2018/01/26 のログ
■花ヶ江 紗枝 > 「で、この先は水路で船の荷卸が可能になってる、と。
大体は情報通りね。今日はスムーズに終わりそう。
……運搬が面倒だっていう点を除けば。」
それに書かれた文字を見て呆れたように肩をすくめると
一つ大きく息を吐き、刀に手を添え……
チンッという僅かな鞘鳴りの音の後、目の前のコンテナが二つに分かたれた。
その隙間から零れ落ちた内容物を確認し……
「……こちら白のルーク。聞こえるかしら。
目標物を発見したわ。発信情報から迎えに来てくれる?
そう、例によってお薬。先日の摘発者の情報通り。
船で入れるルートがあるはずだから回収係をよこして頂戴。
ええ、怪我しないように道中気を付けてね。それじゃ、また後で。」
袂から電信機を取り出し居場所を知らせる。
もう少ししたらこれの回収に誰かがやってくるだろう。
それまでの間、少しだけ休憩。
ご案内:「研究区廃棄区画、ビル群」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 「白のルークへ、要請を受諾。
間もなくそちらに到着する。」
本部への連絡から間もなくして彼女の端末に対して
ひどく単調な言葉が届けられるだろう。
やや低音の男性と思われる声、しかしどこかノイズがかっている。
ここは廃棄された研究区を違反部活が改造して
作ったと思われる施設、それ故に研究機材が揃っているのか
武器やクスリの問題も留まることを知らず
違反部活群の中では飛びぬけてたちが悪い。
聞こえてくるのは少しばかりの風の抜ける音、
照らすのは怪しげな蛍光灯の灯のみ。
そんな薄汚れた通路にて油圧で持ち上がる音と
金属同士がぶつかる音が交互に鳴る。
つまるところ何かが歩いて向かってきているという事だが。
■花ヶ江 紗枝 > 薬物の入ったコンテナを眺め、一つ息を吐くと
身に纏った装備を一度移転し解除する。
装備し続けるのはさすがに疲れるし、大体の相手なら刀だけで何とかなる。
刀だけを手元に置いたまま、壁にもたれかかる。
「まるで鼬ごっこね」
今回見つかった物は島外では高級品だが、
島内では粗悪品の部類に入る。
恐らく証拠品として回収された後、焼却破棄される。
そして燃えたはずのそれらが人知れず別の誰かに売り買いされるという
何時ものコースをたどるだろう。
「……人の事を言えたものではないけれど、
業が深いわよねぇ」
幾ら風紀委員とは言え、一枚岩などでは決してない。
むしろ風紀委員自体が割とガラの悪い人癖も二癖もある人物の巣窟だ。自分のように。
となればこんなことは割と日常茶飯事で、
深部に食い込めば食い込むほどそういったことが
嫌でも目に入る様になってくる。
「本当、嫌になっちゃうわね」
呟きと共に口の端に自嘲めいた笑みが浮かぶ。
今では自分もその一部。裁かれる側であることは間違いないのだから。
「……あら?」
そんな事をぼんやりと考えているうちに機械音が聞こえてくる。
警護のガーディアンという可能性も考えられるため、
壁から離れると少しだけ腰を落とし刀に手をかけたままその方角に目を向ける。
■イチゴウ > 照明があるとはいえ暗めの隔壁通路、
広い空間に唯一繋がっているそこから
まるで影の海から浮上してくるように
妙に丸っこい頭部と胴体、物々しい駆動部を備えた
四つの足を持つ機体が姿を現すだろう。
「IFFに応答あり、ボクは敵ではない。」
誤射の可能性を踏まえてそう一言。
大広間に出た瞬間、目の前に見えたのは
地面に刺さった隔壁扉と戦闘態勢とも取れる姿で
