醜くて……滑稽で、素晴らしい……そんな劇、よぉ……ふふ」

言っていることは、どこかところどころおかしい。
しかし、けだるげながら、きっぱりと彼女はそういう。

「ふふ……人も、気まぐれ……カミサマも、気まぐれ……ぁあ、悪くない、わねぇ……でも……
 そう、ねぇ……そう、なると……カミサマ、と……人間の、違い……って、なに、かしら……ねぇ……?」

ミウ > 「みんなで演劇に興じているのね。
 美しくて、醜くて、滑稽で、素晴らしいね……。
 なんだか芸術的だわ」
醜くて、滑稽、という部分に疑問に思いながらも、芸術的と解釈する。

「人と神の違いね……。
 哲学的な疑問に見えるけど、答えは簡単よ。
 神は、人間よりも偉いの」
笑顔でそう言い放つのも、ミウが神として傲慢であるが故である。
本心ではちゃんと、人間という存在を評価している。

『共作者』 > 「ふふ……そう、とても、とても……芸術的、だったわぁ……
 いずれ、お目にかけられれ、ば……いいの、だけれどぉ……
 ふふ、どうなるか、は……私も、わからない、わぁ…」

これも残念だけれど……やむを得ないことだ。
ひょっとしたら、もうあんなことは二度と出来ないのかもしれない。
それはそれで、また一つの悲劇という名の劇なのだが。

「ぁ、は……」

彼女はいつもいつも、くすりくすり、と小さな笑いをこぼしているが……
今度ばかりは我慢のしきれない……と言った風情の笑いが漏れ出る。

「ふふ、あはは、ふふふふふ……偉い……あはは、そう、ねぇ……偉い、のねぇ……
 ああ……生まれついて、優と、劣が……定まっている、のねぇ……あは、ふふふ……
 ふふ、あはは……じゃあ、カミサマ……悪魔は……悪魔は、いるの、かしらぁ……
 居るなら、彼らは……人と、ドレだけ、違うのかしら……?」

ミウ > 「あなたは、その演劇で何をしているのかしら?
 主演? 脚本? 裏方?」
そう言って首を傾げる。
「そうね。
 その劇を見てみるのもいいわね。
 どうなるか分からないって……台本なしの即興劇なの?」
即興劇だと、確かにみんな気紛れになりそうだ……。

笑う彼女に対して、
「そうよ。
 偉いのよ」
と、優雅に微笑んでみせる。
やはり奢り高ぶる神。
「何が優で何が劣かは、その人次第かしらね。
 神に生まれたいと思いながら人として誕生してしまったという事は、その人にとっては劣なのかもしれないわ」
どういう風に優劣を定めてしまうかは、その人の自由。
「悪魔はいるわよ。
 ここは常世学園だものね。
 人とどれだけ違うかは、その悪魔次第になるでしょうね」

『共作者』 > 「ふふ……私はぁ、しがない……舞台裏、よぉ……
 私は、ただの……共作者、ですものぉ……」

誰かとともにあらねば、何も出来ない。
誰かとともにあるから、何かが出来る。
彼女は、そう言った。

「ふふ……即興劇でも、あるし……台本を、脚本をぉ……
 みぃんなで、『題無し』に、したり……色々、よぉ……」

横合いから殴り殴られ、崩し崩され……それが人間の縮図で、
其れこそがある意味、グランギニョルのグランギニョルたる所以でもあるかもしれない。

「ぁ、は……なるほどぉ……じゃあ……人に、生まれるべく、して……生まれれ、ばぁ……カミサマが、上に、いようが関係ない……って、こと、かしらぁ……ふふ……
 下には、下の世界がある……そこで、元気に生きれば、いい……?」

