2018/12/04 のログ
ご案内:「薬物製造拠点」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 以前スラムを一層した球状の物体は、違反部活の間でも僅かながら情報共有が成されていた。
といっても、その見た目程度しか情報が無く『風紀か公安の新兵器』か『薬物中毒者の与太話』くらいに認識されていた。

とはいえ、裏社会で生きる猛者達は決して油断したり情報を軽視する事は無い。
球状の飛行物体が強力な攻撃手段を持っている"らしい"となれば、一応対策くらいは各々行っていた。

そんな努力を嘲笑う様に、今夜も落第街で鋼鉄の月が輝く。

「痛み止めを飲むほどの敵が居れば良いがな。それでは、仕事といこうか」

工場の直上に突如として現れた巨大な金属の球体と、無数の小さな球体。
何事かと空を見上げる構成員を見下ろすのは、巨大な球体に腰掛けた風紀委員の少年。

「抵抗は決して無意味では無い。諸君等の健闘に期待しよう」

そして球体は輝き、夜闇を切り裂く無数の光条が地上に降り注いだ。

神代理央 > 光条に穿たれた物質は、熱したナイフを当てられたバターの様な音と共に消失する。
サーチライトの様な光が地上を撫でる度に、其処に存在したモノは膨大な熱量によって蒸発していく。

それでも、ある程度の抵抗は存在した。というより、抵抗させた。銃器、異能、魔術。あらゆる力が、空中の球体に向かって放たれる。

しかし、殆どの攻撃は小型の球体が展開したバリアによって防がれ、極稀に少年の乗る球体に命中しても、数秒立たぬ内に修復している。
絶望的な戦闘は、地上の建造物がエメンタールチーズの様になるまで続いた。

「…む、終わりか。戦闘系の組織でなければこんなものか。やはり、チンピラ相手では話にならんな。転移荒野にでも行ってみるべきか」

地上に降下した小型の球体が、隠れ潜む生存者を処理していく。数分と立たぬ内に、この工場"跡地"で動く者は自分以外に居なくなるだろう。
ゆっくりと高度を下げた球体から、身軽な動作で地上へ降り立ち、大きく背伸びして身体の緊張を解した。

神代理央 > いままでの異形達と違い、砲声も黒煙も無い。
戦闘が終わった後も、実に静かなものだ。
つい先程まで、凄惨な殺戮が行われていたとは思えぬほど、荘厳なまでの静寂に包まれていた。

「…こうなると、あの硝煙の匂いも悪くは無かったと思ってしまうな。味気ないものだ」

ポツリと独り言を呟く己の姿を、淡く輝く銀色の球体が鈍く照らしていた。