刀に手をかけている一人の少女。
恐らく彼女が白のルークなのだろうが
「連絡にあった通り確保物資の確認をしたい。
キミが白のルークで合っているか?」
流れからわかるようなことで合っても
逐一機械的に確認していく。
■花ヶ江 紗枝 > 「こちらは常世学園風紀委員です。
……一応形式にのっとって質問させて頂きます。
現在このエリアは押収物の警護の為風紀委員の管理下にあり、
風紀委員もしくは治安維持組織として公認されている
団体に所属するもの以外の立ち入りは原則禁止されています。
そちらの所属と階級の開示を求めます。」
発言から判断するに運搬用の応援の可能性はあるものの
確認を怠って面倒な手続きを踏むというのも馬鹿馬鹿しい。
現れた機械に対して穏やかながらも淡々とした口調で返す。
通信傍受の危険性がある以上、此方からは最低限の情報公開。
「抵抗される場合はそれ相応の対応をさせていただきます。
なおこの宣言をもって警告の代わりとさせていただきますので」
チャキっと少しだけ武器を鳴らす。
その存在を知らしめると共に、それ以上近づくなという警告。
「……早まった行動は自重してくださいね?」
少しだけ細められる瞳は機械から微塵もぶれることなく
凪いだ水面のように静かに見つめ続けていた。
■イチゴウ > 手を刀にかけるその姿勢はそのままに
訪れた四足ロボットに対して
一定の距離を取った反応を淡々と返す彼女。
それもそうだろう。この機械には所属開示という
一番重要な行動が欠けてしまっていた。
また武装は解除しているとはいえ
多脚戦車であるという事実もより彼女の態度に
影響を与えているのかもしれない
「ボクは風紀委員会、特別攻撃課所属のHMT-15。
報告された薬物の回収任務を担当している。」
視線をゆっくりと彼女に向けて上げ
こちらも形式にのっとり無機質に返す。
さらに疑われるならば本部と確認を取れとも
アドバイスするだろう。
目の前の少女が武器による音を奏でれば
相対する機械もまたキュイインと言うような
高ぶっていくモーター音と共に身構える。
「安心してほしい。
交戦規定は遵守している。」
静かに見つめる彼女の視線に交差するように
送られるのは感情など灯っていない
ただ光を反射するカメラレンズ。
■花ヶ江 紗枝 > 「……聞こえていたわよね?
そう、配属、位置情報共に一致。
確認ありがとう」
インカムから聞こえる声に返し、構えを解く。
暫く現場から離れていた間に前線組も大きく入れ替わっている。
いちいちこんな確認をしなければいけないというのも
それはそれで面倒だとも思う。
「ごめんなさいね。これも一応必要なお仕事だから。
この界隈は特化型の異能者も少なくないからね」
身内と判断した途端、雰囲気がかなり柔らかくなる。
片手は刀に沿えているものの最早癖のようなもの。
「噂は聞いているわ。
はじめまして、イチゴウ君……だったかしら」
どうやら彼女の中では戦車であろうと後輩に分類されているなら
あまり関係ないらしい。
■イチゴウ > 「何も謝ることは無い、
むしろ謝罪するのはこちらの方だ。
処理上のミスを許してほしい。」
ロボットに搭載されているニューロAIは
人間の脳を模倣して設計されており
従来のAIより柔軟な分、ミスもしてしまう、
だからと言って許される訳ではないが。
一応、彼女の敵対を解いたと判断すれば
確保されている薬物に向かって四つの足を進める。
「ご名答。そういうキミは・・・。
もしや移動要塞、戦艦とも評されている風紀委員か?