それは、井の中の蛙、というやつではないか。
しかし、井の中の蛙だから幸せがないかといえば……井の中の方が幸せなのかもしれない。
ああ、なんて世界の無情。

「あはは……なら、其の質問は……悪魔に会った、時に……しましょうか、しらぁ……ふふふ……
 本当に、本当に……ここなら、なんでも揃いそうだわぁ」

ミウ > 「舞台裏なのね。
 つまり、陰からみんなを支えているのね。
 演劇とはみんなで完成させるものだもの。
 舞台裏も立派だと思うわ。
 共作者……という事は、大道具?」
笑顔を崩さずに、問いかける。

「せっかくの台本を台無しに……。
 あなた達、よっぽど気紛れなのね……
 脚本家が泣くわよ……」
ジト目で、共作者スシーラちゃんを眺める。

「運命を信じる人なのね。
 確かに、人は人に生まれるべくして生まれたという可能性もあるわ」
それこそ、向こうの異世界では創造神の気が向くままに──。
なにせミウが元いた世界は、創造神ミウにより創りだされたのだから……。
だがミウは、この世界の創造には関与していない。
故に、この世界の人間の誕生は、ミウの気が向くままにはならない。
「人間のための人間社会があり、そこで元気に生きればいいというのは、その通りね。
 神は、そんな人間を上から見守っているかもしれないし、もしかしたら人間社会に関与しているかもしれないわ」
また傲慢故の返答である。

「そうするといいわね。
 この島だと、悪魔にも出会えるかもしれないわ」

『共作者』 > 「そう……大道具……かしらねぇ……そう、だったわぁ……
 すぐに、色々壊れる、から……大変、なのよねぇ……」

壊れるのか、壊すのか、壊されるのか。
差異はあれど、結果は同じなのだ。
自分のやることもまた、変わらない。

「そう、ねぇ……一般的には……そう、かもしれないわぁ……
 ん……カミサマも、演劇とか……するの、かしらぁ?」

ふと、気になって聞いてみる。
人間のような神であれば、それもまた演劇を見るのかやるのか。
一体どんな演目があるのだろう。

「ふふ……運命……そう、そうねぇ……信じるかも、しれなぃ、わぁ……
 惨めたらしく、輝かしく……虚しく、心躍るように……流し、流される……それが、人、らしさ、だもの……
 ふふ、ああ……まさに、『どん底』ねぇ……どん底の歌を、歌いましょう……ふふふ」

くすり、くすり、と笑う。

「カミサマ、は……そう、運命に、生きていない、のかしらねぇ……?
 運命は、神がつくる……とは、いうけれどぉ……」

やや首を傾げ……

「ん……ミウさん、はぁ……此処のカミサマ……では、ないのかしらぁ……?」

ところどころの発言から、やや齟齬を感じる。
ああ、ひょっとして、と……尋ねる

ミウ > 「すぐに壊れるとは……随分と派手な事をやっているのね。
 それは、大道具も大変だわ」
先程の凧を創った魔術を見る限り、彼女が大道具だというのも頷ける。
魔術だけ見れば、適任である。

「一般的にはって……スシーラちゃんの演劇は特殊なの?
 醜いとか滑稽とか言っていたぐらいだものね。
 残念ながら、わたしは演劇なんてした事がないわね」
見る事もあまりない。
普段も、演技とは無縁のあるがままの自分でいるだけだ。

くすりと笑うスシーラちゃん。
「惨めたらしく、輝かしく……ね。
 運命をプラスに考えているのか、マイナスに考えているのか分からない言い方ね。
 どん底の歌とはまた、暗いチョイスだわ……。
 もうちょっと前を向いて生きるのもいいと思うのよ」
ちょっと心配するような表情を浮かべる。

「少なくとも、わたしは運命に生きているつもりはないわね。
 わたしは、わたしだもの。
 それに、わたしが運命をつくっているわけではないわ。
 未来は、神にだって分からないものよ」
そう言って、静かな笑みを浮かべる。

