2018/03/11 のログ
ご案内:「とある違反部活の拠点」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 暴走剤。
それは自らが持つ異能を強化させ大きな力を
得られる可能性を手に入れるもの。
中には異能を持たない一般人でさえも
異能の発現を夢見て自らの体内に沈みこませると言う。
力というものはいつの時代も人を魅了するもので
表・裏問わずこの薬物の出入りは後を絶たない。
ゆえに暴走剤を扱う組織が大きくなるのは必然と言える。
そんなとある巨大組織のとある拠点。
この組織は落第街のヒエラルキーでも上位に位置している
存在であり多数の拠点を抱えている。
一般的な違反部活であればそう手に入れられないであろう
拠点のビルの根元に10人、いや20人くらいの
構成員が地面に転がっており個々の身体から
溢れる赤黒い液体が途中で連なり川のようになっている。
「任務終了。これより拠点の捜索に入る。」
屍の中心に居るのは特別攻撃課が誇る
四つの足を持った多脚戦車。背部に背負われた
アンバランスに大きいバルカン砲が威圧的な姿を演出しており
拠点の制圧を終えたであろうロボットは
屍を除けながら何か情報は無いかと散策を始める。
巨大組織だけあって構成員の人数が多い事もあり
随分派手にやってしまった。もしかしたら
目立っていたかもしれない。
そんなことを考えながら落第街に居がちな
強力な個人への警戒を強めつつこの広い拠点を
一人で捜索するには時間が掛かると踏み
一応他の風紀委員の派遣を要請してみる。
■イチゴウ > ロボットにとってはいつも通りの任務でしかない。
単身で拠点に突っ込んで弾丸を身体に浴びながら
構成員を皆殺しにして組織の情報をかっさらう。
下された指令に意思は関係なくただ純粋に
遂行するイチゴウはそんな兵器の鑑だ。
そう、今日もいつも通りの変わらない任務なのだ、
風紀に属してから任された幾多の任務と同じく
ボクは指令を遂行して自由行動へ移る。
その思考の合間に一片の薄気味悪いノイズが
走った時にはもう既に遅かった。
次の瞬間にまるで天地がひっくり返ったような衝撃と
他の音を一切寄せ付けない凄まじい轟音、
そうして爆炎が拠点全体を包み込む。
不測すぎる大混乱にロボットはただ吹き飛ばされないように
四つの足を地に踏ん張らせる事が出来たのみであり
瞬く間に崩落したビルと砂煙に支配された
視界情報からは何も認識することは出来ず
しばらくの間、動きを止めざるを得なかった。
遠くから聞こえ、近づいてくるのはのは時代錯誤的な
蒸気機関の音、そして獣の遠吠えのような汽笛。
鋼鉄同士が奏でる重奏がその地面を轟かせる。
■イチゴウ > 煙が晴れて見渡すロボットの視界に入り込んできたのは
十両ほどに連なる巨大な列車。二つの線路を占有し
それぞれの車両に数多もの砲台を兼ね備えたその姿は
差し詰め装甲列車といったところだろうか。
動力車と思しき車両から立ち上げる煙は
まるで飢えた獣の吐息のように空へと昇る。
「なるほど、合理的だ。」
突如現れた巨大な鋼鉄の獣を前にロボットは
駆動モーターを鳴らしながらバルカン砲をスピンアップさせ
状況に似合わない率直な感想を述べる。
どうやらこの巨大組織が覇権を握っていた背景には
この巨大兵器の存在があったらしい。
廃線となった線路を占拠し、
嗜好品を大量輸送しつつ他の違反部活を
その圧倒的なまでの火力で叩き潰す。
そしていくら競合する他の巨大組織と言えど
攻撃機や爆撃機といった軍用航空機を兼ね備えた組織など
この島には存在しない。
つまりは天敵のいない陸の王者だ。
「本部へ通達、敵勢力の未確認兵器を確認。
これより交戦を開始する。」
相対する兵器は余りにも小さい戦車だ、
しかしそのカメラは鋭く線路に鎮座する化け物を見つめていた。
十両に重ねられた車両は恐らくそれぞれが別々の役割を担っている。
ターレットが乗せられた車両は近接防御であり
巨大な305mm砲が乗せられた車両は遠距離砲撃用だろう。
だがパラボラアンテナのようなものが乗っただけの
何の武装もついていない車両もある、これは分析し切れず用途不明。
とりあえずあの化け物の活動の源は真ん中の動力車だろう、
そう判断したロボットは圧縮空気を利用して
横方向に砂をまき散らしながら勢いよくスライドを開始する。
それを追うかのようにして装甲列車は
備えられた大量の30mm機関砲から砲弾を
小さなロボットに対して嵐のように降り注がせる。
■イチゴウ > 命中弾を可能な限り避けるため右へと左へと。
エアスラスターを使ってその外観からは想像もつかないほどの
高機動を繰り出して倒壊した建造物の瓦礫の間を
華麗に滑りぬける。
しかし砲弾の嵐はもはや素早さだけで凌げるものではなく