優秀な戦力だと聞いている。」
自分の名前を耳に入れればイエスだと反応。
その後仕事片手間にデータベースを広げ
彼女の情報に関するものを照合してみる。
裂かれたコンテナから姿を見せる薬物を
細かな電子音と共にスキャンしながら
妙な談笑を繰り広げるだろう。
■花ヶ江 紗枝 > 「そう。
移動要塞とか浮沈軍艦とか……
あまり女の子らしい二つ名ではないけれど。」
思わず苦笑する。
確かにぴったりの二つ名ではあるものの、どうにも独り歩きしている感がある。
最もお陰で油断も誘いやすいのだから実益がないとは言わないけれど。
「普通に名前で呼んでも良いのよ?特別に。
……ところでこの量を一人で持って帰るのは厳しいと思うのだけれど
何か伝言でも預かっていたりするのかしら」
この倉庫自体結構な広さがあるのだから
これ全部を持つのは流石に物理的に難しいのではと首を傾げてみたり。
■イチゴウ > 「通り名や性別と
戦闘能力は別問題だ。」
彼女のやや満足していないような文言に対し
ロボットはきっぱりとも言える口調で返す。
あくまで視点は機械的。弱そう強そうではなく
強いなら強い、弱いなら弱い、それだけのようだ。
「了解した、では紗枝。
その点は安心してほしい。現在遠隔コントロールで
軽武装の無人高速艇を二隻こちらへ向かわせている。」
名前で呼んでも良いと言われたのでそれに甘える。
それでもいきなり下の名前で呼ぶのはどうかと思うが。
また水路があるという情報はきちんと把握していたようで
輸送手段はきちんと用意してきた模様。
パワーのある戦車と言えどサイズの関係もあり
この薬物全部持っていくのは流石に骨が折れる。
「スキャン終了。薬物名、暴走剤、
効果、保有異能の強化。
最近この系統の薬物の報告が相次いでいる。」
談笑の中でもきっちりと仕事はこなし
スキャンが終われば仲間にも聞こえるように
結果を報告する。最後の一文は報告なのか愚痴なのか。
しかしながら違反部活全体として活動が活発になっているのも
また事実で。
■花ヶ江 紗枝 > 「花乙女ーとか虹色の舞姫ーとか
少し歯の浮きそうな二つ名もたまにはうらやましくなるものよ」
判ってとは言わないけどねと笑いながら口にする。
実際口で言うほどそれらを羨ましく思っているわけでもない。
「この程度の品質なら無理して奪還もされないでしょうし
軽装備の小型艇なら問題なさそうね。
とは言え……暴走剤、か」
最近特に多いのは、やはりこの島自体も少々不穏な空気が漂っているからかと思う。
特に戦闘は激化するばかりで、通り魔や暗殺事件も一向に減る気配を見せない。
所詮学園の治安維持委員会に過ぎない風紀委員ですら、それらとの交戦経験が無い方が珍しい程だ。
そんな中、不安に駆られれば……
「こんな粗悪品でも頼りたくなる子は多いのよね。
外はもちろん……島の中でも。」
零れ落ちた一つを拾い上げ、そのまま軽く力を込める。
パシッという軽い音と共に錠剤は粉々になり、地面へとまるで雪のように落ちていく。
「この島は体のいい実験場だもの。
この施設だって、きっとそんな研究をしていた所だと思うわ。
だから余計、辛くなるんだわ。きっと」
何処か憐れむような、そして同情するような口調で
それを静かに眺めた後、踵を返す。
これが島外に持ち出されれば、それはそれで大きな金額になっただろう。
けれどこの島ではそう、学生に安く売りつける程度。
「持って生まれた側の私が言うのも少し傲慢かしらね。
あなたはどう思う?」
そんな問いをふと投げかける。
■イチゴウ > 「つまり、ロマンというものか。」
効率性しか評価基準のない機械にとって
着飾るという行為はとても不思議なもの。
これが情報にあるアレなのかと
大きく相槌を打ちながら一人で勝手に納得している。