「わたしが神として司るのは『万物の創造』。
 元々わたしは異世界から来た神で、元いた世界を創ったのはこの創造神よ。
 だけどわたしは、この世界の創造には関与していないというだけね」
どの世界でも、ミウは神である。
どこかの世界に行ったからといって、ミウが神ではなくなる事はない。
だが、少なくともこの世界を創造したのはまた、別の存在だ。

『共作者』 > 「私たちは……そう……人の、あまりやりたがらない……
 そんな、演劇をするのよぉ……だから、普通には、なぃことが、起きるわぁ……
 ヒトの、あるがままの……その、姿を切り取り、写しとり……現実に、する……
 誰もが、目をそらし……誰もが、目を向ける……そぉんな、生命の、賛歌……」

とろとろと、恍惚と……己の演劇を語る。

「ふふ……どん底の、歌は……どん底に、生きる人々の……生きる糧……
 平気、よぉ……私は、いつでも、前を向いて……生きてる、の……ふふ……
 もっとも……前は、もう見えないけれどぉ……」

くすくすくす、と自らの黒い冗談を面白がっているのか、いつもの笑いか笑いを絶やさない。

「ケ・セラ・セラ……といった、ところかしらぁ……
 あぁ……それも、また劇的……素晴らしい、生き方よねぇ……
 創造神……ふふ……これは、また……凄い、大物さん、だったわねぇ……ふふ。
 そんなカミサマが、わざわざ……別の世界に、くるなんて……カミサマも、暇なの、かしらぁ」

ミウ > スシーラちゃんが恍惚と演劇を語るが、
ミウは首を傾げるしかない。
「あまりやりたがらない、普通ではない事ね……。
 なんだか芸術的で、よく分からないわ。
 本人達が楽しんでいて、他者に迷惑をかけていないなら、なんでもいいとは思うけれどね」

「歌で生きる糧にするのは、良い事ね。
 前を向いて生きてるなら、よかったわ。
 前はもう見えないね……そんな冗談を言えるなら、大丈夫そうで、安心したわ」
心配そうな表情は、優雅な笑みに戻る。

「神も人も、素晴らしい生き様を歩んでいけたらいいわね。
 運命を信じて生きるのも、素敵な事だと思うわ」
そう言って、上品に微笑む。
「異世界の門で多くの異邦人がこの世界に来て、帰れなくなった事は知っているわね?
 わたしも、うっかり門に飲み込まれた異邦人の一人というわけよ。
 そんなうっかり失態のせいで、元の世界に帰れなくなったの」
苦笑気味に笑いながら言う。

『共作者』 > 「ふふ……そう、ねえ……
 わからないヒト、が多いのは……確か、よぉ。気にしなくても、いいわ……ふふふ」

他者に迷惑をかけていない、という点についてはあえて言明しない。
迷惑なら……既にかけたし、今でもかけている。
自分もつい先程、迷惑の種を打ち上げたばかりだ。
といっても、たかが凧。嫌がらせかイタズラ程度でしかないが。

「ふふ……絶望、なら……むかぁし、たくさん、味わったものぉ……
 今更、そう簡単に……落ち込まない、わぁ……
 でも、ご心配、は……ありがとう、ねぇ」

自分を心配してくれる……そんな相手も久しぶりな気がする。
その分の礼はする。

「ふふ……そう、ねえ……精一杯……生きる様は、美しい……わぁ……
 そんな生き方が、できれば……いいわよ、ねぇ…
 ふふ……そんな、素晴らしぃ、生き様に……ちょっと、ハプニングが、混ざっちゃった……みたいねぇ……ミウさんは……
 でも……ふふ、カミサマとお話なんて……いい参考に、なったわぁ……」