どうしても当たってしまう弾はシャーシ全体に
張り巡らされたMBT級とまで謳われる
この電磁装甲で溶かし弾いてしまう。
そうして回避しながらロボットは火器管制装置を使って
動力車への照準線を計算して定め
ロックオンした後は覚悟を決めたかのように
地面をどっしりと踏みしめてバルカン砲を高速回転、
束ねられた禍々しい砲身から獰猛な咆哮と共に
装甲を打ち抜く20mmのAPDS弾が一本の線を描きながら
動力車を終点にして繋げられる。
無論、巨大な兵器もただでは受けない。
近接防御用の車両から次々と照射されたのは
何と魔力を利用したレーザー。
魔術レーザーは砲台と化している多脚戦車にではなく
自身へと降り注ぐ徹甲弾に照準を合わせ
次々と焼き落とそうと試みる。
しかしロボットに搭載されているのは
普通の機関砲ではなくガトリング砲。
この形式から生み出される圧倒的なまでの発射速度は
目の前の装甲列車の迎撃性能を上回っていく。
多くの弾を迎撃するも遂に自身の心臓部ともいえる
動力車に鋭い鋼鉄の矢の着弾を許してしまう。
凄まじい速度エネルギーをもった徹甲弾は
装甲列車の装甲を打ち砕きその動作を停止させる。
そうなる筋書きだった。
動力車には傷一つついていない、
まるで着弾した事実がかき消されたかのように。
その原因は直後に行った精密スキャンですぐにわかった。
「魔法装甲。」
静かに機械は呟いた。
装甲列車に施されたのは均質圧延装甲を高次術式で
コーティングしたものであり
この装甲はあらゆる物理攻撃を”完全”に無効化する。
軍事部門に置いても最先端に近い技術を
何故違反部活が所有しているかはこの場において重要ではなかった。
つまりロボット自身に打てる手が無いのだ。
一線級の魔術または異能を使える者が
居なければこの化け物の心臓にダメージを与える事すら出来ないのだ。
■イチゴウ > 「本部へ、魔術師部隊によるCASを要請する。」
自分だけではどうにもならない。
そう帰結したロボットは人間のように
自身の力の無さを嘆くのではなく
機械的に思考をスイッチさせて支援を求める。
風紀委員会には高い魔力を持つ戦闘員が多く所属している、
彼らの魔力を利用した攻撃ならばあの装甲に傷をつけてくれるはずだ。
そういった憶測を走らせる多脚戦車に対して
まるで弱者を一方的に踏みつけるような無慈悲な攻撃は止まらない。
「ロックオンを検知。」
後ろから数えて二両目の車両から垂直にどんどん打ち上げる鉄の矢。
それが運動エネルギーをフルに叩き込んで
装甲車をぶちのめすCKEMとよばれるミサイルと
認識するのに時間は掛からなかった。
噴煙をあげながら10発近く撃ちあがった矢たちは
空中で軌道を変えて瓦礫を遮蔽物にしているロボットへ
突入を開始する。
再度、スラスターを使って機動戦を展開するも
近距離から放たれた小型ミサイルの回避は難しく
大きく横に誘導を揺らしながら辺りに散らばる瓦礫へとぶつけるが
ミサイルを回避するたびにそれらが
一つ二つと弾け飛び貴重な遮蔽物を消費してしまう結果となる。
しかし物語において絶望の後には希望が来るものだろう。
回避するロボットの真上、夜空を優雅に列を組み
飛んできたのは風紀の魔術師部隊。
彼らは目下に居座る巨大な鉄塊を確認すると
魔法陣を展開して強力な魔弾を叩き込む。
それはまるで綺麗な彗星のように綺麗に輝き
悪の存在を浄化せんとしているようで。
だが悪が浄化されたことがこの世界で一度たりとも
あっただろうか?
現実において正義が勝つと誰が決めたのだろうか?
正義の味方が放つ眩い光弾の雨は
装甲列車にたどり着く前に数十メートル地点で
何の前触れもなく変容も無く本当の意味で
突如消失してしまう。魔術師たちも動揺は隠せなく
綺麗な列を乱して飛行速度を低下させると
それを尻目に巨大な鋼鉄の化け物はまるであざ笑うかのように
魔術レーザーを上空へと一斉に照射させる。
紫のような赤のような禍々しい色を持ったその光線は
飛来した魔術師たちを一人残らず一瞬で焼き潰して
バラバラにしてしまう。
「理解した。」
ロボットは気付いた。
何故、魔法攻撃に弱いはずのこの兵器が
魔法攻撃を無力化することが出来たのか。
目に当たるカメラの焦点は先程まで用途がわからなかった
パラボラアンテナが備わる車両で結ばれていた。
そこで使われていたのはこのロボット、イチゴウが
備えているものと同じIFGSと呼ばれる超自然現象を
無効化させる装置だったのだ。
しかもその出力とサイズはイチゴウのものより大きい。
ゆえに一瞬の間だけではなく常時、
異能や魔術を無効化するフィールドを張る事が出来る。
目の前に存在するこの巨大兵器は異能や魔法を弱点と
しながらそれらを完全に無効化する術を持つ走る無敵要塞といえる訳だ。