「異能者として、キミも欲しいと思うものなのか?」
何かを内に秘めている様子で彼女は暴走剤のタブレットを砕く所に
横槍を入れるかの如くロボットは頭を傾げて
小さく漏らすように紗枝に問いかける。
その言葉に悪意は無い、ただの好奇心からの行動だ。
「薬物を使い自らを強化するも
その行為自体を拒むもそれは自由だ。
しかし自由には責任が伴う。
たまたまボクを運用している者が薬物を
弾圧する側だっただけだ。」
紗枝から投げかけられた問いに対して
少し考え込む素振りを見せてから淡々と言葉を並べる。
そこではロボットは薬物の服用を手段として
見ているようで絶対悪としては見てない事が
わかるだろう。
■花ヶ江 紗枝 > 「そうそう、そんな感じね。
綺麗な通り名が付く子っていうのはだいたい有名になるものだから。
そうなれば前線に出てくるだけで威圧や鼓舞になるもの」
そうなれば効率が上がるでしょう?と判るであろう理由も付け加えて。
そうなれば無駄に戦わずに済む場面も増えるかもしれない。
「こんな粗悪品じゃ私には効果はないから。
ただこれを使いたいと思う子達の事は理解できないわけではない。
それだけよ」
是とも否とも取れるようなそんな返事を返しつつ微笑む。
彼女にとって力なき者、持たざる者は
……そもそも戦うべきものではない。
「責任……そうね。
いつの時代もついて回る言葉よね。
でもたまに思うのよ。
今、求められている責任が果たして
少し先の未来でも求められる事なのかしら……なんて。
ふふ、風紀委員としては考えるべきではない事かもしれないけれど」
退屈な話をしてしまったわねと首を振る。
こんな話、誰かに聞かせるようなことではない。そう思い返して。
「船が付くのは早かったわね。
積み込みは手伝うわ。こう見えて力は有る方なの」
そう言いつつ片手でひょいとコンテナを持ち上げた。
■イチゴウ > 「確かに、そこに繋がるのか。」
ふむふむといった様子で紗枝の話を聞きこむ一体のロボット。
最後に効率性に繋がっていると分かれば
理解が完全に追いついたようでロマンという要素を
自分の中で一つの形にできたことに少しなりとも喜びを感じている。
「しかし粗悪品というのは時として正規品よりも
世の中に与える影響は大きい。
安いうえに量産が利くのはこの上ない武器だ。」
優しく微笑む彼女に反してロボットは難しい調子で
合成音声を鳴らす。
世界で最も人を殺している武器は
西欧諸国の高性能な自動小銃ではなく粗悪なコピー品、
このような事柄と似通ったものを感じたのだろうか。
「ボクが思うに責任とはいわば自由に対する対価、
本人の意思とは関係なく自動的に発生する。
求める求められるの問題では無いように考えるが・・・。」
常に論理的な帰結を目指すAIにこの題目は
少々の考え方のズレを見せたのだろう。
言葉を並べるにつれてその口調を濁らせていく。
そんなことをしているうちに
現場にデータリンク下に置いていた高速艇が到着する。
「興味深い。さらに情報によるとキミは
巡洋艦の主砲級をも防御するらしいが
どうやって防御するんだ?」
紗枝がその外見に反してかなりの重量であるはずの
コンテナを何の苦労も無く持ち上げれば
ロボットはグイっとシャーシを彼女の方に寄せ
疑問を持った様子。
この島においてはあまり珍しいものでもなかったりするが。
また彼女は付随してかなりの防御力を持っているらしい
ロボットが例に挙げた艦砲でさえも防ぐようだ。
初速は大したことないとはいえ大口径であることには変わりない。
このロボットの新鋭装甲でもノーダメージとはいかないだろう。
■花ヶ江 紗枝 > 「私が言うのもなんだけれど、
人って本当に不可解な生き物よね。本当に」
私は持って生まれた人間だもの。
言葉だけで言えばともすれば傲慢に聞こえるであろう言葉も