くすくすくす、と笑いながら感想を述べる。

ミウ > 「……あまり理解がなくて、ごめんなさいね。
 演劇というものをあまり知らないのよ。
 それも、普通ではないと言われると……余計にね」
盲目のスシーラちゃんに、申し訳なさそうに頭を下げる。
凧については不謹慎だとは思う……。
なにせ凧に描かれたイラストが過激だ。
あれを空に上げて皆に見せていると考えると、ある程度迷惑行為だと考えなくはないが、生憎ここはスラムである。
「そういえば、どうしてスラムで演劇なんてしようとしたの?
 もっと、人を呼べる場所はあるのではないかしら?」
その点については、もしかしたら劇団の拘りとかあるのかもしれない。

「絶望……ね。
 過去に、何かあったのね……」
彼女にどんな過去があったのかは分からない。
だけど、絶望というぐらいだから、相当な出来ごとなのだろう。
礼を言われたので、
「どういたしまして」
と、笑顔で返す。

「過去には絶望があったとしても、今は誇れる生き様を歩めばいいと思うわ。
 スシーラちゃんの誇れる生き様をね」
スシーラちゃんに、ウインクしてみせる。
それが良き事であると、ミウが神として願う。
「そうなのよ。嫌な事件だったわ……。
 でも、この世界に来ても、わたしはわたしよ。
 そこは変わらないわ」
クールに微笑んで、そう言ってのける。
「参考になったようで、よかったわ」

『共作者』 > 「いいの……そこは、ね……ふふ。元々、受け入れられる、幅は……せまぁい、世界だし……?
 いずれ、心で感じて……貰えるような、モノができると……いいわねぇ……」

途中から、何処に居るでもない、誰にでもなく声をかけるような伍長になった。

「ん……立ち上げた、のは……団長だからぁ……団長の、本当の考えは……私にも、わからない、わぁ……
 ただ……私は……あらゆる、悪徳が、栄えるぅ……此処だから、こそ……と、考えてぇ……
 立ち上げた、のだと思う……わぁ……
 そう……ヒトの裏側を、暴くような……そんな劇を、行うのだからぁ……」

実際の演劇にはさらなる付加価値があったので、それこそ学生街などでは出来なかった、という考えもあろう。
しかし、そんなものは二次的に過ぎない……と考えている。
この劇は、此処から出発してこそ、なのだ。

「ふふ……今、となっては……お陰で……眼が冷めた……とも言えるから、笑い話、みたいなもの、だけれどぉ……
 カミサマも、奔放なようで……ふふ、色々気を使う、のねぇ……」

くすくす、と笑う。
カミサマも人間っぽいとわかれば……そう、神も悪魔もない人間の物語であるグランギニョルの精神は正しかったのだ、と思える。

「ふふ……そう、ね……私の、誇れる……生き様を……
 いずれ、野に果て、地に朽ちる……その時、まで……ふふ……
 ええ、ミウさんも……誇れる、生き方を……なんて、私が言うまでも、ないのだろう、けれどぉ……」

くすくす、と。祝福を述べる。

「ふふ……『万物創造』のカミサマ……なんて、凄い……カミサマの、お話、だったから、かしらねぇ……?
 きっと、色々……してきたの、でしょうねぇ」

ミウ > 「普通ではない……という事は、人を選ぶ内容がメインなのね」
もし彼女達の演劇が良きものならば、理解は出来ずとも応援しようと思う。

「わざわざ悪徳が芽生えるこの場所を選ぶのだから、あなたの劇団や団長とやらには、それなりの拘りがあるのね。
 人の裏側を暴く……ね。
 一体、どんな劇なのかしらね、それは」
どこで演劇をやろうが劇団の自由だ。
それを反対する理由は、ミウにはない。
それにしても、落第街で演劇を見に行きたがるような物好きはどれ程いるのだろう?

