2018/10/14 のログ
白鈴秋 > 「……そういうことにしとく」

 少し額を押さえそう返した。おそらく気にしてないと返し続けるだろう。
 それからは少しだけ笑う。

「さてな、お前の仕事を邪魔する気はねぇが、こうやっていくつか組織を攻撃してるし、そろそろあの組織を潰した奴を消せなんて依頼が回ってくるかもしれねぇぞ」

 それを笑いながら言えるという事は暗にこういう意味でもある”その場合は俺も全力で応戦する”と
 いくつか心当たりというのには少し身を乗り出し聞きそうになるが。その後の質問を聞いて目線をそらしながら再び腕を組み壁にもたれかかる。

「それを聞いてどうするんだ。場合によっては早いうちに消しておこうとなる可能性もあるぞ」

 相手の雇い主や贔屓の相手かもしれない。だからそういった後に少し息を吐き出して。

「……殺すだけだ。他の組織の奴みたいに無力化して風紀に突き出すなんてしねぇ、そいつらだけは俺の手で始末する。無関係の組織なら何時も通りだがな」

柊 真白 >  
(なんだか子ども扱いされたようで面白くない。
 仮面越しでもわかるほどむくれた雰囲気を隠しもせず。)

じゃあ、その時は殺す。

(あっさりと。
 敵になるとか依頼だから仕方ないとかではなく。
 殺すと言い切った。)

やっぱり。
敵討ち?

(特定の組織の情報を欲しがる理由なんてそのぐらいのものだ。
 はあとため息を吐いた。)

じゃあ受けられない。
そんな下らないことに使うための情報は渡せない。

白鈴秋 > 「ああ、お互いにな」

 こちらも言い切る。降りかかる火の粉に巻かれて焼死してやるほどお人よしではない。
 ため息、そしてくだらないと一蹴されれば……不思議と冷静に動きをはじめた。

「……そうか、なら依頼の話はなしだな。こいつも不要だ」

 その紙に糸をつきさす。赤く輝く糸、紙に触れた瞬間契約書として作ったメモは灰すら残らず燃え尽きた。
 そしてもう一度壁にもたれかかる。腕はもう組まれていた

「価値なんて人それぞれだ。別にくだらないといわれてもそれを否定はしねぇよ……というより俺も正直そう思う。死んだ人間の為になんで人生棒に振ってんだろうなって、普通に高校生やれてれば楽しかっただろうにって」

 少しだけ笑い、それこそ歳相応に笑い。それから元の顔つきに戻った。

「でも人なんてそんな下らない事に命をかける物だ……お前もそうだろ。少なくとも人殺しを生業にして、その上それしか生き方をしらないって訳にも見えねぇ……同じように下らない理由でこの世界に来たんじゃないのか?」

 人を殺す仕事に高尚な理由などあるわけが無い。仮に合ったとしてもそんなものは架空の正義だろう。
 だからこそ視線を投げかけそう聞いてみた。

柊 真白 >  
――私の一族は私たちの力を恐れた元上司に殺された。
私の最初の仕事はその元上司だったけど、殺しても家族は戻ってこない。

(当たり前の話だ。
 死んだ人間は戻ってこない、それだけの話。)

だったら普通に高校生をやればいい。
そんな下らないことのために人生を棒に振る必要はどこにもない。

(仮面の下からまっすぐに彼の顔を見て。)

私はそれしか生き方を知らないよ。
この生き方をやめたら、「お父さん」が死んでしまうから。

(仮面の下で、笑う。)

情報は渡さない。
だけど他の仕事なら請ける。
そんな顔が出来るのならまだ引き返せる。
あなたはあなたにしか出来ないことをしなさい。

(優しく笑う。)

白鈴秋 > 「……案外似た者同士なんだな。殺したのと殺せてないのの違いはあるが」

 境遇が自分に近く、思わず少しだけ笑ってしまう。
 そして相手の優しい声、見えないがおそらく仮面の下では微笑んでいるのだろう。そういったものは雰囲気でわかる。

「やっぱり、その生き方しかしらねぇってのは無いと思う。保育園の先生とか向いてるんじゃねぇか?」

 その優しげな声からそんな冗談を少しだけ交え、そして元の顔に戻る。
 
「折角いってくれたが……悪いな、俺も他の生き方はできねぇ。本当の俺はその日に死んだんだ。いくら高校生活をしたらたのしくても、下らないと思っても……視界の端にチラつくんだよ。本当の俺が、今の俺がな」

 歳相応の笑顔、だがそれはボスの返り血を受けてもその笑顔を浮かべられるという意味でもあった。
 そしてゆっくり口を開いた。

「俺もこの生き方をやめれば。たぶん俺の姿をしたナニカになっちまう……俺は俺として生きるために。この生き方を続ける」

 コンソールの操作を行う。送る内容は場所とコピーしたデータと同じ内容。そして制圧が完了しているという内容だけだ。手袋をしているので指紋は残らない。

「もうすぐ風紀もくる。早いうちにズラかった方が良い。捕まりたいなら止めないがな」

柊 真白 >  
……あなたも。

(一族を殺されたもの同士、ということらしい。
 悲しそうな顔。)

まさか。
こんな手で、子供には触れない。

(血の匂いが染みついている。
 自分の左の手のひらに視線を落として。)

あなたの手は、奪うためのものじゃ――

(そこまで言って、無駄なのだろうと悟る。
 途中で言葉を切って、首を振って。)

――さっきの言葉は取り消す。
依頼、受けてもいい。
でも気が変わったらいつでも言って。

(ポケットからメモ帳を取り出して、心当たりのある組織の名前を書いて彼に渡した。
 おそらくすべて外れだろうとは思うけれど。)

わかった。
それじゃあ。

(彼の言葉に頷いて、姿を消す。
 実際には扉へと移動しただけなのだが、速度、特に初速が尋常ではない。
 それを証明するかのように、消えた直後に扉が開く音、そして閉まる音。
 来た時と同じように、不自然なまでに最初からこの場にいなかったかのような自然さで――)

ご案内:「違反組織群」から柊 真白さんが去りました。
白鈴秋 >  相手の思い、それらを踏みにじっている感覚はある。
 それでも、戻れないのだ……一度踏み込んでしまった以上もう戻れない。そして戻ることはできない。
 相手の切り上げた言葉に少しだけ首をひねるが。その後渡されるメモ。

「あっおい!」

 声をかけるもすぐに消えてしまう。ため息を吐き出した。

「……これの情報料払ってねぇってのに。法外な値段だったら払えねぇぞ」

 まぁ道具を少し流せばすぐにでも手に入るだろうが。そのメモをポケットへとしまう。
 それから少しだけ考える。

「……奪うためのものじゃ……無いって言いたかったのか?」

 自分の手を見る。実際こうして違反組織を叩き潰したときより……あの時にいっしょに戦った時の方が自分らしいと思ったのは事実だ。
 ったくとぼやくが。遠くからドタドタと走る音。

「……あいつも早いが風紀も早いことだ。さっさと脱出しねぇと」

 逃げ出す前にボスを見る。無残な死体目を見開いたままだったそれの傍に膝を突き。そっと目を閉じさせる。
 そうして自分もまた現場を後にした。
 

ご案内:「違反組織群」から白鈴秋さんが去りました。