どこか寂し気に聞こえたかもしれない。
「そういう風に考えると少し新鮮な気もするわね。
……あら、見てみたいなら見せてあげるけれど、
コンテナを積みこんでからでもいいかしら」
そんなに面白い物ではないわよと小首を傾げながらも
てきぱきとコンテナを積み込み、固定ワイヤーをかけていく。
「まぁ真正面から受け止めようなんて、訓練か非常時か試験の時しか
やらないから……見ていてあまり面白くないかもしれないけれど」
■イチゴウ > 「同意する。わからないからこそ面白い。」
つぶやくような紗枝の言葉とは反するように
刻み込むようにしてはっきりと告げられた機械音声。
この一言が、このロボットの考え方が何たるかを
端的にかつ効果的に表している。
「敵の攻撃をどう受け止めるかというのは
関心のある事柄だ。ボクの場合は装甲に
通電して受け止めるが。」
顔を左右に振って自身の前両足を見つめる。
残念ながらその装甲はシャーシと一体化しているため
分かりやすく目に見えるものではないが
その防御力は確実に見た目以上のものである。
「そうだ。
一つ補足しておくがこの無人高速艇に確保されているのは
積み荷のスペースのみで人が乗れる空間は無い、
帰りは徒歩になる。」
自身も前足の鋏でコンテナのジョイント部を掴み
彼女に負けず劣らず軽々と持ち上げ運搬しながら
割と衝撃の事実を明かすだろう。
■花ヶ江 紗枝 > 「確かに君は目に見えて堅そうだもの。
多少の軽火器なら大丈夫そうっていう安心感はあるわ。」
見た目以上に硬いなら、その分守る必要がないとも言える。
他にリソースが割けるとすれば本人としても、周りとしても有難い。
そう考えるのは無意識に常に何かを守るべきと考えているからか。
「……え、帰れないの?
折角帰りは楽できると思ったんだけれど、ざーぁんねん」
これは少し残念なお知らせだった。
歩いて帰るにはこの辺りは殺風景すぎると口をとがらせながら
コンテナを積み終え、軽く手をはたく。
手袋に覆われたその手は汚れてはいないので気分に過ぎないけれど
重い物を運ぶと何故かやりたくなる。
「此処、結構広いのよねぇ……」
最早がらんとなったあたりを見渡す。
元々は隔壁で封鎖するような試験場なのだから当たり前かもしれないけれど。
■イチゴウ > 「この装甲は軽火器どころか対戦車火器や
上級魔術の直撃にも耐えうる代物だ。
戦艦の主砲を軽く超える超音速対艦ミサイルや
それこそ衛星砲はどうかと言われればどうも言えないが。」
勝手に一人で考え込んで声を濁らせる。
様々な可能性を考慮してしまうのはロボットの悪い癖だ。
しかしロボットが喋る通りにこの機械の装甲は
かなりの防御力であるが受ける内に効果は低下していき
リフレッシュが必要。異能や魔術に頼らない科学技術は
必ず弱点が伴ってしまう。
「こういう時に人はボクの背中を見て
乗れないかと言い出す。
ボクは戦車であってタクシーではないのに。」
落胆した様子で残念がる彼女を見上げながら
そんな一言。わざわざそんな事を言う事から
タクシーにされた経験をロボットは持つのかもしれない。
実際その通りである。
「元々、面積が広いうえにコンテナが撤去されたことも
関係している。」
不意に彼女の顔をまじまじと見つめ上げる。
もしかしたらちょっとばかり異能が見られるのではないかという
淡い期待の視線である。
■花ヶ江 紗枝 > 「あ―……衛星砲クラスは流石に私も無理だと思うわ。
戦略兵器まで行くと個人で対応できるなんてそれこそ化け物よ」
それこそ存在がもはや兵器といった存在になる。
……もっともこの島においては存在しないわけではないのが恐ろしい。
厳密な意味では片足を突っ込んでいる事も否定できないし。
「むしろミサイルなんかは得意分野だから何とでもできるけれど……
