2018/09/06 のログ
江風 白 > 「富豪特有の余裕って奴なんですか?でも何もない僕に今のこの仕事を辞めるわけにはいかないんですよ。」

相手に命中した数本の槍。前まであんな魔術を使っていなかったが。
彼もそれなりに成長しているということだろうか。

「んふふ、やはりそうきますか。想像通りだ!」

無数の弾丸が自身を貫く直前、最後の一本の血液瓶を高く放り投げれば、彼の体はバスバスと弾丸の雨をまともに受ける。
放り投げられた瓶は、組み込まれた術式により破裂し、中身を空中でまき散らしていく。

「はっ...はぁ。なんで頭に当ててくれないかなぁ...。意識があると滅茶苦茶痛いんですよ...?」

過呼吸になりながらも、指先を相手の方へ向ければ、飛散した血液は瞬時に硬化し、無数の鋭い破片となって相手の頭上から降り注ぐだろう。だがこれは相手への足止め。
それと同時に最早使い物にならなくなった右腕を供物とし魔力の塊を作り出す。

「はぁ...痛ッ...死んだ方がマシ?僕を殺してから言ってくださいよ、そんなこと!」

魔力の塊は彼目掛けて射出される。
形状も歪で、コントロールができない程の魔力。それ故に単純な威力も破格。

神代理央 > 「選択肢があるが故の余裕というものだ。まあ、裏社会で生きる事も選択の一つだ。貴様にはそれを選択する自由があり、私がそれにどうこういうつもりは無い」

別に風紀委員だからといって、更生を是とする訳でもない。
そういう生き方をする者を否定する事はしないし、その生き方が間違っているとも言わない。
己の選択に責任を持てばそれで良い。それが、己の信念なのだから。

「死ねずとも痛みがあるというのは難儀なものだな。機械やアンデッドの方が、痛みが無いだけマシやも知れんぞ?」

と、高慢な言葉を返しながらも放たれた血液の破片に対処する為魔力の密度を上げる。今の所、習得したばかりの収奪の魔術は使用しなくても済んでいた―のだが。

「死人に何を言うてもつまらんだろう。だが、些か面倒な事をする…!」

此方に放たれた魔力の塊を防ぐ為、追撃用に召喚しようとしていた異形達を急遽己の前方に召喚する。
鋼鉄の壁と化した異形達はその魔力の塊を受け止める事には成功したものの、全てを受け止める事は出来ずその余波が此方に直撃。更に、砲撃を続けていた異形の一部も受け止めて拡散した魔力によって行動不能となる。

「…っ…。全く、折角埃を避けていたというに」

半端な事をせず、防御面に魔力を回していた為に何とか無事で済んだ。だが、軍服をモチーフにした特注の制服は、そこかしこが破れ、煤け、哀れな姿になっている事だろう。

「殺しはせぬし、殺せぬのだろう?ならば、何度でも再生し何度でも蘇れば良い。釣りはいらぬ故な」

残った異形達が拠点への砲撃を止め、その砲塔の全てを彼に向かって放つ。人間を容易くミンチにする機関砲。バリケードを大地ごと吹き飛ばす重砲。延焼力を高めたナパーム弾。様々な火砲が彼一人に放たれ、更にその間に新たな異形が自分の周囲に召喚されていく。

江風 白 > 「へぇ、でも風紀委員に選択の余地なんてないと思うんだけどね。あれ?もしかして僕の方が自由だったり?」

へらっと笑みを浮かべれば、彼の傷は再生し始める。
痛みは痒みとなり、そして消えていく。
完全に再生した右手を開いたり閉じたりすれば、次の魔術の準備に入る。

「僕は化け物じゃない、人間なんだ。それに痛みが僕の生きてる証なんだ。」

魔力の塊は命中したが、いまいちな結果だった。やはり腕程度では足りないということだろう。
両腕?心臓?何を供物にするか、そんなことを考えていたが。

「君に泥を付けただけでも僕は満足かな?
あは、根競べってやつかな、僕も負けてられな...。」

言葉は最後まで紡がれることはなく、相手の異形の集中砲火を受ける。
腕や足は吹き飛び、頭部は抉られ胴体には大穴が空き、極めつけには体は炎上する。
戦争を圧縮したような地獄のような光景は無限にも続くと思われた。
再生した先から燃え、そしてはじける。そんなことが繰り返される中、何故か自分は気分がよかった。
死ねるかもしれないと。

神代理央 > 「ふむ?おかしな事を言う。風紀委員になったのも、その任務を選んだのも私であり、その選択肢には自由があった。風紀委員になることもならないことも、私の自由な意思によるものだ。貴様とて、その身体と力で日銭を稼ぐ事は自分で選んだのだろう?それとも、そうあれかしと唆されたか?」

嘲る事もなく、高慢さもなく、不思議そうな表情で首を傾げる。
己も彼も、己の意思で今の居場所を選んだのなら、それは十分に自由では無いのかと。それとも、彼はそういう生き方しか選択出来なかったのかと。