「嫌な過去を笑い話に出来る程元気なら、安心ね」
心から安堵した優しい声で言う。
「気なんて使っていないわよ」
腕を組み、少しだけ頬を赤らめながら、顔を背ける。
ただの照れ隠しである。

「あなたの誇れる生き方をわたしは応援しているわ。
 そうね。
 わたしは言われるまでもなく、神として自分で誇れる生き方をしているつもりよ」
くすくすと笑うスーシラちゃんにつられて微笑んでみせる。

「その凄い神であるわたしの話を聞けて、光栄に思う事ね」
ついつい、いつもの癖で傲慢に言い放ってしまう。
「色々……してきたわね」
遠い目。
それはもう、創造神としていくつもの苦難があったものだ。

「それでは、わたしはそろそろ行くわね。
 今日は、あなたと話せて楽しかったわ」
優しく微笑んでみせる。
「またね、スシーラちゃん」
その後、ミウはスシーラちゃんに手を振り、転移してこの場から去るだろう。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からミウさんが去りました。
『共作者』 > 「ふふ……ふふふ、あははは……」

ああ、あのカミサマは、分かっているのだろうか。
いや、きっとわかっていない。
演劇の正体がわかれば失望されるだろうか。
それは、其の時になってみないとわからない。
失望された時には、どうなってしまうのか。
それもわからない。
それこそ。ケ・セラ・セラ、だ。

「こちらこそぉ……ありがとう……だわぁ……
 ミウさん……ふふ……ぁあ……今日、私は、また……
 色々なことに、目覚めた……わぁ……うふふ」

くすくすくすと。けらけらけらと。
笑い、嘲笑って……ふらふらと、酔ったかのように……
女はその場を立ち去るだろう。

後には、醜悪な凧の群れと一人の男の凧。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から『共作者』さんが去りました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『墓掘り』さんが現れました。
『墓掘り』 > 男は劇場入り口の近くにある階段に腰掛けた。
ここ数日は眠っていない。スポンサーへの言い訳やらフォローに寝る暇も無かった。

「――やってくれるよなぁ、一条」

ぼそりと呟く。
彼が死ぬ気で取って来た100億と『暴走剤』。
一瞬でパァだ。
やれやれ、徒労もいいところだった。

『墓掘り』 > おまけに、これからの活動もやりにくい事この上ない。
あんな事があった以上、もうフェニーチェに金を出そうなんてスポンサーはほとんど居ない。
連絡を取った所で通報されるのがオチだ。
これからの舞台監督としての仕事はほぼ絶望的。
どんなシナリオがあったかは知らないが、本当にやってくれる。

「――くくっ、くははっ!」

『墓掘り』は笑った。
腹の底から大笑いした。

『墓掘り』 > 『墓掘り』は『脚本家』を恨んではいない。
この程度で恨んでいるようでは、フェニーチェではやっていけない。

むしろ喜んでいた。
心の底から喜んでいた。
あぁそうだ、この理不尽さ、この上手くいかなさ、この危機感!
これこそが舞台だ、演劇の世界だ!

座ったまま、煙草を取り出し火を点ける。

『墓掘り』 > 「たまんねぇよなぁ」

かつて団長と居た頃を思い出す。

彼は完璧な舞台人だったが、それ故演劇に対し絶対に妥協をしなかった。
ひどい時には開演2時間前に大道具を全部バラせと命じられたし、舞台に口を出したスポンサーを見せしめにする事など度々だった。

そして救いがたい事に『墓掘り』は。
そのあまりにも危うい祭りのような『舞台裏』にこそ酔っていたのだ。

『墓掘り』 > 団長は最後まで完璧な役者だった。
舞台としてのフェニーチェは、団長の死をもってその役目を終え、幕を下ろしたと考えていい。

今やっているのは蛇足。どこまでも『フェニーチェのようでフェニーチェではない』演劇だ。

だが、それでいい。
『墓掘り』にとってはそれでいい。
いやこの男にとっては、『凱旋公演が行われなくても』良いのだ。

ただ『墓掘り』は。
『公演の準備という舞台裏に永遠に酔っていたい』だけなのだから。

『墓掘り』 > 「……さてと」

煙草を吸い終わると、男は再び落第街の闇に消えた。

ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『墓掘り』さんが去りました。