君の場合高火力を一発直撃させるよりも中火力のものを
複数当てた方が結果としてダメージが通りそうね」
最もこのロボット相手に計画通り戦うなんていう事が出来る相手も
そう多くない事を……願いたい。色々な意味で。
「あら、タクシー替わりもできるなんてそれはそれで素敵じゃない。
私としては運んでくれても大歓迎なのよ?」
くすくすとからかう様に笑いながら背中を向け、中心辺りでくるりと振り返る。
腰の機甲刀に手を添え、セーフティーを解除する。
瞬間、纏う空気が穏やかな物から豹変した。
「それじゃぁ、少しだけ、ね。
とりあえず適当に撃ってみるといいわ。
それに応じて対応するから」
ただ静かな空気のまま、じっと見つめて微笑む。
相手がどんな武装を所持しているかの確認もせずに言う辺り、
自信の表れとも言えるかもしれない。
■イチゴウ > 「いつでも主は共に。」
ロボットは建物の外に見える綺麗な夜空を見上げ
不意にそう呟く。その言葉は彼女にも自分にも向けられたものでもない。
強いて言うのならば空を超えて宇宙へと。
「・・・。」
彼女が冗談めかしてからかうと
ロボットは正面を向いて考え込む。
何やらやってしまった感が溢れ出てしまっている。
「了解、試射につきモード変更は不要。」
彼女がロボットの好奇心にわざわざ答えるために
刀を構えてくれるとロボットはバックステップで
少し距離を取る。同時に歪むように出現したのは
背部に背負われた大きなガトリング砲。
口径は20ミリ。正直このサイズのものに積むには大きい。
そして多砲身特有のスピンアップを始め
3発の砲弾を発射する、分間2000のレートに放たれるそれは
まるでセミオート射撃のように聞こえるだろうか。
また戦闘ではないので弾は普段よりも弱い弱装弾。
別に彼女の能力を軽視しているわけではないが
だからといって同僚に高威力弾をぶつけるのも間違っている。
あくまで防御手段を見たいだけの事。
■花ヶ江 紗枝 > 「ガトリングって柔らかい相手には良い武器よね
一撃当たればいいっていう相手には特に」
向けられた銃口に対して小首を傾げるとゆっくりと歩き出す。
無数の弾丸をまるでそよ風のように避ける気配すら見せない。
真横に降りしきる銃弾は彼女を中心にした一定範囲に入ったところで
青白い透明な被膜のようなものにぶつかり
紫電と共にバチバチと四方へとはじけ飛んでいく。
「けれどこれでは少し威力不足ね。
敢えて特別に防御するまでもないわ。
装甲車相手に豆鉄砲では無意味だもの
まぁ……弾種も影響はしているけれど」
バチバチと耳障りな音の中ついっと手を伸ばして
弾けた弾を空中でキャッチし、まじまじと見つめる。
そして20㎜ガトリングの突破力を豆鉄砲と言い切った。
当然のように掴んだ手袋には汚れ一つもない。
「重金属弾頭とか積んでいたりはするかしら?」
そしていう事がかなり物騒だった。
■イチゴウ > 「意外とそうでもない。
20ミリを超えるガトリング砲は対装甲にも有効だ。」
無論彼女の言う通りそのレートを生かした
ソフトターゲットの制圧は目を見張るものがある。
しかし大口径ともなれば主力戦車の正面でもなければ
大抵の装甲車両はボロボロにするだろう。
「これは驚きだ。量子レーダーによる反応では
かなりの密度の超自然エネルギーが発生している。
中々見られるものではない。」
弱装弾とは言え人体程度なら引き裂いてしまうであろう
20ミリ弾を彼女の周りに展開する
綺麗な防御スクリーンとも形容できるような物体が
防ぎとめてしまう。その安定した防御力は
やはり委員会で評価されているという事実に裏付けられている。
「積んでいるには積んでいる。
そもそも主に使用するのは劣化ウランを利用したAPDS弾、
分かりやすく言えば徹甲弾だ。」
彼女の意外でかつ危なっかしい質問に対して