「人間は死ぬ。貴様は死なぬ。人間以上であることを誇るか驕るかは良いが、人間であろうとするのはおかしな話よな。遠慮無く誇れば良いのだ。『僕は人間を超越したのだ』とな」

表情はにこやかに。しかし言葉は高慢に。
彼の言葉を否定し、緩やかに首を振った。

「ぬかせ。どうせ死なぬのだ。精々その痛みを楽しみ、反撃すれば良い」

彼は『泥をつけただけ』と言うが、配下の異形達を巻き込み、防御魔法をかけた上で制服に傷を負わされるというのは此方にとっても大分脅威である。
だからこそ、戦いに驕りは持ち込まない。眼前の彼にどのような攻撃が有効か。次の一手はどうするか。勝つためでは無く、負けない為の戦略を組み立てる。
しかし、そこではたと気が付く。彼との戦闘に予想以上のリソースを割き、気付けば違反組織への攻撃は停止している。
最初、彼は此方に何と言っていた――?

江風 白 > このままではキリがない。
少し体力を使うが、再生に使う体力を一気に使い、瞬時に全身を回復する。
再生が終了すると同時に両腕を供物として魔術を起動、左右を挟むように骨のような物質で盾を作り、攻撃から身を守る。

「確かに僕は人間を超越している。だけど僕を作った人達は僕達が人間であるように作った、拘った。」

燃えたはずである服や体は最初にあったとき同様綺麗なままだ、まるで時間が巻き戻ったかのように。
不死の存在、確かに自分はそうあるように作られた。だが、失敗した。
証拠と言わんばかりに自身の両腕の肘から先は再生が始まらない、だらだらと血液を垂れ流すばかりで。

「最近ずっとこうなんですよね。中々体が治らないし、やっぱり僕の体じゃこれが限界だったのかな。なんてね。」

愚痴りながらも笑みを浮かべる。その表情にはどこか儚さが同居しており。
骨の盾は弾丸や砲弾をはじき、破壊される様子は見られない。流石は腕を犠牲にしただけはある。
その腕も本来ならば再生しているはずなのだが。

「さて、そろそろ時間稼ぎくらいはできたかな。ねぇ風紀委員さん。
僕も痛くて、正直辛いんだ。」

神代理央 > 漸くというべきか。彼が防御の体勢を取った事で此方の指針も決定する。その指示を異形に思念で送ろうとするが―

「であれば。人間であれと造られた貴様にはそれ以上の自由はあるまい。貴様の根本に、その枷があるのだからな。人間を演じ続けなければならない不自由さとは、哀れなものよな」

フン、と鼻を鳴らしつつ、再生した彼に視線を向けて怪訝そうな表情を浮かべる。
その表情は、彼の言葉によって納得したようなものに変化するだろう。

「その力が異能か魔術か。はたまた造られた体質なのかは知らぬが、限界等と言う下らん言葉を使うものでは無い。造られた事に誇りを持つなら、瞬時に再生して私の首を落とすくらいの気概を見せたらどうだ」

儚い笑みを浮かべる彼に、僅かな舌打ちと共に剣呑な表情を浮かべる。
己が対峙し、闘争に値すると思った相手が弱音を吐き出すのが許せなかった。まして、本調子では無い相手をこれ以上攻め立てるのは己の好むところですら無い。

「……興が冷めた。それに、貴様の思惑にもまんまと嵌ってしまった。今宵は引き上げる。この組織も、此処まで痛めつければ後はどうとでもなろう。
ではな。人間もどき。折角死なぬ身体を持っているのだ。その傷を癒やし、十全の状態で再び私に挑むが良い」

ボロボロになった制服に表情をしかめつつ、ボタンの取れた上着をマントの様に翻して彼に背を向ける。
そのまま、周囲の異形を引き連れて此の場から立ち去るのだろう。
あのまま戦い続けて、彼を殺す努力をすることが彼にとっての救いだったのか。それとも、此処で引いて彼に傷を癒やす時間を与える事が正しかったのか。
どんな言葉を並べても、所詮子供でしか無い己には、どちらが正解だったのかは分からなかった―。

ご案内:「廃車場の拠点」から神代理央さんが去りました。
江風 白 > 「ふぁ...帰ってくれたか。」

どしんとその場に尻もちをつけば息を荒らげる。
不死の体、そんな体、自分は持ち合わせていない。
実験段階で作られたこの体は既に悲鳴を上げ、動くことすらままならなくなった。
別の僕は結局完成しているのだろうか?僕は何人目だっただろうか。

「でも、考えるだけ無駄か...。楽しいなぁ、生きるって。」

両腕は再生しては、形を維持できず崩れる。それを幾度か繰り返し、ようやくまともに再生される。
能力は劣化し続ける、最終的には不死ではなくなってしまうだろう。
それでも。

「もっと生きてたいなぁ。」

ご案内:「廃車場の拠点」から江風 白さんが去りました。