律儀に答える。流石にたった実証実験程度で
使うには危なすぎる代物であるが・・・
■花ヶ江 紗枝 > 「うーん、これ自動発動なのよねぇ……
まぁこれ紫外線とかも受け止めてくれるから意外と便利なのよ?夏の海辺とか。」
嵐のような弾丸の中、確実に間違った運用法を少しうれしそうに公開している辺り、
本当に気にもかからないレベルなのだろう。
実際意識して止めているわけでもない。
「そうね、此処まで綺麗に展開できるのは珍しいかもしれないわね。
普通に同じことを再現しようとしたらむらが出来てしまうもの。」
むらが出来ればそこから貫通し、そのダメージによってさらにむらが出来……
やがては崩壊に至る。
しかし彼女の防御被膜はほぼ完ぺきに均等であり、
しかもある程度自身の望む距離に変えられるようでもある。
「君の記録では君は割と重武装だったと記憶しているのだけれど……
こちらは要塞砲程度なら正面で止めた経験はあるから、
そんなに遠慮しなくても大丈夫よ?あれは非公式になっているけれど」
割とノリノリだった。
■イチゴウ > 「そこまで完璧だと生命活動に必要なものまで
止めてしまわないか心配だ。」
楽しそうに自身の異能を語る紗枝を尻目に
そのあまりの隙の無さにロボットは別の心配まで
抱いてしまっている。
「では少しでもダメージを与えられるよう努力しよう。
このことは非公式、「ナイショ」だ。
APDS弾へ移行。」
そう判断したのは実際に噂の彼女の防御を
目の当たりにしたからか。
もし万が一にも同僚に対して徹甲弾をぶっ放した事が
バレたら何を言われるかわからない。
任務は既に達成して効力を失っている以上
ロボットを縛るものはあまり無かったりするのだが。
気を取り直して機関砲弾を弱装弾から
実戦用の徹甲弾へと切り替える。
ソフトターゲットは完全にオーバーキル、
装甲目標や建造物をも容易に砕く威力だ。
それを数秒間彼女に、いや彼女の防壁へ向けて連射する。
それは機関砲というよりも目視不可なレーザー照射に
近い印象を受けるだろう。
またロボットはここで一つ工夫している。
普通に撃ったのでは全く効果が無いのは予測可能、
そこで自身に備わるFCSを使って同じ部位だけを狙い続けて
疲弊を狙う作戦を取る。
その命中精度は正確無比、距離の関係もあり数cmのズレもないだろう。
■花ヶ江 紗枝 > 「……昔空気を遮断してしまって死にかけたわね。懐かしい」
実際結構色々と制約はあったりもする。
正に潜水艦で動けなくなったような状態に陥った際には真面目に死を覚悟したほどだ。
結果コントロールする術を学んだわけだけれど。
「はーぃ、ナイショ、ね?」
人差し指を唇に当て、二コリとほほ笑む。
弾種が変わると今までバチバチと電気のような音を立てていた障壁に
次第にクリスタルグラスを弾く様な高質な音が混ざり始める。
一瞬怪訝そうな顔をした彼女だったが、そのからくりにきが付くと感嘆を表情に浮かべた。
「凄い、全然ずれてないのね。
一撃で突破できなくてもこれなら確かに抜けれそう。
……ならお姉さんも少し本気出しちゃおうかしら」
そう呟くと笑みを消し、意識を集中させる。
途端に今まで一か所に当たっていた弾丸が急にバラけて障壁へと当たり始める。
それは飛来途中に急速に角度を変え、まるで当たる前に弾かれるよう。
「……空間指定、掌握。」
そうして腕を前へと振り下ろす。
その瞬間弾丸は四方八方へと飛び散りはじめるだろう。
「距離層に極小障壁の設置による弾丸の分散、あとは砲撃での迎撃ってところかしらね」
センサーには空中の至る所に障壁が展開され、
それに直撃したり掠めたりした影響で
弾丸の軌道が逸らされている光景が映るだろう。
障壁自体は極小なものでも一定強度の物を複数空中にばらまき、
わざと接触時の衝撃で崩壊させる事で弾道を予測させずにコントロールする。
「連射だとこれが一番楽な方法かしらね。
あ、一応飛ぶ角度は此方でも計算済みだから安心して頂戴」
流石に集中力を必要とされるのか先ほどに比べれば真面目な声。
弾丸それ自体の性質を利用した目標の分散。
……秒間1~2発ならば問題にならないだろうけれど、
流石にこの弾数は集中を切らすとコントロールできない。
■イチゴウ > ロボットが考え出した策は一応効果を発揮したようだ。
だが彼女も自らの能力を使いこなしている身、
機械の予想を遥かに上回る運用を見せてきた。
発射された雨のような砲弾の弾幕は
あちこちに展開された障壁にぶつかって
次々と角度を変えられ着弾位置がばらけてしまう。
しかしグラスを弾くような綺麗な音と
計算しつくされた反射によって描く弾頭は
何とも言えないような雰囲気を醸し出していて。
「現状ではこれがボクの出せる最高火力だ。
噂に違いは無い、このような人物が
任務におけるバディならば心強いだろう。」
ロボットは背部の機関砲の射撃を止めると共に
もう一度歪むような発光と共に今度は消失させる。
あまり撃ち過ぎると痛んでしまう。
彼女の芸術的なまでの防御を貫くには現状の火力では
圧倒的に不足している。
火力が出せない非戦闘モードではやはり無理があるが
戦闘モードこそ任務外で出すことは不可能だ。
「さて、そろそろ本部に戻るべきでは?
ボクも同行しよう。」
任務を達成してから結構な時間が経っただろう。
上層部が何をしているんだと
不審な目を光らせていても何の不思議もない。
■花ヶ江 紗枝 > 一人と一機しかいない空間に、弾丸が地面や壁を穿つ音と
グラスを弾くような音が反響する。
弾き飛び様々な場所に何度も角度を変えて飛んでいく弾丸に彩られた空間は
さながら空中に描き出された万華鏡のよう。
それをなんだかとても美しいと思った。
銃撃が止むと同時にその場に静寂が戻る。
それは冷たい空気と一緒に沁み込むような心持で……
「……!ふふ、お粗末様でした。
君の本気が見られる時が来るときが楽しみね。
やはり誰かに背中を預ける以上、その実力は知っておきたいもの」
一瞬それに魅了され、動きを止めるものの
すぐさま我に返り何時もの笑みを浮かべた。
改めてやはり目の前の戦車は戦うために作り出されたのだと実感する。
対象がヒトであればあれほど反動の大きい物を
正確に集弾させる等という芸当はほぼ不可能だ。
「あら、そんな時間?
怒られちゃう前に帰らないとだめね。
……ふふ、さっきの小手調べは、二人の秘密、ね?」
再び唇に人差し指を当て、妖艶な笑みを浮かべる。
その言い回しが気に入った様子でくすくすと笑うと
入口に向かい数歩歩き、振り返る。
「行きましょう?ぼーっとしていると”おいていっちゃう”わ」
そう告げまた再び歩き出して。
■イチゴウ > 「もし任務で共に戦う事があれば
今日の実証は大きな参考になる。」
正直、風紀委員会の主力級とも言える委員に
遭遇できたのは幸いというべきだろう。
確かに移動要塞と言われる所以が分かった気がする。
今日拝見したのは防御性能だけだが
その通り名を冠している以上攻撃性能も決して
低いものではないだろう。
「その通り、二人だけの秘密だ。」
優しくからかうように振る舞う紗枝に対して
自分も少し声を小さくしてそう呟く。
彼女の態度を見て自身の振る舞いも変えようと思ったのだろう。
「...!待ってほしい。」
軽い足取りの彼女に危うく置いて行かれそうになるも
前右足を彼女の方へ向けそう催促すると
入り口を超える頃には追いつき共に歩む形になるだろう。
ご案内:「研究区廃棄区画、ビル群」から花ヶ江 紗枝さんが去りました。
ご案内:「研究区廃棄区画、ビル群」からイチゴウさんが去りました。